ローランド、未来を感じさせる楽器、声で操作できるAlexa搭載キーボード「GO:PIANO with Alexa Built-in」を試した

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2019年1月に世界最大の家電見本市「CES 2019」で発表され、大きな話題となった“声で操作できる”電子キーボード「GO:PIANO with Alexa Built-in(ゴーピアノ・ウィズ・アレクサ・ビルトイン)」が2019年末、ついに発売された。「楽器を音声で操作するってどういうこと?」「どんなことができるの?」 興味を持っている人も多いだろう。今回、短時間ではあるが実機を触ることができたので、体験レポートをお届けしたい。


▲ホワイトボディのGO:PIANO with Alexa Built-inは、ベロシティー対応の象牙調ボックス型鍵盤を搭載した61鍵キーボードピアノ10音色、E.ピアノ7音色、オルガン7音色、その他16音色(ドラム・セット含む)を搭載。同時発音数は余裕の128音。

「GO:PIANO with Alexa Built-in」の製品名に冠される「Alexa」は、Amazonのスマート・スピーカー「Amazon Echoシリーズ」の頭脳となるクラウドベースの音声サービス。「GO:PIANO with Alexa Built-in」は、「Echo」や「Echo Dot」といったAmazonのスマート・スピーカー製品と同じ頭脳を持っているのだ。

楽器としてのベースとなったのは、2017年5月に発売された電子キーボード「GO:PIANO」。小型・軽量でステレオ・スピーカーを内蔵。また、Bluetoothでスマートフォンと連携して楽しむことができ、演奏していない時もBluetoothスピーカーとして使用可能。そして市場想定売価43,000円前後(税込)という価格帯では珍しいピアノタイプの象牙調ボックス型鍵盤を備えた人気モデルだ。


▲オリジナルの「GO:PIANO」はブラックボディ。鍵盤や音源をはじめとする楽器としての基本スペックは新製品のAlexa搭載モデルと同じ。シンセをはじめより多彩な音色と指一本でパフォーマンスできる機能を備えたレッドボディの「GO:KEYS」も同価格でラインナップされる。

この「GO:PIANO」の電子キーボードとしての魅力はそのままに、「Alexa」ならではの機能を追加したのが、「GO:PIANO with Alexa Built-in」。市場想定売価は55,000円前後(税込)だ。ボディ・カラーは黒から白に変更されているものの、鍵盤や液晶を備えたトップパネルなどデザインはまったく同じ。ボタンやマイクが追加されているが、ぱっと見は変わったところを見つけるのが難しいほど。付属の譜面台やペダル・スイッチも同じものだし、オプションのキャリングケースも黒い「GO:PIANO」と同じものが使える。以下、便宜上オリジナルモデルを“黒いGO:PIANO”、「GO:PIANO with Alexa Built-in」を“白いGO:PIANO”とする。


▲パッケージに同梱される譜面立ては、タブレットを置くのにもぴったり。無料アプリ「Piano Partner 2」を使えば、本体内蔵曲の譜面を表示したり、聴音力を育てる音当てゲームを楽しむことが可能。日々の練習記録のダイアリーとしても役立つ、ローランドのオリジナルアプリだ。

白いGO:PIANOを実際に弾いてみると、しっかりしたタッチと適度な重さで、ピアノに近い弾き心地が味わえる。アクション鍵盤ではないので軽いといえば軽いが、このクラスではかなり上質な鍵盤だ。また、ローランドの電子ピアノの上位モデルと同じ波形を搭載しているので、ピアノ音色をはじめサウンドも高品質。エレピやストリングスの音色もこだわりが感じられる出来だ。

■Alexaに話しかけてみよう

楽しいのはここから。白いGO:PIANOのマイクに向かって、「アレクサ、今日の東京の天気は?」と話しかけると、「ポンッ!」とGO:PIANOのスピーカーから音が鳴り、「東京・日本の現在の天気はくもりで気温は摂氏7度です。今日は雲が多く予想最高気温は10度、予想最低気温は6℃です。」といった具合に答えてくれる。さらに、「アレクサ、ジャズかけて」と話しかけると「Amazon Musicでジャズステーションを再生します」と答え、曲が再生される。「アレクサ、音量を上げて」なら音量アップ。まさにAmazon Echoシリーズと同じ体験が味わえる。

なお、Amazon Musicでの曲再生には、Prime Music(Amazonプライム特典の一つ)またはAmazon Music Unlimitedへの加入が必要だ。音楽ストリーミングサービスと契約していなくても、Amazonプライムに加入しているという人は多いはず。Amazonプライム会員であれば、白いGO:PIANOが話しかけるだけで、いつでもすぐにBGMを鳴らしてくれるスピーカーになるというわけだ。


▲ローランドのオフィスで実機を体験。デスク下に見えるのは付属のペダルスイッチと、コンセントに刺さったACアダプター。白いGO:PIANOの右に置いてある丸い物体は本家のAmazon Echo Dot。

Amazon Echoシリーズにさまざまな機能を追加できる「スキル」にも対応。たとえば、ラジオ放送をストリーミングで聴ける「radiko(ラジコ)」を追加すれば、ラジオ放送も楽しめる。「アレクサ、ラジコでTOKYO FMをかけて」と話しかけると、「ラジコでTOKYO FMを再生します」という答えに続き、放送が流れる。キーボードからラジオの音が流れてくるのは、なかなか新鮮な体験だ。これは知らない人が見たら驚くこと間違いなし。多くの人が訪れるカフェやラウンジに設置するのもおもしろそうだ。なお、スキルはスマホのAmazon Alexaアプリからカンタンに追加でき、いったん設定が済んでしまえばスマホの操作は不要、白いGO:PIANO単体でさまざまな機能が楽しめる。

白いGO:PIANOでは、残念ながら今のところ音楽ストリーミングサービスApple Music、Spotifyを聴取することはできない。ここで思い出してほしいのが、白いGO:PIANOが、黒いGO:PIANOと同様にBluetoothスピーカーとしても機能すること。スマホをBluetooth接続すれば、これらのサービスの音楽をGO:PIANOのスピーカー経由で聴くことは可能だ。ちなみに、音楽ストリーミングサービスでは、auの「うたパス」やNTTドコモ「dヒッツ」が白いGO:PIANOから直接再生することが可能だ(サービス加入とAlexaアプリでの設定が最初に必要)。


▲スマホとBluetoothのペアリングをしている時の表示。ディスプレイの両脇のスリットは内蔵マイク。左の丸いアイコンはAlexaを呼び出すアクションボタン。右のマイクのアイコンがAlexa用マイクのミュートボタンで、これをタッチすればAlexaの機能を停止することができる。赤く点灯しているのがAlexaインジケーターで、Alexaの動作状態を示す(赤はミュート、青と水色の交互点灯で応答中)。

これらのストリーミングサービスやスマホからの音楽再生に合わせて、白いGO:PIANOを演奏することも可能。好きな曲でのセッションがいつでもすぐに楽しめる。もちろん、ケーブル接続などの手間もない。同じスピーカーから音楽と自分の演奏がいっしょに流れるので、違和感なく聴けるのもポイントだ。また、GO:PIANOの内蔵スピーカーが音楽鑑賞に十分対応できるポテンシャルを持っていることも付け加えておきたい。

■GO:PIANOを声で操作してみよう

さて、ここまで紹介した機能は、同じスピーカーから音が鳴ることを除けば、GO:PIANOとAmazon Echoを別々に持っていても体験できることだ。白いGO:PIANO=「GO:PIANO with Alexa Built-in」なら、さらに楽しい体験ができる。


まずは「アレクサ、ゴーピアノでメヌエットをかけて」と話しかけると「メヌエットを再生します」という音声に続き、内蔵曲の再生が始まる。50曲の内蔵曲から好きな曲を声で再生させることができるのだ。続いて「アレクサ、ゴーピアノでテンポを下げて」で「テンポを下げます」と返ってきて、再生中の内蔵曲の再生速度がゆっくりに。「アレクサ、ゴーピアノで右手を消して」には「右手を消します」と答え、左手のみの演奏になる。「アレクサ」と声をかけて返事が終わるまではいったん演奏の音が小さくなるので、認識ミスもないし返事の音声が聞き取りにくいこともない。さらに「アレクサ、ゴーピアノで音をバイオリンにして」で「バイオリンにしました」と答え、これまでピアノ音色で鳴っていた演奏が、バイオリン音色に切り替わる。

機械が苦手な人、マニュアルを読むのが面倒という人には、とてもうれしいキーボードだと感じるはず。このほか「メトロノームを鳴らして」「テンポをラルゴにして」といった操作も可能。「録音をはじめて」で演奏を記録、クラウドに保存するなんてこともできる。Bluetoothのペアリング以外の本体でできる操作はすべて音声で操作OK。なんともカンタンだ。


▲白いGO:PIANOを操作するためのボイスコマンドの一例(マニュアルより抜粋)。演奏時によく使う操作から細かい設定も音声で行える。「ベートーベンについて教えて」といった具合に音楽の知識を蓄えるのにも有効。

音当てゲームもおもしろい。「アレクサ、ゴーピアノでゲームをしよう」と話しかけると「音当てゲームです。音が鳴ったら同じ高さの鍵盤を弾いてください」との音声に続き、ピアノの音が聴こえる。同じ音の鍵盤を弾けば正解を示す軽快な音が鳴り、不正解なら「ブー」と音が鳴る。子供も楽しく音感が鍛えられること間違いなしだ。

このようにキーボードを音声で操れるのは非常におもしろいのだが、いくつか注意点もある。まず最初は、ウェイクワードである「アレクサ」に続き「ゴーピアノで」というのを忘れずにつけること。たとえば、単に「○○をかけて」では内蔵曲ではなくAmazon Musicからの再生になってしまう。また、「ゴーピアノのテンポを上げて」ではだめ、「ゴーピアノ“で”テンポを上げて」と言わなくてはならない。


また、音声操作に対する反応がちょっと遅く感じられることもある。これは音声認識が白いGO:PIANO本体で行われているのではなく、インターネットを経由してクラウドで行われているため。返事があるまで2~3秒、さらに返事を言い終わるまでさらに数秒待つことになるので、操作が反映されるのに計5、6秒かかることになる。音量を変える程度の操作なら本体パネルを操作した方が早い。一方、一部の設定はメニューの階層をたどって設定項目を探す手順も必要になるので、音声操作の方が手っ取り早い。ここは使い分けといったところだろう。マニュアルのクイック・スタートには音声操作に使うボイス・コマンドの一例が掲載されているので、プリントして近くに置いておくのがよさそうだ(マニュアルはローランドのサイトからダウンロードできるので、購入を検討している人はチェックしてほしい)。

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これまでにない、音声で操作できるキーボード。「GO:PIANO with Alexa Built-in」は、実際に触ってみると、想像していた以上におもしろかった。私自身、普段からスマートスピーカーを使用しており、赤外線リモコンデバイスを使った音声による家電のコントロールなども楽しんでいるのだが、楽器の操作ではそれとはちょっと違った不思議な感覚を味わった。ルックスがキーボードなだけで、ちょっと未来を感じさせてくれるのだ。一度触れば、楽器の経験がない人も興味を持つだろう。

ただ、これが誰でも使えるアイテムかというと疑問が残り、そこにはちょっとしたハードルがある。Alexaの機能を使うにはWiFi環境が必須。初期設定にはスマホも必要になる。また、GO:PIANOは電池駆動にも対応するのだが、Alexaの機能を使う際にはACアダプターでの電源供給が必要だ(モバイルWiFiなどでネットワーク環境構築をクリアしても、電源確保が壁になる)。こうした要素は、「スマホやWiFiは当たり前」という現代の多くの人にとってハードルにはなり得ないが、誰かにプレゼントする際にはちょっと気に留めておいた方がいいだろう。

白いGO:PIANOは、Amazon Echoシリーズ同様、ネットワーク経由でのアップデートが随時行われているのだ。今後はさらなる機能追加にも期待したい。ちなみに、アップデートが必要になった時は、電源投入時に今すぐ処理を開始していいか確認もしてくれるとのこと。演奏中など予期せぬタイミングで勝手にアップデート処理が始まって戸惑うといった心配はない。

12月20日の発売から約3週間。一部の楽器店などでは店頭展示も始まっているようだ。ぜひ一度、このキーボードに話しかけて、未来の楽器のスタートを感じてほしい。


▲背負うこともできる専用キャリング・ケース「CB-GO61」は人気のオプション(本機のほかGO:PIANO、GO:KEYS、JUSTY HK-100共通)。ACアダプターやペダル、譜面立てや菊倍判サイズの楽譜も収納できるポケットも備えたスグレモノ。市場想定売価7,700円前後(税込)。

製品情報

◆GO:PIANO with Alexa Built-in(ゴーピアノ・ウィズ・アレクサ・ビルトイン)
価格:オープン(税込市場想定売価 55,000円前後)
発売日:2019年12月20日(金)

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