【インタビュー】Kazuya Miwa、ソロデビューで新たに見せた”優しいポップス”の顔

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唯一無二のハードコア/歌謡ロックバンドとして、インディーズながら熱烈な支持を集める「鳴ル銅鑼」のソングライター三輪和也が、「Kazuya Miwa」として新たにソロプロジェクトをスタートさせた。ひたすら妖しく激しく美しく、ロックバンドの美学に徹した鳴ル銅鑼の世界観とは対照的に、ソロのKazuya Miwaはどこまでも軽やかで自由で多彩。プロデューサーに「nabeLTD」(平井大のアレンジャーなど)を迎えたサウンドはエレクトロニカ、R&B、ダンスミュージック、フォークソングなど多岐にわたり、ラブソングが主体のメロディアスな楽曲も、ひょっとして鳴ル銅鑼以上に多くのリスナーを獲得するかもしれない魅力と可能性に溢れている。

ソロデビューEP『Champon』に込めたすべての思いを吐き出す、Kazuya Miwaの裸の言葉に耳を傾けよう。

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■バンドとは一番反対側にあるものを

──ソロデビューEP『Champon』を聴いて、すごく良かったのと同時に鳴ル銅鑼の音とはまったく違っていて驚かされたんですけど。そもそもソロ活動を始めるにあたってどんなきっかけがあったんですか。

Kazuya Miwa:鳴ル銅鑼の前作『和モノ』(2019年)を作ったあと、「さあ次はどうしよう?」というタイミングでコロナになって、半年ぶんぐらいライブが中止や延期になったんですね。どのバンドも、特に僕らみたいなインディーズバンドは悩んだと思うんですけど、ライブをやってもやらなくてもどっちも辛いという日々が続いて、最初は「コロナになってもへっちゃらさ」とか思ってたんですけど、これだけ長く続くとそんな僕でも気持ちが落ち込んで、いろいろ考えなきゃいけないなということになった。そこで、バンドはこれからもやっていくけど、家でもできる音楽を、みんなが集まらなくてもやれる音楽があってもいいのかな?と思ったのが、ソロに繋がったきっかけの一つです。

──はい。なるほど。

Kazuya Miwa:それと、「ベーシストが休養します」と発表したのは今年の4月ですけど(※4月15日に鳴ル銅鑼のベーシスト・グローバル徹の無期限休養を発表)、バンド内ではそれ以前から話し合っていて。ロックバンドというものは、人生のすべてを捧げて苦しみながらやっていくというよりは、「まずは音楽を楽しもうぜ」というものだと思うので、メンバーのメンタルがやられている時に、無理に続けて壊してしまうよりは、まずは自分の体と心を大事にして、その上でバンドをやろうという話になったので。そこで僕は、ソロというものは音楽をやる上ですごく大事なものだと思ったし、今後バンドをやっていくにあたってもとてもいいことだなと思って、いろんなタイミングが重なって、ソロをやる理由がどんどん増えてきた感じがありますね。

──よくあるような、バンドが活休だからソロに、ということではなく。

Kazuya Miwa:そうです。バンドを止めるつもりはまったくなくて、もともと一人で弾き語りでもやっていたので、それをブラッシュアップしたものというイメージです。このまま3人になっても、4人に戻っても、鳴ル銅鑼というバンドはずっとやっていきたいと思ってます。僕の人生なので。

──それを最初に聞いて安心しました。そして『Champon』、めちゃめちゃ気持ちいい音が鳴ってます。

▲「Champon」

Kazuya Miwa:最初に「ポップスをやる」ということになった時に不安はいっぱいあったんですけど、作ってみたらそれが何であってもかっこいいなと思ったし、音が気持ちいいですよね。ずっと聴いていられるライトな感じで、そこは鳴ル銅鑼とは違う面白いところだと思っていて、鳴ル銅鑼は曲によっては重々しく聴く音楽だという気もするんですけど、ソロのほうは「ながら聴き」してもらっても構わないくらい聴きやすい音になってるかなと思います。

──今「ポップス」というワードが出たけれど、「ポップスをやろう」というのは最初からテーマだった?

Kazuya Miwa:そうですね。Kazuya Miwaとしてソロプロジェクトを始めようかという時に、僕が考えていたのは、鳴ル銅鑼でやれることをやっても意味はないなということで、できるならばバンドとは一番反対側にあるものをやりたかったんです。僕にはロックな面もポップな面もどっちもあるから、僕の一番激しいロックな部分は鳴ル銅鑼で、優しいポップスの部分をソロで、分けてやろうと思いました。

──そこで重要人物として、nabeLTDという人が登場してきます。彼との付き合いは?

Kazuya Miwa:マネージャーの紹介なんですけど、まず僕の弾き語りを見てもらって、そこでお会いしたのが初めてです。「どう思いますか?」という話し合いから入って、一緒にやってみたら面白いかな?と思いましたね。

──彼はバークリー音楽大学でジャズを勉強していたという、アカデミックな経歴の持ち主ですよね。

Kazuya Miwa:そうですね、僕とは全然違って(笑)。僕が作った曲にナベさんがピアノでコードをつけてくれる時に、コードネームを言ってくれるんですけど、なんとかセブンスとかなんとかアドナインスとか言われたら、「指で見せてください」と言って音を探っていくしかない(笑)。

──先生と生徒じゃないですか(笑)。

Kazuya Miwa:まさにそんな感じで、ナベさんがコードを変えて、「ちょっと歌ってみて」「はい」っていう感じで、面白かったですよ。僕が弾き語りのデモを送って、ナベさんがビートをつけて返してくれて、「コードはこうしようか」と話し合って、できたものを聴いて、すごいなと思いました。アレンジというものがしっかり入ることが今までなかったので、面白いと思ったし、バンドではできないことだし、とても面白い音楽のあり方だと思います。

──エレクトロニカ、ダンスミュージック、R&Bとか、こういう感じの音像は最初から想像していた?

Kazuya Miwa:いや、最初は「どんな感じになるかわからないけどやってみよう」という感じだったので、その姿勢が『Champon』というタイトルにもそのまま入っています。ちゃんぽんみたいに具沢山で、お酒を飲む時にも「ちゃんぽん」って言うし、いろんな種類のものが入ったから『Champon』になったんですけど、ソロのスタンス的にも「まず自分に何が合うか? どういう音楽が可能性があるか?」というものを探すところから始めて、いろんなテイストの曲をやろうということで、僕も思っていないような曲になったものもいっぱいありました。鳴ル銅鑼には明確にやりたいことがあるんですけど、ソロのほうは逆に「やってないことをやってみよう」というビジョンがありましたね。音というよりは、チャレンジする姿勢という感じです。

──それはメロディや歌詞からはっきり感じ取れます。特に歌詞は、男女の恋愛にフォーカスしたものが多くて、バンドとは違う世界観を見せている。

Kazuya Miwa:「ラブソングをいっぱいやっていこう」というわけでもないんですよ。「今までやってきてない曲って何だろう?」と思った時に、ラブソングをあまり書いてこなかったなということと、鳴ル銅鑼というバンドは思想を表現してきたけど、Kazuya Miwaは自分の今までの経験や日常の中にあることを歌おうかと思って、そうなってくると恋愛は歌にしやすいし、自分らしさが出るし、やってみようという感じでしたね。ラブソングも、別に書きたくなかったわけではないけどなんとなく避けてきたというか、自分の思うロックとは離れたものだったから、鳴ル銅鑼ではラブと言ってももっと違う愛の形を書いていたんですけど。

──哲学の一種としての「エロース」という言い方をしてましたね。以前のインタビューの中では。

Kazuya Miwa:そうです。それをもっと近い話として、ラブソングというストレートな形で書けたのは、自分が年を取ったからでもあるし、恥ずかしいとも思わなくなって、それがピュアな人間の感情だし、これを機に今までやらなかったことを全部やってみようということですね。

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