【インタビュー】スティーヴ・リリーホワイト、LUNA SEAを語る「私の役割は再び集束させること」

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U2、ザ・ローリング・ストーンズ、ピーター・ガブリエル、モリッシー、XTC、トーキング・ヘッズ、フィッシュ、30STM……数多くのグラミー作品に携わり、名だたるアーティストの名作をプロデュースしてきた名匠スティーヴ・リリーホワイトが、2019年にまさか日本人アーティストをプロデュースすることになるとは、誰が想像し得ただろうか。

◆スティーヴ・リリーホワイト+LUNA SEA 画像

10枚目のオリジナルアルバムとなるLUNA SEAの新作『CROSS』は、セルフプロデュースを貫いてきたLUNA SEAがスティーヴ・リリーホワイトとの共同制作を敢行し、結成30thを刻む作品として生を受けた特別なアルバムだ。

相思相愛となったLUNA SEAとスティーヴ・リリーホワイトは、どういう出会いを経て、どのような信頼関係を構築したのか。日本人を初めてプロデュースすることになった経緯は? スティーヴ・リリーホワイトはLUNA SEAをどう捉えたのか? 話を訊いた。

   ◆   ◆   ◆

■最初がLUNA SEAで本当によかった
■LUNA SEAは私のバンドだから(笑)

──かのスティーヴ・リリーホワイトがLUNA SEAをプロデュースしたと聞いたときは、驚きとともにとても興奮しました。

スティーヴ・リリーホワイト:4年前に日本でINORANに出会ったのがすべての始まりなんです。すぐに意気投合して友達になったんですが、INORANがバンコクでのソロライヴに私を招待してくれまして、それがとても素晴らしいライヴでね。そういう交流がある中で、LUNA SEAが初めて外部のプロデューサーを迎えてアルバムを作るという話になったとき、私に声をかけてくれたんです。メンバーそれぞれが好きなアルバムの中に、私のプロデュース作品が何かしらあったらしいんですね。

──なるほど。

スティーヴ・リリーホワイト:でも、アルバムを聴くだけではバンドの本質を知ることはできません。ライヴを見ないとね。スタジオではいろんなことを考えてやれますけど、ライヴはバンドの真髄が出ますから、私にとってライヴを見ることはすごく重要なんです。そこからどのように事を進められるかのアイディアを得ることができるので、まずLUNA SEAのライヴを観に行きました。

──LUNA SEAに対し、“自分だったら彼らに対して何ができる”と思いましたか?

スティーヴ・リリーホワイト:お互い信頼関係を築かなければいけないと思いましたけど、LUNA SEAとどのように音楽を創り上げられるかがイメージできたので“いい仕事ができる”と確信しました。ニューアルバムの話をしたとき、彼らはとても興奮してくれたし、これまでLUNA SEAは一度も外部プロデューサーと仕事をしたことがなかったわけだから、彼らに“共にいい仕事ができる”ことをインスパイアさせたかった。ただ、その時点では彼らの新曲をまだひとつも聴いていなかったので、とにかく“いい曲を書いて欲しい”と願うばかりでしたけど(笑)。

──(笑)。

スティーヴ・リリーホワイト:素晴らしいアルバムができ上がったことを誇りに思っていますよ。

──LUNA SEAからは、具体的なリクエストはあったんですか?

スティーヴ・リリーホワイト:ありません。私の方がバンドに対してリクエストをしたかな。「これはいい」「これはなし」と楽曲のセレクトも私が行いましたけど、それはアルバム全体の流れのため。スローすぎる曲に対しては「これはなし。もっとエネルギッシュにやろう」と言ったりしてね。とにかくライヴを見たとき“すごくエナジーに溢れるバンドで、お客さんもすごくエネルギーのこもった曲を楽しんでいる”と感じたので、そのエナジーをアルバムに採り込みたかった。そういったバランスを考えた上での選曲ですね。

──それこそ、プロデュースワークなのでしょうか。

スティーヴ・リリーホワイト:選曲ももちろんプロデュースの一環です。彼らにいい仕事をするよう鼓舞し、楽曲のアレンジ面にも関わりました。私は自分がすべきことは“最高のレコードを作ること”ですから、時には多くを、時にはほんの少しだけ手を加えたりもします。LUNA SEAに関して手を加えたのは……多くもなく少なくもなく半分くらいかな。

──これまでセルフプロデュースを貫いてきたこの5人をコントロールしプロデュースするというのは、常人では不可能とも思うんです。まさにスティーヴ・リリーホワイトだから成し得たことですね。

スティーヴ・リリーホワイト:今、彼らの結束力は以前よりもさらに強靭になっています。このアルバムが彼らをひとつにし、より強い絆で信頼し合えるようになったことで、バンドの未来を築き上げたことにもつながっているんじゃないかな。

──スティーヴ・リリーホワイトを知らなかったSLAVE達も、あなたのことを広く知ることになったでしょうね。

スティーヴ・リリーホワイト:それはわからないし気にも止めないけど、40年のキャリアの中で日本のバンドを初めてプロデュースしたことが嬉しいです。今後、日本のバンドをプロデュースすることがないとしてもハッピーであることに変わりはないし、最初がLUNA SEAで本当によかった。LUNA SEAは私のバンドだから(笑)。

▲スティーヴ・リリーホワイト オフィシャルサイトより

──40年間、日本のバンドをプロデュースする機会がなかったのはどうしてですか?

スティーヴ・リリーホワイト:単なる偶然ではない……のかな。1980年代当時は“日本のバンドを手がけるということ”≒“あいつのキャリアは終わった”と思われてしまうような雰囲気があった時代だったからね。

──日本のバンドは知っていますか?

スティーヴ・リリーホワイト:いえ、あまり。でもザ・ローリング・ストーンズをプロデュースしたときも、彼らの過去の作品は聴かなかったよ(笑)。だって過去はどうでもいいから。今回もLUNA SEAの“今”のアルバムを作りたかったから、雰囲気を感じるためにLUNA SEAの過去のアルバムは何枚かは聴いたけど、とにかく新曲が大事だよ。

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