【インタビュー】minus(-)、2年ぶり新作『C』完成「僕が編んだ世界に石川さんが色を染めた」

ポスト

■『THE DAWN』以来、10年ぶりぐらいかな?
■『C』の仕上がりには満足してます、すごく

──とにかく、minus(-)ライヴの没入体験を広めていきたいですよね。

藤井:うん、あのライヴは、別に音楽、曲、メロディーとかはどうでも良くて。環境としてあの中に入ってみるというのは、人生の中で一度は皆絶対やっておいたほうがいいと思うんだよなぁ。“なんかよく分からないけど、いろんなところが震えてたね”でいいと思うんですよ。

──物理的に震えてますもんね、壁とか。でも不快感が一切ないのは、音の構築がお上手だからでしょうか。minus(-)のライヴでは頭が痛くなるような経験が一度もありません。

藤井:たぶん、変な場所にいない限り、鼓膜は痛くないと思うんですけどね。いわゆるSPL(音圧レベル)的な大きさは実はそんなでもないですよ? お客さんの鼓膜は殺したくないので。

──そこは優しく。

藤井:生物的には優しいですね。あと、女性なら聴いてたらイケちゃうと思うんだけどな~。全身バイブレーション(笑)。

──(笑)。では、恍惚を求めている女性もお越しあれ!と。

藤井:前、そんなことをライヴのMCで言ったこともあるんですけどね。真意は伝わらなかったみたいですけど(笑)。

──今回のマスタリングはジェイムス・ブレイクなどを手掛けるマット・コルトン氏が担当。初めてご一緒されたんですか?

藤井:はい、今回が初です。たぶんminus(-)がこの方向にもう固まったので、これからはマットさんかな? 今までのマゼンもすごく大好きな音なんだけど、今回から全然違うじゃないですか? minus(-)として今作が“次からのminus(-)”のスタンダードの音になるので、マゼンじゃない人でやりたくて。それでいろいろ探していたら、僕は本当に音楽を聴かなくなったんですけど、唯一聴いているアーティストがいて、名前は言いませんがそのアーテイストをマットさんが担当していたんですよ。“あぁ~だったらいいかも”ということでお願いしたら、本当に良かった。音が若いです。やっている音楽がわりと老獪なほうに入ってきちゃってるから、若者のエキスをマスタリングで入れてもらった感じです(笑)。

──そういえば、今作にはダンサブルさというのはもう無いですね。

藤井:いや、僕はこれでもめちゃくちゃ踊れるんですけどね。でもまぁ、テンポ的には遅いですね。

──自然とこのテンポ感になったんですか?

藤井:自動的に。僕はこの辺が好きなのかもしれないです。

──踊るにもいろいろありますからね、揺れることはできますよね。

藤井:(身体を揺らしながら)腰を振れるビートが僕は好きなので。


──『C』というタイトルにはどんな思いを込めたのでしょうか? そんな野暮な質問をしてはいけないな、と思いながらも、訊かせてください(笑)。

藤井:これは毎回、minus(-)のアルバムをリリースするたびに訊かれることなんですけど、例によって意味は無いですよ。タイトルを決めなきゃいけない設定日があったらしくて、その2日前ぐらいかな? 「タイトル、〇〇までに決めてください」というメールが来て、「ええっ!? 急に言われても」と(笑)。そこから考えて、『R』とか『G』とか『D』とかは既に遣っているから、消去法で“どうしよっかな~”で、『C』になりました。あえて言えば、智晶(ちあき/Chiaki)の“C”。

──石川さんのお名前ですね。Confession(告解、告白)の“C”かな? とかいろいろ深読みしていたんですが……。

藤井:コンフェッション!? ほー、なるほど~(笑)。ま、説明的なものは好きじゃないというのと同じで、本当に何の意味もないです。

──石川さんとご一緒されるのは、作品としては今回限りですか?

藤井:そうですね、これで完結のはずです。いや、分かんないですよ? ヴォーカリストを好きに選べるプロジェクトがminus(-)なので、決めたくはないんですけど、次もありうるし、無いかもしれないし。分からないです。

──藤井さんのお一人プロジェクトとしてminus(-)はずっと行くんですね? 誰かが加入することは無さそうですか?

藤井:それは無いです。そんなことをしちゃったら固定になってしまうので。固定しているのはSUILENだけなので。とにかく、それ以外では固定したくないんです。

──藤井さんはデビュー30周年を迎えられました。振り返ってみて、長い時間でしたか?あっという間でしたか?

藤井:年を取ると時間が経つのが早いので、デビューしたのなんて昨日か一昨日のことのようですよ(笑)。本当に早い。

──年齢を重ねるにつれ、加速していく感じはありますよね。

藤井:“夏休み、なんで終わんないの?”だったのが、たぶん今、夏休みに入ったらあっという間に終わってる。五十路過ぎると突然早くなりますよ。もう嫌です(笑)。

──30周年ということで、SOFT BALLETの企画アイテムリリースですとか、メモリアルな動きもあり、9月の記念ライヴでは藤井さんの様々なプロジェクトの曲を披露なさったりもしました。あっという間とはいえ、いろいろなことがあった30年間だったと思いますが、いかがでしょうか?

藤井:うーん、まぁそうですよね~。

──藤井さんご自身、すごく変わられたのではないですか?

藤井:だってうちのボーイズがそろって中学生ですから。そりゃあ年取りますよ。

──音楽に向き合う時の気持ちとか、スタンスというのは変わらないですか?

藤井:それは変わらないですね。でも、どんどん適当になって来てます。いろいろとどうでも良くなっていますね。

──いい感じで緩い部分もできて、という?

藤井:ユルユルです(笑)。

──こだわりの部分は……。

藤井:あ、こだわりは変わりないです。でも、こだわりも緩くなってるのかなぁ……。

──許容範囲が広くなってきた感じですか?

藤井:それ、何の意味の許容範囲ですか?

──他人の意見に対して、“ま、それもありだよね”と思えるようになる、とか。ご自身の作品世界に関しては、誰に言われて何を変えるものでもないのは、もちろんずっとそうだと思うのですが。

藤井:どうでしょうね? 意見を言ってくれる人があまりいないので。言ってほしいんですけどね。“良かった” “悪かった”ぐらいでいいんですけど、作品の感想も誰も言ってくれないので(笑)。音楽で何が楽しいって、感想を見て“ふふふ”とほくそ笑むのが楽しいのであって。それが“当たり”じゃなくても全然いいし、けなされていてもいいんですよ。何でもいいからそれを受け止めて、“へ~” “ふ~ん”というのをつまみにお酒飲むのが最高に楽しいんですけど。まだリリース前だというのもあるんですが、今のところ感想が皆無なので(笑)、感想をぜひ聞きたいですね。

──ご自身としては、『C』は仕上がりにも満足なさっている、と。

藤井:はい、すごく。久々ですね、『THE DAWN』(SUILEN / 2009年発表)以来だから、10年ぶりぐらいかな?

──今回のインタビュー、いろいろと過激な問題発言も含まれていた気がしますので、原稿化する時に自主規制しそうなんですが……(笑)。

藤井:そんな! 僕の場合、問題発言がどうこうという年齢じゃないですからね、そもそも、キャリアも。

──たしかにそうですね、アイドルじゃあるまいし(笑)。

藤井:そうなんですよ。だって僕、おひねりをガーターに突っ込まれたりしてましたからね、ツアー中(笑)。だから、“minus(-)のライヴでは私も毎回エクスタシーを感じています”とか書いていただければ(笑)。

──(笑)。直近はまず、12月27日および28日にライヴをなさいますね。

藤井:はい、27日は石川さんをゲストにお迎えして、28日はまぁ例年通りに、という予定です。あと来年2020年の9月は、周年の締めだから、“絶対何かやるよ、麻輝ちゃん”と皆、思っていると思うので。まだ詳細は言えませんけどもやります。

──期待しております。では、まずは12月末を楽しみにしています。ありがとうございました!

藤井:ありがとうございました。

取材・文◎大前多恵
LIVE撮影◎北岡一浩 (ddd~MAKI FUJII DEBUT 30TH ANNIVERSARY~)/かわどう (ストレンジャー イン トーキョー〜DEZERT 異種格闘3番勝負〜【ROUND 2】)

■ミニアルバム『C』


2019年12月11日リリース
AVCD-96394 ¥2,200(税別)
1. 内側に向かう
2. この話の続きを聞きたいか
3. ツバメ
4. Glass work
5. ヨハネインザダーク
※全作詞・ヴォーカル:石川智晶

■ライブ情報

▼2019年
<Vermillion_C>
12月27日(金) 新宿ReNY
<Vermillion #5>
12月28日(土) 新宿ReNY
▼2020年
<minus(-) LIVE 2020 The Purple ''C"loud>
01月24日(金) 名古屋ell.SIZE
open19:00 / start19:30
01月25日(土) 心斎橋VARON
open18:00 / start18:30
02月01日(土) 青山RiZM
open18:00 / start18:30


◆インタビュー【4】へ戻る
◆インタビュー【1】へ戻る
この記事をポスト

この記事の関連情報