限りなくグランドピアノに近い高い表現力を実現したヤマハ電子ピアノClavinova「CLP-700シリーズ」
ヤマハから電子ピアノ「Clavinova(クラビノーバ)」CLPシリーズの新製品が登場。グランドピアノさながらの表現力を実現した「CLP-700シリーズ」4機種17モデルが8月31日より順次発売される。7月1日にオンラインで開催された発表会ではピアニストの須藤千晴さんが演奏を披露、新製品の魅力を語った。
▲最上位モデルのCLP-785PE(黒鏡面艶出し)。
▲部屋のインテリアに合わせて選べる5カラーを用意。写真はCLP-735WA(ホワイトアッシュ調)
▲スタンダードなブラックウッド調のCLP-785B。
「CLP-700シリーズ」は、奏者の感性に応える高い表現力の実現を目指して開発した新モデル。タッチのニュアンスの違いを敏感に感じ取る“感度の良さ”、“優れた音質”、あらゆる奏法に応える“高い演奏性”を追求し、奏者の繊細なタッチに対してイメージ通りの音を返すことができるグランドピアノさながらの表現力を実現した。
▲グランド・エクスプレッション・モデリングは、打鍵時の加速度も検出。鍵盤を押す時、離す時の速さに応じた音色の変化も弾き分けられる。たとえばトリルやレガート奏法においては、鍵盤を弾く深さに応じて音の色合いを変えられる。
グランドピアノの多彩な音色変化を再現するべく新たに搭載したのが「グランド・エクスプレッション・モデリング」。グランドピアノでは、繊細なタッチの違いに対して、ハンマーやダンパー、弦などの内部機構がその都度異なる動きをしながら相互に影響し合うことで、無限大の音色が生まれる。この多彩な音色変化を再現する最新技術だ。タッチの力加減に加え、鍵盤を押すときや離すときの速さに応じた音色の変化も弾き分けられるため、さまざまな奏法の違いによる多様な演奏表現を学べ、電子ピアノでありながら、奏者の表現力や感性を磨く本格的な練習ができる。
▲低・中・高音域にそれぞれ専用のスピーカー、アンプで響かせる3ウェイスピーカーシステムとトランスデューサーにより、臨場感のある立体的な演奏空間を実現。
上位モデル「CLP-785/775」では、グランドピアノの音像や音場をリアルに再現する最新の音響技術「グランド・アコースティック・イメージング」を搭載。低・中・高音域をそれぞれ専用のスピーカーとアンプで響かせる「3ウェイスピーカーシステム」を使用し、スピーカーの配置や音量バランスをヤマハ独自のノウハウで最適化したことに加え、音の立体感を生み出すトランスデューサー(加振器)を新たに搭載。これらの組み合わせによって、奏者の前でハンマーが弦を打って音が返ってくるような感覚や、弦の響きの余韻がすっと筐体の奥へ消える感覚、響板から音が鳴っているような奥行き感などが得られる。コンパクトな電子ピアノでありながらグランドピアノらしい臨場感のある立体的な演奏空間を実現した。
鍵盤は、独自機構により繊細なピアニッシモから力強いフォルティッシモまでさまざまな音色を引き出せる幅広いダイナミックレンジと、グランドピアノのハンマーが弦を打ったときに感じられるような心地よい手応えを実現。安定性が高く、正確な音色コントロールが可能だ。上位モデル「CLP-785/775」に搭載している「グランドタッチ鍵盤」では、鍵盤の先端から支点までの距離をグランドピアノと同等まで長くしたことで鍵盤の奥の部分でも弾きやすいタッチを実現し、演奏性を高めている。またエントリーモデルの「CLP-745/735」には、「グランドタッチ鍵盤」の設計思想をそのままに引き継いだエントリーモデル向けの新しい鍵盤「グランドタッチ-エス鍵盤」を搭載。グランドピアノに近い弾き心地と高いコントロール性を実現している。
▲明るく華やかなCFXと、木のぬくもりを感じさせるベーゼンドルファーの「インペリアル」の音色を搭載。それぞれのキャラクターや質感を最大限に引き出している。音源の容量も増え、音色のグラデーションが豊かに。ペダルを踏み込むスピードで微妙に変化する音色も再現した。
幅広い表現を叶えるピアノ音色も魅力。ヤマハのコンサートグランドピアノ「CFX」とベーゼンドルファーの「インペリアル」から新たにサンプリングした音源を搭載。奏者の耳と同じ位置に特殊なマイクを置いてピアノ音を収録する録音手法「バイノーラルサンプリング」を、従来の「CFX」音源に加えて「インペリアル」音源でも初めて採用したのもポイント。ヘッドホン着用時でもあたかもピアノ本体から音が響いてくるような臨場感を得られ心地よく演奏できる。
▲ピアノの原型である18世紀~19世紀の古楽器「フォルテピアノ」の音を搭載。数百年前に書かれた楽曲を、楽譜の指示のまま忠実に当時の楽器の音で弾くことで作曲家の意図をリアルに体感できる。写真は浜松楽器博物館の所蔵楽器。
さらにピアノの原型である古楽器フォルテピアノの音色をヤマハの電子ピアノとして初めて搭載。モーツァルトやベートーヴェン、ショパンといった作曲家たちが生きた時代のピアノの音で演奏することで、楽譜に込められた作曲家の意図に対する理解を深めることができる。
このほか、楽器本体やUSBフラッシュメモリーに演奏を録音する機能(700シリーズ全モデル)を搭載。Bluetoothオーディオ機能およびBluetooth MIDI接続にも新たに対応した(CLP-785/775/745)。Bluetooth対応のスマホ/タブレットと楽器をワイヤレスで接続し、デバイス内のオーディオデータをスピーカーで再生しながら演奏したり、ヤマハの無料アプリ「スマートピアニスト」で各種操作をデバイス上で行うなど、手軽にさまざまな楽しみ方ができる。
▲上位モデルではタッチセンサーにより、演奏時はコントロールパネルの表示が消灯する。
ピアノらしさを大切にしたデザインと豊富なカラーバリエーションも大きな特徴。腕木から脚にかけて優雅な曲線を取り入れ、ピアノらしいエレガントな外観に仕上げた。また「CLP-785/775」では、コントロールパネルにタッチセンサーを採用。操作する時だけパネルの文字が表示され、操作していない時は表示パネルが消灯するため、ピアノ演奏に集中できるようになっている。
カラーバリエーションは、ピアノらしい高級感のある佇まいの黒鏡面艶出し仕上げ、定番のブラックウッド調仕上げとニューダークローズウッド調仕上げ、北欧調で人気のホワイトアッシュ調仕上げ、モダンなインテリアにマッチするダークウォルナット調仕上げの5色を用意(「CLP-785」は2色展開)。部屋のスタイルに合った1台を選べる。
▲カラーは、黒鏡面艶出し(PE)のほか、ホワイトアッシュ調(WA)、ダークウォルナット調(DW)、ニューダークローズウッド調(R)、ブラックウッド調(B)を用意。
▲演奏を披露したピアニストの須藤千晴さん。東京芸術大学卒業。ドイツ政府給費学生としてベルリノン学大学を卒業。第4回ザイラー国際ピアノコンクール、第3回ベルリンピアノコンクールなど多くの国際コンクールで上位入賞。2020年にはキングレコードよりソロアルバム『Camellia』リリース。近年は作曲活動も開始し、ジャンルを超えたプログラミングによるコンサートも行っている。
発表会では、ピアニストの須藤千晴さんがゲストとして登場。ドビュッシー『ベルガマスク組曲』より第3曲『月の光』を、最上位モデルのCLP-785のCFX音色で演奏し、「電子ピアノという枠を何段も何段も飛び越えている楽器」と、その第一印象を語った。
「弾き始めた瞬間に木のぬくもりだったり、アコースティックのピアノを弾いている自然な打鍵ができていることに驚きまして……。さらに弱音のすごく繊細なニュアンスだったりとか、柔らかい音、丁寧につないでいきたいレガートとか、いろいろなタッチ、歌うようなフレーズなども可能になって……。それから、指に鍵盤が吸い付いてくるようなほんとに安心感のあるタッチ。楽器自体と親密感がすごくあるというイメージで、いろいろな音色づくりの作業とかもすごく自然にできるようになりました。楽器と対話しているな、という実感がすごく持てました。」
▲ヤマハ担当者とのトークセッション。進行の鳥羽幸樹さん、商品企画担当の尾藤栄里子さんと。
「今までの電子ピアノのイメージっていうのが、打鍵した時に0か10かみたいな、押して、また指を離した時の感覚まで、そこまでの繊細なニュアンスっていうのが感じられるのかな? っていうイメージは正直あったところなんですが。実際弾いてみていろいろなスピードのタッチ、たとえばスタッカートのようなキーを早く戻さなくてはいけないタッチだったり、逆に音をつないでいくレガート、その中間にあるマルカートのような音をつないでいくイメージの打鍵もすごくしやすくて。それというのはやっぱり0か10ではなくて、間のところでの細かい作業が可能になったんだろうなというところで。鍵盤の吸い付き方っていうのが、すごく自然に感じられるようになって、いろいろなタッチが可能になったなとすごく実感しました。」
グランド・エクスプレッション・モデリングによる音色変化の評価に続き、CLP-785のグランドタッチ鍵盤について問われると、神経を使って弾くと「楽器が応えてくれるイメージ」「打鍵の安心感もありましたし、すごく手に自然に馴染んで吸い付いてくる」と語った。
新搭載のバイノーラルサンプリングによるサウンドについては、これまでのヘッドホンでの演奏は「どこか一点から聞こえてくる」「ちょっと不自然」なイメージだったが、新モデルは「360度音の響きにに包まれているような、空間の中で演奏しているような感覚。すごく自然に音のイメージとか曲のイメージをしやすい空間があって」と驚きを隠せない様子。同じく新搭載のフォルテピアノ音色については、実際にフォルテピアノを弾いたことがあるという経験を踏まえて回答。
「いろいろな作品を演奏している中で、ショパンの譜面に書かれているフォルテという表示と、ブラームスなどのフォルテ、その意味合いって作曲家だったり時代によってぜんぜん違うものなんですけれども。なかなかそのあたりをグランドピアノだけで演奏しているとイメージがわきづらい部分も、フォルテピアノの音で演奏してみると、ショパンの時代はこういうフォルテだったんだというイメージがしやすかったり。それから弾いている空間、現代のようなとても大きなコンサートホールだけではなくて、当時はもっと親密度の高い小さなサロンのようなところ演奏される機会が多かったかと思うんですけども、その時の空間の響きのようなものも想像できますし……。タッチに関しても、大きなグランドピアノとは違う軽やかな音色だったりとかも総合的にとてもイメージしやすいかなと思いました。」
最後の質問は「CLP-700シリーズをどのような人にどういった使い方をしてもらいたいか?」。ヤマハとしては、ピアノ演奏をしている小学生以下の子供を持つ親、趣味で演奏を楽しむ30~40代をメインターゲットとしているとのことだが、須藤さんはより本格的に演奏する人の要求にも応えるとの答え。
「本当に電子ピアノという枠を大きく飛び越えてきている楽器だと本当に実感したので、これからプロのピアニストを目指す学生の方はもちろん、プロの方でも、たとえば時間によってはアコースティックのピアノを弾けないようなことがある場合でも、音色の追求だったり、タッチの追求も可能だと思うので、そういう方々にも。いろいろな方に使っていただきたいなと思います。」
▲ラストはシューマン作曲/リスト編曲 歌曲集『ミルテの花』より『献呈』を演奏。繊細なタッチから迫力のある音まで自在に操り、CLP-700シリーズの表現力を存分に味わわせてくれた。
製品情報
価格:400,000円(税別)
発売日:2020年10月29日(木)
◆CLP-785B
価格:360,000円(税別)
発売日:2020年8月31日(月)
◆CLP-775PE
価格:315,000円(税別)
発売日:2020年10月29日(木)
◆CLP-775R/B
価格:275,000円(税別)
発売日:2020年8月31日(月)
◆CLP-775DW/WA
価格:275,000円(税別)
発売日:2020年10月29日(木)
◆CLP-745PE
価格:250,000円(税別)
発売日:2020年10月29日(木)
◆CLP-745R/B
価格:210,000円(税別)
発売日:2020年8月31日(月)
◆CLP-745DW/WA
価格:210,000円(税別)
発売日:2020年10月29日(木)
◆CLP-735PE
価格:195,000円(税別)
発売日:2020年10月29日(木)
◆CLP-735R/B
価格:155,000円(税別)
発売日:2020年8月31日(月)
◆CLP-735DW/WA
価格:155,000円(税別)
発売日:2020年10月29日(木)
※品番の末尾は外装仕上げを表す。
PE:黒鏡面艶出し、B:ブラックウッド調、R:ニューダークローズウッド調、DW:ダークウォルナット調、WA:ホワイトアッシュ調
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