【インタビュー】クニタケ ヒロキ from THE FOREVER YOUNG、「人生の主軸」収めた初ソロ作品
■その狭間で俺たちとまた会おう
──今回、中島みゆきさんの「糸」をカバーしていますね。前回のアルバムでチューリップの「心の旅」をカバーして、MVができたりライブでも大合唱になって盛り上がってました。ソロ作品を出すにあたって、カバーは最初から入れようと思っていたんですか。
クニタケ:最初から入れようと思ってました。弾き語りライブのときに「糸」をよく歌っていて、聴いた人から良いねって言っていただいていたし、地元の友達と2人で、他の地元の友達が結婚したときとかに結構歌っていたんですよ。友達がアコギを弾いて、僕がピンボーカルで。それを20代前半に10回ぐらいやっていて。アコギを弾く友達が酔っぱらって途中でいつもギターを弾かなくなって、手拍子をし出してグダグダで終わるというのを、ずっと胸を張ってやっていたんですけど(笑)。その光景が僕の胸にずっと刻まれていて、自分がもしソロでやるときがあったら、中島みゆきさんの「糸」を入れたいなと思っていたんです。あのとき、2人でやって、ギターも弾けてなかったけど、今まだこうやってやりよるぜ、っていう。
──単なるカバーじゃなくて、そこにもちゃんとストーリーがあるわけですね。
クニタケ:そうなんです。レコーディングのときは、COUNTRY YARDのHayato(Mochizuki)に弾いてもらっていて、僕はギターを弾いてないんですけど(笑)。
──今回、それぞれの曲でゲストミュージシャンが入っていますが、「糸」ではもう1人、氏川恵美子さんがバイオリンを弾いていますね。
クニタケ:バイオリンを入れたいという構想があって、色んな人のつながりで氏川恵美子さんをご紹介いただいて。レコーディングのときまで、どういうバイオリンを弾く方なのか全然想像していなかったんですけど、ブースで弾いてもらったときに、もう涙が止まらないぐらいに感動しました。バイオリンが素晴らしすぎて、もう、死ぬほど泣きましたね。情緒不安定かっていうぐらいに(笑)。
──(笑)。確かに、感動的なグッとくる演奏ですね。バイオリンを曲に入れたのは初めてですか?
クニタケ:まったく初めてでした。想像を超えていたので、これからもこういう曲があったら入れたいな、お願いしたいなってめちゃくちゃ思いました。
──歌声にすごくマッチしていますね。情感が合っているというか。
クニタケ:そうですよね。僕の声が合っているなと思いました。それは嬉しかったですね。
──オフィシャルウェブサイトに書いてありましたけど、「多数のアーティストがカバーをする中で過去で一番力強いタコ糸のような仕上がりとなった」と。名曲揃いの中島みゆきさんの曲の中でも最近この曲をカバーしている人が多いですよね。
クニタケ:カバーをするとなったときに、初めてYouTubeとかで他の人のカバーを聴いてみたんですけど、めちゃくちゃおるなと思って(笑)。しかも結構みなさん、ファルセットで綺麗に歌うイメージがあって。最初、ファルセットでやっていたんですけど、レコーディングを見ていたSTEP UP RECORDSレーベル社長のRYOSUKEさんから、「ファルセットを使わないで、タコ糸みたいな糸でやろうぜ」って言われて。それで歌ったら良い感じでオリジナリティを出せました。良い意味でキレイじゃないというか、他にない感じだなって。僕らしい、泥臭い「糸」になったと思います。“泥から獲った糸”みたいな(笑)。
──泥から獲ったタコ糸ですから、めちゃくちゃ力強いですよね(笑)。ところで歌詞を改めて見たら、“幸せ”じゃなくて“仕合わせ”なんですね。
クニタケ:そうなんですよね、めちゃくちゃイイですよね。本当に、思い入れのある曲です。こんなに良い感じにできたので、カバーに関しても想像を超えたなって思います。
──今回セルフカバーしている「GO STRAIGHT」を何度も聴いていたら、もしかしてこの曲って海援隊(武田鉄矢のバンド)の「声援」のオマージュなんじゃないかなって思ったんですよ。
クニタケ:ああ〜、そう言われてみれば(笑)。かけてはいないんですけど、偶然というか。それは想像したことなかったですね。
──前回はチューリップのカバーをしていましたけど、同郷の先輩へのリスペクトがあるんだなって。
クニタケ:リスペクトはありますね。あの世代の方々のメロディって、尋常じゃなく良いので。そういうところからは必然的に影響を受けていると思います。
──「GO STRAIGHT」はライブでも定番の、これ以上ない応援歌ですね。
クニタケ:もともと構想は以前からあったので、こういう時期だから入れたかったわけじゃなくて、タイミングは本当に偶然なんです。でも、今だからこそ僕自身もめちゃくちゃ響いてます。
──この曲を聴くと、ライブの後半でお客さんがステージに上がってきてマイクを取って歌っている光景が目に浮かぶ人も多いと思います。「GO STRAIGHT」をライブで歌っているときはどんな気持ちなんでしょうか。
クニタケ:ライブでは、僕が「がんばれ がんばれ」って歌って、お客さんが一緒に歌ってくれることによって、僕に歌ってくれているような状態なんですよ。そういう人たちがステージに上がってきて、僕と肩を組んで歌ってるときって、ほとんど泣いているやつしかいなくて(笑)。そのときは、なんか「バカだなあ、でもみんないいやつだな、俺に言いに来てくれたんだな」って思ってるんです。不思議なんですけどね。さらけ出してくれるので、僕の歌を聴いてくれるやつは、みんな素直で優しい人だなって。
──そういう人たちからは、ソロ作品を出すことを発表したときにどういう反応がありました?
クニタケ:僕としては、結構賛否の否もあるんじゃないかと思っていたんです。「バンドじゃないんだ?」とか、勘繰る人もいますよね?このタイミングでソロを出すのはバンドが上手くいってないんじゃないかとか。でも、そんな声はまったく見なかったですし、楽しみにしてくれている人たちがいっぱいいたので、励みになりましたね。
──4曲目が「小郡駅2」。「小郡駅」の続編ということで、居酒屋「たいこう」が再び出てきますね。
クニタケ:「たいこう」、好きなんですよねえ。曲に入れすぎですよね、本当に(笑)。
──これだけ歌っているとファンの人が飲みに行ってるんじゃないですか(笑)。
クニタケ:行ってる人がいるっぽいですよ。店長さんが、「(クニタケが)よく来るんでしょ?」ってお客さんに言われたりしたみたいで。そういうのはめっちゃ嬉しいですね。
──“掻き消された本音 書き留めておこうかな”という歌詞が出てきますけど、飲みながらふと曲にしたいと思うことってよくあるんですか。
クニタケ:よくあります。友達や好きな人と飲んだりした後に、帰りに泣きながらスマホに録音したりしてるんですよ(笑)。2人で飲んでるときに友達がトイレに行ってる間にサササッてメモしたりとかも結構やりますね。「小郡駅2」も飲んでたときに浮かんだもので、帰りにベロベロになりながら録音しました(笑)。そういうのは大概良くないんですけど、「小郡駅2」はめっちゃ良かったので。
──今回は、どんな思いで書いたのでしょうか。
クニタケ:僕は地元の友達のおかげでやれてる、今があるということを「小郡駅」で歌っていたんですけど、それは「おまえらのおかげで俺はがんばれてるよ」っていう、自分の話だったんですよ。「小郡駅2」は、地元の友達で仕事がきつかったり、日頃のうっぷんとか悲しみをずっとため込んでいて、「じつはこんな感じなんだよ」って、自分に悩みを僕に相談してくれるやつとかが増えてきて。“これだけは忘れんなよ 俺たちは友達だろ”という歌詞があるんですけど、悩みがあったときに「俺の前だけではなんでも言っていいよ」みたいな感じで歌っています。
──「小郡駅」のときとは歌っている相手も違う?
クニタケ:「小郡駅」のときは、みんなに歌っているみたいな感じだったんですけど、「小郡駅2」は個々に言いたかったというか。僕は最初の方のリリックが好きなんですけど(“二次会はローソン?結局いくんかな 俺たち今年で34だぜ”)34歳なのにみんな金もないから、二次会は駅前のローソンで飲むしかないんですよ(笑)。だから着飾らなくていいよって思うこともあるし、34歳を過ぎた人とかこれから34歳を通過する人がもし同じようにコンビニの前で酒を飲んでいるときがあったら、この曲を聴いたときに絶対グッとくるだろうなって思いながら歌いました。
──そういう、リアルなご自分の年齢も歌に反映しているんですね。
クニタケ:年齢は変わっていくんですけど、ノリとか考えていることは絶対変わらないよっていうことを表現したかったんです。友達なのも絶対変わらないよって。だから、僕は的が狭いところを歌ったつもりなんですけど、同じ立場の人は絶対いると思うので、34歳じゃなくても、その人の心をグチャグチャにしつつ(笑)、支えられたらいいなと思います。
──こういう曲ができたときって、歌ってる人に言うんですか?「おまえのことを歌ったよ」とか。
クニタケ:僕はバカだから言うんですよね(笑)。言わないバンドマンの方が多いと思うんですけど。それこそ、地元に次に帰ったときは「今度出るやつはおまえの曲があるから」って言うかもしれないです。
──クニタケさんはもう10年以上、バンドマンをやっているわけですけど、変わったこと、変わらないことなど、今回時間が出来た中で何か考えましたか。
クニタケ:音楽との向き合い方というか、「もっと良いメロディで曲を作ろう」とか、「もっとこうしたら人に届くんじゃなかろうか」っていうことを、昔はまったく考えてなかったんですよ。それは良い意味で変わったところだなと思います。変わってないなと思うこと、というか変わっちゃいけないと思ったこともありました。ゆっくりしていた時間に昔のパンクの雑誌を読んでいたら、人生において衝撃を受けたページを見つけたんですよ。それこそRYOSUKEさんが載っている1ページがあったりして、「うわ、これめっちゃカッコイイ!」と思ったり。当時は高3くらいだったんですけど、「こういう人になりてえ!」って思った人たちと、今こうして一緒にいられたりするのって、あのときの自分からしたら「ああ、やったな!」って思うんですよ。夢見たところにこうやっていられることへの感謝の気持ちもありますし、そういうことは変えちゃいけないし、変わっちゃいけないなって思ってます。
──以前のインタビューのときに、「僕はあんまりポジティブじゃないので、過去を振り返る曲が多い」と話していたのが印象的だったんですけど、今は以前できたことが普通にできなかったり、過去を以前と同じように振り返れないようなところもあるんじゃないかと思うんですよ。
クニタケ:ああ〜、世の中的にということですね。
──そうです。過去ということに関して、気持ちの変化はありませんか。
クニタケ:思い出したくないことっていっぱいあるじゃないですか?嫌なこととか、苦しかったこととか。それよりも、数は少なくても良いから嬉しかったこと、幸せだったことが少し見えたときに、引き出しから出してあげたら、今苦しい現状とかを全部抱きしめてくれる気がするんですよね。「ああいうときがあったから、またがんばろう」みたいな。過去の栄光とかに浸るんじゃなくて、その思い出が生きていけるように、たまに出してあげるような感じというか。それは前向きなことだと思ってます。
──そこは、今回のタイトル「夢幻」につながる部分なんじゃないかと思うんです。“ゆめまぼろし”だったかもしれない、だけど“無限”でもあるっていう。
クニタケ:はい、本当そうですね。みんな夢のために生きていると思うんですよ。夢って色々あると思っていて、例えば週末に友達と飲みに行くのも、1つの夢というか、そのためにがんばれるじゃないですか?恋人に会うこと、美味しいものを食べることもそうだと思うし、それがあるから現実をがんばれることっていっぱいありますよね。でもその時間が終わってしまったら、一時経ったら幻みたいになると思うんです。それを繰り返して、僕たちは生きているなって思うんですよ。3月の終わりぐらいからライブができなくなって、あの時間って夢だったし、通過してきて幻みたいになっているんですけど、それは思い出なので。その狭間でずっとゆらゆらしているというか。本来あるべきところというか、その狭間で俺たちとまた会おうっていうメッセージを込めてこのタイトルにしました。
──ジャケットは、クニタケさんの色んな写真を散りばめて撮影されたものですか。
クニタケ:そうです。これは、カメラマンのちかこ(浅井千賀子)に下北沢の路上で撮ってもらいました。アスファルトに咲く花じゃないですけど、そういう優しくない道で俺は生きてるよっていうことを表現したかったんです。通販と、ライブ会場で買えるCDの裏ジャケは今との対比で、僕が子どものときの写真を集めて、表と同じように撮ってもらっています。
▲クニタケ ヒロキ from THE FOREVER YOUNG/「夢幻」
──ソロでの活動は、今後予定されていますか?
クニタケ:ラーメンを食いながら、全国で弾き語りライブをやろうと思ってます。
──どういうことですか(笑)。
クニタケ:え〜とですね(笑)、僕はとんこつラーメン発祥の地・久留米の出身ということもあって、ラーメンがめちゃくちゃ好きなんですけど、インスタのストーリーズで「どこのラーメンが美味しい?」って聞いたら全国のやつらが教えてくれたんですよ。だから、そういうラーメン屋さんに行って、そいつの近くでラーメンを食って、場所はどこでもいいからそいつの近くで歌を歌うっていうツアーをやろうと思ってます。
──趣味と実益を兼ねて(笑)。
クニタケ:そうですね(笑)。そういうことをやってる人はいないから面白いかなって。
──改めて、ソロとして作品をリリースする上で音楽ファンに伝えたいことがあればお願いします。
クニタケ:THE FOREVER YOUNGとしては、色んな作品を出してきて、「こう伝わればいいな」という想像はできたんですけど、初めてのソロということで、その人が感じたままに僕の気持ちを受け取ってくれるのが今から楽しみです。この作品をその人の色に染めてほしいなと思ってます。
取材・文◎岡本貴之
1st Single「夢幻」
CD:¥1,000(税込)/品番(盤のみ):SURCD-033
配信:¥917(税込)
[収録曲]
1. 俺はもうどうなったっていいよ
2. 糸 ※中島みゆきカバー
3. GO STRAIGHT ※セルフカバー
4. 小郡駅2
[販売場所]
クニタケヒロキ ライブ会場、STEP UP RECORDS onlineshop
※今後追加予定あり
[配信先]iTunes、Apple Music、Spotify、LINE MUSIC、AWAほか
※今後追加予定あり
https://vap.lnk.to/mugen
この記事の関連情報
G-FREAK FACTORY主宰<山人音楽祭2024>、第三弾発表に10-FEET、サンボ、打首、エバヤンなど9組
【インタビュー】「DAM CHANNEL」20代目MCに森 香澄、サポートMCにチャンカワイが就任「プライベートな部分も引き出せたら」
2024年3月のDAM HOT!アーティストはアーバンギャルド、フジタカコら4組
【イベントレポート】<ビッグエコー35周年記念カラオケグランプリ>決勝大会が大盛況。応募4,061件の頂点決定
2024年2月のDAM HOT!アーティストはOHTORA、我生ら4組
2024年1月のDAM HOT!アーティストRKID'z、EINSHTEINら3組
2023年12月のDAM HOT!アーティストは学芸大青春、the paddlesら4組
2023年11月のDAM HOT!アーティストはACE COLLECTION、3markets[ ]ら4組
T-BOLANのメンバーと一緒のステージで歌えるチャンス、大好評実施中