【インタビュー】vivid undress、“コンプレックスとの向き合い方”導くミニアルバム
■ずっと自信のない人間だった
──ちょっと話を戻しますが、歌に焦点を当てるということで、じゃあ私は何を言いたいのか、何を伝えたいのかなど、その辺りはどんな風に考えていったんですか?
kiila:自分ともめちゃくちゃ向き合ったんですが、周りの友達にも聞いてみたんですよ。「私って、どういう人間?」って。家族や友達、先輩、あとは前作のキャンペーン中に担当してくださったエリアの方などに、『混在ニューウェーブ』を聴いてどう思ったかとか、私についてとかいろいろ。で、「私ってこんな風に見られているんだ」っていうのを改めて感じた上で、自己分析をしたんですよね。
──自己分析って、苦しいこともありますよね。泣きそうな夜もありました(笑)!?
kiila:結構ありました。というか、今でも頻繁にありますけど(笑)。
syunn&yu-ya:(笑)。
──メンバーの皆さんにもお聞きになったんですか?あ、メンバーは逆に近過ぎてわからない感じなんでしょうか。
kiila:そうですね。でも、今日は来ていないお姉さん──あ、私はキーボードのrio様をそう呼んでいるんですが(笑)、rio様には聞きました。rio様とは2人で飲みに行ったり、パーソナルな問題を相談することも多いので。他の3人(syunn、yu-ya、tomoki)は歌詞について聞いてもよくわからないって言われることが多いけど、rio様は歌詞について一番言及してくる人でもあるんですよ。
──ではあえて、お2人に聞いてみましょうか。
syunn:歌詞のことって、本当によくわからないんですけど(笑)。でもこれまでの作品は、どちらかというと「自分、自分」じゃないですが主張がとても強かったと思うんですね。それがもっと、今回は幅が広がったというか。
yu-ya:俺はちょっと抽象的になりますが、よりkiilaちゃんが見えたかなと思いました。今までよりも。
kiila:yu-yaも歌詞のことはわからないって言うけど、自分がいいと思った時だけはLINEが来ます。「この歌詞、いいね」みたいな。
yu-ya:僕、結構ストレートじゃないとわからないタイプなんで(笑)。
▲yu-ya(G)
──そういうタイプにもわかるくらい、自分自身が出せたなと思うのはどの曲ですか?
kiila:全部本当に自分だなって思うんですが、特に挙げるなら「感情戦争」です。メジャーに行ったからとかそういうことではなく、人として変化をずっと求めるタイプなので、その年に合った自分になっていきたいというその葛藤が、そのまま自分の感情として出ていると思うので。
──では逆に1曲目の「主演舞台」にはどんな自分がいますか?
kiila:自分が持っているものの中で、誰かに与えるものは、不幸じゃなくて幸福でありたいとずっと思っているんですね。「主演舞台」は、そういうポジティブなものを与える歌詞にしようと最初から決めて書いた曲です。自分の中でも感情の浮き沈みがあるんですが、沈んでいる時の曲があれば浮いている時の曲もあって、その浮きのほうの感情を全部詰め込んだっていう感じですね。よしやるぞ!って気持ちを。
──「私が主役だ!」「私は何度だって生まれ変わる」という歌詞は、いろんな人の背中を押していると思いました。
kiila:私は歌詞を書く時にいつも、頭の中に映像を思い浮かべるんです。自分でミュージックビデオを作るみたいな感じで。この曲には、映画『SING/シング』のイメージがありました。内容ではなく、劇場支配人であるコアラのバスター・ムーンをはじめとするいろんなキャラクターがいるけど、みんなが主役なんだっていうそういうイメージで。私が主役だってみんなが思っている、そんな気持ちを書いていきました。
──そういう曲で始まるからこそ、このミニアルバムはどれも自分のことのように聴こえるというか、すごく感情移入できるのかなと思います。
kiila:あぁ、嬉しいです。ありがとうございます。
yu-ya:そうなんですよ、そうそう。同じバンドで、同じようにもがいている存在だからかもしれないけど、なんというか、今回のアルバムの曲は今までの曲と比べるとかなり心がエグられたんですよね。個人としても、刺さったところが多かった気がしています。
syunn:似てるってことかな。
yu-ya:似てるというか…、「言われた」みたいな感じ?言ってもらえたというか。まぁ、詳しいことは、後ほどkiilaちゃんにLINEしておこうと思います。今、パッとは出てこないんで。
──じゃあ、この続きはSNSでお願いします(笑)。
kiila:わかりました、スクショで晒します(笑)。
──(一同爆笑)。でもバンドとしても個人としても思いが共有できるって、今きっとすごく5人がいい状態なんでしょうね。
kiila:初期の頃に比べたら、言いたいことが言い合える関係性にはなったかなと思います。今年、結成7年目になるんですが、最初は気を遣って言えなかったこととかもめっちゃあったし、言ってケンカになったらどうしよう、これで解散したら私のせいだとか思うことも結構あったけど、今は兄弟みたいに普通にケンカもできる。違うことは違うって、普通に言えるというか。
──そういうことも乗り越えながら、ひとつひとつの作品が出来ているんですね。
syunn:そうですね。このバンドって音楽に対してのプライドも理想も強い人が集まっていると思うから、こだわりとか譲れないところとかも結構あるんですよ。
kiila:うん、うん(笑)。その上で、今回は歌のことを考えてみんながアレンジしてくれました。
──アレンジといえば、「ファンファーレ行進曲」は面白かったですね。
kiila:これはキーボードのrio様が、新しいシンセをみんなのゴリ押しで買ったから生まれたものなんですよ。
syunn:自分が、今回はもっと新鮮な音も含めて新しいことをやっていきたい、今まで通りだとちょっとなっていう話をしていた時に(rioが)うちに来たので、その場で買ったっていう(笑)。そしたら楽しすぎて、いろいろやりたくなっちゃったらしくて。最近のレコーディングで一番楽しそうでした。
kiila:(rioは)機材には疎いけど、リーダー(syunn)の言ったことは守る人なんです。他の人が「新しいキーボード、買いなよ」とか言っても言うこと聞かないのにね(笑)。
▲syunn(B)
──その「ファンファーレ行進曲」というタイトルもそうですが、「ララ、バイバイ」など、kiilaさんの言葉のセンスも本当に素敵ですよね。個人的には「ワンルームミッドナイト」の「カーテンの隙間から 月明かりが会いに来てる」という表現が大好きです。
kiila:そこ、褒められたのは初めてです。ありがとうございます。でも今回はどの曲も、みんながガッツリアレンジをやってくれていたので、歌詞に集中する時間がより長く取れたんですね。悩む時間も結構あったからこそ、使う言葉や表現の仕方もさらに納得のいくものになっていったのかなと思いますね。
──それこそ「自信を持って生きてみたい」と歌う「Make Magic」で歌われているコンプレックスも、不安や疑問、後悔も全部肯定して生きよう。今回の6曲には、そんな覚悟みたいなものも貫かれている気がします。
kiila:私は100:0の人間で、いつか死ぬから頑張って生きようみたいな、それくらいの感じで音楽にも向き合っているんです。
syunn:100:0…そうか。初めて知りました。
yu-ya:僕は感じてましたよ(笑)。
kiila:でも本当に、イエスかノーしかない。これはいい、これはいや、絶対やる、やらない!みたいな(笑)。
──それがいい意味で、歌詞を書く時にはコントロール出来るようになってきたのかもしれないですね。
kiila:あ、そうですね。昔は全然コントロールが出来ませんでした。やりたいと思って頭の中で描いていたことが出来なかった時、以前はパニックになっていましたから。だけど今は、ちゃんと消化しようとすることが出来ているなと感じます。
▲vivid undress/『変身コンプレックス』
──では改めてになりますが、この『変身コンプレックス』という言葉に込めた思いも聞かせてもらえますか?
kiila:自分は、ずっと自信のない人間だったんです。何かをするという時もネガティブな感情が邪魔をしてきたりして、そういう自分の嫌いなところばかりに視点を置いていたんですね。でもそういう嫌いなところがあるから私なんだし、今、こうやって強くなれたんだと思えるようになったんです。だから、自分のことが嫌いな人やコンプレックスを持っている人達の背中を押す作品になればって、そういう思いを込めています。
──バンドが最高の状態であることを証明する作品が出来上がったわけですから、次はライブで、早くこの新曲の世界を堪能したいです。まだまだ不安定な状況ではありますが、今後についてはどのように考えていますか?
syunn:(前作のツアーファイナルとしてやるはずだった3月の)渋谷CLUB QUATTROが延期になったり、今回のミニアルバムが(予定していたリリース日からは)延期されたりしましたけど、結果的には、こういう状況だからこそより多くの方に届けられるんじゃないかなという気持ちもあるんです。今回の作品は自分達の中でも前向きになれるような曲が多いですから、1人でも多くの方がちょっと明るい気持ちになってくれたり、共感出来たって思ってもらえる部分があるかもしれないと思うので。ライブは、まだ先になっちゃいますけどね。
yu-ya:ツアーの振替公演は10月からの予定ですけど、その時は思いっきりハジけたいなと(笑)。
syunn:やっぱりお客さんの前でやりたいよね。オンラインはオンラインの良さもあるとは思いますが、直で反応が見られないから。ちゃんとお互いの表情をみながら、ライブが出来たらいいなと思っています。
kiila:vivid undressは紆余曲折あって、それを全部見てきてくれた人もたくさんいるんですね。もちろんこれから出会う人もたくさんいると思いますが、自分としては、一緒に生きていく音楽としてそういう聴いてくれる人達のそばにいたいなと思っています。これまでの作品も全部そうですが、自分達の成長と共に「一緒に生きていきたい」という音楽を作っていますし、このミニアルバムも、そしてこれからの作品も、そういうものになっていけたらと思っています。
取材・文◎山田邦子
リリース情報
2020年8月19日(水)発売
TKCA-74886 / ¥1,800(Tax in)
[収録曲]
1. 主演舞台
2. 感情戦争
3. ファンファーレ行進曲
4. Make Magic
5. ララ、バイバイ。
6. ワンルームミッドナイト
ツアー情報
※代替公演
2020年10月5日(月)東京・渋谷CLUB QUATTRO
<vivid undress 変身コンプレックスTOUR>
※振替公演
2020年
10月30日(金)愛知・ell.FITS ALL
11月6日(金)北海道・札幌SOUND CRUE
11月13日(金)福岡・Queblick
12月3日(木)宮城・MACANA
12月18日(金)大阪・Music Club JANUS
[注]新型コロナウイルス感染症の影響により、スケジュール変更の可能性あり
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