ヤマハの人気デスクトップアンプ「THR」に次世代アコースティックギターアンプ「THR30IIA Wireless」登場
内蔵充電池で駆動できるコンパクトな本体に、多彩なアンプやマイクのモデリングを搭載することで、登場以来人気なのがヤマハのTHRシリーズのアンプ。そのエレアコ用バージョンに、ワイヤレスに対応した「THR30IIA Wirelesss」が登場した。マイクモデリングがよりクリアで自然なサウンドに進化したほか、マイク入力も新たに搭載して弾き語りに最適なアンプになっている。さらにUSBオーディオインターフェイスとしてDTMにも使えるし、Bluetoothスピーカーにもなる。屋外やストリートライブでの弾き語りだけでなく、幅広い環境で活躍してくれる製品だ。
▲本体はコンパクト、上部のハンドルで楽に持ち運びできる。Line6のワイヤレストランスミッター「Relay G10T」(別売)で、ギター入力に差し込んでおけばトランスミッターの充電が可能。
「THR30IIA Wireless」は、自宅での使用はもちろん、ライブなどに持ち出して使うのにも便利な機能が満載されている。THRシリーズの製品らしく本体はとてもコンパクトで、4.4kgと軽量。上部に頑丈なハンドルがついていて、片手でも楽に持ち運びできる。内蔵バッテリーでの駆動も可能で、これは電源の確保が難しいストリートライブなどに重宝する。
そしてワイヤレスレシーバーの機能が内蔵されているところも、ライブ向きなのはもちろん、自宅ですぐに弾きたいときの煩わしいケーブルでの接続や面倒な設定も必要ないのがポイント。Line 6の「Relay G10T」トランスミッターに対応していて、トランスミッターをギターに差し込むだけで最適なチャンネルが自動設定されるから、面倒な設定は不要で、すぐにワイヤレスで演奏を楽しめる。
では、実際の音や使い勝手を細かく見ていくことにしよう。
■エレアコを自然な音にしてくれるマイクモデリング
サウンドの面で大きな特徴となるのが、エレアコをプレイする際に便利なマイクのモデリングが用意されていることだ。エレアコは便利だけれど音があまり好きになれないという人でも、これを使えばマイク録りしたようなナチュラルなアコースティックギターの音を鳴らすことができるというわけ。
エレアコ用のモデリングは3タイプ用意されていて、TONE SELECTのつまみで切り替えることができる。「CONDENSER」はコンデンサーマイク、「DYNAMIC」はダイナミックマイク、そして「TUBE」は真空管マイクの「TUBE」のモデリングだ。
実際に使ってみた印象は、コンデンサーはとてもナチュラルでアタックが明瞭なサウンド、ダイナミックは締まって力強い音になり、真空管は中域の艶やかさがぐっと前に出てくるといった感じ。3タイプに共通して言えるのは、ピエゾピックアップ特有のパリパリ、ジャキジャキというクセのある音がうまい具合に抑えられ、マイクで拾った音にかなり近いナチュラルな鳴りになるということ。どれも自然で良い音だ。TONE BLENDで、モデリングのサウンドと、つないだギター本来のサウンドの音量バランスを調整することもできるのだが、TONE BLENDのつまみをWETいっぱいに回して、モデリングだけの音で弾いていてもまったく違和感はなかった。
このほかに、エレガットなどのナイロン弦用の「NYLON STR」もあるし、ギター以外の楽器用にモデリングを使わない「FLAT」も用意されているので、多彩な用途で使えるだろう。
■クリーンなサウンドのエフェクトはアプリからも設定可能
コーラスやディレイ、リバーブといった、アコギでよく使うエフェクトも搭載する。後述の専用アプリを使うと細かい設定もできるのだが、本体ではつまみで強さを設定するだけのシンプルな構成。そのぶんライブ中でも迷わずすばやく使えるだろう。コーラスとディレイはEFFECTのつまみ一つにまとめられていて、つまみの位置によって単独のコーラス、コーラス+ディレイ、単独のディレイのいずれかが使えるようになっている。またリバーブは、同様に一つのつまみでショートまたはロングを使える。
どのエフェクトも、どちらかと言えば効果は控えめで、音色を強烈に変えるようなエフェクトではないが、強めにかけても音がくもったりぼやけたりすることはなく、マイクモデリングと同様にとても自然でクリーンなサウンド。エレアコとの相性がよく、使いやすいエフェクトだ。
▲コーラス、ディレイ、リバーブを内蔵。一つのつまみに複数のエフェクトが割り当てられていて、つまみの位置で使うエフェクトとかかり具合を決める。
専用アプリのTHR Remoteを使えば、Bluetooth接続したタブレットやスマホから、さらに細かい設定をすることができる。コンパクトエフェクターのようにつまみが並んだ画面から、たとえばコーラスならスピードやデプス、フィードバックといったパラメータを簡単に操作することが可能だ。また、本体にはつまみがないが。実はコンプレッサーも内蔵されていて、アプリから使うことができる。レベルと感度だけを設定できるシンプルなコンプレッサーなので、初心者でも使いやすいだろう。
エフェクトとしてもう一つ注目したいのが本体に搭載されているSTEREO IMAGERだ。オンにするとギターサウンドが左右にかなり広がって、立体的に聴こえるのが面白い。WIDEにすると、ステレオになったのがはっきりとわかり、WIDERにするとさらに広がって、左右に分かれた感じで聞こえてくる。これがとくに便利なのが弾き語りのときだろう。左右に分かれたギターの間のセンターからボーカルが抜け出てくるように聴こえるから、ボーカルをより際立たせることができる。
これらのエフェクトの設定だけでなく、マイクモデリングやBASS、MIDDLE、TREBLEの3つのEQなどの設定もアプリから行えるし、全体の設定は5つまで保存することができる。これはアプリまたは本体のUSER MEMORYボタンで瞬時に呼び出せるので、曲ごとに違う音色に切り替えるのも簡単。このあたりもライブで使いやすいポイントだ。
▲写真左:専用アプリのTHR Remoteでは、コンパクトエフェクターのような画面でエフェクトの詳細設定を行なえる。アプリからはコンプレッサーも設定できる。
写真右:THR Remoteアプリからすべての設定を行なうことができる。設定をユーザーメモリーに保存しておけば瞬時に切り替えが可能だ。
■高品位マイクプリアンプ搭載のマイク入力
そして、このモデルで新たに搭載されたのがマイク入力。ボーカルマイクを接続できるので、これ1台で弾き語りのライブが簡単にできる。マイク入力の端子はXLRと標準フォーンのコンボジャックになっていて、確実に接続できるキャノンタイプの端子のマイクケーブルを使えるのはうれしいところだ。
▲高品位マイクプリアンプ「D-PRE」を搭載するマイク入力。端子はXLRとフォーンのコンボジャック。すぐそばの小さいつまみでゲインの調整もできる。
実際にマイクを接続して使ってみたが、ハイエンド機器にも使われているマイクプリアンプ「D-PRE」が搭載されているだけあって、色付けのない素直な音。率直にいい音だと感じられた。弾き語りをしても、ギターもボーカルもどちらもくっきりと聴こえるし、前述のSTEREO IMAGERを使えばボーカルをさらに前に出すこともできる。本当に弾き語りにはもってこいのアンプだと実感した。さらに、ボーカルにはギターとは独立したリバーブも使える。小さめのホールで歌ったような響きになるリバーブで、これもギターエフェクトと同じく効果は控えめだが歌声にしっかりと艶を出してくれる。とくに教室や小さな会場、ストリートのような響きの少ないところで効果的に使えそうだ。
■自宅での楽曲制作もフォロー
弾き語りライブに便利な「THR30IIA Wireless」だが、自宅での練習や楽曲制作に便利な機能も搭載している。たとえばBluetoothスピーカーとして使えるので、スマホなどから気に入った楽曲を流しながらギターの練習も行える。また、ドライバ不要でWindowsやMacとUSB接続でき、オーディオインターフェイスとして使えるので、DAWでエレアコの演奏を録音するのも簡単だ。超メジャーなSteinberg社製DAWソフト「Cubase AI」のダウンロード版ライセンスが付属するので、これまでDTM用の機材やソフトを持っていなかった人でも、すぐに楽曲制作を始めることができる。さらに、楽曲にクリックを追加したり、テンポを変えたりして練習をフォローしてくれる無料アプリ「Rec'n'Share」(THR30IIA Wirelessと組み合わせた使用はiOSデバイスのみ対応)にも対応している。このアプリがインストールされたiPhone/iPadとTHR30IIAWirelessをカメラアダプタなどを介して接続すれば、弾き語りの動画を撮影して編集、SNSへのアップロードまで簡単に高音質で行うことができる。
このように、自宅からライブ会場まで、さまざまなところでエレアコを最大限に楽しめるのがこの「THR30 II A Wireless」の魅力と言えそうだ。弾き語りライブをしたい人はもちろん、エレアコをこれから始めたい人、そしてSNS用の弾き語り動画を手軽に作成したい人まで、すべてのエレアコ弾きにおすすめできる製品だ。
製品情報
価格:オープン
発売日:2020年11月6日
THR30IIA Wireless
オープン価格
・9cmフルレンジスピーカーを2基搭載した30W仕様(*バッテリー駆動時は15W)
・3つのリアルなマイクモデリングに加え、ナイロン弦ギターに最適なモードとフラットモードを搭載
・プロフェッショナル品質のマイクプリアンプD-Preを採用したマイク入力端子搭載
・Bluetooth®接続により、ワイヤレスでスマートフォンやタブレットからオーディオ再生やアプリでの外部コントロールが可能
・ステレオ出力に圧倒的な広がり感を生み出す技術「エクステンデッドステレオ」を搭載
・別売のLine 6®Relay G10Tトランスミッターを用意することでワイヤレスギター演奏が可能
・充電式バッテリーを内蔵し、自由に持ち運んで演奏可能
・USBクラスコンプライアント対応により、ドライバーインストール不要でパソコン/スマートデバイスと簡単に接続可能
・Steinberg社の音楽制作ソフトウェアCubase AIとCubasis LEのダウンロード版ライセンスが付属
・無料のアプリケーションRec'n'Shareを使って演奏動画を気軽にSNSにアップ可能
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