【インタビュー】仮BAND、仮のままで突っ走る唯一無二のバンドが待望の2nd AL『二枚目』

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■「メロディがふとした時に下りてくる」とか
■かっこつけてるんだろうと思ってたけど本当でした(笑)


──藤岡さんに捧げたバラード「I See You」。やっぱり、グッときます。

BOH: 藤岡先生に向けた曲として僕は作っていて、フレットレスベースできちんとメロディを弾くことは最初から決めていました。でもベースはメロディを弾き続けるためにできている楽器じゃないんで、それだけだと押し出しが弱いなと。僕、ベーシストのソロアルバムとか、演奏はうまくても聴いてられないんですよ。ベースがずーっとメロディを取り続けるアルバムなんて絶対聴けない。だけどアルバムに1曲はそういうものがあってもいいなと思って、ベースがメロディを弾いてもおかしくないような曲を作ったんですけど、それだけだと押し出しが弱いんで、よくマーカス・ミラーがサックスと一緒にメロディを取るじゃないですか。それを僕はフレットレスベースでやって、サックスの代わりに西脇さんにハーモニカを吹いてもらいました。


──素敵なメロディですよね。のどかで朴訥な童謡みたいな。

BOH:これ、どんなメロディにしようかと何日も悩んで、寝落ちした時に夢の中で思いついたんですよ。

前田:よく覚えてましたね。

BOH:これだ!と思って、バッと起きて、すぐ書いたから。書いてすぐまた寝たんだけど。で、起きて、書いてあるものを弾いたら、これ絶対使えるなと思った。よく言う「メロディがふとした時に下りてくる」とか、かっこつけて言ってるんだろうと思ってたけど、本当でした(笑)。

──仮バンドの新たなスタートとしての二枚目。どのリスナー層を狙ってるとか、あります?

BOH:単純に音楽好きを増やしたいというのと、セッションというジャンルというか、日によってもメンバーによっても内容が変わる、音楽の楽しさを伝えられるバンドがあってもいいのかな?と思うので。曲の良さや歌の良さは、最近のアーティストはみなさんすごいなと思うし、プレイヤーも20代のギタリストでめちゃくちゃうまい人はいっぱいいる。でもそれとは別に、アンサンブルとしての音楽の面白さを、楽器だけでもこれだけやれるんだというものを誰かがやっておかないと、なくなっちゃうなと思うので。


──その思いはすごくよくわかります。

前田:僕ら、修正もほとんどしてないんですよ。ちょっとかみ合っていないところもそのまま残っている。今は編集できっちり合わせていくことが多いけど、個性がなくなっていっちゃうし、そういう意味で若い子に聴かせたいなという思いはありますね。

BOH:J-POPもロックもそうですけど、誰が弾いてもあまり変わらなくなっちゃった。コンピュータに取り込んで、テンポを入力して、ボタン一つ押せば全部揃っちゃう。それじゃ、人間がやる意味がどんどんなくなっていくので。前作は、ボタン一つでやってはいないですけど、もっと揃えようして何度も同じフレーズをやり直したところもあるんですけど、今回それはないので。

前田:ないですね。


──その違いは大きいですよ。

前田:僕が思うレジェンドの人たち、バンドなりプレイヤーの人たちって、絶対に人の匂いがする音を出すんですよ。人が感動するものは、人の匂いがするものだと思うし、そういうところを僕はすごく大事にしているので。BOHさんもそうですよね?

BOH:うん。

前田:機械じゃ人を感動させられない。

BOH:いくら打ち込みの音源が生に近づくほど良くなっても、今はドラムのソフトですごくいいものも出ていますけど、それで打ち込んだドラムは絶対にヘタにはならないけど、100%にもならないと思うんですよ。感動しない。

前田:右の耳から左の耳へ抜けていく、真ん中で止まらない音というか。

BOH:そうやって機械頼りで、人間味をなくして、クオリティだけを追求して、音楽業界はそうやってきちゃったなと僕は思っていて。今はSNSがすごく発達してるから、いろんな趣味嗜好があるじゃないですか。その中で僕らとしては、音楽を選んでほしいんですよね。でもそれがほかに分散されていって、音楽業界はどんどん縮小していってる。そこで人間味をもっと出し続けていたら、維持できてたのかなと思うんですよ。だって今、80年代や90年代の日本の歌謡曲やJ-POPを聴いても、やっぱりグッとくるんですよ。僕、玉置浩二さんが大好きなんですけど。

前田:僕、美空ひばりさんが大好きです。

BOH:そっちのほうが感動する理由は何かな?と思うと、うまさはもちろんあるけど、やっぱり人間味だと思うんですね。そこが一番の違いで、いま僕らは、ありがたいことに“自由に弾いてください”と言ってもらえる立場にいて、こんなに嬉しいことはないので、それをより突き詰めていったらどうなるのか?ということですね。これぐらいの予算で、これぐらいの期間で何曲作って、これぐらいの売り上げを上げましょうという話じゃなくて、まずは自由なものを作ってから、どうやって広げていくかを決めようという発想でできてるのが、すごくありがたいです。

──このアルバム、藤岡さんが聴いてくれたら、何て言うと思いますか。

BOH:いやー、めっちゃ喜んでくれると思います。完成したら、飛行機じゃなくて車で淡路島(藤岡幹大の故郷)まで、聴きながら行ってみたい。絶対喜んでくれるよね。

前田:ギターを取り出して、「こういうの、どう?」ってやりそうですね。「こうしたら面白い」とか。


──不在ですけど、いる気がします。

BOH:それはSAMのおかげでもありますね。一番近くで学んでいた人間なので、似せようと思わなくても似てる部分があるというか。SAMは教えてもらうだけじゃなくて、絶対に藤岡先生を超えたかったんですよ。勝ちたかったんですよ。

前田:僕は僕、という気持ちも持ってる男だし。

BOH:仮バンドに対してすごく真面目に考えてくれて、自分が今持ってるベストの状態を作ってきてくれて、すごく感謝しています。

──このあとのリリース・ライブ、楽しみにしてます。

BOH:このバンドに関して言えば、頑張って武道館を目指そうぜとか、そういうわけじゃないんで。座って、お酒でも飲みながら見てほしいんですよね。リラックスして聴いてもらいたいので、ライブハウスの環境選びも大切だなと思ってます。こういうジャンルを、立って聴き続けるのはつらいですよ、自分が客だと思ったら。

──仮バンドのライブはみんな座りましょうと書いておきます(笑)。東京公演はスペシャル・ゲストもあり。

BOH:これは本当に未来の話ですけど、こうやって作品をどんどん作っていって、いつか、今まで参加してくれた人を全員呼んでライブができたら楽しいなと。

前田:自分から手を上げてくれても嬉しいですね。

BOH:ここで弾きたい!と言ってくれる人がいたら、嬉しくなっちゃう。いろんなものを吸収していったほうが楽しくなるし、僕ら二人だけが目立ちたいわけじゃない、良い音楽をやりたいというだけなので。

取材・文●宮本英夫

リリース情報

『二枚目』
発売日:2020/1/29
定価:1727+税
品番:BZCS-1186
1.侍Groove
2.Bewitching
3.Dancing Baloney
4.U-yeah!!!
5. Cloud Funding
6. I See You
ゲストミュージシャン
西脇辰弥(Key)、桑原あい(Piano)、岡 聡志(Gt)、ISAO(Gt)、平賀優介(Gt)、 辻本美博(Sax)、小林洋介(Tp) from カルメラ、たなせゆうや(Tb)、星野沙織(Vio

ライブ・イベント情報

<仮バンド 2020 東名阪「二枚目ツアー>
ツアーメンバー
(B)BOH (Ds)前田遊野 (Key)西脇辰弥 (G)岡聡志
2月9日(日) 名古屋 MUJICA
2月11日(火) 大阪 茨木 JACK LION
2月16日(日) 東京 目黒 BLUES ALLEY JAPAN
special Guest ISAO(Gt)、星野沙織(Vin)、ユッコ・ミラー(Sax)

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