【インタビュー】minus(-)、2年ぶり新作『C』完成「僕が編んだ世界に石川さんが色を染めた」

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■最近“ヴォーカリストとして頑張ろっ!”
■と奮起した、というのはあります

──『C』を聴いて感じたことと、ライヴ空間で感じることが一緒だな、というのはお話しながら自分でも今気付いた感覚だったのですが。

藤井:ライヴのあの空間って……要は、あの音量で普段は聴けないじゃないですか? でも本来ああいうものをつくっているはずで、それを提供している場なんですよね。だから、ライヴにもっと多くの人に来てもらえるといいな、と。どれだけの人が知ってくれるかが重要なんですけど、なかなか知っていただけないんですよね。それは露出してないせいなんですけども(笑)。聴いていただけないことには、“あぁ、SOFT BALLETの、暗かった人がやってるのね?”みたいな。

──(笑)。まずは知って、音に触れてもらわないことには始まらないですもんね。

藤井:そう。ネットでダウンロードして小さな音で聴いた時には、たぶん伝わらないんですよ。

──やっぱりライヴ空間で体感しないといけない、と。

藤井:体感するか、ヘッドフォンなりイヤフォンなりでちゃんと聴いてもらわないと。その辺は、「環境をつくりたい」と言っているのとは矛盾しちゃうんですけどね。環境を手に入れるには、結構なハードルがあるんですよね、僕の音楽の場合。

──手軽にお家で聴くという形だと、藤井さんの思う環境には満たない、ということですもんね。しかるべき設備が整って、初めて。

藤井:そう、そこで初めて全体像が見える、と思っていただければ。

──大きな音を出すライヴは数多あれど、minus(-)のライヴで味わうような、体の芯まで震えるようなあの音響、他に無い稀有な体感だと思います。

藤井:世界一だと自負しております! その面に関しては自信を持って言えますね。皆さん、ライヴ前と後で数百グラムは体重が変わっていると思います。

──ダイエット効果もあります、と(笑)。トポン!と放り込まれて自分が無防備になって、ライヴを“観ている”というより、空間に没入するような感覚に包まれる、というか。

藤井:そう言っていただけるとうれしいです。この間の対バン(<DEZERT三番勝負>2019.11.17)では、真っ暗な中、ピンスポットだけでライヴしたんですよ。しかも、誰もまだ知らない『C』の曲を全部。

▲<ストレンジャー イン トーキョー〜DEZERT 異種格闘3番勝負〜【ROUND 2】>2019年11月7日@青山RizM

──それはカッコいい試みですね! 眼光だけが鋭く光る、みたいな?

藤井:いや、それすらも。(フードをかぶって) 顔も見えないっていう(笑)。

──でも、暗闇の中だと感覚が研ぎ澄まされますよね。

藤井:そうなんですよ、音に集中できる。“麻輝ちゃんの髭、今日は……”みたいな、そういうのも無く(笑)。本当に音だけに集中してもらえた、かな? しかも全部知らない曲だし。

──DEZERTのファンの皆さんも、いきなりものすごい体験をしたわけですね。

藤井:うん、たぶんあの若者たちはビックリしたと思う。刺さった人には刺さっていると思うし、対バンだからこそできる試みでしたね。

──最近エンターテインメント界では没入体験というのはキーワードになっていますよね?

藤井:VR系とかの?。

──そうです。ただ鑑賞するのではなくて自分自身が入り込む、というか。その一環という位置付けで、minus(-)のライヴにはさらに広まっていく可能性を感じます。

藤井:そうなんですよね。そういうところへ行くんだったら、うちのライヴに来てくれればいいのになって思います。

──そういえば、AA=との対バンライヴ(2019.7.13)の時、終演後にご挨拶した際に「最近はエレクトロ界の平井堅を目指してます」なんて冗談交じりにおっしゃっていましたよね。

藤井:あぁ、自分を客観的に見て、日本で他に誰?と思ったら、槇原(敬之)さんとも違うし……佇まい的にも平井堅さん? 髭繋がりで、と。

──その二択はどうなんでしょうか(笑)。

藤井:そっちのファンも獲得できたらいいなぁって。ま、単純に歌一人で、バックを従えてるという意味でですよ? 別に美川憲一さんでもいいんですけどね。

──(笑)。ライヴでのフロントマンとしての在り方、歌唱するということへの意識が変化されたのかな?と、お言葉を受け止めていました。

藤井:最近“ヴォーカリストとして頑張ろっ!”と奮起した、というのはあります。

──そんなお気持ちの変化があったんですね。

藤井:はい、五十路過ぎて奮起しちゃいました(笑)。若いファンの子は増えていますし、男性も増えて、今かなり多いんじゃないかな? でもこういう音楽の特徴として、知ったとしても友だちに布教しづらいし、いまいち布教したくないというタイプが多いんですよ。もはやここからもっと名前を売るには……チ●コでも出して捕まりますかね?

──やめてください(笑)。むしろ二度と世に出られないようになります!

藤井:この間、実は真っ暗な中で、“誰にもどうせ見えないからいっか。ずっと出してようかしら?”という案もあったぐらいです。

──(笑)。例えば映画の音楽とか、そういうコラボレーションもあったらいいですよね。コアな音楽ファンだけではない層にも訴求する、という意味では。

藤井:ですよね? こんなに映像的な音楽をやってるのに。それは結構前からずっと思ってるんですけど、軽く話があっても、いまいちピンと来ないというか。

──藤井さんが心動かされないということですか? “その作品じゃやりたくない”みたいな。

藤井:(※頷く)

──1回、軽くやってみるのはいかがですか?

藤井:うーん……そのへんが(自分の)面倒くさいところで。

──1回でもやってみたら、可能性がそこから広がるかもしれませんよね?

藤井:そうなんですよね。例えば、漫才師だとか、ある人が突然バラエティーのひな壇に上がって一言面白いことを言った、と。そうすると次からいろんなTV局に出るじゃないですか? ああいうことをやればいいんでしょうけど。僕、音楽の使い捨てが出来ないタイプなので。特に自分のものになってしまうと。今までのminus(-)だったら全然OKで、僕名義ではない曲をつくって、というのはアリだったんですけどね。自分の生み出せる曲たちって、もう限界があって。それをこう、出しているので (※身体をえぐるようなジェスチャー)。

──ご自身の身を削ぐようにして作品を生み出していらっしゃる、と。

藤井:はい。だから、無くなっちゃうんですよ。無くなってしまう運命のものは、無暗に出したくない(笑)。それは前からずっと言っていて、無駄玉は撃ちたくないんですよ。撃った球は、別に世間に認められなくても自分的に“無駄になってないな”と思えるものしか、出せない。というめんどくさい習性がございまして。

──それは大事にしなければならない根幹の姿勢ですもんね。藤井さんは藤井さんのつくりたいように曲をつくり、その上で、“作品としてはちょっと俗っぽいかな?”というものともコラボレーションしてみる、とか。そういう方向性はどうでしょうかね?

藤井:いや、僕からオファーできるようなことではございませんから(笑)。あちらから、例えば「深夜のアニメの曲を」とかいうオファーがあれば、是非是非!ですよ。「(曲は)こんなのしかできませんよ?」という前提で。

──そこは歩み寄りませんよ、という姿勢は守りながら。

藤井:歩み寄りませんよ、というか歩み寄れません、という。そのへんは矜持があるので歩み寄れませんが、お話があればいつでもウエルカムです。

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