【ライブレポート】SUPER★DRAGON、2部制で<DRA FES 2020>オンライン開催+419日ぶりリアルワンマンライブ決定

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ヘヴィロックを基軸にラップや高難度のフォーメーションダンス、さらにヒューマンビートボックスやデスボイスまでも自由に操る9人組ミクスチャーユニットSUPER★DRAGONが、毎秋恒例のライブ<DRA FES 2020>を11月15日にオンライン開催した。年に1回、ファン感謝イベント的立ち位置で普段のライブとは異なる趣向で行われる<DRA FES>だが、5回目となる今年は“龍崎高校学園祭”と銘打って5年間を振り返る1部と、最新作『Burn It Black e.p.』の収録曲も交えて強烈なメッセージを放った2部の“BOX WORLD”から成る2部制で実施。今年6月、7月、9月と配信ライブを重ねてきた2020年の集大成として、演出・パフォーマンス共にベストな作品を創り上げながら、2部のラストでは419日ぶりとなる来年1月の有観客ライブを発表して、感謝の涙のうちに未来への光を示した。

1部の“龍崎高校学園祭”では、メンバー全員が龍崎高校の学生となり、学校机と椅子の並ぶステージに学ラン姿で入場。彼らが龍崎高校の学生として登場するのは1年前の<DRA FES 2019>以来で、今日この時間をモンスター級の学園祭にしたいという想いの表れか、3rdシングル「Monster!」で学園祭の幕は開いた。赤を基調とした暗い照明の中、狂おしい恋情に身を焦がしながら歌い、踊る学ラン姿は妙に艶めかしく、透き通る声を聴かせる池田彪馬はカメラに向かって初っ端からウィンク。そこから疾走感満点の1stシングル「Pendulum Beat!」へと雪崩れ込み、学生服がピッタリの若々しい風を吹かせてゆくのも実に爽快で、パフォーマンスの安定感といい、表現のきめ細かさといい、装いは同じでも2年前からの進化は明らかだ。









トークパートでは5年間を振り返り、去年の夏には海外での写真集撮影から帰国するなりCM撮影があった等のレアな話も。レアなのはライブパフォーマンスも同様で、ここからは5年で生まれたグループ内ユニットが次々に登場し、普段はマイクを持たないメンバーも全員が歌声を披露した。まずは田中洸希、池田、松村和哉の通称W.G.B(ワルガキボーイズ)が、ヤンキー感たっぷりに「Cross Counter」をドロップすると、「お前らブチ上がっていけ!」と声をあげたジャン海渡に、古川毅と志村玲於の3人が「ゲラゲラ」で躍動。そして飯島颯、伊藤壮吾、柴崎楽の3人で「NICHIYOUBI」を爽やかに歌いあげ、柴崎が「皆さん、学園祭楽しんでますか?」と手を振れば、最後は3人揃って腕でハートを形作る。その様子を後方でにこやかに見守っていたメンバーたちも最後は全員前へと飛び出し、夢への決意を綴った「Endless Dance」を爽快に歌い上げて、満面の笑顔を見せてくれた。

















成長したのはパフォーマンスのみならずということで、その後、さまざまお題もメンバーに降りかかり、“体育館の裏で告白シーンを目撃してしまった時に言う大人な一言”という難題では、鉄道オタクの伊藤が「ドア閉まります」と絶妙な回答でポイント獲得。“好きな人のことを想って眠れない女の子に一言”では「電話繋いだまま一緒に寝るから。そしたら夢で逢えるかもしれないじゃん」と答えた古川が、次の瞬間、池田との温かなデュエット曲「夢で逢えたら」に繋いで、場の空気をガラリと甘く変えるという荒業に、視聴中のファンからも“ギャップがすごい”“情緒ジェットコースター”とコメントが届く。続いて、自身のエモーショナルな声質を活かし、ソロ曲「AIKOTOBA」で君への想いをぶつけながらカメラへと迫ったあげく、最後はピースを決めた田中の頼もしさも抜群。さらに、大爆笑の大喜利コーナーを挟んでは、年長のファイヤードラゴンと年少のサンダードラゴンの二手に分かれて、それぞれの個性をぶつけていった。







先攻のファイヤードラゴンは、ハードなラップ&ダンスが轟く「Gong」で、妖しくディープな世界へと視聴者を一気に引き込み、「Get Lite!」ではソロダンスも交えて、「これは学園祭レベルじゃない」というジャンの言葉を現実のものとする。一転、「MIKAZUKI」では古川がメロディックな歌声を放ち、志村や飯島もエモーショナルな表情で切なさをかき立てて、あふれ出す色気に学ランはもはや違和感満点。代わってサンダードラゴンは、「Take It To The Top」で友情に根差した野心を静かに燃やす一方、「真冬の熱帯夜」では松村のワイルドなラップや池田のセクシーな高音、柴崎の表情と身のこなしが年上女性への熱い恋心を巧みに表現して、こちらも大人びたムードを漂わせる。しかし、鉄板曲「リマカブロ!」ではアッパーなビートに乗ってエネルギッシュに拳を振り上げ、メンバー全員現役高校生の若さを爆発! 間奏ではファイヤードラゴンの面々も乱入し、ジャンと松村のヒューマンビートボックス対決に「ドア閉まりまーす」と伊藤が割って入ると、田中が「これ、電車じゃなくてバイクの歌なんだけど」と突っ込むという、微笑ましい一幕もあった。







曲が終わる前から「いやぁ、最高だ」の声が漏れるなか、古川は「世の中このような状況になっていますが、引き続き皆さんに勇気と愛を届けていきたいと思います」と宣誓。「画面の向こうも一緒に盛り上がれるような曲をやりたい。いろんなもの振り回していこうぜ!」というジャンの号令に続いては、「+IKUZE+」で9人全員タオルを振りたくり、最後はジャンプで最高の学園祭を締めくくった。これだけ多種多様な組み合わせやユニットで、多彩な音楽性と世界観を表現し得るのも、9人という大所帯ならでは。そんなSUPER★DRAGONの唯一無二の武器を、改めて感じさせてくれた<DRA FES 2020>の前半戦だった。





ステージパフォーマンスをシンプルに映した1部とは対照的に、ライブハウスを丸ごとステージとして使って、メンバーのフォーメーションの中まで深く切り込むカメラワークと映像により、幻想的なバーチャル世界を創り上げたのが2部の“BOX WORLD”だ。“ここを出られた者は誰一人としていない”と英文で綴られた意味深な映像に続き、幾何学のグラフィックが浮かぶ立方体の中に閉じ込められた9人が初披露したのは、12月23日にリリースされる『Burn It Black e.p.』の1曲目にあたる「BLACK BOX」。ジャンと松村の歪んだボーカルで幕開け、出口を探すかのように腰を落とし、床を踏みしめる9人のアクションは、まるで袋小路に追い込まれたような2020年の全世界を表すかのよう。しかし、田中の手招きから「hide-and-seek」が始まると全員箱の中を飛び出し、会場内の廊下やトイレの中に至るまで、自身を追うカメラとタイトル通りのかくれんぼを繰り広げる。追われる者の反逆を表すかのような勇ましいナンバーから、再びフロアにたどり着いた9人がいるのは箱の外。今、閉じ込められているソコは、本当に自分の力では抜け出せない場所なのか? そんな衝撃的なメッセージを叩きつけて、“BOX WORLD”の火ぶたは切って落とされた。





「Mr.GAME」ではフロアの各所に組まれたタワーにメンバーが駆け上がり、ダイナミックで立体的なステージングを展開。“彷徨う仮想(ヴァーチャル)と現実(リアル)のはざま”という歌詞がこんなにしっくり来るのも、縦横無尽に居場所を変える彼らを画面越しでどこまでも捉えられる配信ライブならではだろう。続くMCで古川が口にした「初っ端からこんな黒ずくめの男たちに翻弄されているところだと思いますが」という台詞がそのままズバリなのが、悔しくも嬉しい。それぞれの自己紹介を挟み、「世の中には開けてはいけないものがたくさんあります。けど、開けてからじゃないと見えないものもあると思います。「Let’s open the PANDRA BOX」というジャンの言葉に続いたのは、もちろん「PANDRA」。この曲をプロデュースした池田だけが箱の中でゴージャスなアームチェアに腰掛け、支配者のように歌う周りを8人が取り囲んで蠢くというエモすぎる視覚インパクトに、視聴中のファンからも言葉にならない悲鳴が届く。さらに「WARNING」では、二手に分かれたパフォーマンスを映像で繋ぐことにより、マイクを握る古川、ジャン、田中のいる空間を、逆に池田が外側から覗き込んでいるかのような光景に。シチュエーションの反転に脳味噌が覚える心地の良い混沌は、視聴者のコメントを借りるなら“目から摂取するタイプの合法ドラッグ”である。











赤の色味が強かった前2曲から一転、青へと印象が変わったのは「Don’t Let Me Down」と「City Noise」。エレクトロにトロピカルハウスといった涼やかなサウンドで、リアルな現実からフィクションのラブストーリーへと観る者を誘いながら、古川は「導いてくれよ“BOX WORLD”」と歌詞を歌い替え。彼と池田の2ボーカルが掛け合うフェイクもグッと堂に入って、その前で踊る7人との対比といい、9人揃ってのグルーヴといい、目と耳を優しく楽しませてくれる。紫の光に包まれた「Ringing,Love」でも、巧みに織り交ぜられたラップ&ボーカルがひと夏の恋愛模様を巧みに描き出すが、直後の「Set It Off」では金網に囲まれた箱の中にジャン、田中、松村の3ラッパーが閉じ込められ、金網を摑みながら憤怒にまみれた激情ラップを放出。その周りで展開される他メンバーのダンスは、まるで彼らが怒りを向ける社会の縮図のようにも映って背筋が寒くなる。しかし「La Vida Loca」では金網の中から脱出して、太陽の灼熱を思わせるようなゴージャスな映像とラテンなリズムをバックに、挑発的なラップを畳みかけ。しかし、闘いの対象はもはや他人ではなく、己へと向けられたものだ。











その理由は、続く映像で明らかになった。“この矛盾だらけの世の中の当たり前を疑え”“自分は何も知らないと、知ることが大切なのだ”“そう、絶体絶命は、絶好の機会”等、冒頭の「BLACK BOX」に通じるメッセージをぶつけてカメラがステージに戻ると、なんと黒づくめからブルー&ホワイトに着替えたメンバーの姿が。タワーに登ったメンバーたちに画面上では銃口の照準が定められ、それでも平然と「Dragonfly」を歌っていられるのは、この曲に書かれている通り仲間への信頼があるからなのだろう。そして9人が横一線に揃い、一丸となってぶつけたのは、7月に配信リリースされたセルフタイトル曲「SUPER★DRAGON」。“俺達が時代を変える”と歌いながら前に進み出る池田の表情は決然たる頼もしさにあふれ、ダンサーたちも汗を飛ばしながら身体いっぱいで曲の想いを訴えてゆく。そして「今年最後のライブなのに、そんなんでいいのか! もっともっとテンション上げて、熱くいこうぜ!」という志村の煽りからは、さらなる汗だくゾーンへ。デスボイスを轟かせる松村を筆頭に全員で叫びあげるメタルチューン「BADASS」に、古川の「ただじゃ帰さねぇぞ!」という物騒な宣言からの「Untouchable MAX」では、田中のヒューマンビートボックスも冴えわたって、歌詞の通りの“情動 暴走 阿鼻叫喚”を実現。曲を終えて息を切らす様までが美しく、例えようもなくドラマティックだ。



「6月からオンラインライブをしっかり地に足つけてやってきましたけれども、また今回更新できたんじゃないでしょうか。2020年を締めくくるワンマンライブとして本当に最高の作品、メッセージを届けることができているんじゃないかと思います」と、誰もが納得の言葉を伝えた古川から、さらに「皆さんにお知らせがあります」と告知が。なんと419日ぶりのリアルワンマンライブが、2021年1月23・24日にLINE CUBE SHIBUYAで行われることが発表されると、視聴コメントも喜びと祝福の声であふれ返る。しかし、春の全国ツアーが中止になって以来、水面下で苦難の時間をすごしてきたメンバー自身の感慨は、恐らくそれ以上のものだっただろう。

「僕、絶対緊張しちゃいそうです。その緊張も乗り越えられるくらいの素晴らしいものを届けたいと思います」(池田)
「家を箱に例えるなら、皆さん今、家に籠ってるじゃないですか。その箱から抜け出して“Face to Face”で感情を共有しあえる場所なので、その日が楽しみすぎて眠れない気がします」(ジャン)
「こんな前代未聞のライブを見て“やべーことやってるな、SUPER★DRAGON!”って、みんな思ってるはず。ただ、生で会った時には、もっと感情を持っていけるっていうことを証明したいので、気合入れて頑張ります!」(志村)
「会えないにもかかわらずついてきた皆さんには感謝しかないですし、デカい夢とステージ見えてるんで、ついてきてください」(松村)
「時間が空いたぶん、メチャクチャ進化したスパドラを皆さんに見てもらう日を楽しみにしてます。だから体調に気を付けて、健康でいるんだよ」(柴崎)
「また一歩進めることが本当に嬉しいですし、約1年会えなかった中で僕たちが培ってきた努力……いろんなことを試行錯誤して、それぞれ頑張ってきたことがあるので、1月に発揮できればなと思います。ぜひ、たくさんの方に来ていただいて、素晴らしい感情を共有して、最高のライブにしましょう」(田中)

おのおのが再会を果たせる喜びを噛み締めるなか、「今まで普通に行えていたことができなくなったということを通して得た感謝だったり、みんなに対してのリスペクトを、全部オンラインライブにぶつけてきて。やっとリアルライブができるっていうのはすごく嬉しいですし、ここから成長した僕らをぶつけたいと思います」と目を潤ませたのは飯島。そして、ずば抜けたメンタルの強さを持ち、常に穏やかな伊藤が「この1年本当に大変な1年で……遂に先が一個見えたかなと思うので、絶対1月来てください。お願いします」と感極まったことからも、2020年に彼らが負ったダメージの大きさがわかるだろう。それでも彼らは、常に足を止めずに動いてきたのだ。

「この箱を抜け出した先に、きっと、まだ見たことの世界が待っていると思うので、僕らしっかり留まることなく進んでいきます。今日のライブはセットとか曲の先にあるメッセージを届けたかったんですよ。皆さんの背中を押せるようなメッセージになったんじゃないかと思うので、これからも皆さんと作っていく世界が楽しみで仕方ないです。そんな僕らのまだ見ぬ世界への夜明けの歌です」











そう古川が告げて贈られたのは、9月に配信されたばかりの「Burning in the nights」。冒頭の“明けない夜はない”というワードからも、この曲が訴えたい想いは明らかだろう。闇夜からの夜明けを静かに、けれど、虎視眈々と力を蓄えながら待ちわびてきた彼らの一挙手一投足には、万感の想いと力があふれ、思わず息を止めて見入ってしまう。しかし、曲が終わって開錠音が鳴ると、ニヤリと微笑んだ古川を筆頭に全員フロアからダッシュ。廊下を駆け抜け扉を開けて、光眩い外へと飛び出した彼らの2021年が、今から楽しみで仕方ない。



文:清水素子
カメラマンクレジット:笹森健一

  ◆  ◆  ◆

<セットリスト>

DRA FES 2020 -龍崎高校学園祭-
M1. Monster!
M2. Pendulum Beat!
M3. Cross Counter
M4. ゲラゲラ
M5. NICHIYOUBI
M6. Endless Dance
M7. 夢で逢えたら
M8. AIKOTOBA
M9. Gong
M10. Get Lite!
M11. MIKAZUKI
M12. Take It To The Top
M13. 真冬の熱帯夜
M14. リマカブロ!
M15. +IKUZE+

DRA FES 2020 -BOX WORLD-
M1. BLACK BOX
M2. hide-and-seek
M3. Mr.GAME
M4. PANDORA
M5. WARNING
M6. Don't Let Me Down
M7. City Noise
M8. Ringing, Love
M9. Set It Off
M10. La Vida Loca
M11. Dragonfly

M12. SUPER★DRAGON
M13. BADASS
M14. Untouchable MAX
M15. Burning in the nights

2021年 SUPER★DRAGON REAL ONMAN LIVE

2021年 1月23日(土)、1月24日(日)
at LINE CUBE SHIBUYA
※詳細は追って解禁となります。

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