【インタビュー】Ken Arai「音楽は少しだけ、気持ちを明るくしてくれたり和らげてくれたり、アゲたりしてくれると思う」
2003年にハウスユニット「transluv」でデビューしたKen Arai。その後は、西野カナ、KAT-TUN、野宮真貴、Lisa、Doubleなどのプロデュースをはじめ、アレンジ、リミックス、楽曲提供などさまざまな音楽的才能を発揮しているトッププロデューサーだ。現在ではDJ活動、レーベル運営ほか、著名ドラマやCMの劇伴を担当するなど、引く手数多の音楽家と言えるだろう。そんなKen Araiが、先ごろ“a la i.”名義で「You & Me」をリリースした。
◆Ken Arai画像
■全て自分ひとりで完結し
■リリースしたい
──どんな音楽に影響されて育ちましたか?
Ken Arai(以下、Arai) 洋楽邦楽問わず、80年代の音楽全般ですね。 中学生のころから音楽に興味を持ち始め、ラジオでビルボードTOP100をエアチェックしては、貸レコード屋さんでレンタルしてカセットテープにダビングする毎日でした。2つ上の姉がよく聞いていた、オフコースやユーミンなどのニューミュージック系や、ベスト10などの歌番組で自然とTVから流れてくるチャートミュージックやCM音楽も良く聴いていました。
──音楽制作をし始めたきっかけは?
Arai もともとは高1のときにギターを始めたことだと思います。以降、プロギタリストを目指す日々が続くのですが、大学時代に組んだユニットでオリジナル楽曲を作りたいという気持ちが強くなり、サンプラーとキーボードとHDレコーダーを買い、そこにギターと歌をレコーディングするスタイルで音楽制作を始めました。90年代中ごろだと思います。
──デビューのきっかけを教えてください。
Arai 当時毎月リットーミュージックから発刊されていた『GROOVE』誌のアマチュアからのデモ募集コーナー、“Demo De GROOVE”にデモを送ったことです! 優秀作品に選ばれ、巻末にバインドされたCDに複数回、収録していただきました。それを聴いて気に入ってくださったUSEN傘下のレーベル“GATE RECORDS”の方からデビューのお話をいただいたのがきっかけですね。
──プロの音楽家として食べていける!と思ったのはどんなとき、どんな仕事でしたか?
Arai 2012年のフジTV月9ドラマ『鍵のかかった部屋』のサントラを担当させていただいたときです。経済的な部分はもちろんですが、今に繋がる松山監督や泉音響監督との運命的な出会いがありました。
──今の音楽のスタイルを確立したのはいつで、何かきっかけはありますか?
Arai まだまだ確立できていません……(笑)。ただ、4年間とてもお世話になったARTIMAGEでのディレクター/A&R時代。当時、出会った素晴らしいアーティストや音楽業界のみなさんとの出会いの中で“自分にしかできない音楽って何だろう?”と深く考えるようになったことは大きな転機でした。ジャンルにとらわれずシンプルに自分が良いと思う楽曲を、全て自分ひとりで完結し、リリースしたいという思いはここ数年でますます強くなっていると感じています。
──Ken Arai、18 degrees.、a la i.と名義を使い分けていますが、それぞれ役割、住み分けみたいなものがあるのでしょうか?
Arai 名義の使い分けに関しては、Ken Araiはドラマやアニメ、CMなど、サントラ作品を手掛けるときに。a la i.は僕がDJをするときにかけられるような、クラブ対応のダンスミュージックを作るときに使っています。18 degrees.はエレクトロポップをやるときのアーティスト名なんです。ただ2枚のアルバムをリリースし一旦終了したので、名義的にはしばらく使わないかなと思います。
──最近の主な活動を教えてください。また先ごろ発売された「You & Me」はどんな内容でしょうか?
Arai 最近はサントラ用の楽曲制作と自分の作品制作に集中しています。4月7日にリリースした「You & Me」はa la i.名義で21枚目の作品で、全曲とにかくキャッチーでリスニングでもフロアでも盛り上がれるEPに仕上がっています! ジャンル感的にも、エレクトロハウスから2ステップ、フューチャーベースまでバラエティに富んでますのでゼヒチェックしてみてくださいねー。
■サントラは良い曲/メロディを大切にすることを
■一番に意識して制作している
──ドラマやアニメのサントラを多く手がけていますが、その内容にうまく合わせるコツ、製作時に心がけてきることはありますか?
Arai 制作中は監督やプロデューサーの音楽/演出イメージを大きく箇条書きにして、デスク横に貼っていつでも目に入るようにしています(笑)。サントラ作品は曲数が求められる仕事なので、作業やスケジュールでギリギリまで追い込まれることも多いのですが、人間的にも音楽的にも謙虚さは忘れないように!と、心がけています。
──またサントラを担当する場合の、自分の持ち味はどういう点だと思われますか?
Arai 良くも悪くも映像に寄り添い過ぎていないことかなと思います。映像と合わさったときの相乗効果だけでなく、音楽だけでも成立するインパクトのあるサントラ……時代感やダンスミュージックのエッジ感は持ち味だと思いますが、良い曲/メロディを大切にすることを一番に意識して制作しています。
──プロデュースをはじめ、アレンジ、楽曲提供、DJ、ギタリストなどさまざまな顔を持っていますが、どの仕事が一番“しっくり”きますか? またそれはなぜでしょうか?
Arai やはりプロデュースだと思います。スケジュールやギャラの交渉。楽曲作りからトラックメイキング、アレンジ、ギター、DJ、MIX作業まで。今までの音楽人生の全てが含まれていている仕事だと思います。
──主宰のレーベル“Addicted Tokyo”はどんなレーベルなのでしょうか?
Arai 僕のa la i.名義の作品をリリースするダンスミュージックレーベルとして2011年に立ち上げました。現在まで21枚の作品をリリースしています。
──今後の主たる活動、またAraiさんが目指すアーティスト像について教えてください。
Arai 今年は変わらず、a la i.名義でのリリースとサントラ作品をいくつか手がけていくことになりそうです。自分の音楽を作れることと、いつも聴いてくださるみなさんへの感謝を忘れずに、“どんなときでも常に作品をリリースし続ける”という、強い意志を持って行きたいと思っています!
──引きこもっているファンの方にメッセージがあればお願いします。
Arai 不安の中ですが、音楽は少しだけ気持ちを明るくしてくれたり和らげてくれたり、アゲたりしてくれると思います。僕自身も日々葛藤しつつ、コロナショック後の世界を考えるようにして音楽制作に没頭しています。みんなで乗り越えて行きましょう!!
「You & Me」
Addicted Tokyo-021
All music, Sound Produce,
Arrangement,Programming,
All Instruments and Mix
◆Ken Arai オフィシャルサイト