【インタビュー】首振りDolls、激動の2019年から2020年へ「全ての出逢いに改めて感謝」
2018年の12月に新たに加入したベーシスト、ショーン・ホラーショーを迎え新体制初となり、本格始動した首振りDolls。新体制初ライヴ、上京、2ndメジャーアルバム『アリス』と新曲を含むインディーズ1stアルバム『首振人形症候群』の再販、新宿ロフト、下北沢GARDENでのワンマン。激動の1年となった2019年は、彼らの人生の中で大きなキッカケと、忘れられぬ経験の連続であったことだろう。
2020年初のマンスリーインタビュー第11弾は、そんな2019年の出来事を振り返りながら、現在の首振りDollsに迫ってみることにした。
◆首振りDolls 画像
――2019年は首振りDollsにとって激動の1年だったと思うけど、振り返ってみてどう?
ナオ:そうね。こんなに早く感じた1年はなかったかも。
ジョニー:あっという間だったね。
ショーン:早すぎる……。この前、2018年の年末何してたっけ? って思い出してたんだけど、全く思い出せなくて、自分でもビックリしたっていう(笑)。
ナオ:本当に! 正月なんか全く覚えてないくらいバタバタだったもんね。12月27日にショーンが正式加入してから、新体制初ライヴだった1月5日のMUCCとミオヤマザキとの福岡でのライヴまで本当に時間がなくて、とにかく必死で。そこに至るまでの記憶が、必死過ぎて全くといっていいほどない。いきなりの大舞台だったからね。
ショーン:本当に。今思うと信じられないくらいバタバタだったよね。
ジョニー:ショーンと小倉でいっぱいリハしたもんね。
ショーン:したね〜。
ナオ:『アリス』の制作もあったから、俺の家でしばらく2人暮らししながら曲作りしたよね!
ショーン:したね〜(笑)。
ナオ:あの2人暮らしがあったからこそ「黒い太陽」が生まれたっていう!
ショーン:そうそう。あのときの2人暮らしで出来た曲だもんね、「黒い太陽」。ドッタドッタドッタドッタのリズムで曲作ってみよう! って2人で盛り上がって。
ジョニー:その「黒い太陽」すらも、もう何年も前のことに感じる(笑)。本当にその頃のこととか、全く覚えてないもん。
ショーン:本当に!
ナオ:そうだね〜。1年前のことなのに本当に思い出せない。あの頃は、とにかく目の前のことを一生懸命やるのに精一杯だったから。
――バタバタだったね、たしかに(笑)。
ナオ:レコーディングのための新曲作りもあったから、急ピッチで曲作ってレコーディングまで持ってって。
ショーン:レコーディング明けにはセックスマシンガンズとの2マンツアーもあったしね。
ナオ:そう。この3人での初ライヴからデカイ経験だったし、そこからも日々越えていかなくちゃいけないことばっかりで。とにかく必死やったなぁ。あの頃、どんなこと考えてたとか思い出せない。
ジョニー:俺、実家におったっけ? (しばし考える)あ、おったなぁ。
――おいおい。記憶喪失なみだね(笑)。
ショーン:本当に(笑)。それに近いくらい(笑)。
――その頃からの成長はそれぞれ感じている?
ナオ:感じてる! ジョニーが歌が上手くなった!
ジョニー:歌も上手くなったけど、ギターも上手くなった!
ナオ:息が合ってるなっていうのは、ショーンと初めてスタジオで音を合わせたときから感じてたから、そこは徐々に息が合ってきたなっていう感覚では正直ないのね。最初からピッタリ息が合ったから、もうその時点で手応えは感じてたんで。でも、今、インディーズ時代にリリースした1stアルバム『首振人形症候群』の再発ツアーの真っ只中ということもあって、ショーンが加入する前の古い曲を3人でやることが多いんだけど、古い曲がすごく変化してるのを感じる。
ショーン:感じるね〜。全く違う曲に感じることもあるからね。アレンジもだいぶ変わったし。
ナオ:そう! アレンジが全く変わったから、曲の印象がガラッと変わったものもあるんだよね! 昔の曲が、ショーンと一緒に演奏することで、新しい曲に生まれ変わっていくというか。「カンチガイ」とか、本当に化けたからね!
ジョニー:「カンチガイ」化けたよね! マジで化けた! 俺がやりたかったThe Rolling StonesとかTHE STREET SLIDERSみたいな世界観になった。あの曲はまだまだ化けると思う! もっと長くして遊べる曲になったから。
ナオ:今、曲中にそれぞれのソロも入れてライヴでやってるけど、もっと長く入れられそうだよね!
ジョニー:いけるね。
ショーン:ほぉ〜。いいね。
――「籠の鳥」も化けたよね。
ジョニー:化けたね! すごく良くなった。
ナオ:「籠の鳥」のコーラスもすごく良くなったもんね!
ジョニー:うん。「籠の鳥」は最初俺のイメージとしてはMC5みたいな感じだった。
ナオ:そうだね。ガレージ感というか。
ジョニー:そうそう。MC5とかThe Stooges系でやろうとしてた。
ナオ:俺もジョニーもガレージロック好きなんだけど、俺の好きなガレージロックとジョニーの好きなガレージロックはまたちょっと違っていたりもするから、そこも振り幅になるというかね。俺の好きなガレージバンドって、もっともっとコアなバンドだったりするんだけど、ジョニーの好きなガレージロックは俺も好きではあるから、やりたいことはすごく伝わってくるし。
ジョニー:The Sonicsとかも好きだからね、俺。
ナオ:俺もThe Sonics大好き! The Sonicsの血は薄れさせたくないなぁ。最強のロックバンドやと思うからね。
――そうだね。そこは原点でもあるからね。江戸川乱歩の短編怪奇小説を元に描かれた「鏡地獄」も、おどろおどろしい世界観のイメージだけど、いつしか客席がクラップで埋まるようになったりしたのもびっくりで。
ジョニー:お客さんも楽しみ方が分かってきたんじゃないかな?
ショーン:たしかに。お客さんも進化してきたのかなぁ?
ナオ:うん。それに、普通のバンドと違って首振りDollsはドラムボーカルだから、こっちから動作でクラップを促したり出来ないから、自然発生というか。俺が促せない分、ジョニーとショーンが補ってくれているけど、2人も楽器を持ってて両手が塞がっている分、そこまでハッキリと“こうして欲しい”っていうことは提示できないこともあって、お客さん的にも指標がないところで盛り上げてくれてるのが、首振りDollsのライヴでもあると思うからね。ライヴのノリを作ってくれている“お客さんのプロ”みたいな、前列のコアなファンの人たちが、俺たちと一緒にライヴをやってくれてるなって感じる。本当にありがたいなって。いつもライヴの度に、一緒にライヴを作ってるなって感じる。
――そうだね。本当にそう思うね。そういうノリについても変化を感じたりする?
ナオ:昔と思うと客層が変わったなって感じることもあるけどね。
ジョニー:お客さんが増えたなっていうのはすごく肌で感じる。
ナオ:お客さんが入れ替わるって、バンドにとっては悲観的なことではなくて、むしろ幅が広がっていると感じていて。今までもそうだったし。いろんな事情があると思うけど、一度でも首振りDollsの音を知って感じてライヴに来てくれた人たちなら、この先、首振りDollsが大きなところでライヴをするということになったら、きっとみんな集まってくれると思うから。
――そうだね。進化であり成長であり、いい変化であると言えるよね。
ジョニー:そう。全てがね。今、集まってくれてる人たちは、本当に首振りDollsの音が好きで集まってくれていると思うから。いろんな意味で真面目になったなって感じる。
ナオ:そうだね。すごくいい変化だと思う。最初のリハから合わせて、『アリス』のツアーもずっとやってきた「切花」とかは、本当に自分たちのものになってきてるな〜って実感するんだよね。そういうのを感じると、時間が経過してるんだなって思う。
ジョニー:2018年の年末は、3人でやれる曲が7曲くらいしかなかったもんね。そこから考えたら、今は30曲くらい出来るから。純粋に楽しみが増えたなって感じる。
――ショーンはメンバーになる前に外側から見ていた首振りDollsの印象と、メンバーになってからの首振りDollsの印象の変化はどんな風に感じている?
ショーン:ん〜。昔はもうちょっとアングラな印象だったかな。ドロドロし過ぎてるっていう訳ではないし、そこが首振りDollsの良さでもあったと思うけど、今はもうちょっと開けた印象というか。聴きやすくなったんじゃないかなって。暗いのが好きな人たちだけではなく、一般層に響くサウンドになったというか。母親の知り合いとかも聴いてくれてるらしいんで!
ナオ&ジョニー:おぉ〜。そういうの嬉しいね!
――12月16日にリリースされたインディーズ時代の1stアルバム『首振人形症候群』には、前体制での旧音源と現体制での新曲6曲が収録されている訳だけど、首振りDollsの軸は感じさせられつつも、確実に進化している首振りDollsを感じるからね。
ナオ:そう。11曲の旧曲と新曲が一緒に入ってるアルバムだからね。進化と成長をすごく感じてもらえると思う。旧曲は再録していない昔のままだから、それを聴いてライヴに来てくれたら、その進化と成長をリアルに感じてもらえると思うしね。ショーンの作った新曲「RAD」は、今の3人じゃないと生まれてなかった楽曲だと思う。
ジョニー:ライヴですごく盛り上がるし、評判良いよね!
ショーン:おぉ〜。嬉しい!
――ショーンが加入して確実に、“この3人じゃないと生まれないサウンド”が確立したからね。「RAD」は本当に新たな首振りDolls色だから。『アリス』に収録するために作った新曲たちは、ショーン的に、自分らしさというより、首振りDollsらしさを意識して作ったという感覚だったの?
ショーン:いや、実は「PSYCHO CLUB」を作ったときも「RAD」を作ったときも、自分的にはそんなに感覚は違わなくて。首振りDollsらしさを意識して作ったというより、自分の中から出てくるものを素直に出した感覚で。
ナオ:それは俺とジョニーの意向でもあったからね。首振りDollsらしさを意識するんじゃなくて、ショーンらしい曲を作って欲しいっていう希望でもあったから。
ショーン:最初に“こんな感じなんだけど、大丈夫? ちょっと印象が変わるけど”って2人に聞いて。そしたら、2人が“いいよいいよ! ショーくんらしさで!”って言ってくれて。だからすごく自由に作れたんですよね。でも、本当に不思議なことに、どんな曲を作ってもジョニーさんがギター弾いてナオくんのドラムでナオくんが歌ったら首振りDollsになる。
ナオ:お客さんもそう思ってると思うよ。ショーンの曲、ライヴでやっててもすごく感触いいからね。ショーンが加入する前の首振りDollsって、小さいハコを中心にライヴをやって来たから、ドロッとした演出が似合うバンドでもあったと思うんだけど、現体制になってから大きめなハコでライヴをさせてもらえるようになって、すごくバンドとしての見え方も変化して来たと思っていて。自分たちが照明さんとかに要望を出すときも、大きなステージをイメージした光を求めるようになったというか。初めてその変化を体で感じたのは、去年の8月にアルバム『アリス』のツアーのファイナルでやった新宿ロフト。ロフトのステージでジョニーの作った「星くずのメロディ」を演奏していたとき、一つの目標でもある武道館のステージが想像出来た気がして。“世界はこうやって俺から逃げていく〜”っていう歌詞を歌うとき、自然と両手を広げてた自分に気づいて。本当に無意識だったけど、“あ、なんかスケールが大きくなった気がする、首振りDolls”って思ったの。その変化って、バンドにとってすごく大きいことだと思う。ドロッとしたものを今も求められる節もあるんだけど、もちろん、そこは首振りDollsの一面として出していくところでもあると思っているし、在り続けると思うけど、ショーンのダンスなリズムとか、ジョニーの明るいロックンロール的な楽曲が、今の首振りDollsの中では映えるようになって来たなって思う瞬間が多くあるから、そこはバンドとしてのステップアップの部分なのかなって思う。俺の音楽ルーツが3人の中では1番アンダーグラウンドだからね。
――ナオはそういう首振りDollsの成長と進化の中で、自らの歌い方の変化を感じていたりするの?
ナオ:うん。感じてる。歌い方とかは、より聞こえやすく、より届きやすく歌うように努力してるしね。意識するところが変わってきたって感じ。
――そうだね。曲によって随分歌声を変えている印象だから。
ナオ:そうね。ジョニー曲、ショーン曲、自分の曲では全く違っているかも。意識的にそうしてるのももちろんなんだけど、自然とそうなるかな。それぞれ個性が全く違うからね。
――そうね。それぞれが違う肌触りのメイン曲という感じだよね。KISSが全員ボーカルを取れるみたいに、本当にそれぞれに個性があって独立させられていつつも、しっかり個性を魅せられてるというか。ジョニーは首振りDollsのキラーチューンを作る人で、ショーンは誰もが認める隠れた名曲を作る人で、ナオは、
ナオ:俺の曲は、聴く人が病むよね(笑)。
一同:(爆笑)
――あははは。女の情念を歌った曲も昔は多かったからね(笑)。でも、そういうナオの個性も、普通のロックンロールバンドとは一味違うところでもあって。そういう毒々しさは必要で。ナオは、首振りDollsの基盤と軸を作る人なのかなと。
ナオ:そうね。自分が作った曲で今、すごく手応えを感じているのは、「カラリカラマワリ」。ここ最近では1番かなと。お客さんもライヴでやるの待っててくれてる感じがあるし、モッシュがすごいからね。そういう曲をこの先も作っていきたいって強く思ってる。バンドの方向性としても、本当に世界が広がってきているから、もっともっといろんなこと出来ると思っていて。首振りDollsが昔、軸としていた、俺が作るドロドロした暗い楽曲は、これからも作っていくと思うけど、いつかやりたいなと思っているのは、そういう曲ばっかりを集めた6曲くらいのコンセプトミニアルバムを作れたらなってこと。ドロドロしたジャケットやアートワークで、ドロドロした音で、ドロドロした歌詞で、徹底的にやってみたい。そういうのを好きな人はそれだけを買ってくれてもいいし、その曲ももちろんライヴでやっていくから、それを聴きにライヴにきてくれるのもいいし。“あ、やってくれた!”ってお客さんが喜んでくれる姿をライヴで見れるのも、こっちとしても楽しいと思うしね。
――なるほど。面白そうだね。ナオアルバム、ジョニーアルバム、ショーンアルバムというそれぞれのコンセプトアルバムが作れるバンドだと思う。
ジョニー:KISSやん!
――あははは。そうだね!
ジョニー:それは売れてからやろう(笑)! KISSも売れてからだったからね! 『Destroyer』(1976年にリリースされたKISS通算4枚目のアルバム)の後だから!
ナオ:まずはめちゃくちゃ売れた『Alive!』(1975年にリリースされたKISS初のライヴアルバム)を作らなくちゃね!
ジョニー:そうだね(笑)。やりたいことは山ほどある! カヴァーアルバムも作りたいし!
ショーン:いろんなこと出来そうだなって思う。
――そうだね。現在、『首振人形症候群』を提げたツアーの真っ最中だけど、3月にはこのツアーのファイナルとして、渋谷Rexでの3days(3月20日、21日、22日)ライヴも決定してるよね。ファイナルを3daysとは、前代未聞企画でもあるし、首振りDollsならではの突飛な提案でもあると思うけど。
ナオ:そう。既にチケットは発売しているんだけど、1日目はインディーズ時代の曲で構成されたスペシャルデーで、2日目はメジャーデビュー後の曲で構成されたスペシャルデーで、3日目は新曲だけで構成したスペシャルデー。せっかく同じ会場で3日間やるならっていうので、3days通し券購入者には、ライヴの他にアコースティックライヴやリハーサルが観れるという特典付きだったりもしてる。3日間やる意味のあるライヴを楽しんでほしいから。みんながやってないようなライヴの楽しさを作っていきたいなって思う。今回の3daysファイナルをお客さんが楽しんでくれたら、ファイナルは3daysっていうのを恒例にしてもいいのかなって思っているし。
ショーン:いろんな3daysの形も試してみたいよね。個人的には、みんなやってることかもしれないけど、1日目は男限定、2日目は女限定、最終日は全員っていう3daysもやってみたいなって。
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