【インタビュー】平原綾香、ライブベスト全45曲から“この10曲”「今が一番輝いていると思うと、どんな時代の自分も愛せる」

■始まりはサックスなんだなって
■そこから少しずつ、歌手になってきた

──でも結果的には、「The Sound Of Music〜サウンド・オブ・ミュージック (Live Tour 2015 Ver.)」然り、平原さんの表現の幅はどんどん広がっていきましたからね。

平原：たぶんミュージカルを経験したことも変わっていく要因だったし、でも歌の旅としては、クラシックの唱法、オペラの唱法を経験したことがすごく役に立ちました。そういう意味では、自分を変えるきっかけになったミュージカルには感謝しています。

──このバージョンは、映画で使用された1965年のオーケストラ音源をバックに歌っているんですよね。

平原：はい。これは世界初だと思います。たぶんこのオケで歌ったのは、映画で主演したジュリー・アンドリュースだけだと思いますよ。実はこの時って、客席を練り歩きながら歌っているんですね。最後に私が投げキッスをするんですが、客席にいた車椅子の女の子にしている投げキッスの音も、それに対してお客さんが拍手してくれた音も入っていて。その一瞬のやりとりがそのまま収録されているんです。ライブ感のある、この日だけのバージョンになっています。

▲平原綾香

──8曲目にピックアップしたのは「マスカット (Live Tour 2018 Ver.)」です。この曲もすごく生々しいライブ感のある仕上がりですね。CD音源とは違う魅力が詰まってる1曲だと思いました。

平原：このライブ音源はすごく好きなんです。ギターは、ジャズ科の同級生でもある伊藤ハルトシくんが弾いてくれました。でもこれ、すごく苦しみながら歌ったテイクなんですよ。技術的な問題で、音がほとんど聴こえていない状況だったんです。だけど、改めて聴いてみるとちゃんと歌えているし、何よりもギターと2人で演奏しているのも好きだったので、この音源しかないだろうと。ちなみに今年のツアーでも、この曲はまた、ギターと2人だけでやる予定にしています。

──作詞作曲は玉置浩二さんが手掛けていらっしゃるんですよね。

平原：そうなんです。玉置さんが曲を作ってくれることになって、どんな曲がくるんだろう？と思っていたらタイトルでまずびっくりしちゃって。“カタカナで「マスカット」!?”って。最初はどんな可愛い曲が始まるんだろうと思ったら、もう大号泣でした。玉置さんと私の父母は若い頃からの知り合いで、おうちにも遊びに来たことがあるから、私の小さい時も知っているっていう、だからこその歌詞なんです。まるで父のような、でも父でもない目線。先日初めてこの曲を玉置さんとデュエットしたんですが、本当に思い出深かったです。一生忘れないと思いましたね。名曲です。

──「La La LOVE (Live Tour 2017 Ver.) / 平原綾香 feat. 平原まこと」は、お父様である平原まことさんとの共演も、ライブの見どころ／聴きどころになっていますよね。

平原：コンサートで一番歓声が大きいのが、父が出てきた時ですから（笑）。全部かっさらっていっちゃう。愛されパパです。この2017年は、ちょうど父もコンサート中だったので、「急いでかけつけるけど、間に合わなかったらごめんね」っていう状況だったんです。で、この曲が始まる前に袖を見たらスタッフの人が「OK!」ってサイン出していたから呼び込めたっていう、そういうテイクです。この曲、めちゃくちゃカッコいいんですよね。私もこんなふうにサックス吹きたいなって思う、本当に憧れです。

──そういう感覚、素敵ですね。

平原：サックスの息吹というか、私はこの音を今まで聴いて育っているので、すごく呼吸出来るんですよね。歌も、迷った時にどうやって歌えばいいか相談するのは父なんです。一度テレビで父と共演した時に、德永英明さんの「レイニーブルー」を一緒に演奏したんですね。私自身もサックスを吹きながら歌ったんですが、サックスを首にかけると、本当に歌いやすく感じたんです。吹いてなくても吹いているような感覚になる瞬間があって、口を離してもサックスの感覚があって、あの時ばかりは一瞬“あぁ、やっぱり私は歌手じゃないんだな”という思いになりました。根本的な部分で、始まりはサックスなんだなって。そこから少しずつ、歌手になってきた。父が吹いてくれると、本当に呼吸がラクなんですよね。原点を見た気がします。

▲平原綾香

──今のお話を聞いて思ったのですが、これまでのたくさんのコラボレーションもきっと“歌手・平原綾香”としてだけではなく、作詞作曲家でありプレイヤーでもある“ミュージシャン／アーティスト・平原綾香”としてのオファーだったのではないかと感じました。

平原：確かに、歌手というよりもミュージシャンとして見てくださっている部分はあるかもしれないですね。

──そう考えると、10曲目はコラボにスポットを当てたいのですが、今回、初回生産限定盤に収録されている森崎ウィンさんとの「MOSHIMO」や、ダニエル・パウターさんとの「Save Your Life」も、また違った側面からの魅力を感じることが出来る気がします。

平原：そうですね。「MOSHIMO」はミャンマーのドラマ「The House with Dreams」の主題歌として作った曲なんです。ウィンくんが主演で、以前から“ジャパン・ミャンマー・プエドー”というお祭りでウィンくんと出会う機会があり、一緒にやることになりました。この曲はウィンくんが歌いやすいキーにして、「Save Your Life」もダニエルのキーだから私にとってはすごく低いんですね。だけど私は低い声がもともと好きだし、女性だからといって高い声で歌わなきゃいけないわけじゃない。ある意味、今の時代のデュエット曲だなとも思いますね。

──その2曲のボーナストラックはもちろん、愛犬Saraちゃんとのスリーブケースも可愛いので、ぜひ初回生産限定盤をゲットしていただきたいですね。

平原：ありがとうございます（笑）。今回のジャケット写真って、実はレスリー・キーさんの結婚式用に、レスリー・キーさん本人に撮ってもらったものなんですよ。「結婚式に歌いに来てほしいから、そのための写真として撮らせてくれ」ってレスリー・キーさんにおっしゃっていただいて。で、「わんちゃんも一緒のカレンダーを作るからSaraちゃんも連れてきて欲しい」と。メイクも私自身がやった自前なので、本当に気負わず、自然に撮れた写真なんです。

──クレジットをつけるならば、“撮影◎レスリー・キー” “メイク◎平原綾香”なんですね。

平原：はい。この綺麗になびいている髪だけは、プロの方にやっていただきましたけど。菜箸を使う”菜箸アーティスト”がいらっしゃるんですよ（笑）。本当に見事でした。「撮った写真は自由に使っていいよ」と言ってもらえたので、今回ジャケットとして使わせてもらっています。ぜひCDを手に取っていただいて、たくさんの方に聴いていただけると嬉しいです。

取材・文◎山田邦子
撮影◎野村雄治









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