【インタビュー】ねっちぼっち、初CDで長年の思いを叶えた2人の“あらすじ”
出会いから十数年の時を経て完成した、これは一つの物語のあらすじであり、ここから始まる夢の序章でもある──。
関西を拠点とするアコースティックユニット「そよかぜ」ボーカルの大根雄馬と、東海地方を中心に活動するフォークデュオ「うたまろ」のボーカル・コボリツトムが組んだユニット「ねっちぼっち」。ライブを中心に熱心なファンを持つ彼らが、長年の夢を叶えてついに完成させた1stアルバム、その名は『Synopsis(スィノプシス)』。情熱的でパワフルでストレート、そしてしゃべり上手の大根と、繊細でジェントルかつオシャレ、抜群の歌唱スキルを持つコボリが作り上げる、優しさ溢れる歌の世界。ここから始まる物語の1ページを、その目と耳と心でゆっくりとめくってみてほしい。
◆ ◆ ◆
■ボーカル同士のユニットが本気になった瞬間
──二人の出会いからさかのぼると長いドラマがありそうですけど、それを5分でまとめたいんですが(笑)。
大根雄馬:わかりました(笑)。まとめるの、得意なんで。
──最初の出会いのきっかけは?
大根:対バンです。神戸チキンジョージというライブハウスで、コボリが所属している「うたまろ」というユニットが、スリーマンで全国を回っている時の関西ご当地ゲスト枠で、僕の所属する「そよかぜ」がオープニングアクトの話をいただいて、「ぜひお願いします」というところから始まってます。僕らにとっては、憧れのアーティストだったんですよ。
コボリツトム:僕らが2006年にデビューしているので、たぶん2007年、2008年とかですね。でもその前に、僕たちがストリートライブ中心に活動していた頃に、そよかぜと共通のお客さんがいて、「大阪にいいアーティストがいる」ということで、CDをもらっていたんです。
大根:僕もそうです。「うたまろ、いいから聴いてみて」って、何やったら「カバーしてくれ」みたいな。「なんでカバーせなあかんねん!」って、だから初めは印象が良くなかった(笑)。でもCDを聴いて「確かにいいな」と僕は思ってました。
──そこから「ねっちぼっち」になるには?
大根:そのあと、そよかぜとうたまろで<そよまろ荘>というツーマンのイベントをやってたんですよ。その企画で、ボーカル同士のユニットと、演奏隊同士のユニットというコーナーをやってみた時に、二人で「サヨナラCOLOR」という曲をカバーしたのが思いのほか好評で「また二人でやって」というお客さんの声が多くて、<ねっちとぼっちの二人暮らし>というイベントを立ち上げたのがきっかけです。
コボリ:その頃は、周りに乗せられるがままという感じでした。彼はしゃべりがうまくて、僕は全然駄目で、一緒にやるのは嫌やなと思ってました(笑)。
大根:やりづらかったと思いますよ。うたまろは歌だけでやってきたユニットで、企画のイベントにもあんまり出ないタイプだったので。コボリツトムとしてイベントに出るのも、ほぼほぼ初めてぐらいじゃない?
コボリ:人見知りがすごくて、特に仲良くしているアーティストもいなかったので。でも僕の不得意な部分を持ってるんで、勉強になるかなと思って、初めはそういう気持ちでした。
──そんな二人が、どのあたりで本気になったんですか。
大根:これははっきり覚えてるんですけど、2015年です。僕の誕生日が4月12日で、コボリの誕生日が14日なので、真ん中の13日に毎年バースデーライブを二人でやろうということして。毎年やるなら自分たちの曲を作ろうということで、今回の『Synopsis』の1曲目「ふたりくらし」という曲を初めて合作したんです。それがきっかけですね。
▲『Synopsis』
──当時のタイトルは「ねっちぼっちのテーマ」でした。
大根:そうです。イベントのエンディング曲として書き下ろしました。
──共作の手ごたえは?
コボリ:最初の頃は、けっこう時間がかかりました。譲り合いで。
大根:ちゃんとしたユニットではないので、「こうしたほうがいいんじゃないか」ってなかなか言えなかったのと、僕のほうが一個年上なので、そういう遠慮もあったと思います。僕は僕で、憧れのアーティストと一緒にやれることが光栄で、「コボリくんの言う通りにやりましょう」という気持ちがありつつ、コボリは「いや、そこはねっちが年上だし」とか、譲り合ってなかなかできなかったです。今はもう、言いまくりますけどね(笑)。「絶対こっちがええわ!」とか。
コボリ:だいぶ楽になりました。
──共作は難しい。でも楽しい。
大根: 1曲の中でお互いのカラーを出せるのが、共作のいいところなので。Aメロが僕っぽい、Bメロがコボリっぽい曲もあれば、サビがコボリっぽい曲もあって、それがねっちぼっちのカラーだと思うので、今後もできるだけこだわっていきたいですね。
──そんな二人のルーツの話、聞いてもいいですか。それぞれどんな曲を聴いてきて、どんなルーツを持っているのか。
大根:僕はコブクロさんです。もうちょっとさかのぼると、小田和正さん、槇原敬之さんとかも聴いてたんですけど、ストリートライブを始めてからずっとカバーしてたのはコブクロさんです。
コボリ:僕は音楽を始める前までは、ハイスタンダードとか、そういうバンドがすごい好きだったんですけど。アコースティックギターを始めてからは小田和正さん、ゴスペラーズさん、佐藤竹善さんとかが好きで、地元の商店街で一人で弾き語ったりしていました。コブクロさんもカバーしましたし。
大根:19さん、うたいびとはね さんとか、そのへんは二人とも世代的に通ってきてますね。弾き語りユニットは一通りは聴きました。
──2015年に初めてのオリジナル曲が生まれ、そこから年に一回のイベントで1曲ずつ増えていったと。
大根:そうですね。4月のバースデーイベントと、クリスマスにもイベントをやってたので、そこでも1曲作って、年に2曲ずつぐらい作っていきましたね。
──それがだんだんたまってきて、そろそろ形(CD)にしようかということになった?
コボリ:それは、だいぶ前から言ってはいたんですよ。
大根:形にするなら、ちゃんとリリースと言えるものにしたいなという話はずっとしていたんですね。出す以上はちゃんと意味合いを持った作品にしたかったし、イベントで組んだユニットだからといって、イベントの延長線上でCDをリリースするというのは二人とも嫌だったんですよ。ねっちぼっちというアーティストとしてプロとして出すならいいけど、というところがあって。
コボリ:もともと遊びみたいな感じで始めていることもあって、どうしても企画物的な見方をされて、「真剣にやってないんじゃないか」と思われがちなんですよ。周りのアーティストにも言われるし。
大根:「あの、イベントのユニットね」みたいな、そういう感じになりがちなんですけど、これ(CD)きっかけで印象が変わってくると思うので、事務所のみなさんには感謝しています。僕らだけではこのブランディングは絶対できなかったので、アルバムリリースまで引っ張っていってくれたことは、本当にありがたいです。
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