【インタビュー】DIMENSION、増崎孝司が語る新体制の『31』「“楽しくフュージョンを”という今までにない感覚」
■完璧にプレキシマーシャルの音
■“外タレ”ギタリストの音を鳴らせる
──増崎さんが手がけられた他の曲についても話を聞かせてください。「Destination」は組曲のように場面が大きく展開していく構成がユニークですね。どのように作っていったのですか?
増崎:この曲はパーツごとに作っていきました。基本的にワンテーマの曲で、まずそのテーマを作って、プリプロ(ダクション)の初日に、サックスソロまでを作りました。安部くんも「いいですね」って言ってくれたんですけど、何かが足りない気がして。例えば、そのままソロを繰り返してテーマに戻って終わるというジャズ的なアプローチだと、ちょっとつまんないなと思ったんです。それで、もっとUKポップみたいな曲の入口にできないかと考えて。
──UKポップですか!
増崎:それでプリプロの2日目に、規則性のある3拍子に聴こえるようないいフレーズが欲しいという話をしたら、安部くんがコンピューターでフレーズを鳴らしてくれて。そのフリーシーケンスから、この展開になるのは面白いなと感じたんです。そこで、サックスとギターのソロが終わった時点で、まったく違う展開というか、この曲の“パート2”が見たいと感じて。当初、サックスとギターの後はキーボードソロにしようかとも思っていたんですけど、リズムの違う、ちょっと牧歌的なものを作れないかと。それでアコースティックギターでシャッフルのフレーズを弾いて、後半のメロディを作り上げました。
▲増崎孝司(G) |
増崎:ただ、“パート2”にいきなりいくのはどうだろうと思って、プリプロの3日目に、しつこく「やっぱり変えていい?」っていう話をして(笑)。
──そこで、ギターソロ後の穏やかになるブロックが作られたんですね。
増崎:最初は鍵盤で“パッパッ”と和音を弾いてもらっていたんですが、DIMENSIONでやるからにはギターのほうがいいだろうと思って、僕が弾くようにして。幾何学的というか、押さえにくいけどちょっと音が飛ぶものにしながら、2つのパーツをつなぎ合わせたんです。だから結構、この曲の構成は真剣に練っていきましたね。最初に作ったモチーフがすごくよかったので、それをより活かせる中間部のフックを思い付けてラッキーでした。いわゆる「DIMENSIONらしい曲」と言われたら、その通りで、僕らが通ってきた音楽性が強く出た曲だとは思います。一方で「Brand New Emotion」は、どうしてもああいったファンクがやりたくて作りました。しかも、普通のファンクではないのがいいなと思って。何となくの雰囲気でブラックコンテンポラリーをやるのではなく、リズムのとり方であったり、もっと本質に迫った、今のブラックコンテンポラリーにしたくて。だからレコーディングではプレイヤーにも細かく指示を出しました。
──具体的には、どんなオーダーを出したのですか?
増崎:ノリ方とか、リズムのとり方がわざとらしくならないようにといった部分ですね。ただ単に、「カッコいいベースとドラムを」ではなく、もっとシンプルなほうがいいとか、プリプロのドラムとはまったく違う感覚で叩いて欲しいといったオーダーもしました。則竹くんも、そのほうが楽だと言ってくれて。以前はリズムも細かくガチガチに固めていましたから。前は「このドラミングでないと、この曲は成立しない」というくらい、自分たちがプリプロで構築したドラマー像を則竹くんに再現してもらっていたんですが、今回は好きに叩いてくれていいよ、と。もちろん、それで違うと感じれば話をしますし。どの曲も、そういった感じで録っていったんです。
──では「Silver Shell」はどういうイメージで?
増崎:自分の中では唯一、昔のDIMENSIONっぽい曲かなって思っています。実は裏話があって、元々はバラード曲を書こうとしていたんです。ただ、他の4曲で燃え尽きてしまったのか(笑)、なかなかグッとくるメロディが書けなくて。今回、たくさんの曲を書いたんですよ。その中で、自分自身でいろんな部分をボツにしていって。それで書きかけたバラードもボツにして、新たに書いたのが「Silver Shell」なんです。ところが、「Silver Shell」が完成した途端に、バラードが書けたんですよ(笑)。
──えっ、それは収録されていない曲ですか?
増崎:そうなんです(笑)。歌モノっぽい感じのものを2曲。あと、インスト曲も作りました。だから今度、誰か歌わないかなって、事務所の人に話してみようかと思ってます(笑)。
──その曲がリリースされる時を楽しみにしています(笑)。コアファン的には、増崎さんのイクイップメントも気になるところですが、新しく導入したギアなどはありましたか?
増崎:アンプを変えました。それまではフェンダー系のものを使っていましたが、今回はマグナトーンのFIFTY NINEという、いわゆるマーシャル系のものに変えたんです。これが大きかったですね。3曲ほど、以前の流れでボグナーを使いましたけど、自分の曲に関しては、すべてマグナトーンでギターを録りました。
──どういう点が気に入ったのですか?
増崎:完璧にプレキシマーシャルの音というか、いわゆる“外タレ”ギタリストの音を鳴らせるんです(笑)。それにグッときてしまって。確か、最初に使ったのが「Loop」のレコーディングで、エンジニアも「めちゃくちゃいい音ですね」といっていました。これで、ギブソンレスポールや、僕がプロデュースしているスリードットギターなど、ギターは曲に応じて4〜5本を使い分けました。
──艶やかさとミッドレンジが充実したギターサウンドの秘密は、マグナトーンに隠されていたんですね。
増崎:常にミドルが張り付いてくれて、しかも嫌味のないトーン。あれは本当に、脳が喜ぶサウンドです。しかも、とても細かいニュアンスを出せるアンプなので、その分、ニュアンスやタッチにはすごく気を使いました。ライヴでも、このアンプを使おうと考えているんです。
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