【インタビュー】信頼で結ばれたDannie May、新作に込めた「新しい僕らと今までの僕ら」
■そこに向かって走るだけ
──リード曲「灰々(ハイバイ)」について語りましょう。これはどんなふうに?
マサ:これはメロディが先にあって、歌詞をあとで付けました。周りを見ていて、自分の肩書に縛られている人、自分をかたどる記号にとらわれている人が多いという実感があるんですけど、記号を追い求めると失敗するということを、僕自身も感じるところがあって、そういう思いを歌詞に込めました。メロディや曲調は、『暴食(グラトニー)』の時からある、Dannie Mayのど真ん中の、メロディックなマイナー曲を意識して書きました。
──アナログシンセっぽい、うにょうにょした独特の音がかっこいい。あれは田中タリラさん?
田中タリラ:そうです。単純に音が好きなのと、チルやローファイが流行っている中で、懐かしい感じがみんな好きなのかな?と思ったのと。ファッションや音楽の流行も一回りして、最近は音楽仲間とも「昔の歌謡曲のメロディっていいよね」という話になったりするし、そこはマサがうまくやってくれるんですけど、音色の部分でそういうものがないかな?と思った時に、こういう音を使うといいかなと思って、使ってます。
マサ:あれはいいよね。Dannie Mayっぽいなと思う。懐かしさと新しさとがうまいこと混ざって、Dannie Mayっぽくなればいいなと常々思ってます。
田中タリラ:それを狙って作っているわけじゃなくて、そうなっちゃうんですよ。感覚でやってる部分が大きいので、次に化学反応が起きなかったらどうしよう?という常に不安はあります。
マサ:毎回綱渡りをしている感覚がある(笑)。でも毎回渡り切れるから、「ああよかった」みたいな。そのヒリヒリ感がいいですね。
▲マサ(Vo&G)
田中タリラ:『暴食(グラトニー)』の頃までは、「こういう曲を作ろう」というリファレンス(参考音源)があったんです。でもそれで作っても、自分たちの魂が乗らないこともあったので、今はそういうふうになっているんですよ。
マサ:そのほうが面白いよね。リファレンスありきで作ると、予定調和のものしかできないから。僕が曲をずっと作っている中で、僕が考えすぎてることを察知して、「僕らももう25歳とかだし、ここまで来たら、やり切って終わるほうが良くない?」という話を2人にされて。「好き勝手に作っていいよ」と言ってくれて、その後に今回の『DUMELA』の曲ができているので、2人が背中を押してくれたところはあります。
Yuno:マサをかばうわけじゃないですけど、それまでに何度も失敗してきているから、「絶対に誰かに刺さらなきゃいけない」という気持ちが最初にあったんですよ。そうすると、いいものができなくなって、悪循環もあったので、がっつり話をしました。「たとえ売れなくても、納得するものを作れたらそれでいいけど、迎合して作ったもので、売れなくて終わったら後悔するよね」って。彼はもともとギター1本でシンガーソングライターをやっていた人なので、ギターで作り始めたら、それはもういい曲ばっかり出てくるんですよ。
マサ:そっちのほうが早かった(笑)。
Yuno:去年は特に、自宅でDTMで作るのが時代の流れになっていたから、マサも、やったことがないなりに頑張ってやってたんですけど。
マサ:あはは。やめろ!(笑) 無茶苦茶かわいそうな奴みたいじゃん。
Yuno:でもギター1本で自分のルーツに戻ったことによって、すごくいいものができてきた。逆に、DTMでの音作りはタリラがずっとやってきてるから、「そこが混ざればいいものができるね」と。
──いい話。まさに、三人寄れば文殊の知恵。
田中タリラ:ちなみに、「灰々(ハイバイ)」のミュージックビデオでは小道具をいっぱい使ったんですけど、一個一個に意味があるんですよ。伝わる伝わらないは別として、曲の世界観にそぐうものしか使っていない。そこはYunoのこだわりがすごくて、深みがあるし、好きになってくれた人からしたら、「これってこういう意味じゃない?」という楽しみ方もできる。
マサ:Yunoが作るMVは、いつもそうだよね。
Yuno:僕が意図していることに気づいて、コメントしてくれる人がたまにいるんですけど、それはすごくうれしい。「灰々(ハイバイ)」のMVは、初めてのワンカット撮影に挑戦しているので、ぜひ見てほしいです。手伝ってくれた人も含めて、6人で作ったとは思えないぐらいの作品にできあがってます。
──田中タリラさん、自作曲の2曲については?
田中タリラ:3曲目の「ナイサイシンシャ」は…わからないです(笑)。なんであんな曲になったんだろうな?って、いい曲なのかどうかもわからない。
Yuno:いい曲だよ。
田中タリラ:でも5曲目はいいですね。これがあると、EPが締まると思います。
マサ:僕らも大好きですね。
▲田中タリラ(Vo&Key)
──5曲目「御蘇 -Gosu-」には、ソウル、ゴスペルの魂を感じますね。
田中タリラ:マイケル・ジャクソンが大好きなので。それを作った時期が、僕らのチームの人が1人抜ける時で、僕らはまだ何者でもなくて、だから「灯れ火よ」なんです。「交わり合う輝きと、いつの日か皆で」、それから「まだまだ半ナマなくらい」だけど、「なんやかんや生きてこれたみたい」だと。「キャリアとかまるで無い」けど、だからといって受け身になるなと。「安定のレールに乗っかってしまうな」と。それで「一矢報いる我が物顔で」と。
マサ:歌詞を読んでるだけじゃん(笑)。まあでも、このままの気持ちなんだよね。
田中タリラ:そう。「一矢報いる」気持ちで、でも「西日射すくらいの気楽さで」このままやっていけば、「間違っちゃいない」だろうと。言いたいことをめっちゃ言えたんで、すごい好きなんですよ。
Yuno:サビのコーラスには僕ら以外の、手伝ってくれた人たちや、友達、応援してくれる仲間とかの声を入れています。そして曲の最後に、ごにょごにょっていう声が入っているんですけど。あらためて、3人がお互いを思う気持ちをここに乗せようと思って、ほかの2人が聴いてない状態で、1人ずつ語っているんですよ。ほかの2人に向けた気持ちを。その内容を「僕らにわかんないようにしてくれ」と。
マサ:だから、何しゃべってるかわかんない。
Yuno:その言葉を、俺らがいつかZeppクラスの会場でワンマンをやれるようになった時に、「あの時、何て言ってたっけ?」って振り返ってみようと思ってます。
田中タリラ:「ライブで、みんなで聴こう」と言ってます。ちゃんと聴こえる声にして。
Yuno:いつかそこに行くためにあたためておく曲を、今ここで出して、大事に歌っていきたいです。
──いい話。未来の自分たちに向けた、歌のタイムカプセルですか。
マサ:本当に、そういう曲ですね。
▲Yuno(Cho&Kantoku)
──聴き方としては、オシャレミュージックとして楽しんでもらってもいいし、歌詞に込めた思いを深読みしてもらってもいいし。どんな楽しみ方もオッケー?
マサ:本当に、聴く人によって自由に楽しんでほしいです。
田中タリラ:音楽好きな人は音色とかを楽しんでもらって、そもそもメロディがしっかりしているので、大人も子供も聴ける曲だと思います。いろんな人が聴いてくれたらいいなと思います。
Yuno:僕らの音楽の対象が広いのは、誰1人置いていきたくない気持ちがあるからで、そういう精神性が曲にも出ているのかな?と思います。それこそ、捨てられたり、裏切られたり、自分が好きなことを好きにやっていきたいと言えなくなるような環境で、今まで生きてきたメンバーたちだから。この3人が集まったからこそ、追随してくれる仲間たちを置いていきたくないと思っているので、新しく知ってくれた人も、前から応援してくれている人も、どちらも好きになってもらえるような、バランスを取ったEPになっていると思います。
──集大成にして始まり。じゃあ、今後の目標はまずZeppワンマンですか。
マサ:そうですね。いつかやりたいなと思ってます。渋谷WWW、リキッドルームとステップアップし、Zeppで「御蘇 -Gosu-」を(笑)。今はとにかく、ライブやりたいんですよ。
Yuno:大きい会場で、演出で映像も使えるようになったら、かっこいいのを作ってやろうと思ってます。僕ら、まだ全然何もないのに、構想だけはすごいんですよ。こうしようああしようって、だいぶ先の話を常にしている(笑)。夢はどんどん膨らんでます。そこに向かって走るだけです。
取材・文◎宮本英夫
New EP『DUMELA』
NCS-10247 ¥1,500(+tax)
初回出荷分限定特典:「暴食(Beat Ver.)」CD-R
[収録曲]
1.灰々
2.針よ墜とせぬ、暮夜の息
3.ナイサイシンシャ
4.ユウヤケ
5.御蘇 -Gosu-
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