【インタビュー】Revo、『ブレイブリーデフォルトII』全楽曲担当で明かす“世界の広げ方”
Revo (Sound Horizon/ Linked Horizon)が全楽曲を手掛けたNintendo Switch用ゲームソフト『ブレイブリーデフォルトII』が2月26日に発売され、同作のサントラ作品『BRAVELY DEFAULT II Original Soundtrack』が3月3日にリリースされた。シリーズ初代の音楽を担当したことが好評を博したRevoにとって、9年ぶりのシリーズカムバックとなる。
インタビューではゲームプレイに寄り添う音楽としてのこだわりを語りながらも、今作制作時には前作から変えていくために様々な縛りを自身に課したというRevo。彼はその高いモチベーションをどのようにして自ら生み出していったのか……BARKSではインタビュアーにさやわか氏を据え話を聞いた。
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■経験値とJPがたまっていった末に、今回の『II』があると言えます。
■現時点での集大成みたいな感じかな、と。
――今回発売されたゲーム『ブレイブリーデフォルトII』は、ナンバリングタイトルとしては9年ぶりの新作です。Revoさんもその初代『ブレイブリーデフォルト』以来でサウンドトラックを担当されたことになりますが、まずはそもそも9年前、初代での楽曲について改めて振り返っていただけますか。
Revo:僕はSound Horizonとして「音楽で物語を表現する」ということをやっていたこともあって、一般的なポップスよりも、もうちょっと劇伴に近い楽曲の作り方をしていました。ただ、基本的にボーカル曲で表現していたこともあって、歌詞を中心に楽曲の物語性を受け取ってもらっていたような気がします。僕の楽曲を聴き慣れた人でも、インスト曲の受け取り方ってまだまだ未知のものだったんじゃないでしょうか。けど『ブレイブリーデフォルト』の楽曲は全編ほぼインストなので、これを通してはじめて、より純粋な音楽に寄り添った受け取り方というか、聴き方を意識してくれる人が増えたような気がしています。
――歌詞だけでなく、楽曲全体から曲の内容を解釈するということですか?
Revo:はい。ここでこの楽器が鳴っているのはこういう意味かもしれないとか、あのメロディが流れるのはこういう意味なんじゃないかとか。良く言えばクラシックを鑑賞するような高尚さ、悪く言えば堅苦しさを伴いがちな行為なので、等身大での共感性を重視した今のポップスはなかなかそういう聴かれ方をしないですよね。もともと僕は音楽そのもので物語を感じられるように作っていたんですが、どう感じるかはリスナーの自由で。分かり易いヒントでもある歌詞がないことは、より曖昧で自由な解釈をもたらします。ひとつの楽曲を受け取るのにも、色々な視点を持ってくれることが増えたのは豊かで素敵なことだと思っています。
▲『BRAVELY DEFAULT II Original Soundtrack』初回限定盤
――サウンド面についてはどうでしょうか。『ブレイブリーデフォルト』はオーケストラアレンジが中心のサウンドトラックでしたが、ちょうどSound Horizonも、オーケストラアレンジを多く採り入れた作品が作られるようになっていましたよね。
Revo:Sound Horizonでは、たとえば『Märchen』(2010年)なんかでもオーケストラ的な手法はやっていましたが、あの時点ではまだバンドサウンド+弦、くらいに収まっているのが多かったですね。他にクワイヤを採り入れたりもしていますけど、どちらかというとバンド寄りのアプローチというか。しかし、RPGのサウンドトラックを担当するとなると、『ドラクエ』に代表されるようなオーケストラがバーンと鳴っているイメージが強いので、もっとクラシック的なことがやれるというか、求められている土壌があるので、積極的にそういう楽曲を作ることができました。その経験の結果、今度はバンドとの融合を考える上でも、たとえば『進撃の巨人』の主題歌でバンドとオーケストラの関係を対等に近いところまでもっていくようなアプローチに進化していったように思います。
――9年分のハードウェアの進化についてはどう思いますか?『ブレイブリーデフォルト』はニンテンドー3DSという携帯ゲーム機でしたが、今回はNintendo Switchなので、再生環境も以前よりはグレードアップしていると思いますが。
Revo:前作は3DSなので、上から下まですべての音がしっかり聞こえないのもある程度しかたなかったのはたしかです。ただ今回にしても、結局テレビのスピーカーで鳴らすのであれば、そこまで十分にすべての音が聞けるとは思わないんですけどね。それこそ『進撃』をやったときに「テレビから流すとこんなに鳴らないものなのか」と実感した経験があったので、そこは理解していました。本当は、音数を減らしていけば、パッと聴いたときに入りやすい音楽にはなるんですけどね。音が入れば入るほど、再生環境がしっかりしてないと届きにくくなる。
――あえて音数を減らさないやり方を選んでいる?
Revo:音の引き算をすることで聴かせようとするのは、真っ当な方法なんです。けど、自分の理想としている音楽とは違うんですよね。『進撃』なんかも含めて、そういうものを何作品かやらせてもらったので、ちょっとずつ経験値とJPがたまっていった末に、今回の『II』があると言えます。より完成度が高められているんじゃないかなと思います。ミックス的なこともそうだし、そもそも作曲やアレンジ段階から、そういうことを考えて作っている。現時点での集大成みたいな感じかな、と。まだまだ目指すべき理想はありますが。
――それだけ多くの音を入れた楽曲を目指すのはなぜでしょうか。
Revo:自分としては必要ないと思う音は入れていないんです。ただ、必要だと思ってる音が全部届いているかどうかはわからない。とはいえ、そもそもはっきり聞こえるものだけが音楽を構成しているわけじゃないので。表面的な音の裏側にもちゃんと倍音というか空気感というか、密度や色彩感を作り出す音が鳴っていたりもします。それがないと、全然立体感が違うものになるんですよ。世界観の。更にゲーム音楽はプレイしながら繰り返し聞くものなので、ファーストインパクトも大事ですが、副旋律の数にしても、リピートする内に気づいていける情報量としての密度も大切なんじゃないかと思っています。
――いずれにしても、楽曲を再生する環境がゲーム機であることがネックにはなりそうですね。
Revo:今回は、たとえばプレイヤーが自分のオーディオシステムを持っているなら、それにTV、つまりゲーム機を繋いで、よりしっかり聴いてもらうこともできると思います。しかし、一見いま言ったことと矛盾しているように思うかもしれないけれど、すべての音を聞いてもらえなくてもいいなと割り切って作っている部分もあるんです。というのも、そもそもゲームって、そこまで「音楽を聴く」という意識でやるものではないですよね。ゲームに集中している人の耳に、フッとたまに入ってきて「いい曲だな」と思ってもらうために必要なものというか。どんな再生環境でも届く核となるメロディや、細部が伝わらなくても共有される雰囲気みたいなものは大事にしています。だから、こだわって作りますけど、音質云々のみを言うものじゃないだろうなと思います。
▲『BRAVELY DEFAULT II Original Soundtrack』通常盤
――『II』の楽曲は、ダンジョンの曲に代表されると思いますが、気候や時間によって微妙にアレンジが変化したバージョンが膨大に作られています。それも、ふとした時にその変化がプレイヤーの耳に入ってくることを念頭に置いて作られたのでしょうか?
Revo:もし曲がひとつしかないと、自分のプレイしてる時の状況と違っていても、常にその曲が鳴るわけですよね。けれどゲームというのは、戦闘にしても、フィールドやダンジョンを歩いているにしても、空気感はその都度異なるものなんです。だから、できる限りそれぞれの状況に近い楽曲になっていたほうが、よりプレイヤーのゲーム体験に寄り添えると思うんですよね。すべての状況に合わせるのはさすがに無理がありますが、近似値的に合っていると錯覚させられるだけの包容力と、バリエーションを持たせられたらとは思います。様々な制約もあるので、そのゲームにとってどこがベストかは難しい問題ですが。
――戦闘もそうですが、ゲームは同じ行動を繰り返すことも多いので、だからこそ微妙な変化があることが、プレイヤーにとっては心地よく感じられそうですね。
Revo:ゲームは数十時間遊んだりするものだけど、できるだけ新鮮な気持ちでプレイしてほしいというか、「敵は強くなっているけど、自分もちゃんとキャラを育ててるんで強くなってるはずだ」みたいな気持ちが感じられたらいいですよね。プレイヤーの世界を冒険している気持ちに沿うためには、音楽もやっぱり変わっていく感じが出したいなという思いがありました。あと、戦闘といえば、必殺技があるじゃないですか。それも冒険とともに解禁されていくので、キャラクター性も絡めバリエーションを出したいなと考えました。
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