【対談】翔(横浜銀蝿)×ナオ(首振りDolls)「ずっとモテたいだけでバンドやってたいんだよ(笑)」

ポスト

ナオ:さっきチャック・ベリーがお好きだって話が出てましたけど、翔さんの音楽ルーツをお聞きしてもいいですか?

翔:中学入った頃くらいかな、音楽が好きってとこからではなく、“とにかくモテたい”ってところから音楽聴き始めたって感じだったからさ(笑)。

ナオ:あははは。“とにかくモテたい”ってところは絶対だったんですね(笑)!

翔:そうなんだよ(笑)。申し訳ないが、そこが第一だった(笑)。学校で人気者になりたかったってのもあったから、フォークギターを触りながら歌謡曲を歌うようになって。Fが押さえられないっていう壁にぶつかったりもして。でも頑張って弾きながら歌ったわけ。小学校の頃から「戦争を知らない子供達」って曲が流行っていたんだけど、その曲をみんなの前で歌いたくて頑張ったんだけど、Fが押さえられないと弾けないんだよ。それで死ぬ程練習して弾けるようになった。吉田拓郎の「結婚しようよ」、泉谷しげるの「春夏秋冬」、小坂明子の「あなた」とかも頑張って弾き語りしてた。

ナオ:フォークソングからだったんですね!?

翔:そう。中2、14歳の夏だったかな。髪の長い背の小っちゃい暗いイメージの同級生が居たんだけど、そいつのことが妙に気になって友達になりたいなと思って近づいて、いろいろと話す様になったんだよ。それで、そいつん家に遊びに行ったら、ローリング・ストーンズとかデヴィッド・ボウイとか洋楽のアルバムがいっぱい部屋にあって。そういう音楽の魅力をいろいろと話してくれて。“あ〜、だからオマエ、そういう髪型とかしてんだ!”って話になって。学校でもすぐに上半身裸になったり、たまに化粧してたりしたりもしたから、変わりもんだなって思ってたんだけど、なるほど、ここからの影響かぁ! って分かって。ミックジャガーになりたかったんだよな、そいつ(笑)。

ナオ:僕、その子と絶対に仲良くなってたと思います! 何故なら、自分もそういうタイプだったので!

翔:あ、そうなの?

ナオ:はい! 同世代の友達とは全く話が合わないタイプだったんです! うっすらお化粧もしたりしてたし!

翔:ナオ、そういうタイプなの!?

ナオ:はい。そういうタイプです(笑)!

翔:そうなんだ(笑)。そいつ、修学旅行でミックジャガーになりきって服脱いで、先生にめちゃくちゃ叱られてたりもしたんだよなぁ〜。

ナオ:ん〜! その気持ち、めちゃくちゃ分かります! そういう憧れって可愛いですよね(笑)。

翔:そうだね。それで、俺はそいつの家でチャック・ベリー の「Johnny B. Goode」を初めて聴くことになったんだよ。そんときの俺の衝撃ったらなかったわけ!

ナオ:突き刺さっちゃったんですね!

翔:そう。突き刺さっちゃったんだよ!

ナオ:イナズマ走っちゃうやつですよね!

翔:そう。ギターのサウンドもそうだし、声もそうだし、もうイナズマ走りまくりよ! ちなみにそいつ岡野っていうんだけど、

ナオ:実名(笑)!

翔:あははは。出してやろうぜ、名前(笑)。

ナオ:今の翔さんを作ったキッカケの人ですからね!

翔:そうだよ! で、岡野が“「ジョニー・B.グッド」は、いろんなアーティストがカヴァーしてるんだよ”って教えてくれて、マウンテンってバンドや、ジョニー・ウィンター、ジェリー・リー・ルイスの「ジョニー・B.グッド」も聴かせてくれた。それまで歌謡曲しか知らなかった俺としては本当に目の前の世界が広がった瞬間だった。自分たちが良いと思って、リスペクトの気持ちを持って憧れのアーティストのカヴァーをするってことは誇りなんだよね。

ナオ:まさしくその通りですよね! 本当にリスペクトしかないですからね、カヴァーって。

翔:そう。そうやっていろんな人にカヴァーされてるチャック・ベリーってどういう人なんだろう? ってすげぇ興味が沸いちゃって。めちゃくちゃ知りたくなったんだよ。でも、当時なんてパソコンもなかったし、レコードに付いてる解説を読むくらいしかなかったんだよ。とにかく動いてるチャック・ベリーが見たくてさ。岡野に頼んで半年後ぐらいに海外のフェスの映像をダビングしたやつを見せてもらったんだよ。ダビングのダビングのダビングくらいの映像だから、チャック・ベリーだか何だわかんないくらい荒れ荒れの画像だったんだけど(笑)。うわぁ! このおじさんすげぇな! って思った。それ見てからだね。ロックンロールがカッコイイ! ってなってのめり込んだ。当時キャロルとかも居たけど、それを見たときはそんなにビビビってこなかった。でも、チャック・ベリーを知ってから、日本でロックンロールやってる人たちのことを調べていってキャロルに行き着いたときには、“ヤベェ、キャロルカッコイイじゃん!”って思えたんだよ。

――そこにルーツを感じたんですね。

翔:そう。それまで泉谷しげるとか吉田拓郎って言ってたのに、急にロックンロールとか言い出したっていう(笑)。それが14歳の頃だったね。そこからもうエレキギター欲しさにアルバイト始めて。そこから50年代の洋楽をさかのぼって、“やっぱバンドっていいな”って思う様になってったんだよ。でも、まだまだ当時は学校の文化祭でバンドをやるなんてのはポピュラーではなかったから、中3のときに友達と“めちゃぶつけ”っていうフォークデュオとかしてた。でも、やりながら、“いや、俺のやりたいことってこれじゃないな。やっぱ俺はチャック・ベリーになりたい!”って思ったんだよね。それで、高校に入ったところで、Johnnyに会ったのよ。

ナオ:出逢っちゃったんですね!

翔:出逢っちゃったよね〜(笑)。俺は当時からリーゼントだったから、Johnnyがいきなり来て、“俺Johnny。一緒にロックンロールやろうぜ”って。 え? みたいな(笑)。

ナオ:もうJohnnyさんの中では固まってたんですね!

翔:そう。いろいろ構想があったみたいだった。そこからだったね。俺とJohnny。

――横浜銀蝿の基盤ですね。

翔:そうだね。後に嵐さんをドラムとして入れて、そこから横浜銀蝿の本当の基盤がスタートしていったんだけど、嵐さんは高校生の頃、ギターでバンド組んでたんだよ。シカゴとかクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルとかが好きで、よく聴いてた。その影響でクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルを好きになった。「トラベリン・バンド」って曲聴いたら、完全に3コードのロックンロールでさぁ! 最高じゃん! コレだぜ! って思ったね。

――嵐さんの音楽ルーツはアメリカンロックですか?

翔:そうだね、嵐さんはロックンロールど真ん中というより、アメリカのロックとか柳ジョージだった。

ナオ:なるほど! アーティストさんの音楽ルーツを聞くのって本当に楽しいですね! 翔さんの歌を聴いて、どこらへんがルーツなのかな? って探りながら聴かせてもらっていて、チャック・ベリーも感じたし、エルヴィス・プレスリーもすごく感じたんです。歌唱法がエルヴィス・プレスリーっぽいなって感じるところが節々にあって。

翔:うんうん、プレスリーも大好きだからね。そこはたしかに意識して歌ってる部分はある。

ナオ:そうなんですね! やっぱり! なんか嬉しいです! こうやってルーツを紐解けてるのって、すごく嬉しい! でも、音楽的なルーツがなかなか見えてこないんですよ、横浜銀蝿の音楽って。なんていうか、すごく独自のロックンロールだから。何処にもないオリジナルを感じるんです。だから、音楽的なルーツがあんまり見えてこないというか。“ここ!”っていうのがあまり見えないんです。横浜銀蝿は横浜銀蝿だなって。

翔:おぉ、ナオ、嬉しいこと言ってくれるね! 横浜銀蝿を音楽的に分析してくれることなんて、本当に今までなかったから、そうやって聴いてくれたのがすごく嬉しいよ! ヒーカップ(※語尾をしゃくりあげる歌唱法)をヒーカップと分かってなくて、“プレスリーカッコイイ!”ってとこで自然と真似てたところが、自分たちがバンド始めて横浜銀蝿のボーカルとして歌うようになって、レコーディングとかで“翔くんいいね、そのしゃくり!”って褒めてもらうようになって、それがいつしか自分の個性になっていったって感覚だったからさ。俺がビートルズがめちゃくちゃ好きで研究していたら、今の歌い方にはなっていないと思うし、横浜銀蝿は今の感じではなく別物になってたと思うんだよ。俺は、チャック・ベリー、ジェリー・リー・ルイス、リトル・リチャード、ってとこで。嗄れ声で、暴力的で、ピアノも叩くように弾く感じってのが、好きだったから。ガン飛ばしながら歌うっていうね。そんなんを1950年代にやってたっていうカッコ良さだよね。俺はそんなところと3コードに固執してるから、そこがビートルズとかが好きだったJohnnyやTAKUの音楽ルーツと絡まって、ナオが感じてくれた、何処にもない横浜銀蝿っていうオリジナルが出来上がってるんだと思う。全く同じルーツだったら、このオリジナル感は出ないと思うんだよ。

ナオ:めちゃくちゃ分かります! バンドってそうですよね。

翔:そうなんだよ。そうなっちゃうと面白くない。やってる方は意気投合して楽しいかもしんないけど、それじゃただのコピーバンドだからね。横浜銀蝿が違ったのは、聴いてきた音楽や想いがそれぞれ別々だったから、バンドの中の化学変化になっていったんだと思う。俺の書いた曲でも、リードギターを考えて弾くのはJohnnyだから。そこにはJohnnyのルーツが自然と出てくるし、一緒にいる俺が好きな音楽やフレーズも知ってくれてるから、“翔くんが好きな感じはこんな感じなんじゃないかな”ってフレーズを考えてきてくれるんだよ。それって、Johnnyだけで作ってたら生まれてこないとこだったりもするんだよね。横浜銀蝿というバンドでやるからこそ出てくる化学変化だから。その逆もあって、Johnnyが作って来た曲に対して俺は、“きっとJohnnyはこんな風に歌って欲しいだろうな”って思いながら歌うからね。だから他と同じにならないんだと思う。横浜銀蝿は横浜銀蝿でしかない曲と歌になるんだよね。

ナオ:すごく分かります! 首振りDollsもメンバー3人それぞれが曲と歌詞を作るので、今、翔さんがおっしゃられた感じでそれぞれがそれぞれの作者の想いに応えたいという想いで作り上げていってる感覚です。


翔:信頼があるからこそだよね、それは。今も40周年のアルバム(2021年3月17日発売:横浜銀蝿40thミニアルバム『ぶっちぎり249』)を作ってるんだけど、原曲からどんどん変化していくんだよ。メンバーがレコーディング中に、“ここをこうしてみたらいいんじゃない?”っていう意見に対して、“いや、これは俺の作った曲だからこうしたいんだよ!”っていう奴が居ないんだよ。“じゃあやってみよっか!”みたいな感じで着地するまでガンガン形を変えていくからね。それこそ信頼でさ。それが楽しいんだよ。それが銀蝿サウンドなんだよ。

――結成40周年となる2020年、オリジナルメンバー4人による初めての再結成をされた訳ですが、当初から比べて、向き合う姿勢とか想いとかが変化したというところは無いんですか?

翔:ないなぁ〜。でも、嵐さんが歌う曲とかあると、疲れちゃうから、何回も歌わせないようにしてあげないとなぁって思って気遣ってあげるところは変化したかな(笑)。歳なんでね、お互い(笑)。4つの音だけで作ってる訳なんだけど、今までそれぞれが違う形で音楽と向き合っていたこともあり、当時にパッと戻れるんだよね。昔の横浜銀蝿に戻れてる。これまでも、Johnnyが参加するまで、違うメンバーでいろんな形で横浜銀蝿を続けてきたけど、Johnnyが戻って来ただけで本当に昔の横浜銀蝿に戻るんだよ。音の作り方も何もかも、全てね。TAKUは打ち込みが好きだったりするから、今回もTAKUの曲にはそんな音を入れていってるけど、俺とJohnnyの曲はいつもの通り、音をどんどん削っていく感じで作ってってる。音を足していけば良くなっていくのは当たり前なんだけど、そこに頼りたくはなくて。

ナオ:それもすごく分かります。本当にそうですよね、削る勇気というか、最低限の音で作ることって、すごく頭を悩ませることでもあって。

翔:そう。俺も銀蝿以外で3ピースのバンドをやっているんだけど、3ピースになると、俺は、歌ってギター弾いてソロも弾くから、すごく大変になるんだよ。でも、自分の鮮度をより輝かせるためには、3ピースバンドで自分を追い込んでいくことだなって感じていて。後輩のメンバーに頼んで、“俺の為に一緒に3ピースバンドをやってくれ”って言って誘って結成したのがキッカケなんだよ。敢えて3ピースのロックンロールバンドがやりたかったってのは、そういうところだったりするんだよね。その結果をいい形で横浜銀蝿に持ち帰れている感じはする。3ピースって最小ピースだからね。だから首振りDollsもその最小ピースでロックンロールをぶちかましてるのは、すごくカッコイイことだと思うよ。すごい個性だと思う。レコーディングだと3つの音以外に重ねてたりするでしょ?

ナオ:そうですね、ギターを重ねたり。

翔:でも、ライヴのときは3つの音のみでやってる訳じゃない。普通に考えたら、重ねてる音がライヴでは無いから、単純に考えたら物足りなくなるということになりがちだけど、でも、そうじゃない。ライヴじゃなくちゃ作れない空間や、表情や、MVでも見れないものがあるんだよ。でも、3ピースって、本当に頑張らないと物足りなくなっちゃうのも現実問題で。

ナオ:本当に3つの音だけですからね。

翔:そう。“ハコを鳴らすのがロックンロール”だと俺は思っているから。でも、単純に音をデカくすりゃいいってもんじゃないし。ライヴの音量って、リハーサルのときにドラム中心に作っていくものだと思うけど、お客さんが入った状態で音を出すと、音が吸われちゃって本番で音が変化してしまうことがあるからね。3人しかいないと、裏でギターもう1本流したいなとか、ピアノ入れたいなとか、いろいろとあると思うけど、そういうところでもないというか。語弊があるけど、上手いことが重要じゃないというところでもあるし。一番最初に衝動で、若くして始めた下手くそな時期の方が勢いあってカッコ良かったりする場合もあるしな。

ナオ:あー、そういう衝動的な感じすごく分かります! ずっとガキで居たいですよね!

翔:そうなんだよ、ずっとガキで居たいんだよ。ずっとモテたいだけでバンドやってたいんだよ(笑)。んじゃなくちゃ、カセットデッキでバイクの集会の音録ったやつをアルバムの最初に入れたいなんて思いつかないんだからさ(笑)。いつまでもそういう感性は持ち続けていたいなって思うよ、本当に。そうやって40年前に思い付きで必死になって録った音を、40年後に今聴いても、あー、本当に俺たち頑張ってたなって思えるからさ。その想いって、この先もずっと持ち続けてロックンロールをやり続けたいなと思ってる。

ナオ:カッコイイです! 本当に。そんな風に歴史を重ねていけたらどんなに素敵だろうって思います!

翔:そうだね。俺たちにとって横浜銀蝿は永遠だから。メンバーが元気でいられるうちは、ずっと頑張り続けて行きたいと思うよ。ナオもさ、首振りDollsをそういうバンドにしてやってよ。何十年後かに、ちゃんと誇れるバンドにね。

ナオ:はい! ありがとうございます! 本当に頑張ります! 

翔:ドカンと売れて、“横浜銀蝿の翔さんと昔、こんな話をして、それで今の首振りDollsがあるんです!”って言ってよ(笑)!

ナオ:あはははは。はい! そう言えるように頑張ります! ありがとうございました! またライヴ観せて下さい!

翔:おう! いつでも遊びにおいで! 待ってるよ!

取材・文◎武市尚子
動画撮影&写真◎DOLL RECORDS Co., Ltd.


■首振りDolls 3週連続配信シングル

「サボテン」
https://linkco.re/A2NqNXe0
「散り散り」
https://linkco.re/rfBurVHT
「SMILE」
https://linkco.re/CX8ar976

■有観客ライヴ情報

■首振りDolls
<FRIDAY THE DOLLS〜首振神社〜>
2021.01.29 FRI 下北沢CLUB251
出演:首振りDolls
一部open16:30start17:00
二部open19:30start20:00 前売り¥4,000当日¥4,500+d
チケット発売Live pocketにて12/20 10:00〜
詳細・購入リンク:https://kubihuri.com/live/live-1744/

■naoソロ出演
<新宿LOFT presents『陽だまりのひととき』 >
共演:aie/ 村上達郎
2021年1月12日(火)開演 19:15 前売 ¥3,000 +d¥600 配信 ¥2,000※リアルタイム視聴時のみお茶爆(投げ銭)可
※配信終了後14日間アーカイブ購入可
詳細:http://kubihuri.com/live/live-1740/

この記事をポスト

この記事の関連情報