【インタビュー】清春、“化粧とロックンロール”を掲げたアルバムに破壊と創造「究極、オケはいらない」
■超シンプルだからこそ
■こういう作品ができちゃう
──清春さん自身は、音を極限まで削ぎ落としたかったんですか?
清春:うん、最終的には、究極オケはいらないと思ってます。ただ、僕が生きてるうちには無理だろうと。死んだ後、歌だけが残るのかなって。まぁ今回のアルバム全体のテーマとしていたものは、「アウトサイダー」の歌詞にある“化粧とロックンロール”。これがなんとなく、今やってる僕のジャンルを言い得ているなと思ってます。
──というと?
清春:日本のロックンロールって、今や清々しいものになってしまったじゃない? 天気で言うと“晴れ”。僕が思ってるロックンロールって、どしゃ降りだったり、ドロドロだったり、めちゃくちゃ曇ってるとか湿気があるとか、そういう感じ。晴れだと化粧も落ちてイヤだし(笑)。
──ははは。
清春:ベースレスに関してもそう。今のこの時代、みんな定義通りにやってて、そのなかでの評価に過ぎないのよ。
──わかります。限られた範囲内でしかないというか。
清春:ある程度、決められた枠組みの中でやりくりして上手く出来ちゃったっていうのが、今のバンドだと感じる。でも、ロックって、壊したり、はみ出したりしながら新しいものを生むんじゃん? そもそもバンドサウンドって、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムっていう編成でなくてもいいんじゃない?って。
──確かに、必ずしも絶対的な形態ではないのかも。
清春:世界的にはそんなのってたくさんあるし、それもクリエイティヴだと思う。日本は作るほうもそれを捉えるほうも、20年くらい遅れてる。だからベースを無しにしたというわけではないんですけどね。僕はライヴでも、“ベース要らない”って思ってるんです。誰か特定のベーシストが、というわけじゃなくてね、低音は必要なんだけどベースじゃなくてもと。
──ベースの音が清春さんの歌とぶつかってしまう、ということですか?
清春:んー。特にソロの編成でいうと、ギター2人にベースとドラムがいて、僕もたまにギターを弾いたりする。となると、ある時はギターが3本になるんです。ギターってついジャカジャカ同じフレーズ弾いちゃうものだし。
──その辺りの抜き差しの加減は難しいでしょうね。
清春:音の隙間がどんどんなくなっていって、緩急や強弱が少ないとつまらない。歌の空気感が聴こえなくなっちゃう。ギターを減らしてもいいんだけどね。ライヴハウスって会場ごとに鳴りが違うので、たまに低音って要らないのかな?って思うことあるんですよ。違うもので低音域を出すんだったらいいんですよ。シンベ (シンセベース)のほうがわかりやすいんじゃないかなとか。でも、これはパッと見の話、シンベだと“ロックじゃないなぁ”みたいになるのかなって。
──ポップスやダンス寄りの印象があるかもしれません。
清春:ウチの場合、ステージ上では僕にあんま弦楽器の音は聴こえてないんです。ドラムと全体に流れてくるなんとなくのコード感で歌ってるの。
──そんな背景があったわけですか。
清春:僕が最近、リズムレスをやってることも大きいですけどね。あれにドラムが加わって、ギターを歪ませたら演れちゃうでしょ?っていう。
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──楽器を減らすということは、その分、ごまかしが利かなくなるということでもありますよね。今回の清春さんの歌には、さらなる凄みを感じました。
清春:いやいや。是永 (巧一)さんのギターが恐ろしく素晴らいんですよ。一流なんで当然めちゃくちゃ上手いわけですけど、ベースがいないっていうことで、「ごまかせないじゃん、俺」って笑っておっしゃってて、「めっちゃ気合いが入ったよ。ありがとう」って。ドラムのKatsuma (coldrain)も頑張ってくれた。
──ちなみに、ライヴも最小限の編成になるのでしょうか?
清春:ライヴで再現するのは難しいなと思ってて。三代さんに、「ギターもなるべく1本のアレンジにしてください」とお願いしたんです。『Covers』を経て、あまり音を重ねたくないって方向だったんですよね。重ねたほうが素敵な時もあるけど、作業時間がかかるし。超シンプルだからこそこういう作品ができちゃうってことを大いに世の中へ伝えてほしい、と思ってます。
──わかりました(笑)。実際にアルバムを聴いてみると、ベースの音がそこに入っていなくとも、脳内で勝手に低音が補完されるような感触がありました。然るべき音がちゃんと響いていて、見事に溶け合っているという印象です。
清春:ギターでオクターブ下を鳴らしてる曲もあるので、低音がなくはないんですよ。うっすら低音は鳴ってる。でもベースという楽器はいない。ちょっとコーラスがキーボード的に聴こえる時もあるけど、鍵盤もあんま入ってない。
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