【インタビュー】My Hair is Bad、椎木知仁を形成する8つのこと「僕は死んでもバンドマン」
■あんまり戦ったりするのが得意じゃない
■日常の中で何かが起こるような作品が好き
──では、再び“映画”の話に戻りましょう。「My Hair is Badの曲は、映画的である」みたいなことは、よく言われますよね?
椎木:はい。「このまま誰かに脚本に書き直してもらったら映像になる」みたいなことはよく言われます。でも、映画は“好き”って言うほど観るほうでもないんですけど。
──歌詞の場面切り替えの仕方とか、回想シーンを挿入したりもする構成は、映画的なところがある作風なのかなと。新しいシングルの曲から挙げると、「グッド・バッド・バイ」「予感」「味方」とかは、まさにそういう作風が発揮されているじゃないですか。
椎木:そうですね。もしかしたら頭の中で無意識の内にそういう作り方をしてるのかも。「グッド・バッド・バイ」は、なるべくわかりやすい言葉で描こうと思って。“たった3分間の出来事を全部描写しきったらどうなるのかな?”とか、“駅で電車が来るまでの時間を描き切ったらどうなるのかな?”とかも考えて実現させた曲です。余白を残し過ぎて伝わらない感じが今までに何度かあったので、「グッド・バッド・バイ」は余白を埋めていくイメージもありました。聴く人、各々の受け止め方で結末を思い描いていただいていいんですけど、その結末を選ぶ段階に至るまでの道筋は、ちゃんと作っておきたかったんです。そこは今回、考えたところでしたね。
▲山本大樹(B, Cho) |
椎木:大きいですね。小っちゃい頃から観てます。観ると安心するんですよ。Netflixでちょこちょこ更新されるのを全部観てます。
──物心ついた頃には、既にアニメが大人気でしたよね?
椎木:はい。5歳の時がちょうど映画『クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』だったと思います。小学校の頃は漫画も読んでいたので、超失礼な幼児だったしんちゃんもよく知ってます(笑)。
──ははは。しんちゃんの真似していました? おしりを出してふりふりしたり?
椎木:ひとりでやってみても、あのおしりの感じは難しかったです。“あれにはなれない”って気がついて(笑)。しんちゃん、やっぱ好きだなあ。アニメはずっと好きで観てます。“今、ちょっと自分をオフにしたい”とかいう時にはずっとそばにいてくれた存在かもしれない。『ちびまる子ちゃん』もそういう感じがあります。『ちびまる子ちゃん』『サザエさん』『こち亀』『ワンピース』の流れとか、どこ観ても落ち着く感じですね。
──今挙げた4つのアニメ、2000年代初頭頃の日曜日、フジテレビ系での18時以降の放送順ですね。
椎木:そうでしたね。友だちと野球やって家に帰ると『笑点』やってて、18時からチャンネルを替えてアニメを観てた印象があります。『ちびまる子ちゃん』とかを観るとあの頃の気持ちに戻れますし、『クレヨンしんちゃん』もそう。劇場版もほぼ全て観てますね。
──アニメは、他にどういうものがお好きなんですか?
椎木:あんまり戦ったりするのが得意じゃないんですよ。日常の中で何かが起こるような作品が好きです。漫画やゲームもほのぼの系が好きですし。アニメだと他に挙げるなら、『コジコジ』も好きです。
──スポ根ものとかは?
椎木:あんまりそっちには行かなかったですね。野球をやってた時は『ドカベン』とか読んでましたけど。プロ野球編が連載されてた頃だったので。
──戦う系のものにあまりハマらないって、男の子だとちょっと珍しいのかも。
椎木:争うのとか、そんな好きじゃないんですよね。小っちゃい頃から給食とかでも、お代わりのために早く食べたりする感じじゃなくて、「残り2個」とか言われると“食べたいけど争うのは嫌だなあ”って思うタイプだったので。
──大人になってからだと、居酒屋で頼んだお刺身の最後の1切れが残ったりするじゃないですか。あれも食べるのを躊躇するタイプ?
椎木:逆にそれは行けるんですよ。飲み会とかでこっちが気を遣うと、周りのスタッフさんとかにもっと気を遣わせることになるので。だからこっちが気を遣ってないふりをしたほうがいいんだなと思うようになってます。バカなふりして食べます(笑)。
──ははは。そういえば、『ちびまる子ちゃん』も『コジコジ』もさくらももこさんの作品ですけど、好きな“小説”として挙げてくださった『アミ〜小さな宇宙人〜』の日本語版の挿絵は、さくらももこさんが描いていらっしゃいますね。
椎木:言われてみればそうですね。でも、それがきっかけだったわけではなくて、紹介してもらって読んだんです。上京してきてから結構スピリチュアル系というか、霊媒師さんとかに会う機会があって、いろんな本を薦められたりして(笑)。僕はスピリチュアルとかはよくわからないんですけど、そういう感じの本を読むとちょっと生きやすくなる感覚があるんです。
──『アミ〜小さな宇宙人〜』は、世界的な大ベストセラーですよね。
椎木:そうなんですよ。“本当に大切なのは愛なんだ”とか“愛とはなんぞや?”っていう話です。小っちゃい子でも読めるような本ですけど、面白かったです。他人に優しく、自分に優しく、明るく楽しくいたほうがいいなって思いました。
──こういう本を読んで精神的にラクになるのって、人生を新鮮な視点で捉えられるからじゃないでしょうか?
椎木:まさにそういうことですね。どっぷりはまるとメンバーを振り回すことになりそう(笑)。だから、たまに読むくらいがいいのかなと思ってます。
──小説は、他に何か好きなものはあります?
椎木:金原ひとみさんの作品は、今まで結構読みました。でも、小説は誰かからお薦めされたり、“この人、すごく面白いな”ってなれば一気に読んだりするんですけど、日常的に読むってことはないですね。
──“小説を書いてみたい”とか思ったことは?
椎木:「書いてみたら?」って言われることもあるんですけど、書いているみなさんに対するリスペクトの気持ちでいっぱいですし、覚悟がないとできないことだと思うので、自分で書くということはないです。
──ご自身に合っている表現は、音楽ということなんですかね?
椎木:音楽じゃなくてもいい気がするんだけど。音楽っていうか……“My Hair is Badが一番ちょうどいいんだろうな”って、今は思ってます。
──“音楽やってる”というより、“My Hair is Badをやってる”みたいな感覚のほうが強かったりします?
椎木:そうですね。“My Hair is Badをやってる”という感覚は大きいです。まあ、もちろん音楽をやってるんですけど。My Hair is Badを成長させたり、My Hair is Badで何かをしたりっていう感覚のほうが強いんです。だから僕、“ミュージシャン”っていうのも、すごく言いにくくて、「バンドやってます」と言っちゃいます。僕は死んでもバンドマン。ミュージシャンに憧れがあるけど、それはバンドマンとはちょっと違うのかなと。My Hair is Badでいる時は、“ミュージシャンを目指してるバンドマン”。一生努力したり、みんなで何かを突き詰めたりできればいいのかなと、最近思ってます。そういう意味で“My Hair is Badをやってる”という表現のほうがしっくりきます。My Hair is Badしかやることがないんですよね。My Hair is Badをやるか、お酒を飲むか。
──お酒は、やはり大事?
椎木:大事ですね。
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