【ライヴレポート】アルルカン×DEZERT×キズ、「つぶし合うのもよし、時代を共に築くのもよし」
アルルカン主催イベント<STAND ALONE COMPLEX>が8月4日、TSUTAYA O-EASTにて開催された。同イベントはアルルカンの呼びかけにより、DEZERTとキズを招いて行われた3マンイベントとなるものだ。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆アルルカン×DEZERT×キズ 画像
超満員のO-EAST。フロアからの異様な熱気が2階席まで立ち昇ってくるほどだ。開演前からオーディエンスは暑さと湿気にやられすでに汗だくになりながらも、それを意に介することもなくステージの幕が上がるのを待ちわびている。
<STAND ALONE COMPLEX>──公演名はアルルカンの暁(Vo)が某アニメのタイトルを語感の響きの良さから拝借したものだが、孤立(STAND ALONE)も複雑(COMPLEX)も、アルルカン、DEZERTとしてキズに共通する素晴らしいイベント名である。“出る杭は打たれる”という諺があるが、もはや“出すぎた杭は打たれない”バンドであることが彼らの共通項だろう。ちなみにキズとDEZERTは今回のイベントで初共演となるのだが、これまで接点がなく、しかしながらお互いの存在を強く意識している関係だったという。そんな両者を繋げたのが主催のアルルカンであり、このイベントがなければ両バンドが同じステージに立つことはなかったかもしれない。
▲キズ
予定より10分遅れで開演。白幕に投影された禍々しい映像によって、初手がキズであることが分かる。ワンマンでもなければ主催イベントでもないのに、いつもの自分たちのやり方を通すスタンス。そこがいかにも彼ららしい。映像越しに「0」をやり終えると同時に幕が振り落とされ、過剰で過激な「ステロイド」がこれでもかと突きつけられる。
一方で演奏はホールツアーを経験したことで、安定感と余裕が感じられつつ、闇雲に歌っても自分の思いが届かないことを知っている来夢は、以前より歌うことに対してよりセンシティブになっている印象。アコギを抱え「一緒に死のうよ」と歌う彼の姿は、伝えたくても伝わらないもどかしさを吐き出しているようでもある。
それは最後のMCでも同じで、「時代を一緒に築いていきたい」とアルルカンやDEZERTへの餞のような言葉を放ったものの、実際はもっと違う意味合いを含んでいたのではないかと想像する。来夢は音楽の才知とセンスがずば抜けているにも関わらず、一番言いたいことや伝えたいことをうまく伝えられない不器用な男でもある。だからこそ彼の音楽には過剰な思いが溢れているのだ。
▲DEZERT
続いてはDEZERT。赤黒い照明の中、BGMもないままメンバーが太々しい態度でステージに表れる。1曲目は即興演奏のような始まりからヴォーカル千秋が奏でるギターのアルペジオに誘導されながら「Dark in Black Hole」という新曲でライヴがスタート。キズとは対照的なステージだ。
彼らは前日、国内で一番動員を誇る某野外フェスのステージに立ったばかりということもあってか、とにかく楽曲や歌をしっかり聴かせる演奏に徹底し、それ以外の無駄はステージから一切排除していて、そこが潔くていい。しかし「TODAY」でライヴを締めくくろうとする前に、千秋がプロレスでレスラーがよくやるマイクパフォーマンスのようなことをし始めた。
「俺、やっぱりキズが嫌い(笑)」「次はウチの主催でこの3バンドでつぶし合いしたい」。突然ケンカを売り始めた千秋にフロアは大ウケだ。しかし最後は一転して、「この1年で今日だけじゃなく明日も頑張ろうと思えるようになりました」と、真摯な気持ちを吐露してから「TODAY」を丁寧に唄い、締めくくる。本当に器がデカいバンドになったものだ。
▲アルルカン
千秋のマイクパフォーマンスで持ち時間を大幅にオーバーしたDEZERTに続いて、いよいよアルルカンがステージに降臨する。自身の存在を誇示するように両腕を左右に広げながら胸を張る暁。バンドの牽引者に相応しいその姿は、数年前の彼とは明らかに異なるものだ。
以前の彼はバンドを引っ張るどころか、4人に背中を押されるような頼りない佇まいで歌を唄っていたものだ。バンドのフロントマンとしてどうあるべきか、の自問自答に溺れる彼と、それを支える4人。ツアーとリリースをひたすら繰り返す歳月を経て、ようやく突破口が見えてきたのが結成5周年を迎えた去年。最新シングルから披露された「息の根」のパフォーマンスには、メンバー同士の新しい繋がりのようなものが感じられる。暁がひたすらフロアとの距離を埋めようとする背後で、4人のメンバーが思い思いにライヴを楽しんでいるようだ。笑顔でプレイする者もいれば、滝汗でもポーカーフェイスを崩さない者、なりふり構わず自分をアピールしたりフロアから視線を集めようとする者までいる。つまりメンバーのパフォーマンスがバラバラのように見えるステージなのに、迫ってくる音は大きな塊のように重く、揺るがない。それが今のアルルカンなのだ。
「つぶし合うのもよし、時代を共に築くのもよし」──千秋と来夢がMCで放った言葉を引きあいに出すことで、暁は自らの存在理由を明らかにしていた。余計なルールや縛りはもちろん妙な理屈や思想も持たず、この5人の繋がりだけを頼りに未来へ向かって突っ走っていく。アルルカンがそんな真っ直ぐな志を持ったバンドであることを、アクの強いバンドとの共演によって明らかになったイベントだった。
取材・文◎樋口靖幸
撮影◎川島彩水
■<アルルカンpresents STAND ALONE COMPLEX>
open17:00 / start17:45
▼出演
アルルカン / DEZERT / キズ
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