【ライブレポート】vistlip、14周年ライブ「俺たちが生き残れたのはみんなが集まってくれるから」
結成記念日の七夕にて2年ぶりにファンとの再会。vistlipが7月7日に<vistlip 14th Anniversary LIVE BJ>と題して、Zepp Tokyoにて14周年記念ライブを有観客で開催した。
◆ライブ画像
2020年の13周年ライブはこれまでと趣向を変えたハロウインコンセプトで見せるはずが、新型コロナウイルスの影響で中止に。それだけに会場には、約束の日を心待ちにしていたファンが集まり、感染対策の規制はあるものの、開演前の空気からも高揚感が伝わってきた。
客電が落ち、オープニングナンバーはライブ初披露であり、最新シングル「Act」のlipper盤に収録されている「John Doe」。初の試みの全面LEDスクリーンの映像には、モノトーンのストライプが映し出された。そして智(Vo)が上手か ら下手へと煽りながら歌い、Yuh(G)がフライングVを鳴らしたvistlipの原点のミクスチャーロック「EDY」へと移行。
イントロで智と瑠伊(B)がセンターのお立ち台に立った「CRACK & MARBLE CITY」はLEDと照明の効果もあり、サビの歌詞の通り、まるでプラネタリウムのような光景が広がった。うって変わって真っ赤な照明がステージ に注いだ「Act」は痛快だった。8ビートを基調にしたTohya(Dr)の力強いドラミング、瑠伊のうねるベース、Yuhの光が放たれるようなギターソロ、海(G)のストロークとラップ、智の艶のあるヴォーカル。アニメのタイアップ曲になった「Act」はvistlipにしては珍しいシンプルでストレートなバンドサウンドのナンバーだが、ひとりひとりのプレイが際立って響くアプローチが今の彼らには似合っている。
客席から手が挙がった「Antique」では間奏で智が「オマエらが必要だから」と叫び、イントロのYuhのギターにスポットが当たったナンバー「Sara」では海がアンプの前に座り込んでギター をかき鳴らすなど、炸裂。激しい中にvistlipからファンへのメッセージが詰め込まれたラブソングだ。拍手はいつまでも鳴り止まない。
「楽しんでますか? お待たせしました。vistlipです。今日は何と雨が降ってないんです。去年分、愛し合えってことなんじゃないかと思ってるんですけど、みんなもそう思えませんか? もっと来いよ。声出せないんだから、身体で見せてくれよ!」──智
そんなMCの後に初期ナンバー「Pavé au chocolat」が投下された。ギターの骨太なリフがフックとなるこの曲では、みんなハンドクラップ。Yuhと瑠伊が上手で並んでプレイしたり、メンバーの見せ場も満載で、踊れるグルーヴも今のvistlipならでは。おなじみの「Dead Cherry」、智が海にマイクを向けた「Hameln」などコロナ禍を忘れそうになる開放的なアクトにマスクの下が笑顔になった人も多かったのではないだろうか。
「今みんなを見て大丈夫だなと思ったんですけど、決められたルールの中で思いきっり楽しんでください。今日はせっかく椅子があるので、それを逆手にとって座ったりしませんか?」と智が呼びかけ、ここで着席タイムとなるが、 Yuhが「待って。すげえ俺のブツブツいうんだわ」とギターの音にノイズが入ることを伝え、瑠伊も「俺もなんだわ。Wi-Fiの影響らしいよ」と同意し、みんなの携帯のWi-Fiを切ってもらうように要請する展開に。
「毎年、七夕ってあったかい空気なんですけど、「Hameln」とか「Dead Cherry」 とかやるとvistlipの空気になるなと思いました。今までの曲たちをもっともっといいものに一緒に作り上げてくれてありがとうございます」──智
拍手が溢れ、ここからは七夕ライブ初の試み。着席しての3曲が演奏された。「ミミックの残骸」はジャジーなアプローチ、「TELESCOPE CYLINDER」ではLEDスクリーンに映し出された空の色がどんどん変わっていく演出と、切ない世界観を表現する智のヴォーカルにぐいぐい引き込まれた。そして「SINDRA」のlipper盤に収録されている「Chapter:ask」のアクトも鮮烈な印象を残した。
後半に向かうにつれて感情を放出させる演奏と智のスクリームはラ イブならではの醍醐味で、この3曲は特別なセクションとなった。
陶酔する客席に智が「いつまで座ってんだよ!」とツンデレな煽りで空気を変えて、メンバーからのメッセージが届けられた。先陣を切ったのは金髪になったTohya。
「やっと喋れるのか。Zepp Tokyo! お疲れヤンマー! 去年、お祝いできなかったので形はちょっと違うんですが、今年、お祝いできて本当に嬉しいです。ありがとーや! 来るとき電車で来て、ウチのグッズの服だなっていうコを何人も見たけど、誰ひとり声をかけてくれませんでした!」と笑わせ、智から「気を使ってんだよ」というツッコミが。
続いて瑠伊が「楽しいね。席があるZeppって初じゃない? 全然いいね。すごくいい景色見せてくれてありがとう」と想いを伝えると今度は海から「Tohyaと瑠伊のMC聞いてたけど、こんなにこの2人ってしどろもどろで喋るんだっけ?」というダメ出し(?)が。しかし、そういう海が「楽しんでますか?」と問いかけると間髪入れず、瑠伊に「自分もたいして上手くないっていう」と突っ込まれる。
最後に振られたYuhは再び音のことに触れ、もう1度Wi-Fiを切ってもらうようにお願いし(ワイヤレス仕様のため、電波が影響してしまうらしい)、切ってもらった上で試し弾き。智に「14周年ライブ、リハ付き」と言われるものの、音は改善したらしく「やっと楽しくなってきたかもしれない。正直な話」 とご満悦。さすがvistlip。14周年を迎えても自由すぎる。
と同時に14周年の研ぎ澄まされたバンドサウンドを響かせてくれたのがこの日のライブでもあった。後半のたたみかけるようなセットリストは場内のテンションをどんどん上げていった。バンドのテーマ曲とも言える「FIVE BARKIN ANIMALS」はストリート感たっぷりの演奏とヴォーカルが迫力を感じさせ、智のラップとエッジのある演奏が冴える「DANCE IN THE DARK」も、原点を軸に進化したバンドの今を感じさせてくれた。
同期を入れても各自の音の粒が立っている演奏。佇まいからしてvistlipの看板を背負っていることがわかる智のヴォーカル。コロナ禍以前から智が病気で休養するなど、思うような活動ができなかった葛藤をマイナス要因にすることなく、ステージに立って楽しんでいる彼らが頼もしかった。
LEDにデジタル時計の文字が映し出され、Tohyaの爽快なドラミングで始まる「Timer」ではYuhが絶品のソロを響かせ、今年の七夕も雨が降ることを想定していたのだろうか?と想像してしまう「星一つ灯らないこんな夜に。」が演奏された。
「テンション上がってますか? こうやっていざライブやってみれば何も変わらないと思うんですよ。みんなの気持ちさえ上がれば、今までと変わらない。100%大丈夫ってわけじゃないけど、ワクチンの接種も始まって、音楽業界も失ったものを取り返せると思うんです。ここまで俺たちが生き残れたのはホントにみんながこういう状況でも集まってくれるからで、祝われているのは俺たちかもしれないけれど、俺たちもvistlipの看板を祝っている立場で、ホントにみんなに感謝したいと思います。ありがとうございます」──智
智が今の気持ちを伝え、終盤は「GLOSTER IMAGE」「HEART ch.」「LIONHEART」とキラーチューンを投下し、客席から数々の拳が上がり、本編が終了。
アンコールの拍手の中、ステージのスクリーンに映し出されたのはハロウインをイメージさせる映像と10月17日(日)にZepp Tokyoで昨年開催できなかった13周年ライブ<vistlip 13th Anniversary Live "Screams under the Milky Way>が開催されるという告知だった。
再びステージに登場した5人。13周年ライブについて想いが伝えられた。
「どうにかできないのかなということでウチのスタッフも一生懸命、動いてくれてZepp Tokyoのスタッフもvistlipなら、ということで、あと1回だけ約束の場所をここに作ることができました。初のハロウインイベントじゃないですけど、そういう方向に持っていけたらなと。セットリストも以前、公表したものとはちょっと変えて、楽しませたいなと思っているので、ぜひ、ここにもう1回、集まってください」──智
大きな拍手の中、「-OZONE-」が届けられた。少年の頃から憧れていたZepp Tokyoへの想いや、vistlipという危うく、面倒くさいバンドにみんながついてきてくれたことへの感謝、ここまで続いていることへの奇跡、15周年を目指 していくという意思表明も智の口から語られた。
「みんなそれぞれ、俺たちに星を見せてください。心の中で一緒に歌いましょう」と最後に演奏されたのは、七夕にしか聴けない「July VIIth」。Zepp Tokyoで聴けるのは最後だ。客席に揺れるブルーの光とvistlipが描き出した星空。未来へと続 くこの日の夜のことはみんなの心に深く刻まれたに違いない。
取材・文◎山本弘子
セットリスト
M02 EDY
M03 CRACK & MARBLE CITY
M04 Act
M05 Antique
M06 Sara
M07 Pavé au chocolat
M08 Dead Cherry
M09 Hameln
M10 ミミックの残骸
M11 TELESCOPE CYLINDER
M12 Chapter:ask
M13 FIVE BARKIN ANIMALS
M14 DANCE IN THE DARK
M15 Timer
M16 星一つ灯らないこんな夜に。
M17 GLOSTER IMAGE
M18 HEART ch.
M19 LION HEART
EN1 -OZONE-
EN2 July VIIth
ライブ情報
2021年7月29日(火) 神戸VARIT.
2021年7月30日(金)大阪ESAKA MUSE
2021年8月2日(月)京都KYOTO MUSE
◆vistlip オフィシャルサイト
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