【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.75「釣り」

9月になり、人間椅子は次のアルバムのための曲作り期間に入りましたが、映画だのリハだのと色々な用事が出来て、まだまだそのモードに移れないでいます。そんな時は思い切り逆のことをして、焦る気持ちを掻き立てるほうがいいと思い、明日はスタッフであり第四のメンバーでもある川端くんと釣りに行きます。郵便局の元同僚の今井さんも一緒です。コンロ、ガス、鍋、油、包丁など、釣った魚を食べる準備も整い、あとは川端くんが迎えに来てくれるのを待つだけです。こんな風にわくわくした気持ちになるのは久しぶりです。明日のために今日は早く寝ます。

翌朝の9時、車でお迎えが来て平塚の海に向かいます。上州屋で投げ釣りの仕掛けなどの買い物をしていざ灼熱の埠頭へ。それにしても本当に暑かった～しかも全く当たりがありません。すっかり諦めの空気が漂う中、川端くんがすっと立ち上がり「ちょっと行ってきます」と言い残して出掛けます。なんだか頼もしいお父さんのようです。しばらくして颯爽と戻ったお父さんが手にしたサビキ釣りの仕掛けに替えた途端、なんと嘘のようにガンガン釣れるではありませんか。さすが川端くんです。こういう光景、バンドのツアー中もよく見かけます。ベースの音が出ないとシューっとジャックにスプレーして復活させてくれたり、喉が痛いとこぼすとホットレモンを用意してくれたり、メンバー間の雰囲気が険悪になり出すと各々の愚痴を聞いてくれたり、もはやマネージャーの域を超えて、カウンセラーと言ってもいいくらいの大事な存在です。釣った魚は10センチのイワシが30匹ほどですが、それを調理する手際の良さも素晴らしく、ビニール袋に小麦粉を入れて魚にまぶしたのを見て、あとの二人は「おぉー」と感心することしきりです。油でこんがり揚がったイワシに塩を振って食べましたが、その美味しいことといったらありません。美味しいのはイワシのおかげですが、なぜか川端くんのおかげという気分になってしまいます。帰りも家まで送ってもらった上に、数時間後には本日の記念写真まで送ってもらいました。どこかの旅行会社が企画するイベントのように至れり尽くせりの一日を過ごすことが出来ました。さすが川端くんです。

更に翌日の今日、顔を洗って鏡をのぞくと大変なことになっています。頭に手ぬぐいを巻いて釣りをしたために、おでこに線が入ってしまっていたのです。線の上は白く、下は真っ赤です。VAN HALEN「Diver Down」のジャケットのようです。気分はAC/DC「Powerage」のジャケットのアンガスのようです。


このような少し残念な気持ちを慰めてくれるのにうってつけなのが、THIN LIZZYの「Whisky In The Jar」のギターソロです。もちろんPhil Lynottの歌もいいのですが、Eric Bellの哀愁を帯びたギターソロがたまりません。「ザ・ストラトキャスター」とも言える堅い音色は素晴らしく、何より歌うような旋律が深く心に刺さります。おでこに線が入ってしまった者の心の傷を優しく癒してくれます。この曲はシングル曲なのでアルバムには収録されていませんが、ボーナストラックとして聴くことができます。もちろんベスト盤にも収録されています。自分は3rd「Vagabonds Of The Western World」のボーナストラックで聴いています。このアルバムはTHIN LIZZYの最高傑作とも言える名盤です。M4「The Rocker」はライブの最後を飾る代表曲で、その長いギターソロはやはり「歌って」いるのですが、こちらは攻めの旋律で聴く者の心を揺さぶります。全曲かっこいいので、是非とも聴いてほしいアルバムです。ちなみに人間椅子の自分の中でのギターソロベストワンは「菊人形の呪い」の後半部分のソロです。なぜなら、半分寝ながら聴いていたら天国が見えたからです。


さあ、明日から曲を作る予定ではいますが、多分だめでしょう。「どうぶつの森」で新しいどうぶつを招待しているうちはだめです。あ、そういえば川端くんもスマホ版の「どうぶつの森」、「ポケ森」をやっていることが判明したので早速IDを交換して「フレンド」になりました。川端くんの作ったキャンプ場に出かけてみましたが、実生活ではあんなにきちんとしているのに、ゲームの中ではぐだぐだで手抜きだらけなのでした。


人間椅子 無観客ライブ配信
配信日時：9月27日（日）20時～


映画『人間椅子 バンド生活三十年』
9月25日（金）より全国公開
上映館　http://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=ningenisu

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