【インタビュー】仮BAND「人前で普通にライブすることを早く復活させたい」

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■ミックスとマスタリングにものすごくこだわっていて
■たぶん伝わると思うんですよ。当日の空気感が


――カバーといえば、ブレッカー・ブラザーズの「Some Skunk Funk」。70年代フュージョンの超有名曲の、しかも超速いバージョン。

BOH:今、動画サイトに本人たちの演奏も上がってるんですけど、それよりも速くやってやろうという意気込みがありましたね。ユッコちゃんに。

――あはは。人のせいにする。

BOH:僕ら的には「こんなに速くなくてもいいんじゃないか?」と思うんですけど(笑)。でも結果的に、今のところ世界最速の「サムスカ」だと思います。とか言っちゃうと、誰かがこれより速くして、そしたら僕らももっと速くして…速けりゃいいってもんじゃないですけど(笑)。でも本当に、ユッコちゃんが「これやりたい」という感じだったんだよね? あともう1曲「Hair Style」という、ユッコちゃんの作った曲も入れています。

――ユッコさん、今、ユーチューバーとして大人気じゃないですか。

BOH:テレビにもばんばん出てますよね。そういうふうになってから呼んだんじゃ嫌らしいけど、そうなる前から呼んでるから「よっしゃ!」って感じです。「どんどん出てくれ」と思いますね。キャラがああいう、ちょっと特殊なキャラなんですが。

前田:特殊って(笑)。

BOH:どんどん壊れて行ってほしいよね(笑)。話題の人になってほしい。

――彼女も、仮BANDを楽しんでるのがすごく伝わりますね。ここでは何でもやっていいんだ!みたいな。

BOH:「こんなことはしないでくれ」とか、ひとことも言ってないので。それはユッコちゃんだけじゃなく、みなさんに「自分のバンドだと思って好きにやってください」としか言ってない。

――増崎さんも西脇さんもSAMさんも、それぞれ自作曲を2、3曲ずつ、入れてますからね。

BOH:西脇さんの「愛の重力」は、完全に前田くんの趣味だよね。

前田:そうです。中島愛さんの楽曲なんですけど、「西脇さんどうですか?」「いいんじゃない。やってみよう」ということですね。真ん中にサックスを据えて「愛の重力」をやったらかっこいいんじゃないか?と思ったら、かっこよかったです。

BOH:しかも最近、僕らが中島愛ちゃんのサポートをさせてもらっているので。バンマスに西脇さんもいるので、仮BANDがサポートしてるようなもんだよね、愛ちゃんは。曲は前から知っていて、(前田は)ずっと言ってたもんね、「インストでやりたい」って。


――ばっちりハマりましたね。往年のフュージョン・ポップ的な、爽やかでメロディアスな雰囲気がすごく出てると思います。ほかに、やってみて、発見のあった曲はありますか。

前田:一番発見があったのは、「Chuku」かな。音源とは違って、ソロのあとのセクションも「引き続きソロをやってください」というオーダーを僕が出したんです。リズムが切り替わるタイミングなので、けっこう難しいんですけど、ペロッとやってくれて、「みんなうまいな~」と思いました。6/8から13/8に変わるんですよね。一気に7拍変わる。

BOH:考えてないと、裏返っちゃう。奇数だから。

前田:それをみんな、ペロッとやってくれて、「うわー」ってなりました。

BOH:僕は、発見があったのは「Common time’s logic」ですね。元ネタは藤岡先生で、曲って普通は何回かやれば慣れてくるんですけど、これだけは何回やってもムズい。僕らだけかな?と思ったら、ほかのメンバーもそう思ってたみたいです。毎回ムズいと思わせてくれる曲はあんまりないけど、これはそういう曲で、次やる時にはまたムズいなと思いながらやると思いますけど。

前田:誰のせいですかね(笑)。

BOH:藤岡先生が、僕らを間違わすために作った曲なんじゃないか?と。

――そして、このライブCD、とにかく音が良いんです。

前田:今回、ミックスとマスタリングにものすごくこだわっていて、たぶんほかのCDと比べて、音量が半分ぐらいなのかな。演奏したそのままの音を大事に扱っているから、なるべく良い環境で聴いてもらえると、たぶん伝わると思うんですよ。当日の空気感が。

――ああ、それで、イヤホンで爆音で聴いても、痛くないと思ったのかもしれない。

前田:そうですそうです。そこ、めちゃくちゃ気を付けたんですよ。

BOH:前田くんが、何の前情報もなしにスタッフに聴かせたら、「どこの外国のバンド?」みたいなことを言われたんだよね。それぐらい良い音でできてるということです。

前田:マスタリングは「音質を取るか、音圧を取るか」で、音圧を上げると音質は下がる。逆に音質を取ると音圧は下がる。マスタリング・エンジニアの方に、「今は音圧がないと、ほかのCDに比べて聴き劣りがしますよ」と言われた時に、僕が「音質を取ります」と即答したら、その方がテンション上がっちゃって、「よっしゃ、やるぞ!」みたいな感じで(笑)。めちゃくちゃ丁寧にやってくれました。


――うれしかったんでしょうね。俺も本当はこれがやりたいんだ!と。

BOH:音圧というものは、周りと比べるから気になるものであって、現に発売日に買ってくださった方からは、「めちゃくちゃ音が良い」という声が届いてます。今回の「ULTIMATE HIGH QUARITY CD」というフォーマットのおかげもあると思いますけど、元々のデータとCDになった音を聴き比べても、何ら遜色がない。圧縮感がなくて、小さい音もちゃんと小さくなる。それは、音圧を上げないおかげです。

前田:仮BANDは、サブスク(の音圧)に逆らって生きています(笑)。

BOH:予算と環境があれば、アナログ盤を出したいとか思ったりもします。

――そういう、サブスク、YouTube時代の中で、仮BANDの音楽が今後どんなふうに広がっていけばいいという、イメージを持っていますか。

BOH:今回は、ベルウッドレコードからの発売と、4/30からイギリスのJPU Recordsからも発売し、それと同時に配信、サブスク、ハイレゾも解禁されます。前作の『二枚目』も、アメリカやイギリスのアマゾンのジャズチャートで、2位とか1位とかになってたんで、世界に広めていけるなと思っています。外から見た日本って、アニメの国とかビジュアル系の国とかアイドルの国とかって思われているので、「日本にこういうバンドがいたんだ」というふうに見てもらえたらいいなと思いますね。それこそDIMENSIONとか、T-SQUAREとか、海外でツアーをやったりした時代があったじゃないですか。日本のフュージョンを海外で楽しんでもらえるように、またなっていけば、楽しいかなと思いますね。

――今年はこのあと、どんな予定で?

BOH:まだ白紙状態ですけど、周りの状況が許せば、少なくてもいいからツアーを組みたいなと。さすがにもう、1年過ぎてるんで。

前田:あとは、北海道に行ってあげたい。

BOH:そうだね。とにかく人前で普通にライブができることを、なるべく早めに復活させたいです。僕らのやっているフュージョンというジャンルは、ただでさえ市場規模が小さいところで、どうにかやっているのに、僕らが率先してそういう(生ライブ)ことをやっていかないと、本当になくなっちゃうんじゃないか?という不安もあるし。僕はこのジャンル自体がものすごく好きだし、一番音楽を自由にやれる、その場の思い付きで何を弾いてもいいという、そういう魅力があって、お客さんがいるからこそ出てくるフレーズや、遊び心みたいなプレイもあるので、やっぱり人に見られながらやりたいなというのは、強くあります。

――楽しみにしてます。最後に、個人的な興味で聞きますが、もしも次にカバーをやるとしたら、何をやりたいですか。

BOH:なんだろう? あんまり「この曲弾きたい」と思って弾くことはないけど。

前田:僕は1曲ありますよ。ハービー・ハンコックの「アクチュアル・プルーフ」。藤岡先生がいる時に何回かやったんですけど、またやりたいな。でも「愛の重力」みたいなカバーもいいですよね。

BOH:かえって僕は、そっちのほうがやりたい。普通のポップスとして扱われている楽曲を、僕らなりにアレンジしてやりたいなというのはありますね。あとは、もし次にアルバムを出すとしたら、ボーカルをゲストとして呼んでみるとか、雅楽や民謡の人に来てほしいとか、違う楽器とコラボできたら面白いんじゃないか?とか。そういうものが、僕の中に夢としてあります。

――それ、絶対楽しいと思います。いつかぜひやってください。

BOH:中国の二胡の奏者とか、国際交流的な意味でもやってみたいと思います。音楽は平和に、どんな国の人でも、どんなジャンルでも楽しめるものだから、そういう人たちとコラボできたらなと思いますね。今回、前田くんがユッコちゃんを呼んで、僕が増崎さんを呼んだように、面白い楽器をやってる人を入れたら音楽交流もできるし、ファンの人にも楽しんでもらえるかなと思います。

取材・文●宮本英夫

リリース情報

『仮BAND with Friends.-Live at Streaming-』
BZCS-1193/1194 ¥3,000 +税(UHQCD)
2021.03.10 release
DISC1
(Streaming Live@2020.11.08)
1.侍Groove Written by KARI BAND
2.Pleasure (original artist:増崎 孝司) Written by Takashi Masuzaki
3.Some Skunk Funk (original artist:ブレッカー・ブラザーズ) Written by Randy E. Brecke c1975 by Bowery Music Publishing
4.Song of my heart (original artist:DIMENSION) Written by kazuki Katsuta
5.Dancing Baloney Written by KARI BAND
6.Jamrika Written by KARI BAND
DISC2
(Streaming Live@2020.06.20, 8.23, 11.08)
1.U-yeah !!!! Written by KARI BAND & Tatsuya Nishiwaki
2.Chuku Written by KARI BAND
3.Shinjuku (original artist:岡 聡志) Written by Satoshi Oka
4.Hungarian Amburance (original artist:西脇辰弥) Written by Tatsuya Nishiwaki
5.IMPRESSIONS (original artist:DIMENSION) Written by DIMENSION
6.Snowflakes Written by KARI BAND
7.Common times’s logic Written by KARI BAND
8.Hair Style (original artist:ユッコ・ミラー) Written by Yucco Miller
9.Clock Up (original artist:岡 聡志) Written by Satoshi Oka
10.愛の重力 (original artist:中島 愛) Written by Tatsuya Nishiwaki
【Guest Musician】
増崎孝司(Gt)
西脇辰弥(Keyboard, Harmonica)
ユッコ・ミラー(Sax)
岡 聡志(Gt)

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