【インタビュー】ねっちぼっち、初CDで長年の思いを叶えた2人の“あらすじ”
■「終わらせへんほうに持って行こう」
──ついに長年の夢がかなった初CD『Synopsis』は6曲入り。どんな作品ですか。
大根:これは、現状のベスト盤です。今ある曲の中からベストの曲を、出し惜しみなく入れました。
コボリ:間違いないです。でも僕は新しい曲も入れたかったので、最後の1曲「メイキング」は書き下ろしました。
大根:これはチャレンジしましたね。僕は「メイキング」の代わりに、前からある曲を入れて出そうと思っていたんですけど、コボリが「せっかく周りの人にここまでしてもらったんだから、俺らもやることやらなアカンのちゃうか?」と。「絶対新曲書いたほうがいい」「でも、レコーディングまで1週間もないで」って、そこからすごい集中しましたね。その1週間は、新曲を生み出すことにすべての力を使いました。でもやって良かったです。僕的にはいい経験をさせてもらいましたし、出し切りました。
──コボリさん。どうしても新曲を入れたかった理由は?
コボリ:レコーディングが始まって、アレンジが上がってくる中で、「ふたりくらし」とか「repaint」とか、普段アコースティックでやっているものとはガラッとアレンジを変えたんですね。それは自分たちの意思なんですけど、「豪華になっちゃったな」という感じもあって、最後はアコースティックギター1本で歌えるような曲で締めたいという気持ちがこみ上げてきて、「新曲を作りたい」と言いました。
大根:…って、けっこう難しいことを言うてますけど、おそらく僕よりファン思いやったと思います。ファンのみなさんが知ってる曲ばかりのアルバムよりも、1曲新しい曲があるほうが、ねっちぼっちを知っているファンの方にも楽しみな1枚になるんじゃないか?という思いも、コボリ的には入ってると思うので。僕は、これからの人に向けてのアルバムだと思って制作していたので、今ある曲のベスト盤を作ろうと思ったんですけど、コボリはファンの方にも目を向けて作っていたと思うので、それが最終的にはねっちぼっちらしいアルバムになったんじゃないかな?と思いますね。
──「メイキング」のサビの、《この作りかけの歌や/撮りかけのロードムービーも/エンディングは空白のまま》。深い余韻の残る、すごくいい曲だと思います。
大根:そこ、僕は終わらせにかかってたんですけど、コボリが終わらせへんかった(笑)。もともと僕は「ロードムービー」というタイトルの、一個のストーリーが終わるイメージで「こんな感じの曲が書きたい」と言ったんです。そしたらコボリが「いや、アルバムタイトルが『Synopsis』(あらすじ)やし、終わらせへんほうに持って行こう」というので、二人の考えをマッチさせて「メイキング」というタイトルになりました。
コボリ:初めて、詞先行だったんですよ。最初に大まかに作ってきてくれたものから、Aメロはそのまま残して、Bメロとサビを変えて。
大根:基本、メロディはコボリ主導なんですよ。なので、僕が仮の歌詞を一旦作って、コボリに渡して、曲をつけながら二人で話し合って変えていくという、初めての手法を取ったんですよ。結果的に僕が残してほしい言葉は残ったし、とりあえずで書いた部分は変えられたので、「やっぱりわかるんやな」と思いました。「さすがやな」と。
──歌詞をどういうふうに書いていくのかは、気になるところですね。たとえば「repaint」のような、せつない別れのあとの生々しい心情を描いた歌詞とか、二人でストーリーを考えながら作っていくんですか。
コボリ:そこまで細かい設定を話し合うことはないんですけど、「どういう曲を作る」というものを最初に決めて、どんどんワードを出していくんですね。
大根:僕は歌詞をストレートに書いてきたタイプなんですけど、コボリはオシャレに書いてきたタイプなんですよ。たとえば「好き」ということを伝える時に、僕は「好き」と書いちゃうんですけど、コボリは「一緒にいて楽しい」とか、ちょっと遠回しな言い方をする。そんな感じの恋愛観が「repaint」には詰まってると思います。たとえば、今まで一緒に使ってきた思い出の“二人掛けのソファー”のくだりはコボリが書いていて、“さよならの書置きと合鍵”のところとか、“きっと誰より君を想ってるけど”とか、直接的なところは僕が書いてます。“飲みかけのミルクティー”はコボリで、僕は“彼女は出て行った”と書きたいんですけど、コボリは“薄暗い部屋に/飲みかけのミルクティー”と書きたいんです。それがすごくオシャレで、僕にはない感覚なので。
コボリ:それはちょっと、実体験でもあったりして(笑)。
大根:そういうところがすごいんですよ。でもそればかりだと、どういう曲かわからなくなる時もあると思うので、直接的な表現は僕が担当する。そういう分け方です。
コボリ:確かに、そういう感じかも。
──いいバランスですね。主旋律のメロディをどっちが歌うかも、曲によって変わっていくし。
大根:そこは遠慮なく譲る、という感じです。「ここは絶対コボリのほうがいい」と思うところは、その1曲の中でコボリの歌うパートが8割になったとしてもコボリに歌ってもらうし、僕が歌いたいなと思う部分は僕が歌います。
コボリ:そこはお互い、“あうん”でわかるんですよ。曲を作った時点で。
──音楽はもちろん、元々の性格や、人間性に共通点があるんですかね。
コボリ:根本的なところは似てると思います。だからこそ一緒にいやすいというか。
大根:仕事仲間以前に、普通にプライベートで遊びに行く友達なので。どっちもなんでもやりたがりで、僕がゴルフを始めるとコボリも「やってみたい」と言うし、ダーツを始めた時もそうだったし、コボリがフットサルを始める時には僕もやりましたし、僕が野球に誘えば来てくれる。ハナから「やめとくわ」というのがないので、誘いやすいんですよ。
コボリ:新しいことをみつけて「誰誘おうかな?」と思った時、まず上がってくるのがねっちなんです。
大根:最近コボリはバイクにハマってるんですけど、僕も昔から乗っていたので、コロナが落ち着いたらツーリング行こかって言ってます。
──なるほど。ねっちぼっちの成り立ちがだんだんわかってきました。
大根:基本的には仲いい友達スタートです。
──あらためて、アルバムタイトル『Synopsis』(あらすじ)にこめた意味は?
大根:ねっちぼっちの名刺代わりの1枚というものがコンセプトで、『Standard』がいいんじゃないか?とか、ねっちぼっちのNとBを取って『Natural&Basic』という案もあったんですけど、最終的には、本に例えれば1枚目は「あらすじ」で、『Synopsis』という響きがオシャレやなということで決めました。
コボリ:初めてのアルバムということで、今まであった企画物感を排除したかったのと、ただ単にこれまでをまとめたものではなくて、この先も続いていくニュアンスを与えられるタイトルにしたいという気持ちがあったと思います。
大根:なので、最後は「メイキング」で締めたかったということですね。
──世代問わず、男女問わず。スタンダード感のある音楽だと思います。
大根:そこはこだわりました。長年音楽をやっていると、新しいものを取り入れようと思って、流行ってる音楽を追いかける時期もあったんですけど、一周回って二人とも30代後半になって、自分たちが本当にやりたい音楽を追求する年齢に来たということもありますし。一番やりたかったのは僕もコボリも、フォークソング、アコースティック、弾き語り、歌ものということだったし、それにこだわってこれからもやっていきたいなと思います。
──今は、SNSで派手な仕掛けをしたりとか、そういうやり方もありますが。ねっちぼっちの歌は、どんな広まり方がいいですか。
コボリ:曲を聴いて、曲の良さに気づいてくれて、聴いてくれる人がちょっとずつ増えて行くのが理想ではありますね。
大根:僕らの曲に、めちゃくちゃきらびやかな曲はないので。ずーっと流れてて、「どこかで聴いたことある」と思って調べたらねっちぼっちだったみたいな。そういう広まり方が自分たちにも合ってるんじゃないかな?と思います。
取材・文◎宮本英夫
ニューミニアルバム『Synopsis』
RSMS-101 定価 ¥2,200
収録曲:
1.ふたりくらし
2.repaint
3.かけがえのないもの
4.君を照らす光
5.明日になれば
6.メイキング
▲『Synopsis』
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