【インタビュー】クニタケ ヒロキ from THE FOREVER YOUNG、「人生の主軸」収めた初ソロ作品
THE FOREVER YOUNGのベース・ボーカル、クニタケ ヒロキが初めてのソロ作品となる1stシングル「夢幻」(むげん)を完成させた。収録されたのは、新曲2曲と、中島みゆき「糸」のカバー、「GO STRAIGHT」のアコースティックバージョンの4曲。根っからのバンドマンであると同時に弾き語りライブも続けてきたクニタケらしい、パンクスピリットとメロディアスな楽曲が同居した作品となっている。
注目したいのは、各曲ごとにゲストミュージシャンがピアノ、バイオリン、アコースティックギターで参加しているところ。インタビュー中、クニタケが何度も“想像超え”という言葉を口にしたのも納得するぐらい、歌声に寄り添い、その魅力を存分に引き出している。記念すべき9月2日(クニの日)にリリースされる「夢幻」、そのタイトルに込められた思いとは。
◆ ◆ ◆
■僕の人生の主軸
──クニタケさんはまさに“バンドマン”というイメージなので、正直言ってソロ作品をリリースするのは意外でした。
クニタケ:ははははは(笑)。そうですよね。そう思ったファンの方は結構いると思います。
──どんな背景があってリリースすることになったのでしょう。
クニタケ:弾き語りのライブをやらせていただく中で、2作前のミニアルバム『聖者の行進』で弾き語りの曲(「小郡駅」)を初めて入れたんです。そこから、「弾き語りの曲も作れるな」と思うようになって。構想は2019年ぐらいからあったんですけど、今年の初めから改めてガッツリ作り出した感じです。
──なるほど、コロナ禍でリリースが決まった、とかではないわけですね。
クニタケ:そうなんですよ。たまたまタイミング的にそうなっただけで。完全新曲が2曲(「俺はもうどうなったっていいよ」「小郡駅2」)と、THE FOREVER YOUNGの「GO STRAIGHT」をアコースティックバージョンにしたもの、中島みゆきさんの「糸」のカバーをやらせていただいたんですけど、1つ1つテーマがあって、僕の人生の主軸になっている、背景や思い出が深い4曲を入れました。
──1曲目の「俺はもうどうなったっていいよ」はちょっと衝撃的なタイトルですけれども。
クニタケ:ははははは(笑)。そうですか。
──タイトルに反して、曲調は軽快でサビの語感も覚えやすい印象です。ピアノが効果的に使われていると思いますが、編曲もクニタケさん名義になっていますね。
クニタケ:そうです。ピアノに関しては、僕が好きなNo Regret Lifeというバンドの小田和奏さんに最高なピアノを付けていただきました。ある程度自分のイメージがありつつの編曲だったんですけど、もう完全にイメージ超えの最高のピアノを弾いてもらいました。
──曲自体はいつ頃書いた曲なんですか。
クニタケ:土台としては結構前からあったんですけど、いざ曲として固めて行こうとなったときに、コロナの時期が重なったというか。僕らTHE FOREVER YOUNG は、3月の終わりぐらいまでライブをやっていたんですけど(2020年3月24日恵比寿LIQUIDROOM)、約半年ぐらいライブができていなくて。人生の中でこんなにライブをやっていないのは初めてなので、僕も一般的な日常を送っていたんですけど、それも結構悪くないなとは思っていたんです。ゆっくりできるし、自分の時間もめちゃくちゃあるし。でもそうしているうちに日に日に、「俺、なんのために生きてるのかな?」という思いが強くなってきたんです。そこから制作を始めていくときに、SNSに「スタジオに入る」とかアクションをアップして行くと、色んな人から「今こういう状況ですけど、エバヤンのおかげで頑張れてます」とか、そういう言葉を結構いただいたんですよね。ゆったりと日常を送っていたときは、そういうことも忘れていたんですよ。曲を作ろうとなったときに、ライブ活動が止まってから半年ぐらい間が開いてるし、話題も全然なかったので、「もうみんな忘れとらんかな?」って思ったんです。でも、ちゃんとみんなの心の中で俺たち、俺は生きてるんだな、ありがとう、と思って。それでもうすぐに歌詞をバーッと固めたんです。「俺はもうどうなったっていいよ」って言ってるのは、そうやって待ってくれているおまえのためやったら、俺はどうなったっていいよっていう、答えが出たというか。
──その言葉が出るまでには、葛藤したり、時間はかかりませんでしたか。
クニタケ:う〜ん、苦労して出た答えっていうわけでは全然ないんですよ。もともと、僕はそういうことを考えて音楽をやっていたので。聴いてくれる人や、目の前のおまえのおかげで自分は歌えとるけん、そのお返しにおまえのために歌うよみたいな気持ちがあって。ゆっくりとした日常の中では、現実味がないところが出てきてしまって、そういう気持ちを忘れてしまっていた部分があったんです。でもいろんな人のひと言ひと言で、思い出すことができたんです。
──クニタケさんって、「俺はこうだ!」っていう自己主張を歌うんじゃなくて、あくまでも誰かのための歌を歌ってますよね。
クニタケ:はい、そうですね。
──こういう状況下で、誰もが自分のことで精一杯と言っても過言ではないと思うんですけど、「誰かのために歌いたいけど、そうも言ってられない」みたいな気持ちにはならなかったのでしょうか。
クニタケ:本当に、とくにそうは思わなかったんですよね。音楽のことをちゃんと考えるときになると、自分のことというよりは“対人のこと”ということを考える頭になってしまっているので。でも、今回の4曲も結果的には自分のことを歌っているんですけどね。ただ目の前にいる人ありきの話で歌っているというか。「自分が自分が」という気持ちは全然ないんですよね(笑)。
──なるほど。その結果、「俺はもうどうなったっていいよ」という言葉が出てきたわけですね。まさに自分の身を投げうって歌っているというか。
クニタケ:そうですね、はい。
──ちなみに、さきほどから話に出てくる「ゆっくりした時間」では、どんなことをしていたんですか。
クニタケ:僕はもう、料理を作ったりしていました。
──それ、みんな言いますね(笑)。先日もkoboreのインタビューでそんな話が出ました。
クニタケ:ははははは、あいつらよりは僕の方が精度が上がってますね、きっと(笑)。あとは、最近全然聴いてなかったバンドのCDを引っ張り出してきて、耳コピとか、初心者がやるようなベースのコピーをしていました。それは良かったなと思います。他には中学生の頃の写真を引っ張り出してきて見たりとか。忙しい毎日だったらできなかったことをしていましたね。
──普段は年間通してライブの本数も多いでしょうし。
クニタケ:なかなかそういうことはできないですよね。今までの自分と見つめ合えたというか、僕的にもあって良かった時間でした。昔のインディーズバンドが出てる深夜番組とかを録画してあるので、そういうのを見て「うわっ!こんなバンド好きやったな」とか、結構グッときてました(笑)。「この人たちと対バンしよるなあ」とか、今でも好きで良かったなとか、色々発見もありましたね。自分にとっては良い時間を過ごせました。
◆インタビュー(2)へ
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