【インタビュー】三浦祐太朗、自由に広がる音楽性と天性の伸びやかな美声が織りなす優しい空間

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生まれながらの音楽的素養に10年を超える堅実なアーティスト活動を乗せて、今花開く三浦祐太朗の世界。およそ1年をかけ、47都道府県を回るロング・ツアー真っ最中の彼から届いたニューアルバム『Blooming Hearts』は、オリジナル新曲が4曲と、母・山口百恵のカバーが4曲。歌謡曲、ロック、AOR、バラードなど自由に広がる音楽性と天性の伸びやかな美声が織りなす優しい空間は、オールド・ファンには懐かしさを、若いリスナーには新しさを感じさせる、彼にしかできない魅力溢れるもの。アルバムに込めた思いについて、ツアーについて、そして理想の歌手像について、飾らない本音を語ってもらった。

■今回のツアーを通して自分の心をオープンにすることを覚えた
■そうしたら心がすごく色づいてきて豊かになったんです


──今は、1月から12月まで、47都道府県を巡るツアーの真っ最中ですね。

三浦祐太朗(以下、三浦):全部で49公演あるんですけど、9月まで34公演が終わりました。土日に固まっているので行きっぱなしではないんですけど、コンディションの維持にはすごく気を使いますね。風邪は絶対ひけないとか、1年を通して健康に気を使うようになりました。

──そもそも、どんな思いでこの長いツアーをやろうと思ったのかというと。

三浦:元々、2019年はたくさんライブをやろうと思って、事務所が動いてくれてたんです。会場のリストを見た時に「47都道府県ツアー、できませんか?」と言ってみたんですよ。僕の思い付きから始まったことで、形にするのは本当に大変だったと思うんですけど、今はすごく充実してます。

──ここまで、何を得られているという実感がありますか。

三浦:今回のツアーの特徴として、“はじめまして”のお客さんがけっこう多いんですよ。テレビで僕を見てなんとなく知ってくれて、じゃあ行ってみようかという人が多い。そういう人に向けたライブをしなきゃいけないということで、普段東京でやっているライブとはセットリストもしゃべることも変えています。それは自分の中での挑戦で、初めて見る方を僕のファンにして帰さないといけないので。

──一番大変な、でも一番気合いが入るシチュエーションですね。

三浦:一回一回が勝負のようで、すごくスリリングで楽しいです。そのためには「自分はこういう人間です」というものをさらけ出さないと、僕が何を歌っても伝わらないと思うので、「こういう両親の元に生まれて、こういうことを歌って、母の曲をこういう思いで歌っています」ということを説明して、その上で歌を歌うと共感してくれる方が増えてくれる。自分を一から知ってもらうセットリストになっています。

──あらためての、自己紹介ツアー。

三浦:まさに、本当にそうです。

──それぞれの地方で記憶に残るエピソードというと?

三浦:長崎だったかな。アンコールで普通は手拍子なんですけど、「もってこーい!」っていう掛け声があるんですよ。最初、何のことかわからなくて、怒られてるのかなと(笑)。そしたらお祭りの掛け声らしくて、そういう地域性は本当に楽しいですね。静かに見てくれる土地もあれば、1曲目からワーッと盛り上がる地域もあって、場所によって地域性が出るんだなってすごく思います。

──涙したシーンとかは?

三浦:泣かないようにしようと思っているんで。もちろんグッとくる瞬間はありますし、行ったことのない土地で満員の中でやったりすると、すごくありがたいなと思うし、歌が伝わっているなという空気を感じるとグッときますけど。伝えているこっち側は泣いちゃいけないと思ってるので、そこはこらえつつ。でもツアー最終日にはちょっと泣くかもしれない。いろんな思いが集約すると思うので。

──1年ぶんの思いが。

三浦:そう言って、泣かなかったら申し訳ないな(笑)。


──「泣く予定」と書いておきます(笑)。アルバムの話に移っていきますけど、今回の『Blooming Hearts』は、全8曲のうちオリジナルが4曲、お母様の山口百恵カバーが4曲。ちょうど半々で、これが祐太朗さんが今やりたい割合なんだろうなと思ったんですね。どっちも均等にきちんと伝えたいという。

三浦:そうですね。ここまでツアーを30数本やってみて、母親の曲を歌った時のお客さんの熱量や集中力は本当にすさまじいなと思っています。次もそういうものを期待されてる感じがあって、そこに応えていきたいという気持ちがありつつ、それだけじゃ自分の中で満足いかない部分もあるので。やはりオリジナルも出して行きたいので、今回は半々になりました。

──そこに強い意思を感じましたね。全曲山口百恵カバーで、レコード大賞・企画賞を取った『I'm HOME』(2017年)のパート2でも良かったのかもしれないけれど。そうではなく。

三浦:『I'm HOME』を作る時も、最初は「半々で」ということだったんですよ。でもその時は、それだと中途半端になるから「母の曲だけで作りましょう」と僕が提案して、そうなったんですけど。今は環境も変わってきて、今度は自分を出していかなきゃいけないと思った時に、「オリジナルも入れるべきだ」という感じですね。

──オリジナル4曲のうち、アルバムのオープニングを飾る「Tell Me Now」はメッセージ性の強い軽快なロック・チューンですね。

三浦:歌詞的には自分に対する挑戦状というか、「自分はこうありたい」ということをお客さんに対して言っているふうに書いていますけど、自分自身に言っている感じですね。戦いではないけど宣戦布告という感じです。『Blooming Hearts』には、「心に花が咲きますように」という意味もあるんですけど、それ以上に今回のツアーを通して、自分の心をオープンにすることを覚えて、そうしたら心がすごく色づいてきて豊かになったなと思って、そういう意味も込めて付けたタイトルなので。心が豊かになってきているという感覚は、恥ずかしがらずに自分を「僕はこうなんです」と表現することがうまくなってきたということで、それが「Tell Me Now」という曲にまさに反映しています。言いたいことは言っていくよ、ということだと思います。


──「聞かせてよ、本当の気持ち全部」。それはつまり、自分に言っている。

三浦:そうなんです。自分に「聞かせてよ」と言ってるんです。

──そういうふうに思い始めたのって、最近ですか。

三浦:すごく最近かもしれない。自分のことを出すのに、かなり抵抗があったので。でもお客さんと向き合うことで、凝り固まっていた思考がどんどんほぐれていく感覚を今年に入ってからすごく感じています。どんどんシンプルになっている気がしますね。

──今が30代半ば。逆に二十歳の頃はどんな考え方だったんですか。

三浦:ライブの仕方も全然違っていましたね。今は「僕はこういう人間です」という、自分を紹介するライブをしていますけど、当時はライブに来てくれてるということは「もう知ってるよね?」という感じで、「曲やるから聴いてね」という感じだったので。

──さらけ出してる感じではなく。

三浦:すごく斜に構えていたし、格好つけてたなと思います。それは別に恥ずかしくはないけど若気の至りかなと思います(笑)。若い時特有の斜に構える感じは絶対あったと思うし、あの時を今の精神状態でもう一回やり直せたら違ったのかなとも思いますし。20代の頃は、やっぱりダサかったのかもしれない。

──いやいや、そこがあって今ですから。この「Tell Me Now」の歌詞は、共感する人が多いと思いますよ。「顔の見えないノイズ、言わせておけばいい」とか、SNS時代へのメッセージでもあると思うし。

三浦:あんまり言えないですけど、最近のツイッターとか、常に火をつけたがる人がいっぱいいるし好きじゃないんです。そういうことを思って書いた歌詞でもありますね。

──新曲の中で一番耳なじみがあるのは、去年からオンエアされている「夢ハウス」のCMソング「小さな手」。

三浦:夢ハウスのCMソングなので歌詞にも「夢ハウス」とがっつり入っていて。変えようか?という話もあったんですけど、そのまま歌うことに意味があると思って変えませんでした。歌詞の内容もすごく好きですし、子供の手がいつか大きな夢を掴むとか、家族のために大きな家を建てるとか、そういう夢や希望が詰まった曲だと思います。

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