【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.76「らしくない」
皆さん、お久しぶりです。去年の秋以来です。レコーディング準備を理由に連載を休んでいましたが、時間を見つけて書くこともできたでしょう。しかし、間が空き過ぎて書き出す機会を失っていました。これは、レコードをあまりにも長く借りていたために返すタイミングを逸してしまうのに似ています。25年前に吉野家のバイト仲間に借りていたBOW WOWの1stと2nd(VではなくBの時代)、返したいけど居所が全く不明で不可能です。同じ頃、東高円寺のリハスタの店員さんに借りていたIL BALLETTO DI BRONZOの「YS」も何がなんでも返したいのですが、もう働いていないのは確実です。郵便局のバイト時代にお世話になっていた大先輩に借りていたMiles Davisの「Bitches Brew」と「Walkin’」は、先輩が鬼籍に入られたために形見となってしまいました。ATLANTA RHYTHM SECTIONの「Champagne Jam」とJaco Pastoriusの「Word Of Mouth」にいたっては、誰に借りたのかさえ思い出せません。本当に昔の自分はダメ人間だったんだなぁ。昔のダメな自分が最近顔を出し始めたので、バークスはまた書くようにします。
新譜の話をしますと、13曲の中に「疾れGT」という曲があります。GTというのは、和嶋くんの乗っているバイクの名前です。サビで「GT!」を連呼しています。商品名を声高々に叫ぶ曲は今までなかったので新しい試みだと言えます。軽快なリズムのストレートな名曲です。サビのコーラスの歌録りではテレビ番組「GTO」で主役の反町隆史さんの顔が浮かびました。Great Teacher Onizukaです。JUDAS PRIESTマニアならGlenn Tiptonの顔が浮かんだところです。名称がアルファベット2文字のバイクや車はよく目にします。何の略なのかはさっぱり見当がつきませんが、何となくかっこよく聞こえます。いつかステージ上に和嶋くんのGTを登場させて、みんなでGT!と叫びたいものです。あと、自分が作曲したものの中に「世紀末ジンタ」という曲があります。これは跳ねるようなリズムをメインにしていて、人間椅子にはあまりなかった、らしくない曲です。発表する前から既にレア曲候補ですが、苦労して作ったので愛着のある曲です。ツアーでもあまり演らないと思われるので、聴くことができたらラッキー(アンラッキー?)です。
どのバンドにも、らしくない曲はあります。特にハードロックバンドに多い気がします。DEEP PURPLEのカントリーナンバー「Anyone’s Daughter」、LED ZEPPELINのレゲエナンバー「D’yer Mak’er」、BLACK SABBATHのピアノバラード「Air Dance」など、枚挙にいとまがありません。特にBLACK SABBATHのこの曲が収録されたアルバム「Never Say Die」はアルバムそのものがらしくない「迷盤」です。M1は底抜けに明るいし、M8は管楽器と一緒のインストでギターが入っていないし、M9はOzzyではなくBill Wardが歌っていたりと、らしくない事ずくめです。おまけに音が非常に悪くバランスもよくありません。でも自分は大好きな一枚です。愛するBLACK SABBATHのメンバーが何とかして新しい境地を切り開こうと必死になって模索している姿が目に浮かんできて嬉しくなってしまうのです。曲のタイトルも「Never Say Die」「A Hard Road」「Breakout」と、崖っ淵な感じが出ていて愉快です。売り上げも良くなかったそうですが、ジャケットは人気があります。これから戦闘機に乗り込む二人の写真なのですが、マスクがバルタン星人みたいでかっこいいので、Tシャツのデザインとして使われていて、着ている人をよく見かけます。皮肉なことです。この後Ozzyは脱退しますが、Ronnie James Dioを迎えて名盤「Heaven And Hell」が生まれます。Ozzyの方も「Blizzard Of Ozz」を発表し大ヒットします。この歴史的名盤2枚が生まれたのは、らしくないアルバム「Never Say Die」での試行錯誤があったからこそだと思っています。
らしくないと言えば、昨年の今頃、コロナで暇になったので毎日腕立て伏せをしていたら、左肘が猛烈に痛くなって茶碗すらも落としてしまうほどにひどくなってしまいました。お医者さんに診てもらったところ、加齢だということでした。腕立て伏せで痛くなったと話したら大笑いされました。らしくない事はするものじゃありませんね。でも安心してください。何とかベースを持てるまでに復活しました。今はボケ防止のために数独を解いて、まったりとした時間を過ごしています。
今回のマイベストテープ~らしくないけどカッコイイ曲
A2.Torpedo Girl / KISS
A3.Son And Daughter / QUEEN
A4. Snowman / RAINBOW
A5.Sleepless / KING CRIMSON
B1.Anyone’s Daughter / DEEP PURPLE
B2.Hot Dog / LED ZEPPELIN
B3.Touch Me / DOORS
B4.Turbo Lover / JUDAS PRIEST
B5.Salisbury / URIAH HEEP
人間椅子22nd ALBUM『苦楽』
2,900円(税抜2,636円)
1.杜子春
2.神々の行進
3.悪魔の処方箋
4.暗黒王
5.人間ロボット
6.宇宙海賊
7.疾れGT
8.世紀末ジンタ
9.悩みをつき抜けて歓喜に到れ
10.恍惚の蟷螂
11.至上の唇
12.肉体の亡霊
13.夜明け前
◆「杜子春」配信サイト
<苦楽 ~リリース記念ワンマンツアー~>(全14公演)
8月27日(金)金沢 GOLD CREEK
8月29日(日)大阪 umeda TRAD
9月1日(水)神戸 CHICKEN GEORGE
9月3日(金)高松 OLIVE HALL
9月5日(日)名古屋 Electric Lady Land
9月9日(木)福岡 DRUM Be-1
9月11日(土)沖縄 桜坂 Central
9月16日(木)福島 いわき club SONIC iwaki
9月18日(土)弘前 KEEP THE BEAT
9月20日(祝月)青森 Quarter
9月22日(水)札幌 PENNY LANE 24
9月25日(土)仙台 CLUB JUNK BOX
9月27日(月)東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
詳細:https://ningen-isu.com/news/?id=11981
◆人間椅子 公式LINEアカウント
◆人間椅子YouTube
◆【連載】人間椅子 鈴木研一の「ハードロック喫茶ナザレス」まとめ
この記事の関連情報
【ライブレポート】人間椅子、ツアー<バンド生活三十五年 怪奇と幻想>完遂「もう二度とやらない曲も」
人間椅子、2本立てライブ映像作品『バンド生活三十五年 怪奇と幻想』を11月リリース
都市型ロック(HR/MR)フェス<CRASH CRISIS>第二弾出演者を発表
【ライブレポート】人間椅子、バンド生活三十五年<猟奇第三楽章>完遂「いつの日か武道館でやりたい」
SEX MACHINEGUNS、25周年企画ライブシリーズで人間椅子と対バン
【ライブレポート】人間椅子、ツアー<色即是空>ファイナルに圧倒的な人間力「全国還暦ツアーをやろうかと」
人間椅子、アルバム『色即是空』収録曲「さらば世界」MVは全編グリーンバック撮影のCG映像
人間椅子、2年ぶりアルバム『色即是空』9月リリース+ジャケットイラストはみうらじゅん
【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.79「KISS」