【インタビュー】ZIGZO、髙野哲×櫻澤泰徳が語るコロナ禍と12ヵ月連続リリース「生涯バンドマンでいたい」

■どんな状況でもステージに立つ以上
■ロックバンドとして100％のZIGZOを見せる

──「FOREVER YOUNG(2020 ver.)」は、リスナーの気持ちを引き上げる1曲になりましたね。先ほども言いましたが、こういう状況下でアーティストが意欲的に音源をリリースしてくれたり、動画をアップしてくれることは、ファンに笑顔や活力を与えると思います。

髙野：そうだといいんだけどね。そもそも俺が動画配信を始めたきっかけは、インディーズ電力のメンバーで俺の妹分でもあるオレスカバンドのiCas (vo & G)ちゃんが、リモート録音に誘ってくれたことなんですよ。実際にやってみて、こんなことができるんだ！って。世界的には、レディ・ガガが音頭をとって医療従事者を支援するオンライン音楽フェス(『ワン・ワールド：トゥゲザー・アット・ホーム』)を実施したり、それよりも早い段階でグリーンデイのビリー・ジョーが自宅録音動画をアップしたんですね。これは選曲も良かったし、すごく影響を受けた。自分もこういうことをやりたいって気持ちにさせてくれたビリー・ジョーと、その方法を教えてくれたiCasちゃんにはとても感謝しています。

──哲さんとSAKURAさんの発信力の強さを感じます。

髙野：ただね、こういう状況下で、俺個人とかZIGZOが発信することを求めていない人もいると思うんですよ。中途半端なことはやめてほしいっていう意見とかね。でも、たとえばCharさんがアップした自宅弾き語り動画を見たりすると、俺自身、嬉しい気持ちになる。もちろん、発信していくということは自分のためでもあるし、いろんな意見があって当然だけど、今後も俺は続けようと思っています。


──なるほど。先ほど「哲が引っぱってくれた」とおっしゃってましたが、その意見にメンバー全員が最初から一致していたんですか？

櫻澤：俺個人はさっき話したような動画配信を継続しつつ、でも、ZIGZOをはじめとする自分が関わるバンドに関しては、“今は沈黙”派だったんだよ。ZIGZOも最初は沈黙の方向で話がまとまりかけていたところで、哲から、「いやそうじゃなくて」という強い意見が出て。沈黙から配信へ気持ちが変わったのは、ごく最近のリモート会議だったんだ。この期間中にBLACK COMET CLUB BANDはアルバムをリリースしていて、世の中の状況も日々変わっている。そんな中で一番現場に出ている哲が肌で感じて話す言葉は、やっぱり強かったし重かったね。

髙野：たとえば、7月のZIGZOツアーを中止せざるを得なくなったとき、ただライブを飛ばすだけでは悔しいなって。それは、俺が個人的に思っていることとズレてしまうから。ただじゃ転ばない感を出しくてね。そういう気持ちをみんなに伝えたら、賛同してくれたんです。

櫻澤：だったら哲の言うトンチを、みんなで考えようじゃないかということになったんだ。ZIGZOが動くことによって勇気づけられたり、笑顔になる人がいたら、それは嬉しいことだから。

──大きな困難にぶつかっても、音楽をつくって、それを発信していくことは止めないと。

櫻澤：うん。これは笑い話だけど、緊急事態宣言が解除されてから、ある出来事が起こったんだ。ちょっとした困難というかね。哲がリテイクバージョンの歌とギターを録るために、俺のスタジオに来ることになったんだけど、スタジオ内にはドラム関連機材がひしめいている。だから、少しスペースを作ろうと思って当日にシンバルスタンドが入っているケースを、一旦自分の車の中に入れることにしたわけ。俺は重いものを持つときは下半身の使い方に気を遣っているほうなんだけど、そのときはちょっと横着してしまって、腰からピキッと音がしてギックリ腰になっちゃったんだ。

──ええっ!? マジですか？

櫻澤：うん（笑）。その日は、とりあえず大丈夫かな…という感じだったので、哲のギターと歌をレコーディングして。翌日は竜治のギターレコーディングだったから、この2日間はなんとか乗り切ろうと思った結果、どんどん悪くなってしまった。中2日開けて整体に行ったことでだんだん良くなって、今はもう大丈夫なんだけど、そのとき改めて“ドラマーは身体が資本だ”と思ったんだよね。死ぬまでミュージシャンでいく、ドラムはやめないという意気込みはあるけど、そうもいかないかもしれないとマジで考えた瞬間だった。今後はちょっと気をつけて、少しでも長くドラムを叩いていたいなと。

髙野：ちょっとじゃなくてしっかり気をつけようよ（笑）。

櫻澤：そうだね（笑）。それに、自分はすごい時代に生まれたんだなと思った。地球環境がおかしくなって、大きな災害も多い。そういう中で音楽を続けられているんだから、恵まれているよね。謙虚な気持ちで、これからも音楽していきたいと思っている。

髙野：俺はこういう状況下で歌える場所がなくなっても、自分で場所を作って歌っているわけで。それはずっと変わらないと思う。俺個人の活動としては、無観客ライブを新宿LOFTや下北沢SHELTERで始めたんですよ。6月頭にLOFTで弾き語り、6月下旬にSHELTERでバンド、7月頭にはLOFTでバンドという流れで。

──無観客ライブの手応えは？

髙野：バンドマンで良かったと思いましたね。バンドを組んで、ライブハウスに通って、酒飲んで、スタッフに担ぎ出されて、というような暮らしを当たり前のようにずっと続けてきたんだけど（笑）。ライブハウスに行けなくなったここ数ヶ月があって、久しぶりのステージにすごく緊張したんです。お客さんはいないけど、照明があって、大きな音で歌って、メンバーと演奏して。そういう当たり前を取り戻しつつあることが、すごく嬉しかった。そんなふうに感じるあたり、ミュージシャンというよりも、ライブハウスのバンドマンという呼び方のほうが合っているかもしれないけど、いい人生を送れているなと思う。我々のステージにはいろいろな人が関わってくれていて、こんなピンチでも手を替え品を替え、演奏する場を作ってくれる。関わるみんなが、ロックバンドに夢を持ってがんばっている姿を見て、自分は生涯バンドマンでいたいなと強く思いました。


──では、ZIGZOとしてライブが再開できるようになったら、どんなライブでどんなことを伝えたいと思いますか？

櫻澤：ZIGZOは、音源を作るときもライブありきなんだ。そういうバンドだから、たとえば国や自治体のガイドラインに沿って、集客をキャパの50％以下に抑えないといけないような状態だったとしても、ステージに立つ以上、ロックバンドとして100％のZIGZOを見せることができると思う。今、ZIGZOとして公言しているのは、冬にはどんな形でもライブを行うということ。それを楽しみにしていてほしいし、俺ら自身も楽しみにしているよ。

髙野：そう。7月には中止公演の代替イベントを新しい形で実施します。それも配信リリースと同じ気持ちで、ただ諦めるだけじゃなく、状況を受け止めたうえでトンチを効かせて、お客さんも自分達も楽しめる形で実現させたいという想いから。このイベントはキャパに対して50％以下の集客という政府のガイドラインに従ったものになると思うけど、そういう制限の中でどうトンチを効かせるか、メンバー4人でワイワイ話し合ったんですよ。そうしたら、DENさんとRYO (岡本竜治)さんがくだらないことを言いだしたんだけど、「それ、面白いじゃん！」って。メンバー2人ずつのライブを実現させちゃおうと（笑）。ZIGZOは転んでもただでは起きない。ピンチをチャンスに変えられる力を持つバンドだということを見せつけるライブにしたいと思っています。そして、12月にはZIGZOの完全形態としてライブを実施する予定です。

取材・文◎村上孝之




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