【インタビュー】This is LASTがさらけ出す、恋の痛み
■絶望の末、手に入れたもの
──『aizou』も多彩なアルバムになりましたね。失恋ソング以外にも様々な楽曲が入っていたので、菊池さんが元カノさんへの想いを出し尽くしたところもあるのかな、と思ったのですが。
菊池:いや、まだまだ全然書けますね(笑)。自分にとって吹っ切れるとは全部忘れることなので、それはまずないと思います。今の自分があるのはその子のお陰だし、それを忘れたくない。曲を作るうえで思い出を回想する作業も、正直楽しかったりするんです。いろんな瞬間のその子を覚えているので、その瞬間をいかにそのままリアルに収められるか……ということに今後トライしていきたいなと思っているところです。でもつらいですね。曲を書きながら嗚咽してます(笑)。
──(笑)。そんな曲を歌っていて、つらくなることはないのでしょうか。
菊池:ライブでは曲の持っている感情を極限まで表現するというよりは、“お客さんに笑顔でいてほしい”という気持ちのもと歌ってますね。This is LASTの失恋ソングに共感してくれるお客さんも多くて。僕の書いた曲に共感する人は、つらいことを抱えてるということだと思うんですよ。だからそういう人に対して“こんな想いをしてきた僕だけど、今はステージで歌ってるよ”という楽しみを感じていることを見せたいんです。それによって背中を押せたらと思っているんですよね。
りうせい:僕らふたり(りうせいと鹿又)も、歌を活かした演奏にしたいなと思っているんですけど、やっぱりそれぞれに趣味嗜好はあるし、ハードコアバンド時代の影響もあってドラムはちょっと激しいパートもある。ベーシストとしては3ピースで音数が少ないぶん、いろんな遊びがしたいなとも思うんです。歌詞の世界観のなかでうまく折り合いをつけて遊んでるので、聴いてくれる人には楽しんでもらいたい気持ちが強いんですよね。
鹿又:でも俺は(菊池が失恋ソングを歌っているのを)後ろで叩きながら聴いてて、ぐっときちゃうときはあるよ(笑)。
▲鹿又輝直(Dr)
りうせい:ほんと!? 俺7〜8人の男と浮気されるようなえげつない恋愛経験したことないから歌詞の世界観に入り込めないよ(笑)。でも俺の誕生日に急遽アキから呼び出されて、ぼろぼろになったアキを目の前にして、どうしていいいかわからず、ただ無言で抱きしめた日のことは忘れないですね……。
菊池:でも、彼女は失ったけど、今はお客さんがいてくれることが本当にうれしくて。お客さんが愛しすぎて尽くしたいんだけど、愛しすぎるがゆえにどうしたらいいかわかんないんですよ。だからできることはなんでもやりたいんです。歌詞に書いている内容も、本当に心を許してる人にならこういう話をすると思う。僕はお客さんに対してそこまで心を開いてるつもりだし、すべてをオープンに見せているつもりなので、僕ら3人の“お客さんのそばにいたい”という気持ちが伝えられるんじゃないかなと思うんですよね。
──“邦ロック好きが今一番つながりたいバンド”というキャッチフレーズはそういう精神面からも来ているということですね。他媒体さんのインタビューで“誰かを救いたい歌詞ではない”とおっしゃっていたけれど、過去を思い返したりしながらも忙しい毎日で奮闘する男性が主人公の「帰り道、放課後と残業」は聴く人の心の支えになってくれる曲だと思います。
菊池:結果としてそういう曲になってくれたのかな、と思います。生きているといろんなものを塞ぎこみながら前に進んでいかなければいけないけれど、“これって本当に前に進んでるのかな? 大丈夫なのかな?”と不安に思っている人はたくさんいると思うんです。これまでThis is LASTは俺の恋愛だけを綴ってきたけれど、“そういうつらい気持ちや不安を抱えている人間も前を向いて生きていきたいな”という気持ちを書きました。背中を押したいから書いた曲ではなく、自分の気持ちを正直に書いた曲が結果として人の背中を押せるものになるって、すごくいいことだと思うんですよね。
──そうですね。
菊池:This is LASTというバンドの主軸は、やっぱり僕が書く曲や歌詞だと思うんです。お客さんには歌詞に共感してくれる人が集まってきてくれるので、“失恋に限らず、自分の言葉なら届くかもしれない”と思ったんですよね。人生はいいことだけじゃ飽きちゃうし、つらいことだけじゃ耐えられない。いいこともつらいことも日常にスパイスとして入ってくるから、人生は楽しいんだなーって。“早く家に帰りたいな”とか“家に帰ったらこれがしたいな”とか“家に帰って寝る”みたいな、すごく単純なことこそ大事だなと思うんです。
りうせい:でもアキはこう言いながら、今回ってるツアーの初日の札幌、めちゃくちゃ大はしゃぎしてましたからね(笑)。あれはちょっとはしゃぎすぎだったよ。
菊池:だって北海道だよ!? なかなか行けるところじゃないからね!? いつもと見えるものが違うと楽しくなっちゃうでしょ! なんで楽しくないの!?
鹿又:俺たちだってもちろん楽しんでるしテンション上がってるよ(笑)。
りうせい:そうそう! 節度を守ってはしゃいでるんだよ!(笑)
──ははは。初の全国流通盤からここまで振れ幅を見せられるのなら、まだまだいろんな曲が生まれそうですね。
菊池:「殺文句」「愛憎」というオーソドックスな“これがThis is LASTだ”というものを作ったうえでライブをたくさんしてきたので、“全国流通盤は一歩進む転機だ”と感じたんですよね。というのもあってちょっとテクニックのあるフレーズを入れた曲や、ストリングスを入れたりしました。『aizou』でまた新しいThis is LASTのベーシックが出来上がったので、ここからまた広がっていくと思います。早く次がやりたい! 暗〜い曲ができるかもしれない(笑)。
鹿又:ほんと、これからどんな曲が生まれていくのか、楽しみでしかないですね。
りうせい:“この3人なら大丈夫”という謎の確信があるからこそ、どんなことも挑戦できたと思います。いろんなことを試して失敗しても、この3人であることは絶対に変わらないから、突き進むことができる。敢えて言葉にしたことはないけれど、お互いがお互いを信頼してるのかもしれないですね。
▲りうせい(B)
──現在開催中のツアーも順調そうですし、ツアーファイナルシリーズまで充実の日々が過ごせるのではないでしょうか。
菊池:初日の札幌からお客さんがバッと大きな声で歌ってくれて、たくさん観に来てくださって。“北海道にもこんなに待ってくれてる人がいたんだ!”と感動したんです。俺たちも気合い入れてツアーしてるけど、同じくらいお客さんも気合い入れて来てくれてる。俺たちは絶対負けられないよね(笑)。
鹿又:お客さんのテンションが上がっていることをすごく感じました。自分たちが楽しんでいることがお客さんに伝わって、みんなでその時間を楽しもうとするツアーになればいいかなと思ってますね。
りうせい:ライブにおいていちばん大事にしているのは、なによりもお客さんが楽しむこと。ライブ1本1本が初の全国流通盤をリリースしたThis is LASTの歴史を作るので、1本1本を噛みしめていきたいですね。思い思いのかたちで僕らの音楽に浸ってもらえたらうれしい。そのためにも僕らは最強のライブをするのみ!(笑) いいツアーになることは保証します。
菊池:このツアーが終わった頃にフロントマンとしてひとつレベルを上げたいと思っているんです。メンバーに助けてもらう場面もあるので、もっと自分がこのバンドを引っ張っていけるようになりたいし、どんな環境でもちゃんと歌えるボーカリストでありたい。少しでもそこに近づけるようなツアーにしたいですね。ファイナルは間違いなくやばいですね! 僕の誕生日でもあるし(笑)、対バンも仲のいいUMEILOだし。いい日になると思います。
取材・文◎沖さやこ
▲This is LAST /『aizou』
Mini Album『aizou』
¥1,818+税
品番:KRRC-1001
レーベル:蔵前レコーズ
[CD]
1.愛憎
2.アイムアイ
3.見つめて
4.バランス
5.帰り道、放課後と残業
6.サンドバック(CDのみ収録)
<This is LAST「aizou」Release tour 2019-2020 “a,a”>
2019年
12月12日(木)神奈川・横浜BAYSIS
12月15日(日)千葉・千葉LOOK
12月16日(月)宮城・MACANA
2020年
1月16日(木)愛知・APOLLO BASE ※FINAL Series
1月17日(金)大阪・LIVE SQUARE 2nd LINE ※FINAL Series
1月25日(土)東京・TSUTAYA O-Crest ※FINAL
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