【インタビュー】Tiara、デビュー10周年を見つめて

■すごくすっきりしています

──そして2020年、Tiaraさんは10月から3ヶ月連続でデジタルベストアルバムをリリース。第1弾となる10月7日リリースの作品は“コラボベスト”ということで、コラボ曲のみが収録されています。多くの方々とコラボレーションをしてきたTiaraさんが思う、コラボレーションにとって大事なこととはどういうものでしょうか。

Tiara：ハーモニーをどううまく作るかが大事だと思うんですけど、そこで重要なのがコラボ相手との関係性かなと思いますね。コラボさせていただいたみなさんは昔から知っていたり、つながりがある方々ばかりで、“その人とだからこそ作れる空気感”で曲も歌い方も変わっていくんです。距離感や関係性、思っていることは曲に出ますよね。あと、コラボレーションではふだん歌わないキーも多いんです。それこそ今回新曲として収録しているKくんとのコラボ曲「あいのかたち with K」は、Kくんとバランスを合わせたキーになっているので、わたしはあまり慣れていない音程なんですが、でも“ふだんより低い声もいいね”と言っていただくことが多くて、“こういうキーも歌えるんだ”や“わたしの低い声はこんな魅力があるんだな”という発見がありましたね。

──Kさんとのそもそものご縁は、2013年のクリスマスコンサートだったそうですね。

Tiara：その時からKくんは人見知りのわたしにもスッと溶け込んでくれる素敵な方で。それから交流はなかったんですけど、今回のベストアルバムに入れる新曲を収録するにあたり、“誰と一緒にやりたいかな？”と考えたときにパッとKくんが浮かんだんです。オファーしたら喜んで受けてくださって、うれしかったです。和やかな雰囲気でレコーディングができました。



──「あいのかたち with K」は“変わりゆく愛のかたち”がテーマになった楽曲です。

Tiara：最初に会ったときはお互い結婚もしていなかったんですが、偶然にも結婚して子どもができた時期もちょうど同じくらいだったんです。“そんなわたしたちがどんなラブソングを歌うと説得力があるんだろう？”とすごく悩んで、Kくんやスタッフさんたちとも意見を出し合いながら見つけたのが今作のテーマでした。どんなに好き同士だったとしても、年月が経てばその関係性や立場に変化が出るのは当然のことだなと思っていて。なかなか昔の関係性に戻れないことへの寂しさや、いつか子どもが巣立って再びふたりきりになったときにどうしよう？と、不安な方々もきっと多いと思うんですよね。

──“永遠に変わらないものなんて何処にもない／この気持ち以外は… lovin’you”という歌詞に安心する人も多いと思います。

Tiara：歌だから言えることってありますよね。わたし自身、あんまり気持ちを言葉にすることが少ないので、この曲の歌詞のようなことをふだん言葉で伝えることはないんです（笑）。“関係性を変えながら、ふたりだけのかたちを作っていけたらいいな”という前向きな気持ちで作っていきました。コラボ曲でここまでアコースティックな楽曲も初めてで。自分の思っていることがすんなりと乗せられるメロディだったこともあって、曲をいただいて1時間くらいで歌詞を書き上げたんです。

──へえ、それは巡り合わせですね。

Tiara：いろんなものがタイミングよくぴったり交わって生まれた曲ですね。コラボ曲はソロで挑戦できないテンポにも挑戦できたり、学ぶことが多いですし、コミュニケーションを大事にしながら制作しています。


──ベストアルバムリリースコメントで、光永亮太さんが「Sweet Love with 光永亮太」の制作秘話を明かしていました。“青臭くもとっても刺激的でクリエーティヴな時間でした”と。

Tiara：共作にあたって、わたしの家の近所のファミレスで深夜ひたすら恋愛観を語り明かしたんですよね（笑）。わたしの当時の悩みを聴いてもらったりもしつつ、歌詞になりそうなフレーズをどんどん書き留めていきました。お互いの胸の内をさらけ出していくのは恥ずかしいんですけど、光永くんがとても熱い方なので、いい曲を作るにはそれだけさらけ出す必要があるとも思ったんですよね。

──「WINTER GIFT with MIHIRO 〜マイロ〜」でコラボレーションをしたMhiroさんは“前々からTiaraさんの歌声を聴くと雪をイメージする”とコメントを寄せてらっしゃいました（※MIHIRO 〜マイロ〜は、2006年にアーティスト名を「Mhiro」に改名）。

Tiara：Mhiroさんがそんなことを思っていたなんて、今回のコメントで初めて知りました（笑）。実は昔からずっとMhiroさんのファンだったんです。デビュー前、別のアーティストさんのバックコーラスでライブイベントに参加させていただいたときにMhiroさんにお会いしたことがあって。そのときに“ずっとファンなんです。いつか一緒に歌えるようにがんばります”と思い切って伝えたことがあったんですが、それが叶ったのですごく感慨深いコラボレーションでした。こうやってベストアルバムに収録された17曲の曲目リストを見てみると、なかなか深く話す時間がなくて“もうちょっとお酒を飲んで話してみたかった……！”と思う方もいらっしゃって。そんな思い出も1曲1曲にありますね。



──そんなベストアルバムの第1弾をリリースして、現在の心境としてはいかがでしょう？

Tiara：ほんと、ようやく出せたなーって気持ちです。去年の半ばから構想を練って、年明けから動き出そう！と思っていた矢先に新型コロナウイルスの影響でどんどん後ろ倒しになっていって、ストップして。表現したくてもできない日が続いたけど、それも意味があることなんだなと受け止めて。後ろ倒しになったことでフィジカルリリースからデジタルリリースに変わったんですが、でもだからこそ3部作リリースにもできましたし、収録分数の制限がなくなったぶん、曲もたくさん入れられるようになりました。自分の作品を生み出せて、すごくすっきりしています。

──11月のカバーベスト、12月のファン投票ベストと、華やかな2020年の締めくくりになりそうですね。

Tiara：ファンセレクションベストはどんな楽曲が選ばれるのか、わたしもすごく楽しみなんです。今回のリリースを機にあらためて自分の足跡を辿って、デビュー当時に出会った全国の方々を思い出したり、あのときの食べ物美味しかったなー……と物思いに耽ったり（笑）。時間を取れたぶん、じっくり振り返りながら制作できたベストアルバム3部作ですね。

──音楽といい関係を築けているとお見受けしますが、今後どのように音楽活動を続けていこうと考えてらっしゃいますか？

Tiara：子育てとバランスを取りながら続けていけたらいいなと思ってますね。最後にカバーアルバムを出してからいろんな楽曲が世に出ているので、またカバーアルバムも作りたいなと思いますし、原点に戻ってR&Bをやりたいなとも思ったりもしていて。それらが実現できるよう、今後もがんばっていきたいですね。

取材・文◎沖さやこ

▲Tiara／『All About Tiara Ⅰ / Collaboration Best』