【インタビュー】めいちゃん、憧れの“場所”から発信するメッセージ
今年3月に前作から3年ぶりとなるアルバム『大迷惑』をリリースし、6月からは自らが詞曲を手掛けた配信シングルを次々と発表するなど、歌い手としての魅力と才能を爆発させながら快進撃を続けているめいちゃん。昨年からは3人組YouTuber「肉チョモランマ」としても活動するなど、右肩上がりの人気と知名度を誇る注目の人物だ。BARKS初登場となる今回は、音楽遍歴や制作にまつわるエピソードから座右の銘まで、ユニークかつ丁寧な言葉でじっくりと語ってくれた。
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■リアルと違って、阻まれるものがない
──歌い手として、また最近では同じく人気歌い手であるGeroさん、コニーさんと一緒に「肉チョモランマ」という3人組YouTuberとしても活動。大変多くのフォロワーを持つめいちゃんですが、ちなみに、ご自身の職業を聞かれたらいつもなんと答えているんですか?
めいちゃん:職業…!僕のことを全く知らない人から聞かれたら「庭師」って答えます(笑)。
──庭師(笑)!
めいちゃん:ややこしいじゃないですか。まず「歌い手」っていうのも説明するのが難しいし、「YouTuber」っていうのもなんか小っ恥ずかしい(笑)。それを両方やっているとなるとそれだけで5時間くらい要するわけですから、「庭師です」って答えています(笑)。
──庭師以外にもバリエーションはあるんですか?
めいちゃん:「指紋占い師」。あとは「川崎にあるパチンコ台を作る工場で週1働いている」とか(笑)。
──うっかり信じてしまいそうになる感じがコワイです(笑)。今や歌い手としてもYouTuberとしても大人気のめいちゃんですが、ご自身の知名度というか、世間に認識されてきたなという手応えみたいなものはいつ頃から感じていましたか?
めいちゃん:僕は、2回に分かれていると思っていて。最初は、XYZという歌い手さんのコンピライブにお誘いをいただいた時。あとは肉チョモランマを始めて1年後くらいですね。今年の初めくらいからちょっとずつ、YouTubeで知ってくれた人と歌い手として知ってくれた人の認識が一致してきたのかなって思える瞬間があって、そこでちょっと感じることができました。
──今年の初めくらいというと、めいちゃんのアルバム『大迷惑』のリリース前後ですか。
めいちゃん:そうですね。アルバムが3年ぶりというのもあって、改めてそこで歌い手としての自分も表現できたタイミングでした。
──その3年ぶりにリリースされた『大迷惑』、いいアルバムでしたね。どの曲も本当に素晴らしくて。
めいちゃん:ありがとうございます。やっと自分を表現できる1枚ができました。基本的には僕が大好きな作家さんに書いていただいた曲なんですが、今回は自分でも3曲書かせてもらいました。
──これはちょっと驚きでしたが、あのBRADIOとコラボした楽曲もありましたね。
めいちゃん:はい。もともとああいうファンク系の音楽が大好きでよく聴いていたので、アルバムを作る際に当たって砕けろの精神で(レコード会社に)聞いてもらったら、なぜかいけたっていう(笑)。
──曲を書いてもらうだけではなく、一緒に歌ってライブまでやっちゃうところにとても驚きました。そういうコラボや作り手の方へのオファーなどは、ある程度自分の中のイメージやアイデアが固まった状態でお願いしているんですか?
めいちゃん:基本的には自分が歌っているビジョンがある程度想像できて、おこがましいですが、この方に書いてもらえたら絶対いい作品になるな、もっといいアルバムになるなって思えた時にお願いしていますね。そういう時に一番大切なのは、リスペクトの気持ちだと思っています。
──表現力や歌唱力という面ももちろんですが、個人的には前作よりもかなり、めいちゃんの音楽に対する愛が深まった作品だなという印象を持ちました。
めいちゃん:もともと歌うことは大好きだったんですが、「歌ってみた」を始めた当初はそこまで考えていなかったというか、趣味の延長線上にあるものだったんですよね。でも前作からここまでの間で、趣味ではなくちゃんとお仕事として歌わせていただくことが増えて。そういうことによる気持ちの変化というものは、すごく大きくあったと思います。そこから音楽への気持ちの深まりみたいなものも増えたというか。だから、全然意味が違うアルバムになっていると思います。
──しかし『大迷惑』というタイトルはインパクトありましたね。逆説的に、すごい愛も感じられて。
めいちゃん:このタイトルは、最初に考えました。いろんな人に迷惑をかけようと思って(笑)。自分の好きな方々にお願いをして、スタッフさんにもお願いをして、いろんな方を巻き込みながら作れたらいいなというコンセプトがあったので。
──なるほど。言葉選びのセンスもそうですが、影響を受けた人やものなど、今の自分のルーツになっているのはどういうものなんですか?
めいちゃん:好きなアーティストで言うと、東京事変や椎名林檎さんなんですよね。彼女もすごく魅力的な言葉選びをされる方だし、アイデアに富んでいる。そこに影響を受けているなというのは自分でも思いますね。好きになったのは解散をした後だったんですが、そこからいろんなアーティストに触れるようになって、今に至っている感じです。
──音楽は子供の頃から身近にあったんですか?
めいちゃん:母親が音楽好きで、よく聴いていましたね。全然プロとかじゃないんですが、母親はなぜかボイストレーニングにも通っていて、歌うっていうこと自体も身近と言えば身近でした。そんな中で僕自身もニコニコ動画にハマって歌ってみたの世界を知り、やってみようかなって思うようになりました。それが10年くらい前ですね。
──自分もやってみようと思ったきっかけは何かあったんですか?
めいちゃん:歌を歌うというより、その“場所”に憧れていたんですよ。歌い手さんって当時からすごく特殊で、本当はプロなんだけど見え方としてアマチュアっぽいから、自分達に一番近いところにいる。素人なのにこんなにすごいんだというか、ニコニコ動画では英雄みたいになっていたりして、すごいな、羨ましいな、いいなっていう気持ちはありました。だけどまだ、自分もやろうという気持ちにはなっていなくて。でもある時、Geroさんのインタビュー記事を読んでいたら「興味を持っている人は、今すぐケーブルとマイクを買って来い!」って書いてあったんですよ。とりあえず買ってみるかと思って、お年玉で買ったのがきっかけでしたね(笑)。電気屋さんの、安いマイク。
──お年玉っていうところが可愛いですね(笑)。
めいちゃん:僕、なぜか500円玉が好きで。お年玉も全部500円玉にしていたから、チマチマと細かいものを買っては無くなっているっていうタイプだったんですが、その時たぶん初めて、お年玉をちゃんと貯めてマイクを買った気がします。
──そのきっかけをくださった方と、今YouTubeを一緒にやれてるってすごいですね。ガチで女装をするなど、魑魅魍魎の世界も楽しみながら(笑)。
めいちゃん:本当に!光栄です(笑)。
──そうやってフラットにコラボできるのも、ネットというフィールドの良い点なのかなと思うのですが。本人同士がちゃんと向き合って、面白いことを生み出そうとしている気がします。
めいちゃん:そうですね。そういう意味では、クリエイターがすくすくと育ちやすい環境と言えるのかもしれないです。リアルと違って、阻まれるものがないじゃないですか。
──とてもいい状況で活動されているんですね。そんなめいちゃんにも、ここはもっとこうしたいとかここを変えたいといった部分もありますか?
めいちゃん:僕、基本的にずっと劣等感を持っているタイプなんです。ずっと曲を作りたいと思っていたので、数年前から本格的にギターやピアノを始めたり、音楽理論を勉強したりしてきたんですね。でもやっぱり、理論なんか学ばなくてもすごい曲を作っている人とかたくさんいて。いっぱい、見えるわけですよ。それこそネットだから。貪欲と言いますか、あまり自分に満足できない性格なので、歌のスキルも作詞や作曲のスキルももっともっと上げていきたい。だから、改善点しかないですね。
──そのためのガソリンになっているのが、劣等感だと。
めいちゃん:そうですね、活力です。常に何か上を目指している気はします。
──では具体的な曲作りについても聞いてみたいのですが、制作はどんな感じでやっているんですか?
めいちゃん:自宅で、基本1人で全部作って、編曲者さんに投げる感じですね。まだそんなにスキルがないので、作るのはこういう方向性の曲だなっていうのがわかるぐらいのところまでですけど。
──自宅での制作の環境も整い、仲間も増えてきた今は音楽を作る人生としてとても豊かな状態のようですね。
めいちゃん:はい、誰よりも豊かだと思います。そろそろ天罰じゃないですけど(笑)、とんとん拍子に来すぎて怖いんですよね。いいスタッフさん、いい仲間、いい環境で歌わせてもらえているので、怖くなっちゃうくらいなんです。このあと何かヤバいことが起きるんじゃないかって思うくらい、特に先輩にも良くしてもらっていますし。
──そういう時にこそ、指紋占いの能力を発揮しましょう(笑)!
めいちゃん:あ!(自分の指先を見ながら)「このあとバズる」としか出てないですね(笑)。
──最高です(笑)。しかし常に劣等感を持ちながら、とんとん拍子に来ている自分のことも認めていて。ちょっと不思議な感じですね。
めいちゃん:だからきっと、ここまで上手くすり抜けてやって来たみたいな(笑)?自分だからやって来られたという自信ではなく、なんとかここまで…っていう感じだと思っています。奇跡的にたくさんの人に聴いてもらえて、応援してもらえて。
──そういう感謝の気持ちは、ライブの時も滲み出ていますよね。パフォーマンスもすごく堂々としていて、劣等感があるなんて信じられないくらいです。
めいちゃん:もともと目立ちたがり屋ではあるので、人前に立つのが好きと言えば好きなんですよ。でも本当はすごくあがり症だし、本番で上手く結果を出せないタイプの人間。ミスっちゃったらどうしようとか心配の方が大きくて、XYZのステージに立つまではライブって苦手意識の方が強かったりもしたんですよね。だけどそこも先輩の助けがあり、楽しく歌える環境がどんどん整って来て、堂々と歌えるようになって来たんです。
──お客さんが自分の歌を受け入れてくれているという安心感や自信も、背中を押してくれていたんでしょうね。
めいちゃん:最初の頃は、お客さんが怖かったんですよ。お金を払って、好きで見に来てくれているんだっていうことに気付けていなくて。そんなめちゃくちゃありがたいことに気付けていなかったって、本当に不甲斐ないです。
──だけど今は…。
めいちゃん:何千人に見られようが、平常心でいられるようになりました。いや、嘘ですけど(笑)。
──半分以上、本心だと思います(笑)。
めいちゃん:(笑)。もちろんいい緊張はしますけど、自分を見失わないでいられるようにはなったかなと思っています。
──ちなみにライブの演出や選曲も、ご自身でアイデアを出されるんですか?
めいちゃん:はい。自分もお客さん目線に立ってみるというのが大事だと思っているので、ここでこういう曲を入れたら嬉しいだろうなとか、こういうサプライズがあったらいいだろうなとか、そういうことは常に考えながらやっていますね。
──そういう意味では、6月から配信されて来た3曲がライブのセットリストに加わることで、また新しい景色が組み立てられそうですね。
めいちゃん:そうですね。目を閉じるとライブが想像できるような曲になったかなと思っているので、早く披露したいです。
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