【インタビュー】Atomic Skipper、逞しく突き進む“幸運”ライヴバンドのメンタリティ
■わざわざ言葉にしなくても同じことを思ってた
──中野さんはフロントマンとしてバンドを引っ張っていくパワーを持ちつつ、歌詞に描かれている世界や感情を歌で表現することに注力しているとも思うのですが、楽器隊の作るサウンドは歌にどのような影響を与えますか?
中野:昔は“音はでかければでかいほどいい!”と思ってたんです(笑)。だから怒鳴るように歌ったりもしていて……そしたら喉を潰しちゃったんですよね。そこから歌に対する見方が変わってきて、ライヴでも自分のやりたい表現ができるようになってきたんです。そしたら楽器隊3人も “中野ってもっとこういうふうに歌いたいんだな”と変化を敏感に察知してくれて、ステージでも中音を研究してくれるようになったんです。声を潰したことで、メンバーが寄り添ってくれるようになったし、わたしも楽器隊の音に寄り添いたいなと思ったんです。それが今のAtomic Skipperにつながってる気がしてますね。
──このインタビュー中、みなさんご自分のこととほかのメンバーさんやバンドのことを同列に話してくださるんですよね。本当に信頼し合っているんだなと。
久米:ほかのバンドからもよく“メンバー同士でよく話すバンドだね”と言われますね(笑)。思い返してみると、くだらない話をしているなかでも気付くことや、ライヴに生かせたこともいろいろあったんじゃないかなあって。あと、よく話しているとメンバー間のメンタリティの共有ができるので、それがバンドのグルーヴにもつながってるのかな。
中野:うんうん。ちょっとの感情の動きとか、その時その時のメンタルとかは共有してますね。自分がちょっと悩んでいることとか、思っていることをアウトプットするとすっきりするし、それを聞いて“そっか、あいつこんなこと思ってるんだ”というのがわかると、より同じ方向を向けるし、プラスのことが多いんです。それがバンドを作っている気がしてますね。
松本:メンバー全員がこれからもずっとこの4人でバンドをやっていきたいと思っているんです。だからみんながみんなを思いやって活動できてますね。
──お話を聞けば聞くほど、そんな仲間と出会えたことが羨ましくなっちゃいます。
中野:(笑)。本当にうちら、運がいいんですよ。たまたま同い年で同じ高校の同じ部活に入って、たまたまライヴハウスで和希と知り合って、こんなにいいメンバーに巡り合えるなんて。4人が出会えたことが、これ以上にない幸運だと思ってますね。
──だから向上心を持ってバンド活動をなさっているのだろうなと。タイトル曲である「人間讃歌」は、これまでのAtomic Skipperにはない要素も盛り込まれていると同時に、地に足のついた印象があったので、バンドの根幹が表れた曲なのではないかと感じました。ほかの曲は“僕ら”や“君”が出てくるんですけど、この曲だけ“僕”以外の人間が出てこないところも印象的で。
▲『人間讃歌』
中野:この曲は神門が神門自身と見つめ合ったうえで生まれてきた曲なんだろうなと思っていて。神門はこのアルバムを制作しているなかで“誰かのために音楽をやっているわけではなくて、自分のために音楽をやっている”ということに気付けたらしいんです。それがいちばん体現されているのが「人間讃歌」だと思ってます。
──神門さんも音楽中心の、なかでも制作に集中する環境になったからこそ、自分のやりたいことが素直に出せて、いい意味でエゴを通す覚悟ができたのかもしれない。
中野:うんうん。そうだと思います。そういう彼自身の話が全面に出ている曲を、わたしが歌うことで化学反応が起きてくれればいいなって。
──『人間讃歌』の楽曲たちを実際にライヴで演奏してみて、いかがでしょうか?
中野:ツアーを回っていくなかで、どんどん育っていってる感覚があります。やっぱり、人の前で演奏をすると、曲の鳴り方が全然違うんですよね。聴いてくれる人の反応が加わることで、どんどん曲が育っているので、すごく面白いんです。
久米:ライヴでようやく楽曲が本来の姿になれた感覚がありましたね。「人間讃歌」もメンバーに相談せず勝手にアレンジしたフレーズを入れてみたら、それがばっちりハマったりもして、そういうのはライヴでしか味わえない感覚で。
松本:ライヴごとに物理的にもメンタル的にも違いが生じるので、まったく違う演奏になるんですよね。そうやって曲の姿が変わっていくのは面白いし、お客さんもそれを楽しんでくれているなと感じます。ステージごとに楽曲の姿が変わって、同じ空間にいる僕らとお客さんもそれぞれ受け取り方が違って──そういうのがすごく楽しいんですよね。だからすごくいいモードでツアーも回れてますね。
中野:特に自分たちが主催するツアーは、その土地その土地で自分たちのやりたいことを詰め込んだものなんだけど、それでも予想外なことばかり起こるんです。だからすごく面白いし、毎日新鮮にライヴと向き合えてますね。
──東京公演と大阪公演が緊急事態宣言の影響で延期になりましたが、その結果、地元静岡でのライヴがツアー初日になるというのも、なんだか運命的ですね。
松本:そうですね。地元からツアーを始める、意味のあることだったのかもしれないと思ってます。
中野:中止になってしまったライヴも何本かあるし、コロナ禍でライヴハウスを営業していくのは大変だと思うんですけど、それでも“来てくれるなら全然やるよ”と受け入れてくれるライヴハウスが全国にあることが本当にありがたくて。本当に1本1本、ありがたいと噛みしめながらツアーを回ってます。
──結成からの7年間、着実に積み重ねてきたことが身になって、それが楽曲になっていることを実感するお話でした。それをツアーで演奏していくことで、またバンドもメンバー一人ひとりも成長して、それがまた楽曲になっていくのでしょうね。
中野:わたしとしても、このツアーを通して成長していきたくて。ヴォーカリストとしてもっと自由に、面白いことをやっていけたらと思ってますね。楽曲がわたしたちを突き動かしてくれる気がしてるんです。
久米:機材車で話した他愛のない話がそのまま歌詞になっていることがよくあって。そういう移動の時間、一緒にスタジオに入る時間……みたいな今生きている時間がAtomic Skipperのライヴや音楽につながっていってるんだなと感じてます。だからもっとメンバーのことを知りたいし、一緒にいる時間を大切にしたい。なんかめっちゃメンバー愛語ってて恥ずいんですけど(笑)。
──何をおっしゃる、とても素敵な話ですし、中野さんと松本さんも頷きながら聞いてらっしゃって、胸いっぱいです。
久米:あははは。ありがとうございます。
松本:僕もふたりとまったく同じことを考えてて。わざわざ言葉にしなくても同じことを思ってた。それがAtomic Skipperのすべてを物語ってる気がして……すごく感動しました(笑)。今回のツアーでは、これまでにないくらい成長できそうな気がしてますね。
取材・文◎沖さやこ
◆ ◆ ◆
■神門弘也 (Atomic Skipper)コメント
「人間讃歌」は、
僕が僕でいるための全てを詰め込みました。
仕事を辞めた次の日の朝。
ステイホームという、新しい概念を植え付けられた僕らの新しい生活。
あれだけ帰りたかった僕の家には、
さながら宇宙船の中のような、経験したことのない浮遊感が漂っていた。
誰にも会わなくていいし、
誰にも会えない生活は、
ゆっくりと自分を見つめ直す時間に必然的になってしまった。
僕は音楽がしたかった。
誰かのためや、守りたいもののため、という大義名分は、もう要らなくなってしまった。
正確には、それが僕のため、ということに気づいてしまったからだった。
それから、どんどん人間讃歌の曲達が出来た。
どの曲も、初めてメンバーに聴かせた時の事を
鮮明に覚えている。
僕はこんな人間だから、
いつだって分かって欲しい、と理解されてたまるか、の狭間で彷徨い続けているけれど、
メンバーの曲への配慮や、音楽への姿勢、
それぞれに向ける無償の愛には、推し量れないものがあった。
僕には到底敵わない、強さと美しさがあった。
僕が僕を肯定するために作ったアルバムは、
重ねれば重ねて行くほど
僕らが僕らを、に変わっていったし、
私が貴方を、貴方が私を、になっていった。
それが祈りにも似た、僕らの新しい生活だった。
人間讃歌が、決して孤独では無く、
貴方も僕も、お互いにこの時代を生きた証で、
力強く脈打つ、心のアンセムソングになることを、祈っています。
◆ ◆ ◆
2nd mini Album『人間讃歌』
BURC-017 ¥1,760(税込)
1. シグネイチャー
2. コアビリーフ
3. ミッドナイトダイバー
4. ノンフィクション
5. スーパーノヴァ
6. カロン
7. 動物的生活
8. 人間讃歌
シングル「天変地異が起ころうとも」
BURC-018 ¥550(税込)
※1000枚限定
1. 希望的観測
2. 宇宙船に乗って
ツアー情報
<2nd mini album「人間讃歌」ReleaseTour 初日シリーズ“僕らのビックバンツアー”>2021年
6月22日(火)渋谷O-Crest(振替公演)
8月15日(日)心斎橋HOKAGE(振替公演)
<2nd Mini Album「人間讃歌」 Release Tour “超新星爆発ツアー”>
2021年
6月3日(木)新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE
6月11日(金)金沢vanvan V4
6月13日(日)松本ALECX
6月11日(金)金沢vanvan V4
6月23日(水)栄F.A.D
7月9日(金)柳ケ瀬ants
7月10日(土)鈴鹿ANSWER
7月11日(日)岡山CRAZY MAMA 2nd Room
7月16日(金)横浜F.A.D
7月17日(土)千葉LOOK
7月28日(水)神戸太陽と虎
7月29日(木)京都MUSE
7月30日(金)大阪福島 2nd LINE
8月7日(土)高松DIME
8月8日(日)高知X-Pt.
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