【インタビュー】和氣あず未、「自分らしさ」込めたデビューシングル

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『アイドルマスター シンデレラガールズ』の片桐早苗役などで人気の声優・和氣あず未が、ダブルAサイドとなる1stシングル「ふわっと/シトラス」でソロアーティストとしてのデビューを果たす。子供の頃から歌うことはすごく好きだったが、得意ではなかったという彼女。どういうきっかけで声優を目指すことになり、現在はどんな気持ちで歌と向き合っているのか?ファンへの思いや今後の夢なども含め、じっくりと語ってもらった。

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■自分らしく、自分の気持ちとして歌える曲

──2020年1月29日にアーティストデビュー。まずは今のお気持ちを聞かせてください。

和氣あず未:アーティストデビューの話が決まった時からずっと信じられませんでした。声優業を始めて、その道の先にこういう日が来るとは全く思っていなかったので。レコーディングで何曲か録ったにもかかわらず、まだ実感が湧いてないんです。発売日になればきっと湧くんでしょうけど、今はまだなんとなくフワフワ……あ、「ふわっと」した気持ちです(笑)。

──(笑)。あず未さんの誕生日に発表されたそうですが、ファンの皆さんもすごく喜ばれたでしょうね。

和氣:誕生日に何か発表があるんじゃないかって思っていた方も何人かいらっしゃったみたいなんですが、アーティストデビューだと思っていた方は全然いなかったみたいで。

──それくらい意外なことでもあったということなんですね。

和氣:もともとそんなに歌が得意じゃなかったんですよ。声優として、キャラクターとして歌う機会はすごくたくさんあったんですが、自分から「歌いたい!」みたいな感じではなかったんです。だから、よく知ってくれているファンの方は特に意外だったみたいですよ。

──あれだけいろんな曲を歌ってこられたのに、得意じゃないとは。

和氣:歌うことはすごく好きなんです。でも、得意だとは思ってないんですよね。

──というと?

和氣:うちは6人家族なんですが、子供の頃は家族全員でカラオケに行っていたんです。兄が3人いるんですが、一緒に歌うのがすごく好きでした。でもある時、「あず未、歌えば?」って言われて歌ったときに、お兄ちゃんの意地悪だったのか、採点モードにされていてすごく低い点数が出ちゃったんです。それからずっといじられるようになって。家で1人で歌ってたら「……10点!」とか(笑)。それを本気で受け止めちゃって、歌うことが苦手になってしまったんです。

──お兄ちゃん、なんてことを(笑)!

和氣:自分は歌が下手なんだって思ってしまって、それからは人前で歌うのが恥ずかしいと思うようになっちゃいました。でも歌うことは好きだから、ひとカラに行ったり、家で誰もいない時に歌ったりはしてました。

──今、そのお兄ちゃんはどう思っていらっしゃるんでしょうね。

和氣:今でも一緒に車に乗ってるときに歌ったりすると「下手だなぁ」とか言っていますけど、私が今までキャラクターとして歌ってきた歌のCDを買って、よく聴いてくれています。「いつかCDを出してみたい!」ってずっと言っていた一番下の兄は、私が「アーティストデビューするよ」って言ったら、「俺も出したい!一緒に歌いたい!」って言ってました。普通に働いているのに(笑)。でもそう言ってくれると、認めてもらえているような気がして嬉しいなって思いました。

──ではちょっと話を遡ってみたいのですが、歌うことは好きだったけど、具体的に目指したのは歌手ではなく声優だったんですよね。

和氣:はい。小さい頃に感じた歌へのトラウマみたいなものもなんとなくあって、小学校に入ったくらいからすごくシャイになったんですよ。とにかく人前に立つのが恥ずかしかった。声も震えちゃうし、学芸会とかもひと言で精一杯みたいな感じだったんです。だから、歌手としてあんな大勢の前で歌うとか自分には向かないなというのもありました。声優になりたいと思ったのは、中学生で一気にアニメにハマって、アフレコの映像を動画で見たときに衝撃を受けたからなんです。私たちの知らない場所で、密かにこんなかっこいいことをやってたんだ!って。

──声優というものを初めて認識した、と。

和氣:やっぱり、声優っていう存在を知らない方ってたくさんいると思うんですよ。どういうことをやっているかとか。

──そこまで考えずに、普通にアニメを見てるってことですよね。

和氣:そうです、そうです。私も、そのキャラが喋ってると思って見ていましたから。初めて見たアニメが『鋼の錬金術師』で、そのアフレコ映像を見たんですね。いろんな方が出ていらっしゃったんですが、中でも、主人公のエド(エドワード・エルリック)役は普通に男性だと思っていたので、女性がやってるんだ!こういうことなのか!って、初めてそういう感覚になったんです。声優さんっていう職業があって、あんな狭いスタジオで台本と映像を見ながら、マイクの前で入れ替わり立ち替わりいろんな人が喋ってる。かっこいい!って。

──憧れたわけですね。

和氣:小さい夢はいっぱいあったんですよ。テニスの選手とか、ペットショップの店長とか、CAとか。でもあの映像を見てからは、絶対に声優になりたいっていう強い意志を持ったんです。中3で声優になるって決めて、そこからたくさんアニメを見たり、ゲームをやったり、パソコンにマイクを繋いでニコニコ動画のカラオケを流しながら録音したりもしていました。高2の頃には声優の専門学校に行くと決めて、いろんな学校を見て回っていましたね。

──でもまだ、人前に立つのは苦手という気持ちの部分は残っていたんですよね?

和氣:もちろんありました。でも、私が想像していたいわゆる声優という職業は、裏でひっそりかっこいいことをやっている人のことだったんです。キャラクターがキャラソンを歌うことは知っていたので、CDを出したりするんだろうなとは思っていたけど、まさかライブで歌うとかイベントをするとか、こんなステージに立つ声優になるとはその時点では思ってなかったんですよ。でも専門学校のとき、人前に出ることに慣れるための授業があったんですね。急に30秒スピーチをするとか。だから少しずつ大丈夫にはなっていきました。

──なるほど。

和氣:自分が声優になって初めて立ったステージは<THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 3rd LIVE シンデレラの舞踏会 -Power of Smile->だったんです。会場は幕張メッセで、最初は恐怖しかなくて。なんで私はこんなところに立っているんだろうって頭が真っ白になっちゃうくらい周りが見えていなかったんですが、そのライブが終わる頃には、もっと出ていたいっていう気持ちが残っていたんです。アンコールではけちゃうのも寂しい!すごく楽しいじゃん!って。

──覚醒したんですね。

和氣:でもそれは、たくさんのお客さんの歓声を浴びることができたからだと思います。皆さんの声援って、今もそうですが本当に励みになるんですよ。ライブ直前、ライトが消えた瞬間の「おぉ〜っ!!」みたいな声が大きければ大きいほど、勇気に繋がるから。緊張もしているけど、最近は安心できるようになってきました。ステージに立つのがすごく楽しいです。

──デビューに先駆け、声優としてこれまでたくさんのキャラクターソングなどを歌ってこられました。思い出深い作品などはありますか?

和氣:一番刺激を与えてくれたのは『アイドルマスター シンデレラガールズ(以下、アイマス)』ですが、イベントや声優業に関して色々変えてくれたのは『ブレンド・S』かなと思います。それまでは、共演してきた方と楽しく一緒にお仕事をさせていただいても、その後プライベートで会うような関係の方はなかなかいなかったんですね。でも『ブレンド・S』で、今でも毎日連絡を取るような仲良しの鬼頭明里ちゃんと春野杏ちゃんというお友達ができたんです。お仕事に対する楽しさもさらに増えたし、歌に対する気持ちもすごく変わったんですよ。『アイマス』のライブでは間違えちゃったらどうしようってプレッシャーをすごく感じていたんですが、『ブレンド・S』は、最後のファイナル以外全部、全員が歌も踊りも間違えていたんです(笑)。だけど、お客さんも私たちもすごく満足できたというか、悔しいという気持ちすらすごく前向きだったんです。次はみんなで頑張ろうね!って。そんなに気張らなくていんだっていうことを感じさせてもらえたのが『ブレンド・S』だったんですよね。この作品にはすごく感謝しています。

──音楽を楽しむ喜びみたいなことも、声優としての活動の中で積み上げてきていたんでしょうね。

和氣:そうだと思います。ソロはソロで、また別の緊張感を感じていますけど。

──でもオリジナル曲をいただけるって、すごく嬉しいことですよね。

和氣:本当に嬉しかったです。今まで何曲も歌わせていただきましたが、それはキャラクターありきでしたから。でも今回は、自分のために用意していただいた曲。レコード会社のプロデューサーの方ともお話をしたんですが、こういう表現をどう思うかとか、普段こういう言い回しをすることはありますかとか、私の意見もすごく聞いてくれたんですよ。自分らしく、自分の気持ちとして歌える曲にしてくれているんです。

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