【インタビュー】THE BEAT GARDEN、現体制最後のアルバムに託す意志「ずっと歌い繋いでいく」

■日が沈んでも消えない光
■この気持ちを忘れないで歌い続けていく

──逆に「光」や「ぬくもり」は、音源としてじっくり聴ける魅力もあるなと感じました。

MASATO：「光」は僕らの上京ソングなので、ノンフィクション。初めて知ってくれたっていう人たちはもちろんだけど、今までのTHE BEAT GARDENを知ってくれている人もじっくり聴いてもらえると思うし、ここまでトントン拍子じゃなかったこととか、ライブではいろんなことを踏まえて聴いてくれてるんだろうなって感覚もすごくあるんですよね。

▲MASATO

REI：ようやく会えた今だからこそ、Beemerは僕らの曲をいろんな受け止め方で聴いてくれているんだなってことがよりわかったというか。「ぬくもり」や「光」、「スタートボタン」とかもそうだと思うけど、自分たちもライブでの届け方として今までとは違う感覚がある気がしています。

U：そうだね。「ぬくもり」は『都立水商！〜令和〜』っていう、不良生徒みたいな人たちがその中であったかさを感じていくっていう作品の主題歌で、初めて書き下ろしをした曲です。でも僕、ライブの時はいつもこの曲でSATORUのことを思っているんですよね。本人には言ったことないんですが。SATORUって、本当にどうしようもないやつだったんですよ。あ、僕もそうだったけど（笑）。

SATORU：（笑）。

U：僕の地元の後輩だったんですが、すごく仲が良かったんですね。THE BEAT GARDENになる前は、僕が夢の話をしててもSATORUが自分の夢の話をすることもなかったし、家のこととか本当にいろいろあったんだけど、今は一緒にステージに立てている。今の4人だからこそ、歌った時により届くものがある曲だなと思う曲ですね。

──なるほど、そういう思いも込められているんですね。

U：コロナ禍になって、思うような活動もできなくなって。僕らが掲げていた「ドームに立つ」っていう夢は本当に叶うのかなって、疑ってしまった部分もあるんです。そういう現実がある中での「ぬくもり」でもあって。割と激し目の曲なのにライブではみんな声出せないし、飛び跳ねることもできないからどうなんだろうなと思っていたけど、実際に歌ってみると、いい意味でバラードみたいに歌を真っ直ぐ届けることができていて。新たな意味を持ってくれた曲でもあるなと思いましたね。

SATORU：「ぬくもり」もそうですけど、本当に今の僕たちのベストなんだろうなって思える楽曲が詰まったアルバムになったなと感じています。

▲『余光』通常盤

──そのアルバムが「エピソード」で終わるのも納得です。THE BEAT GARDENが事務所に入る前の話であり、日本武道館や東京ドームで歌うことをイメージして作られた曲でしたよね。

U：はい。もちろんこのアルバムは新しい人にもたくさん知ってもらいたいなと思って作りましたけど、この曲が入っていること、そして最後に入っていることは、今日まで応援してくれていたみんなへの感謝の気持ちでもあります。

──図書館のガラスの前で夜中に練習するんだけど、初めて参加したSATORUさんは機材があるわけでもないから、とにかくしんどかったという話を以前されていましたよね（笑）。

U：夜中に6〜7時間、立たされてたもんね（笑）。

SATORU：そうですよ（笑）。僕、リハーサルってあれが生まれて初めてだったんです。朝を迎えるくらいまでやってたんですけど、他の人がどうやっているかなんてことも知らなかったから、「これは一体なんのために？」って思いながらも立ってるしかなくて。「こんなに過酷なの!?」って思って、本当にシビれました。

REI：初めてだから、文句も何も言えないですしね（笑）。

SATORU：みんなは動きながら歌ってるからいいけど、僕は足の先まで冷えて冷えて（笑）。

U：地獄だったね（笑）。

──そんなエピソードもありつつ、の今なんですね（笑）。

SATORU：そうですね。今もこうしてツアーやってますけど、比べものにならないくらい幸せです（笑）。あの地獄絵図は思い出したくもないので（笑）、それこそファイナルまで思い切り楽しもうと思ってます。

▲SATORU

U：実は昨日、ファイナルのリハーサルを4人で初めてやったんですよ。ファイナルのセットリストを歌ったんですけど、「これでSATORUが卒業するんだ」っていう現実味を感じないように、すごく淡々としたリハーサルになってたような気がしました。今回のツアーは、SATORUも言ってくれてたように、初公演の広島の第1部から全部がファイナルみたいな気持ちで4人で歌い続けてきたんですね。もちろんどの公演もそうだけど、ファイナルの8月7日は特に、その日にしか生まれないものがきっとあるんだろうなと思いますね。

──言える範囲で構いませんが、やはり特別な内容になるのでしょうか。

U：というよりも、自然にそうなるだろうなって思っているんです。例えばクラップを多めにしたり、足踏みを多めにできるような感じにしようかなとかいろいろ考えて、実際にREIがそういうイメージでライブ音源を作ってくれたりもしたんですけど、やっぱり違うなって。

MASATO：やめたんですよ。

REI：そうなんです。

U：それくらいいつも通り、自然に歩んでいって、よりいつも通りに帰っていくファイナル。いつも通りなライブができたらいちばんいいなって思ってます。4人とも。

──わかりました。では最後になりますが、今回のアルバムのタイトルでもある『余光』に込めた思いを聞かせてください。

U：もともと、ツアータイトルを先に決めたんですよ。日が沈んでも消えない光を『余光』と表現するのって素敵だなと思ってグループラインに送ったんですが、ちょうどツアータイトルを考えている時でもあったので、じゃあ並びを考えてそれを英語にしようと。それでまず＜The Beat Garden one man live tour 2021「Afterglow」＞というのが決まったんです。その後、アルバムのタイトルをどうするかということになった時に、やっぱり漢字で『余光』というのはいいよねってみんなが言ってくれて。ツアーも、アルバムも、この4人とBeemerで作るのは最後になるけど、ライブで築き上げてきたものや時間は消えずにこれからもみんなの中で続いていくわけだし、このアルバムの曲だってずっと歌い繋いでいくから消えることはない。SATORUが卒業してもずっとこの気持ちを忘れないで歌い続けていくっていう意味も込めて、『余光』にしました。

SATORU：僕自身はこのアルバムが最後のリリースになるんですが、ここにいたんだっていう事実はずっと残るわけで。メンバーではなくなりますが、これからも僕はここに居続けているっていう気持ちは持っていきたいなと思っています。

取材・文◎山田邦子
撮影◎野村雄治