【ライヴレポート】DEZERT、年末恒例<くるくるまわる>「2021年には必ず満員の武道館で」
DEZERTが12月23日、渋谷CLUB QUATTROにて年末恒例ライヴ<くるくるまわる-2019->を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆DEZERT 画像
時は人を変える。時は状況を変える。時はバンドを変える。DEZERTはこの1年で明らかなほどに変わった。もちろんのこと、すこぶる良い意味においてだ。「そりゃあね、1年も経てば変わるよ。歌だってそう。もっと上手くなりたい!ってずっと思ってきたし。普通に前よりも善くなりたい、って考えるのは当然でしょ(笑)」──2019年、彼らは全国ホールツアー<血液がない!>を終えてから本格的な音源制作へと突入し、先ごろ『TODAY』から約1年で新作『black hole』を発表してみせたわけだが、このアルバムについての取材をした際、フロントマン・千秋から出て来たのが前述の言葉となる。
前作『TODAY』がカタルシス的なエモさとバンドとしての性(さが)を音として具現化し、ありのままに迸らせた作品であったとするならば、今作『black hole』は曲調こそ多岐にわたり様々ではあるものの、全編からバンドの放つグルーヴ感の濃厚さと、それに端を発する確かな説得力を打ち出した作品であるという印象が強く、わずか1年でメンバー各人の音楽表現スキルが格段に躍進していることも、その秀逸な仕上がりぶりから如実に伝わってきた。
というのも、彼らは『black hole』制作において、録った音を後からアレコレと補正するようなエディット作業を基本的に排していたという。この事実は、ある意味で昨今の音楽シーンにおける通例的なレコーディング方法の逆を行くものであり、もっと端的に言えばDEZERTが“お直し”せずともクオリティを誇るアルバムを作り上げたという事実は、今の彼らにそれ相当の力量が備わっていることを意味する。それだけに、このたび12月23日に渋谷クアトロにて開催されたDEZERT・年末恒例企画<くるくるまわる -2019->では、そんな彼らが持つライヴバンドとしての魅力が存分に披露されていくかたちとなったのは言うまでもない。
なお、今宵のクアトロ場内は満員御礼状態で、開演前には場内スタッフから「皆さま、もう少し前へお詰めください。入り口のドアが閉められないと開演出来ません! 何卒、宜しくお願い致します!!」という切羽詰まったお願いが繰り出されるほどだったのだが、なんでも千秋のMCによると<くるくるまわる>がソールドアウトするのは、実のところこれが初めてのことだったのだとか。
ここに来て音楽性の幅が一気に拡大し、今夏には大規模ロックフェス<ROCK IN JAPAN FESTIVAL>に参戦したこともあるのか、近ごろ古参のコアファンから「DEZERTはメジャー化してしまった」「DEZERTは昔と比べて丸くなった」といった類いの否定的意見がSNS上で一部あがるようになった事実もあるにはあれど、それでも今回の動員状況をかんがみれば、大局的に今現在のDEZERTが以前よりも音楽ファンからの支持を多く得るようになって来ているのはまごうことなき事実だ。しかも、場内を見渡したところ半年前の今年6月に日本橋三井ホールにて行われたホールツアー<血液がない!>ファイナル公演と比べて、男性ファンの比率が随分と増えている点もだいぶ顕著であったと思われる。いやはや、これはなんとも良い傾向ではないか。
かくして、師走の厳しい寒空をよそに熱気が充ち満ちた渋谷クアトロ場内に向け、この夜のDEZERTがまず放ってくれたのはアルバム『black hole』の中でも随一のグルーヴィーアッパーロックチューン「Thirsty?」で、いきなり冒頭でこれを堂々とぶちカマしてみせる彼らの音には自信と余裕、さらには痛快なドヤ感までもが色濃く漂っていたと言っていい。以前にも増して頼もしくなったSORAの叩き出す芯の太いリズムに、絶妙なまろみと攻撃性を共存させたSacchanの職人的な指さばき、繊細さもたたえつつ時に骨太な音像でも差し色を加えていくMiyakoのキレ味鋭いギターワーク。そうした楽器隊を背にする千秋は千秋で、彼の歌は昨今とても明瞭さに長けてきたように思えてならない。この日のライヴではいわゆるリバーブもかなり浅めで、歌詞のひとつひとつが曲調に左右されることなく、率直に受け手側へと届いていくる感覚がなんとも心地良い。当然、そんな彼らの放つ音に煽られるかたちでフロアもしょっぱなから激しく沸き始めることに。
『black hole』からの疾走感溢れる「バケモノ」に続いては、年末公演らしくかつてのアルバム『最高の食卓』に収録されていた「「セイオン」」や「「宗教」」、はたまた久々にライヴで聴けた気がする「包丁の正しい使い方?思想編?」など、新旧の楽曲たちがランダムに繰り出されていく様子は実に小気味よく、それぞれに生まれた背景や時代は違ったとしても、結局DEZERTの生み出す曲にはどれもなにかしらのかたちではイビツさが織り込まれていて、そのくせ美しくもあり、ある種の悲哀までをもたたえてもいるな、とあらためて実感したり。
なお、この夜のライヴ中盤に指し掛かるくだりでは千秋がアコギを持ち出し、これまた『black hole』からバラード的なテイストを持った「天使の前頭葉」と、ミッドテンポの「白痴」を続けて演奏する一幕も用意されていたのだが、不運にも突然の機材トラブルが勃発。しかし、ここでの彼らは急遽セットリストを変更して「Hello」を入れ込んでから元の流れに戻る、という小粋な技も見せてくれることになった。
そして、つい先日にMVが公開された「ラプソディ・イン・マイヘッド」以降の後半戦では、いよいよライヴバンド・DEZERTとしての本領がこれでもかと発露されていくこととなり、去年あるいは前回ツアーと比べてもメンバー間でのアインコンタクトや、各人がみせる自然な笑顔の“量”が増えている様子からも、彼らが今バンドとして良い状況にあることは明解だったはず。
そうした中、今宵のライヴを締めくくったのは「おやすみ」と「TODAY」の2曲で、ここでは特筆すべき出来事があったこともぜひお伝えしておきたい。まず、「おやすみ」については本来の歌詞である“少し泣いたっていいさ 少し失ったっていいさ 少し笑われたっていいさ”が、“少し泣いたって生きよう 少し失ったって生きよう 少し笑われたって生きたい”という風に替えられ、なおかつ“君を探して言うよ”という一節も“君を探して叫ぶよ”と歌われたのであるが、これは終演後の千秋によると「ステージ上で歌詞がトんじゃって、即座に出て来たのがあれだった。なんて歌ったかは自分では覚えてない(苦笑)」とのこと。逆に言えば、あの場で出て来たその歌詞は今の千秋が抱える本音だとも言えはしまいか。一方、もう1曲の「TODAY」に関してはこれを歌う前に千秋が語ったその内容が極めて重要だった。
「2019年はもう終わりますが、今年の僕らは本当に大変だった。僕はご存知の通り、凄く気の弱い凡人…いや、凄く気の弱いちょっと天才な青年です。(中略)そして、DEZERTはもうこれで8年になります。俺の予定では、7年目で武道館やってるはずだったんだけどね(笑)。6年間は自分の為だけに歌って、そのあとの1年間は旅に出て、今年やっと「人の為に歌うってどういうことなんだろう?」っていうことを考えるようになりました。今年なかなか良い感じのホールツアーが出来たことで、自分の為に歌うことと、人の為に歌うことの間に繋がりが出来たんです。正直なことを言うと、俺は幸せになりたいから歌を歌ってます。楽しいっていう言葉とも、最近になって向きあうようになりました。多分、そこが自分と人を歌で繋ぐためのキーワードだったんだと思う。(中略)そして、そこを自分にわからせてくれたのが「TODAY」っていう曲でした」──千秋
ここまで一気に語ったあと、一呼吸だけ置いて千秋が続けたのはこの言葉だ。
「言っちゃおう。俺ら、もっと上に行きます! “売れることが正義だ”なんていう言葉はずっとウザかったんだけど、俺らも君たちと同じように社会のレールにもう乗っかっちまってることに気づいてしまった。上に行く為に現状をどう突破していくのかっていったら、俺はすげー弱いから。いやいやメンバーたちと肩組んで、というかイヤがるのはメンバーの方だと思うけど(笑)、ここからムリヤリにでも行くしかないよね。それには目標を立てよう。人は変わろうと思えば変われます。まずは来年、2020年頑張ります。そして再来年。これはまだメンバーにもスタッフにも誰にも言ってないけど、2021年には必ず満員の武道館でライヴをさせていただきます! こんなことをステージ上で言うなんて大嫌いだったんだけど、もうシノゴノ言ってられねぇ。オマエらも、苦しい時はとりあえず再来年まで…敢えてこれは言います。頑張ってください。その時にはこの曲をやって、またお互いスタートラインに立ちましょう。必ずやります!! さぁ、ここから新しい一歩を踏み出そう。一生懸命歌います。俺はここに来てくれたオマエたちの今日と、今ここで演奏している俺たちの今日を信じます。「TODAY」」──千秋
なんという潔さだろう。ここから2021年に至るまでの時間の中で、DEZERTがどれだけの奇跡を起こし、その野望を達成していくことになるのか。本当に、DEZERTはこの1年でとても前向きなスタンスを持つバンドに変わった。時は人を変える。時は状況を変える。時はバンドを変える。
取材・文◎杉江由紀
撮影◎西槇太一
■<くるくるまわる-2019->12月23日(月)@渋谷CLUB QUATTRO セットリスト
02. バケモノ
03.「セイオン」
04.「宗教」
05. Dark In Black Hole
06. 包丁の正しい使い方?思想編?
07. 感染少女
08.「死刑宣告」
09. Hello
10. 天使の前頭葉
11. 白痴
12. ラプソディ・イン・マイ・ヘッド
13.「君の子宮を触る」
14. 大塚ヘッドロック
15. 半透明を食べる。
16.「遺書。」
17. insomnia
18. おやすみ
19. TODAY
■ワンマンライヴ<DEZERT 2020 LIVE / 天使の前頭葉>
open17:30 / start18:00
2月23日(日) 池袋 BlackHole
open17:30 / start18:00
2月25日(火) 池袋 BlackHole
open18:30 / start19:00
2月26日(水) 池袋 BlackHole
open18:30 / start19:00
2月29日(土) 池袋 BlackHole
open17:30 / start18:00
3月01日(日) 池袋 BlackHole
open17:30 / start18:00
3月02日(月) 池袋 BlackHole
open18:30 / start19:00
▼チケット
前売4,500円(税込)
※オールスタンディング・入場時ドリンク代別途必要
※営利目的の転売禁止・未就学児童入場不可
一般発売:2020年1月11日(土)
※お1人様2枚まで ※スマチケのみ(分配可) ※e+のみ
■<MUCC Presents Trigger In The Box supported by MAVERICK DC GROUP>
open13:00 / start14:00
▼出演
MUCC / シド / HYDE / D'ERLANGER / OLDCODEX / DEZERT / 凛として時雨 / 44MAGNUM -Trigger In The Box SPECIAL VERSION- / Ken -Ambient before the Trigger- (※開場時間中でのパフォーマンスになります) / Shinya(DIR EN GREY) / 圭(BAROQUE ※Ken -Ambient before the Trigger-でのゲスト出演になります) / JACK (※44MAGNUMでのゲスト出演になります)
■幕間パフォーマンス■
おかゆ (シド ゆうや / かたつむり ニュー岡部)
■セッションメンバー■
HYDE (Vo)、マオ(Vo / シド)、Ta_2 (Vo / OLDCODEX)、千秋(Vo / DEZERT)、逹瑯(Vo / MUCC)、Ken (G)、Shinji (G / シド)、Miyako (G / DEZERT)、ミヤ(G / MUCC)、明希(B / シド)、Sacchan (B / DEZERT)、YUKKE (B / MUCC)、Shinya (Dr / DIR EN GREY)
■<DEZERT【This Is The“FACT”-ALL NIGHT METAL PARTY-】>
open24:00 / start24:45
▼出演
DEZERT、アルルカン、キズ
▼チケット
前売5,000円(税込) 当日5,500円(税込)
※オールスタンディング・入場時ドリンク代別途必要
一般発売:2020年2月8日(土)〜
【オフィシャルHP先行 (イープラス抽選受付)】
受付期間:2020年1月7日(火)12:00〜1月20日(月)21:00
https://eplus.jp/fact-hp/
※枚数制限:お1人様4枚まで
※20歳未満の方のご入場は一切お断りさせて頂きます
※入場の際全ての方にIDチェックをさせて頂きますので、顔写真付の身分証明書(生年月日記載)をお持ち下さい(コピー不可)。ご本人と確認出来ない場合は、ご入場をお断りする場合がございます。その場合、チケット代の払戻しは致しませんので、あらかじめご了承下さい
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