【インタビュー】ReN、2020年の現実と溢れ出るメッセージ「今は自分がかけて欲しい言葉を唄おうって」

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■楽しいことも苦しいことも大切
■その両面がこの先の音楽にとって重要になる

──それはきっと、いろんな人がこの期間に感じていたことだと思います。今の時代の良さのひとつに、曲が出来てから発表するまでのタイムロスが少ないというか、スピード感を持ってリリースできることがありますね。

ReN:本当にそうで。もっと言えば、ギターと声さえあれば、出来た瞬間にSNSとかでみんなに聴いてもらうこともできる。そのスピード感は唯一、今の時代のなかでありがたいことかもしれない。同時に、すごく早い速度で届けることができるからこそ、鮮度の高い状態で、しっかりと考えたものを受け取ってもらえたらなとは考えました。

──シンガーソングライターとして伝える仕事をしているからこそ、今の状況下で想いを届ける難しさや、あり方として変わらなければいけない状況を突きつけられることもあったのかなと思います。曲を作ることや歌うことに対して、より慎重に繊細になりそうですね。

ReN:今まで歌えていたことも、時代とか景色の変化によって意味合いを変えてしまうかもしれないし、その逆もある。今まであまり意味が見えなかった曲が、いきなりはっきりと意味を持つこともあるだろうし。それって、これから起きていくことなのかなって思うんです。

──はい。

ReN:もちろん、どんな時代にも、ハッピーなことも悲しいこともある。たとえば今、僕らの身の回りで言えば、これまでハッピーなことがいっぱいあったと思うけど、コロナの影響をきっかけに嫌なことや辛いこともいっぱい起き始めていて。今までなら右から左に受け流せていたようなことも、向き合わければいけない。向き合うことは大切なんだけど、でも人間はそんなに強くないし、精神的に疲れ果てているなかでみんなが頑張っているじゃないですか。こういう時期には、ネガティヴなこともポジティヴなことも考えてしまうという意味では、ちょっとずつ自分自身も変わりました。だけど、音楽は楽しいことも、苦しいことも大切で、その両面がこの先の音楽にとって絶対に重要になっていくって思いましたね。

──ちょっと話が戻るのですが、先ほど言っていた歌詞の“大丈夫”というフレーズは、そういう状況にある自分にも訴える言葉だったんですかね?

ReN:僕は小さい頃から、考えすぎてネガティヴに陥ってしまうこともいっぱいあったんです。“大丈夫だよ”っていう言葉って、軽く聞こえるかもしれないけど、でもそのマインドってすごく大切だと思っていて。“ヤバイなこの状況、マジでピンチだ”と思っても、心のどこかに“大丈夫、なんとかなる!”って余裕を少しでも持っていたほうがいい。結果、たいがいのことは“なんとかなったじゃん!”って乗り越えられたりもするので。僕自身、“大丈夫だよ”っていう一言に救われた経験がたくさんあって、辛いときに“大丈夫だよ”と言ってくれる人を、どこかで探していたと思う。そういうマインドって、みんなも僕も常にあると思うから、それが素直に伝わったらいいなと思っています。

──何か信じてるってことですもんね、“大丈夫だよ”っていう言葉は。

ReN:コロナ禍でなくても、それぞれのフィールドで何かにぶつかったときに、その言葉ひとつで、明日もう一回チャレンジしてみようって思えるかもしれない。そういう場面はこれから先もあると思うんです。自分もきっとその言葉にこれからも励まされると思うから。今回は、ステージの上で歌うReNとしてはもちろんですが、ひとりの人間として感じる不安を歌にしたという感覚でしたね。

──サウンド面にも触れたいのですが、今回は音数が少ないシンプルなアンサンブルとなっています。この曲では歌を伝えようという想いもあったんですか。

ReN:言葉が持ってきてくれたムリのないメロディラインだったから、余計な景色を付ける必要はないかなって。最初はピアノ一本でいいとも思っていたんですけど、ちょっとそれだと切なぎるんですね、意味合いとしてtoo muchなものになってしまうというか(笑)。今もまだまだ不安の渦中だけど、初夏の空気に背中を押されて少しずつポジティヴになってきている時期だから、みんなの身体も動き始めるだろうと。そういうスイッチングになったり、心が浄化されるような世界になっていけばって考えてのアレンジなんです。ライブでは、バラードとして歌うこともできるし、この曲はいろんな表現ができると思っていて。そういう部分も含めて、出来上がったときにすごくいい曲だなって思いました。

──ライブも視野に入れて作った曲でもあるからこそのギターアレンジなんですね。作り始めはピアノだったということですが、ReNさんのステージといえばアコースティックギターのイメージが浮かびますし、この曲もギターを基調にシンフォニックを採り入れたものとなりました。ちなみに鍵盤で曲作りをすることも多いんですか?

ReN:一周するにはまだ程遠いですけど、ギターから作り出すことに気乗りしない時期があって。というのは、自分のギターサウンドが入り口だと、どうしても限られた世界になってしまう気がしたんですよ、そのときは。別にピアノが弾けるわけではないんですけど、ピアノの音色が鳴っているだけで、出てくる言葉やメロディってやっぱり変わる。そこに気づいたとき、曲を作る段階からとにかくピアノを鳴らしてみようと。そうすると自分のエモーショナルな感情や、ギターだけだといびつに聴こえたような言葉も、意外ときれいに鳴ったりするんです。ギターだけの世界観から広げていくばかりでなく、ピアノで取り掛かる曲作りも面白いっていう発見があったんですよ。

──なるほど。

ReN:今までもトライはしてきたんだけど、どうしても技術的なことを考えてしまうクセがあるので、今回はそこを全部削ぎ落として、ピアノの持つ音色だけで最初は作ってみたんです。最終的には、あくまでもメインは自分のギターですけど、ピアノと混ぜ合わせてやってみるだけでも、ものすごい曲が変わるということは、今回感じましたね。

──ピアノの音色から広がるイマジネーションって、ギターのそれとはまた異なるものなんでしょうね。そのイメージを抱いたままピアノのフレーズをギターに置き換えると、最初からギターで作ったものとは全然違う質感が生まれるんでしょうし。

ReN:そう。“今さらかよ!”って思う人もいっぱいいるかもしれないですけど、まったくその通りです(笑)。

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