【インタビュー】IRabBits、15周年にセルフタイトル盤完成「腹くくってるのを見せなきゃいけないタイミング」
■“未完成”ができたんだから
■次は“完成形”の“あいのうた”だなって
──今回のリリースには、いい出会いがあったんですか?
竹下:そうです。これは山田祐大先生のおかげで(笑)。
山田:叔父の松崎しげるに話をしたんです。ただ自分も自分で、小さい頃から可愛がってもらっていた分、叔父に甘えたくないというか、迷惑をかけたくないなという思いもあったんです。でも以前からIRabBitsを知る方が、「バンドもここまで頑張ってきて、独立をして、今はなんでもできる状態なんだから、相談してみたら」とアドバイスをしてくれて。それで叔父に話したら、今の社長に話を繋げてくれたんです。
──バンドとしての意志と実力がしっかりとなかったら、いくら話をしてもらったところで実現できないでしょうし。
竹下:そうですね。“そこまでできる”と思う曲ができて、大事に出したいっていう気持ちがすごく高かったんです。最初に「This Is LOVESONG」の弾き語りのデモをメンバーに送ったときに、祐大が真っ先に「これはいけますね、電車で泣きました」っていうLINEをくれて。メンバーが泣いたってことは、これはいけるなっていうのが自分の中でもあったんですよね。そういう曲ができたというのは、大きかったですね。
──その「This Is LOVESONG」はものすごく多幸感たっぷりの曲ですよね。これはどうやってできあがったんですか。
竹下:ずっと書きたかったものが書けたんです。どうしても泥臭い曲が多くなってしまうんですけど、かと言って綺麗事で飾り付ける曲でなく、おっしゃっていただいたように、本当に多幸感というのはひとつのテーマで作ってきたんです。でも、ただ明るいだけの多幸感ではなくて、もっと滲み出るような、湧き出るようなものが書きたかったし、作りたかったんですね。もうこれで勝負できなかったら、ここからのことは一旦考えないようにしようくらいの気持ちはありました。
──そのくらい一曲に込める思いの強さがあった。
竹下:そうですね。2010年に「未完成なあいのうた」という曲ができて、その曲を収録した『FREASURE』というアルバムを出した2011年に、10-FEETとの出会いがあったんです。たまたま地方での対バンだったんですけど、このチャンスを活かすしかないって思って。そこでがむしゃらにライブをやったときに、ヴォーカルのTAKUMAさんに届いたみたいで、10-FEETが主催する<京都大作戦>に呼んでもらったんです。
──そういう経緯での<京都大作戦>出演だったんですね。
竹下:あの人たちがすごいのは、本当にライブで決めるんですよね。売れている/売れてないとか、これからきそうだから、とかではないんですよ。普通にライブを見て、決めてくださる。<京都大作戦>にラインナップされた瞬間に、フォロワーも一気に何百人も増えたし、「未完成なあいのうた」という曲もブワーッと広がっていって。当時、IRabBitsを結成して6年くらい活動していたんですけど。……私はバンドを組むときに、父に縁を切られていまして。超ガリ勉で、東京大学を目指していたような人間が、「バンドをやるから就職をしません」って言ったら、まあ縁を切られますよね(笑)。という経緯があるなか、その「未完成なあいのうた」が偶然父の耳にも届いて。アルバムツアーで初めて地元の久留米に行ったとき、父がサプライズで会場にきてくれていたんです。あの時は震えましたね。6年ぶりくらいに喋った父に、「「未完成なあいのうた」というのはなかなかよくできているじゃないか」って褒めてもらって。「“未完成”ができたんだから、次は完成形の本当のあいのうたが書けるときが、お前たちが次のステージに進むときだな」って言われたんです。
──いい言葉ですね。
竹下:だから「完成形のあいのうた(仮)」っていうタイトルで、ずーっと曲は書き続けてきたんです。でもなかなか納得がいかなくて、ボツにしてきて。今回書けたのが、「This Is LOVESONG」なんです。思い入れも深くて、大事に出したいというものがやっと書けたので。いろんなことを踏み切りました。
──そして完成した今作ですが、これまでの作品以上にバンドのグルーヴというものが凄まじく、かつやりたいことを思い切りやっていることが、サウンドに出ています。ライブを重ねてきているバンドだから当たり前ではありますが、アンサンブルの凄みが、凝縮されていて。メロディックな曲もあるし、ダンサブルな曲もあるけれど、バンド感が生き生きとしている。それを肝にしてやってきたんだなっていうのが、アルバムとしても伝わってきます。
竹下:ありがとうございます。ライブでどう化けるかというのは、いつも楽しみのひとつでもあるので。ただ聴いて終わるアルバムではなくて、アルバムを聴いてライブにきたら、超楽しかったって思ってもらえるのがいちばん最高なんですよね。
──多幸感たっぷりの「This Is LOVESONG」はじまり、しかし「宵の月」であの幸せはなんだんったんだというくらい泣きのエモーショナルな曲である、この並びにも揺さぶられます(笑)。
竹下:確かに(笑)。15曲というボリューム感はバンドでも初めてだったので、いろいろ悩んだんですけど、この1、2曲目は最初から全員一致で揺るがなかったですね。
猪野:「宵の月」は2019年になってできた曲で、わりと新しい曲なんですよ。
竹下:そうですね。でも本当は、14曲でいく予定だったんです。先ほど父の話をしましたけど、6月に父が癌で他界しまして。2019年の正月に帰ったときは、余命は告知されていなかったんですけど、でも親の病気って怖いので……。できることは全部しようと思って、父に向けた曲をちゃんと書いておこうと思ったんです。だからメンバーに待ってもらって、2日くらいで書きあげたのが「七光れ」で。至急レコーディングのスタジオも押さえて滑り込みで録って、歌も二発録りくらいの、執念で入れた曲でもありますね。
山田:でも、それ以前は、全10曲でやろうとしていたんですよね。
──途中で、だいぶ収録曲が増えてますね(笑)。
山田:レーベルの社長と話していくなかで、『IRabBits』というセルフタイトルで勝負するアルバムなら、もっとバンドの幅を見せたほうがいいんじゃないかっていうことで、じゃあ4曲追加しようとなったんですよね。さらにそこから「七光れ」もできて15曲になったんです。
竹下:その新たな4曲も普通に作っても面白くないので、最初の10曲はIRabBitsにできることをやった10曲なんですけど、新たな4曲はやったことないことを入れてみようとなって。ギターの智ちゃんが作詞・作曲をした「246」、ドラムの祐大が作詞・作曲した45秒の「Life is…」を収録して。
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