【インタビュー】Kazuya Miwa、ソロデビューで新たに見せた”優しいポップス”の顔

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■書いた詞を自分で読んだ時に丸裸感はとてもあります

──5曲を通して聴くと、曲順に流れがある気がするんですよ。1曲目の、相手にもっと近づきたいというところから、2曲目で朝を迎えて、3曲目が夜で、4曲目で永遠の愛を誓い、5曲目で別れと再会を誓う…というような。起承転結のイメージを感じます。

Kazuya Miwa:ありがとうございます。うまく言っていただいてうれしいです。起承転結というのはたぶん自然にできるものだと思っていて、1曲ずつ作っている時はストーリーの流れを考えていたわけではないんですけど、5曲できて並べる時に、自然と流れができるものだなと思いました。1曲ずつ聴くのとは全然違って聴こえますね。

──1曲目「舌打ち」は、アダルトな歌謡R&Bという感じで、官能的な匂いが強い。どんなイメージで作った曲ですか。

Kazuya Miwa:「舌打ち」はこの中で最初に作った曲なんですけど、「自分らしいラブソングを書こう」と思った時に「舌打ち」というイメージが浮かんだんですね。キスをする時の「チュッ」という音が、舌打ちの「チッ」と似てるなと思って、僕の今までの恋愛の中でも「キスにまぎれた舌打ちがあっただろうな」と思ったところから歌詞を書きました。僕はけっこうロクでもない奴だったので、「キスをもらいながら同時に舌打ちももらっていただろうな」という(笑)。「舌打ち」はそういうテーマで書いた曲です。


──「舌打ち混じりのキス」というのはパンチラインだと思う。こういう表現、今までにした人はあんまりいないんじゃないかな。

Kazuya Miwa:僕も見たことないです。誰しもが、恋人に対してイライラさせられることはあるだろうし、でも恋愛関係にある時にはそれを怒るでもなく、許してくれたりするじゃないですか。相手の悪い部分を。それをこっちも気づいてるし、向こうも気づいてる。そういうものを「舌打ち混じりのキス」という表現で、キスの中にはそういう意味も隠れているよなということです。

──めちゃくちゃリアルで肉感的。対照的に4曲目「2月のバラッド」は、「手を繋ぐ」という行為にすごく意味を込めている、とてもピュアでプラトニックな歌。

Kazuya Miwa:「舌打ち」とは打って変わって(笑)。「2月のバラッド」は、2月はまだ寒くて、春はまだ遠くて、あったかい気持ちになれる曲を作りたいと思った曲です。この曲も自分の体験で、僕は体温が高いので、冬に人の手に触れると冷たく感じるんですよ。僕は冬でも着こまない人なのでで、人の手に触れた時に「ああ、冬は寒いんだ」と思ったことがあるので、その感覚を歌詞にしました。

──表現は違うけど、リアルな体験というところは同じ。

Kazuya Miwa:そうです。

──映画のワンシーンのように、シーンが浮かぶ曲ばかりだと思います。ちょっと気になったのは、2曲目「mi darling」は、なんでMyじゃなくてmiなんだろう。

Kazuya Miwa:正しくは「my」なんですけど、「mi」のほうが見た目が可愛いから(笑)。この曲はサビの“オーマイダーリン”というメロディと言葉だけがあって、派生させて作っていった曲なので。“マイダーリン”と歌ってるから、どう表記してもいいと思ったので、「mi darling」にしました。


──同じように、3曲目の「ちょっとYABAI」はなぜ半分ローマ字表記?

Kazuya Miwa:その曲は、歌詞の中にいっぱい鳴ル銅鑼の歌詞や曲名を隠してあるんですよ。“YABAI”という言葉を歌詞で使ったことがあって、それに合わせたかったのと、“ASOBI”という言葉も出てくるんですけど、それも鳴ル銅鑼の曲名にあるので。

──ああそうか、「イケスカナイ」とかも。

Kazuya Miwa:そうです。「ちょっとYABAI」は言葉遊びを大事にした曲なので、鳴ル銅鑼の曲名を入れて個人的に遊んでみたということです。


──「ちょっとYABAI」は、女性の声が入ってるでしょう。「ヤバイ、ヤバイ」って。

Kazuya Miwa:あれはナベさんのアイディアで、その場にいるスタッフを呼んで、一個のマイクを囲んで「ヤバイ、ヤバイ」と言ってって(笑)。「こんなのどう?」「面白いですね」という感じでした。今回のレコーディングはずっとそんな感じで、「こんな音入れてみようか」とか、「もっとこういうふうに歌ってみようか」とか、けっこう軽い感じでやってたんですよ。

──風通しの良さを感じます。そして5曲目「サヨナラ」は、これだけEPの中でちょっとカラーが違う気がしますね。ポップスというか、フォークソングという感じ。


Kazuya Miwa:確かに「サヨナラ」は、初めからちょっと違うテイストの曲にしようと思ってました。ナベさんから、「懐かしい感じの曲にしよう。ヒップホップ・フォークみたいなのはどう?」と言われて、「やりましょう」ということになって書いた曲です。歌詞はまさに僕に近い曲で、もろにバンドの今の話です。さよならという言葉は「左様なら」という語源があって、「あなたがそうするならば、私はこうしよう」ということで、それは徹くんだけではなくて、すべての別れというものにおいて…人と人が離れたとしても、生きていればまた巡り会うことはあると思っていて、それをそのまま歌にしました。

──《君と見た未来を僕は諦めない》、《詰め込んだ荷物も下ろさない》。鳴ル銅鑼の歌詞なら、ここまでストレートには書かなかったと思います。

Kazuya Miwa:絶対書かないです。

──書きながら、照れみたいなものはなかったのかな。いい意味で。

Kazuya Miwa:めちゃくちゃありましたよ。でもソロのほうは、音のハマリよりもメッセージのほうを大事にしているから、書いた詞を自分で読んだ時に丸裸感はとてもあります。あと「俺ってダメな奴だな」みたいな、自分にがっかりもします。「2月のバラッド」の《タバコ、アルコールはまだしばらく好きだろうけど/少しだけ 減らしてみるよ》とか、“少しだけかよ”と思ったり(笑)。

──あはは。やめるとは言えない。

Kazuya Miwa:言えないところが自分らしい(笑)。情けないけど、素の自分が出ている歌詞だと思いますね。でも、やってみると面白いんですよ。自分が今まで見てこなかった自分の一面を見られた気がします。


──最初に、ソロプロジェクトを始める前には落ち込んでいた時期もあったと言ってたけれど。このEPを作り終えることで、メンタル的には上昇したと思っていいですか。

Kazuya Miwa:もちろん、そうです。僕にとって音楽を作るのはとても自然な行為で、何か刺激を受けると何か作りたくなるという、それがアーティストだと思うんですけど、それができていることはとても健全なことだと思います。体の中に音楽が流れている人が、それを外に出さないと溜まってしまって毒になってしまうから、それをきれいな形で出させてもらうのは本当にありがたい話ですし、コロナになって僕もちゃんと落ち込んでいるというか、みんなそうだと思うんですけど、その中で忙しくさせてもらっているのはとても幸せなことだなと思います。先のことを考え出すと無限に不安だし、正直言って「大丈夫かな」というものはあるけど、音楽を作ることで自分にとっての薬にもなっていることを感じますね。バンドもソロも、やれることがあるのはとても幸せだから、今はやれることをすべて全力でやってみようという感じです。

取材・文◎宮本英夫

▲「Champon」

1st EP「Champon」

2021年6月2日(水)発売
収録曲:
1.舌打ち
2.mi darling
3.2月のバラッド
4.ちょっとYABAI
5.サヨナラ

<Kazuya Miwa 1st Tour “Champon”>

2021年
6月12日(土) 東京 WALL & WALL
7月10日(土) 名古屋 ell.SIZE
7月22日(木・祝) 大阪 Live House Pangea
e+にてチケット発売中
受付URL: https://eplus.jp/sf/word/0000107611
チケット代:¥3,300(税込)/入場時ドリンク代別途必要

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