【レポート】J、初の無観客配信ライヴ完全ドキュメント「成功例を積み重ねて進んでいかなきゃいけない」
■終演後の楽屋で語った未来
■「ああ、みんなと繋がってるんだな」
それから数分後、ふたたびJのもとを訪ねた。僕が「やっぱり配信だろうと何だろうと、ライヴはライヴですね」と告げると、彼は清々しい笑みを浮かべながら「嬉しいですね」と言った。実際、僕が目にしたのは公開リハーサルでもライヴ映像収録でもなく、ライヴだった。
「最初にこのライヴを計画した時に、やっぱりメンバー同士のコミュニケーションとかもちゃんととれるようなフォームでやりたいよね、という話になって、こんな感じに立ち位置も変えてみて。もちろんこれはリハではなくライヴだし、ライヴ然としたものにするためのシミュレーションもいろいろと重ねてきて……。いざ始まった瞬間からすべてが終わるまでのグルーヴ感というのをものすごく大事にしてるつもりだし、だからこそおのずとMCとかも普段のライヴと同じようになってくる。いつもライヴで目の前にお客さんが居る時、どんどん煽って熱を高めていくようなギアの入れ方をしてるわけです。それを取っ払ってしまうと、ある意味、ライヴならではの空気が失われてしまうのかな、とも思ったんですよね。とはいえ実際にはスタジオで演奏してるわけで、そこで煽るようなことを言うと違和感に繋がるのかな、というのもあったんだけど、全然そんなことはなかった。ストリーミングだろうと何だろうと、どんなに形が変わろうと、やっぱりライヴなんだなって自分でも感じましたね」
「みんなの書き込みもありがたかった。僕らの立ち位置にあるモニターでは、演奏中はそれが見えないんですよ。ただ、曲間やMCのタイミングでそれが大量に流れてくるのが見えて、その瞬間、“ああ、みんなと繋がってるんだな”と実感できて。まあ当然、通常のライヴとは形が違うわけで、それと完全に同じものを求めてみても、やっぱりそこに誤差というか差異は出てきてしまう。だけど、そんな状況を最大限に楽しめるようなタフさみたいなものも、やっぱりロック・ミュージックは持ってるはずだと思うから、逆に僕らもそれを利用していけばいいというか」
常識は、ずっと同じままではない。特にこうした想定外の事態にあっては、変わっていくべき必要のあるものだ。ただ、無闇に変えていけばいいというものではないし、どこをどう変え、何を保っていくかという選択を誤ってはいけない。Jは、この夜の試みを通じて、自分が手を伸ばした選択肢に間違いがなかったことを実感できていたに違いない。ただ、それでも、それをそのまま維持していくのではなく、彼なりの価値観に沿った形で磨きあげていくべき必要があるのだ。
「結局、その答えというか、正解というのは誰も持ててないというか、誰もまだ知らないわけですよね。そのなかで今、すべて仮定で話をしながら探ってる。そのなかで当然、失敗も出てくると思うんですよ。それこそ万全のウィルス対策をとっていても感染するケースがまったくないわけではないのと同じように。ただ、そこで失敗を恐れながら待っているだけでは何も始まらない。だから自分は自分の世界で、その時にでき得ることをやっていくしかない。いまだに得体の知れないものと闘ってるようなところもあるわけだけど、だんだんその正体というか対処法が見えてきつつあるなかで、今ならこれができる、という選択肢が出てくるわけですよね。それを見極めながら実践していって、ひとつひとつ成功例を積み重ねていかないといけない。それが結果的には、みんなの安心感に繋がっていくんだと思うんですよ」
失敗を恐れず、細心の注意を払いながら、成功実績を重ねていくこと。それが新たな常識を自分たちで成立させてくことに繋がっていく。たとえば遠い過去には一般的ではなかったスタンディング形式のライヴというものが、事故なく行なわれている実例を積み重ねていくことで、じっくりと時間をかけながら定着してきたのと同じように。
「それと同じことですよね。実際、僕らは音楽の世界にいて……もっと言うなら音楽業界というもののなかにいるわけで、音楽が止まってしまうことの意味というのを、ちゃんと考えないとまずいところに来ている。実際、なかには“音楽なんか生活に直結してないだろ!”みたいなことを言う人もいますよね。だけど全然そんなことはないんです。演者のことではなく、普段は表に出てこない、音楽を仕事にしている方々、生活に直結してる人たちはたくさんいるんです。ウィルスを伝染させたくてライヴをやろうとする人なんていないんですよ。だからこそ僕らは、しっかりと成功例を積み重ねて進んでいかなきゃいけない」
この夜の『J LIVE STREAMING -Online Late Show-』は、間違いなく成功に終わったといえる。そして次の機会に求められるのは、これを何らかの意味でいっそう実際のライヴに近付けた形で成功させることだ。大切なものを取り戻すため、それを途切れないようにするためには、そうして成功実績を重ねていくしかない。何かの大きな力によって、強引なルールが定められてしまう前に。
取材・文◎増田勇一
撮影◎田辺佳子
■<J LIVE STREAMING -Online Late Show->2020.6.27 セットリスト
・go crazy
・PYROMANIA
・CALL ME
・Twisted dreams
・alone
・CHAMPAGNE GOLD SUPER MARKET
・ACROSS THE NIGHT
・RECKLESS
・break
・BUT YOU SAID I'M USELESS
・NOWHERE
・Feel Your Blaze
encore
・Evoke the world
・TONIGHT
・BURN OUT
■配信生ライヴ第一弾<J LIVE STREAMING -Online Late Show->見逃し配信
https://live.nicovideo.jp/watch/lv326433173
■配信生ライヴ第二弾<J LIVE STREAMING Online Late Show Vol.2 -Keep the Heat->
タイムシフト視聴期間:2020年7月26日(日) 23時59分まで
▼チケット
3,500円(税込) ※ニコニコプレミアム会員価格2,900円(税込)
https://live.nicovideo.jp/watch/lv326665633
◆レポート【2】へ戻る
◆レポート【1】へ戻る
この記事の関連情報
J、最新作『BLAZING NOTES』のジャケット写真を公開。年末イベント追加ゲスト発表も
J、約3年3カ月振りのニューアルバム『BLAZING NOTES』を2025年1月に発売決定。最新キービジュアルの公開も
J、5年ぶり<放火魔大暴年会>開催決定。2025年1月からはニューアルバムを掲げた全国ツアー開催
【レポート】J、2024年ソロ初ライヴ完遂+東阪スペシャル公演を11月開催+最新アルバム制作開始「楽しみ尽くす!」
【ライヴレポート】J、2023年最後のソロ公演に真の強さ「みんなは俺の人生の生き証人」
J、右足骨折でも激しいステージ「ウソみたいな本当の話があります」
<イナズマロック フェス>、西川貴教のステージにASCA、J(LUNA SEA)がゲスト出演
【ライヴレポート】J、恒例バースデイ公演で新曲披露も「大好きな音楽を求めてまだまだ全速力で突っ走っていける」
【ライヴレポート】J、3年3ヵ月ぶり声出し解禁+夏のツアー開催発表も「新たなフェーズに行きましょう!」