【インタビュー】平原綾香、ライブベスト全45曲から“この10曲”「今が一番輝いていると思うと、どんな時代の自分も愛せる」
■本当に過酷でした。でも慣れてくる
■たくましくなったなと思います(笑)
──喜びといえば、3曲目にピックアップしたい「アランフェス協奏曲〜Spain (Live Tour 2016 Ver.)」。このエンディングでは、お客さんの拍手とともに、歌い終えた平原さんの歓喜の声も聴こえてきました。
平原:そう、私の声も入ってるんですよね(笑)。この曲って音楽の粒が見えるんですよ。音楽の粒をたくさん持っている人達とセッションしていると、その音の粒子みたいなものの中で会話をするから、思わず叫んじゃうんですよ。砲丸投げと一緒。堪えて堪えて投げ切って「わー!!」みたいな(笑)。毎回、あの砲丸投げの選手の気持ちがわかるような感じで筋肉を使っているから、1回叫ばないと終わらない、みたいな感じなんです。
──なるほど(笑)。
平原:この曲を初めて披露したのは、ファンクラブイベントだったんですよ。ちょうどロシアでのオーケストラコンサートから帰ってきて、それが本当に大変で、口にヘルペスが7個できた状態でボイパ(ボイスパーカッション)をやったので、すごく痛かった思い出もあります(笑)。でも、そんなこともいい思い出って思えるくらい、この曲はお客さんが「面白い」と言って愛してくれてるから、今も続けているんですよね。ある意味、盆踊りみたいな感じ(笑)? 盆踊りって、毎年やるじゃないですか。今年は飽きたから踊らなくていいか、みたいにはならない。この曲や「Night In Tunisia」……私たちの中で“飛び芸コーナー”と言っているんですけど、そういう刺激のあるものを毎年欠かさずやっているのは、ある意味盆踊り感覚でもあるかなと思っています(笑)。
──2014年には本家チック・コリアさんとの共演もありましたし、毎年やっているからこそ、毎年違うバージョンが生まれていますよね。
平原:そう、ベースの岡田治郎さんと2人のデュオというのもありましたし。それこそ全部の年の「アランフェス協奏曲〜Spain」をリリースしたいくらい、全部違うんですよ。今年のツアーも、全く違うものになりますよ。これまでずっと聴いている人は特に、音の粒に心地よく振り回されるような感覚になると思うので楽しみにしていてください。
▲平原綾香 |
平原:実はこれ、2018年のツアーの1曲目なんです。SEの後に、一度シーンとなってからアカペラで始まるっていう流れだったんですが、この曲を1曲目にやることなんてないから、ある意味特別な「JOYFUL, JOYFUL」なんですよね。
──平原さんのデビューのきっかけにもなった曲ですが、これもライブで成長してきた1曲ですね。
平原:もともと学生の時に歌っていたんですけど、あの時はみんなで歌っていたので、何十人とかで歌い分けていたんですね。だから最初に1人で歌った時は息切れしていたのが懐かしい思い出です(笑)。しかも、“ラップもやるの!? えー…”って思っていたくらいだったのに(笑)。
──今や客席を巻き込む勢いですからね。
平原:人って、たくましくなるんですね(笑)。
──平原さんのデビュー当時の話題になるといつも思い出すんですが、“プロフィール用の写真として、白塗り舞妓姿のご自身の写真を事務所に送った”というエピソードがあるくらいですから、ある意味、たくましさは昔から備わっていると思っています(笑)。
平原:私、なんで舞妓さん姿の写真を送ったんだろう(笑)? でもその当時は、“ちゃんといいカメラで撮ってもらった写真だから”ってそれくらいにしか思ってなかったんですよね。びっくりするくらい白いんですけど(笑)。ローリン・ヒルが演じていたリタ役だったから(平原は高校の文化祭でミュージカル『天使にラブ・ソングを2』のリタ役を演じ 、「Joyful, Joyful」を歌ったビデオテープがドリーミュージックの手にわたり、歌手としてデビュー)、そういうメイクじゃなくて普通の感じを見たいってことだったのに、なぜか舞妓姿の写真を送ったっていう(笑)。
▲平原綾香 |
平原:はい。“みんな現場に集まれないかも”っていう状況の中、この曲が主題歌となる朝ドラ(『おひさま』)のためにも収録しなきゃいけなかったので、急遽レコーディングスタジオに行ったんです。そうしたらみんな、誰1人欠けることなく集まっていて。その時、感謝しながら歌った曲なので、感激もひとしおでした。本当に宝物のような曲だと思っています。
──コンサート会場で、生で聴く温度感はここにしかないものだと痛感する1曲でもあると思いますが、まさにその感覚が蘇りました。
平原:嬉しいです。ほとんどの曲がそうなのかもしれないけど、この曲は特に、年を重ねれば重ねるほど歌える曲のような気もするんですよね。年を重ねた自分の歌も愛せる、そういう曲をたくさん歌えているのは、幸せなことだなと思います。
──「Love Never Dies 〜愛は死なず(Live Tour 2014 Ver.)」も、年を重ねれば重ねるほど歌える曲であり、逆に、歌っても歌っても完成形に辿りつかないほど深い曲なのかなとも思います。
平原:この年に初めて『ラブ・ネバー・ダイ』というミュージカルに出演して、クリスティーヌを演じました。お稽古で、ずっとオペラっぽい歌唱をしていたので、今までの歌唱に戻れなくなってすごく不安だったことを覚えています。その後、すぐに自分のコンサートでこの曲を歌うとなった時はプレッシャーでしたね。さっきまではポップスの歌い方をしていたのに、この曲はオペラっぽく変えなきゃいけない。そしてまた次はポップスに戻るっていう、あれは本当に過酷でした。でも、慣れてくるものなんですね。今はスッと役になれるというか、これもまた、たくましくなったんだなあと思います(笑)。
──そのオペラ調の歌い方は、YouTubeを見ながら独学で勉強されたんですよね。その話を聞いた時は本当に驚きました。
平原:偉大な先生ですよ、YouTubeは(笑)。だって、あのマリア・カラスが先生だったりしますからね。でも、すごく悔しい思いもしました。いわゆる世間のみなさんは、私が声楽出身だと思っている方が多いんですね。「やっぱりそうなんだ」って声もあったし、逆に「声楽専攻なのに、声楽家っぽくない」って言われたこともあって、すごく悔しかった。“自分の頑張り、届いてないんだな”って世間の声で知りました。最近は、どう思われてもいいんだって思ってますけど。
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