【インタビュー】トップハムハット狂、妥協なしで生み出した『Jewelry Fish』

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■来年の12月とかですよ(笑)

──その中でも、いかにも「夏」だなと思った曲が、「La Di Danimal」でした。めちゃめちゃハードでかなり騒げる感じですね。

トップハムハット狂:最近はあんまりこういうフローをしてなかったんですけど、それこそネットラップをバリバリやってたときは、こういう奇声にも似た声をあげる感じは好きでやっていたので、“そういう曲を聴きたいな”って言われることもたまにあったんですよ。だから、夏だしちょうどいいかなと思って、そういう人達用のはっちゃけた曲にしようと思ってました。

──「夏」と聞いたときに、たとえば「夏フェス」とか「騒げる音楽」をイメージされる方って結構多いと思うんですけど、今回のEPはどちらかというとメロウなものや軽快なものが多い印象もあったので、趣味趣向的に「夏=賑やか」みたいな感じではないのかなと思ったんですが。

トップハムハット狂:確かに割合でいうと、騒ぐよりも切ないほうが印象あるかもしれないですね。なんか、夏休みって、始まったときは「うわー! めっちゃ休めるー!」って感じだけど、気付いたら終わりを迎えているじゃないですか。そこの切なさというか寂しさみたいなものを、たぶん子供の頃からずっと引きずってるんですよね。夏は楽しいことが終わりを迎える季節で、なんか寂しいよねっていう。

──「YOSORO SODA」も感傷的な雰囲気がありますけど、リリックに『Sakuraful Palette』に収録されていた「Windy Indie」が出てきてますよね。春のEPに収録されていた曲の続きが、夏のEPに収録されているという流れもおもしろいし、内容としても、過去を振り返るようなニュアンスになっていて。



トップハムハット狂:今回からRambling RECORDSじゃなくて、BUTCHER SWING RECORDSからリリースすることになったんですけど、これまでよりも大きなコミュニティに向けて曲を作っていかなきゃいけないなっていう意識になりまして。だから、ちょっと意識改革をしたいなっていう曲でもあるんですよね。そういうところで船出というか、船の要素を使って表現したいなと。で、「Windy Indie」を入れたのは、あの曲は春のEPに入れているけど、わりと初夏っぽいというか、5月とか梅雨前みたいなイメージなんですよね。

──ああ、確かに。軽快でつい口ずさみたくなる感じが初夏っぽいです。

トップハムハット狂:で、「YOSORO SODA」は梅雨明け直後みたいなイメージで作ったんです。だから、そこの繋がりで入れたいなと思っていた感じですね。自分としては、気持ちの整理というか、何年後かにこの曲を聞いたとき、当時の気持ちを思い出せたらいいなっていう感じで作ってました。

──あとは「Lofi Hanabi」みたいな、内省的だけどすごくエモーショナルな曲もあって。これは、夏といえば花火だろうと。

トップハムハット狂:そうですね。花火の曲を作りたいことと、あとはローファイ・ヒップホップの要素を組み込める曲にしたいというのを、コライトしたShirothebeatsと話し合って、一緒に作っていきました。この曲で一番伝えたかったのは〈天高く明瞭に君の目に映るようなHifi Starじゃない それに比べれば曖昧な俺はLofi Hanabi〉のところで。ここが現状の自分を表しているかなって。一般的なメディアにもガンガン出ているスターがいるけど、俺はまだ手が届く位置にいるというか。そういう距離感みたいなものとか自分の現在地を再認識して、ここから頑張っていくかっていう。

──フックのメロディーが童謡的というか、ヨナ抜き音階的でちょっと懐かしさがありますけど、1枚に1曲はこういうタイプの曲を収録されてますよね。

トップハムハット狂:そもそも自分がヨナ抜きをだいぶ好きっていうのと、今言われた童謡も好きなんですよ。だから、好きなものを作ると、意識せずとも自然とそっちに寄っていく感じがあるんですよね。

──ローファイ・ヒップホップとヨナ抜きって相性いいですね。

トップハムハット狂:自分としては、基本、ヨナ抜きは全部いけるんじゃないかなって思ってるんで(笑)。ただ自分が好きなだけではあるんですけど。

──(笑)ヨナ抜き最強説ですね。1曲目の「Frisky Flowery Friday」は、イントロのセミの声からしてわかりやすく夏を提示している曲でもありますけど、先ほどお話しされていたコロナのことがスパイス的にかかってますよね。〈宇宙は広いから3密にあたらないよね?〉とか。

トップハムハット狂:この曲はギタリストのJohngarabushiさんとコライトしたんですけど、(歌詞は)コロナ期間中の気持ちを書いている感じはありますね。タイトルの「Flowery Friday」って、直訳すると「花金」じゃないですか。緊急事態宣言が出るか出ないかぐらいのときから、ライブがどんどんできなくなっていったんで、自分の部屋から配信ライブができないかなと思ってやってみたんですけど、いまも月1でどこかの金曜日の夜にやってるんですよ。そこについての曲でもあるんですよね、実は。

──〈巡る WEB 宇宙の果て 仮初の遊び Found a away〉なんてまさにですね。オンラインライブを観に来てくれた人に向けているというか。

トップハムハット狂:そこに気づいてもらえたら嬉しいなっていう思いもありますね。

▲トップハムハット狂/「Jewelry Fish」

──かなり濃い作品になりましたが、四季シリーズも残すところは「冬」のみです。現時点で構想とかはあるんですか?

トップハムハット狂:いや、まだ全然です。こういうものがやりたいなっていうのはあるんですけど、1、2個ぐらいしか決めてないので、ここからいろいろ経験していったものが反映されると思います。

──でも、来年の1〜3月ぐらいにリリースしようと思ったら、そろそろ……っていう感じにもなってきますよね。

トップハムハット狂:いや、自分の頭の中では来年の12月とかですよ(笑)。

──はははははは(笑)。

トップハムハット狂:やっぱりゆっくり作りたいんで。

──とにかくマイペースでやりたいと。

トップハムハット狂:やっぱり言いたいことのストックがどうしても尽きちゃうじゃないですか。それを無理やり絞り出して薄くなってしまうのは本望ではないし、ちょうどいい塩梅の濃度が出せるぐらいの経験をしてから作ったほうが絶対にいいものはできるんで。自分のペースは守っていきたいですね。

──どういう作品になるか楽しみにしてます。あとはライブも。中止になってしまった<TOPHAMHAT-KYO Release Live & FAKE TYPE. Rebirth Live>は、ご自身としてもやりたいでしょうし。

トップハムハット狂:そうなんですよね。<Rebirth Live>と言っているのもあって、ライブ中に何かしらの発表をする予定だったんですけど、本当にタイミング悪くできなかったので。

──実際に「Princess♂」や「Mister Jewel Box」のトラックはDYES IWASAKIさんが手がけられていて、FAKE TYPE.の編成で制作されているわけですし。

トップハムハット狂:だから、コロナがある程度大丈夫になって、ライブハウスにお客さんを……入れるかどうかはわからないけど、絶対にやりたいと思ってますね。でも、それももうじきの辛抱なんじゃないかなと思ってます。

取材・文◎山口哲生

New EP『Jewelry Fish』

2020年9月2日(水)発売
¥1,800(+tax)
BUTCHER SWING RECORDS
[収録曲]
1.Frisky Flowery Friday
2.Mister Jewel Box
3.Stress Fish
4.La Di Danimal
5.YOSORO SODA
6.Lofi Hanabi

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