【インタビュー】riyo(Koochewsen)、初ソロアルバム『dreamy dream』を引っさげヨーロッパツアーを開催!

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■アルバムは2月に作っていたんですけど一番楽しい時期でした
■録音やミックスに取り組んでいるのがメチャクチャ楽しかった


――自然や優れた芸術などは、魂を浄化させる力を持っていますね。それに、僕は輪廻転生を信じていて、真理に思いを馳せたり、心を揺さぶられるものに数多く触れる人生を繰り返すことで、魂は少しずつ成長していくんじゃないかなと思っています。

riyo:僕もそう思う。そういうことは「惑星はひとり」の歌詞でも言っているんですよね。“魂の謎は解き明かさないで”と。魂のことを理解するのはいいとして、それを言葉にすると薄っぺらいものになる。人間は基本的に言葉でしか伝えられないから仕方がないし、言葉でコミュニケーションを取るというのは素晴らしいことだと思います。でも、それだけじゃないよねと。この世は言葉で成り立っているわけじゃなくて、あくまでも翻訳する手段だよねという。世界があって、それを翻訳していくための手段であって、世界の成り立ちそのものではない。特に宇宙の真理みたいなものは、言葉ではない形でそれぞれが認識していると思うんですよ。

――話をアルバムに戻しますが、アコースティック・ギター1本のみで成立させた「tobitate」がある一方で、「空間実験室」はギター・オーケストレーションを活かした真逆の手法を活かしています。

riyo:この曲はルーパーで遊びながらできた曲です。モチーフになるフレーズ1本から始まって、そこに違うパターンのフレーズが重なって、どんどん空間が広がっていくのが気持ちいいなと思って。その時は、ミニマル・ミュージック的なことがしたかったんですよ。ずっと聴いていられる、禅のような音楽というか。スティーブ・ライヒみたいなことがやりたかった。歌詞は、これも特に意味はないんです。無機質さとせつなさ……内側の宇宙というよりは、外側のすごく寒い宇宙をイメージしていた。だから、この曲はギターも歌も冷たい質感になっているんです。


――最後の“広いモニターの全ての画面に あの子の横顔”という言葉はすごくエモーショナルで、そこから脳内をイメージしたんですよね。

riyo:そう受けとめていただいたならそれでいいです。歌詞というのは、絶対的にこうだよというものでもないから。それぞれのイメージや想いを重ねて聴いてもらえればと思います。

――この曲はアニメ感のようなものもあって、ニューウェイブやポストロックといった言葉を出しましたが、やはり現在の音楽だなと思いました。

riyo:変な懐古趣味というか、たとえば「'60年代に生まれていれば良かった」みたいなことを言うのが、僕はすごく嫌なんですよ。2019年にいるんだから今の時代を思いきり楽しみたいし、音楽をやるなら2019年の音楽をやりたい。僕は子供の頃からアニメに触れて育っているんですよね。だから、そういう匂いが自分の音楽の中に入ってくるのは自然なことで、それを排除しようとは思わない。だって、僕は昔の音楽を再現しているわけではないから。

――続いて、今作の歌について話しましょう。『dreamy dream」は楽曲の良質さはもちろん、アンニュイかつ抑揚を効かせたボーカルが大きな聴きどころになっています。

riyo:歌は全曲気持ちよく楽しく歌えました。このアルバムは2月に作っていたんですけど、今年に入って一番楽しい時期でしたね。1ヶ月間ほとんど家から出ないで、ずっと録音やミックスに取り組んでいて、それがメチャクチャ楽しかった。歌も含めて今回の制作はその一言に尽きます。

――サウンドはマニアックだったりミニマルだったりしますが、そこにエモーショナルな歌が乗ることで、より多くのリスナーに響く音楽になっていると思います。

riyo:僕の中では、歌は重要なファクターですね。Koochewsenもそうで、トリッキーなことをいろいろするけど、やっぱり一番大事にしているのは歌なんです。だから、音楽的なアイディアや面白いサウンドで世界観を創れたとしても、それだけで良いとは思えない。そこにどういう歌を乗せるかということは熟考します。逆に言えば、僕は歌がなかったら、どうしたらいいかわからない。僕はインストは作れないんです。

――エモーショナルな歌を聴かせる一方で、「空間実験室」はメカニカルなテイストの歌に仕上げていますね。

riyo:「空間実験室」はハーモナイザーを使いました。曲調に合わせてメカニカルな質感の歌にしたいなと思って。歌詞もそれありきで考えたし。無機質な歌声で“感情”というワードを言ったりする面白さを活かしたかったんです。

――さらに、今作はミックスも自身でされたんですね?

riyo:やりました。ミックスで心がけたのは、“いかに自分を気持ちよくさせることができるか”ということ。それのみ(笑)。ミックスしたトラックを聴く時は、お香を焚いてヨガマットの上に寝転がって聴いていたんです。より気持ちよくなれるように、ちょっとずつ直して、また直して……という感じで仕上げていきました。バンドの時はどうしたいかわからない感じがあるけど、今回のアルバムは人に頼むよりも自分でやったほうがいいなと思ったんです。僕は、音楽というものには絶妙のバランス感覚みたいなものがあると思うんですよ。僕の中ではすごくJ-POPが根深いから、ちゃんと歌を聴かせたいというのがあるし、自分を気持ちよくさせるという目標でミックスしていっても、変にエクストリームなものにはならないという自信があって。あくまで歌物として気持ちよく聴かせられるだろうと思っていたし、そういうものにできたことも感じています。

――それにしても『dreamy dream』は私小説のような作品といいますか、“riyoさんそのもの”といえるアルバムになりましたね。

riyo:それは間違いない。『dreamy dream』は、特に僕のパーソナルな部分が出たアルバムになったと思います。そういうアルバムを作ってすごく手応えを感じているし達成感もあるけど、次は何をすればいいかなという感じがありますね。それは、やりたかったことがやれたから、もういいやという意味ではなくて。自信作ができたからこそ、それを塗り返していきたいという前向きな気持ちからくる“次は何をやろう”です。


――Koochewsenの活動などで忙しいとは思いますが、ぜひ次作も作ってほしいです。それに、「惑星はひとり」のミュージック・ビデオも作られたんですよね。ミュージック・ビデオの制作は、いかがでしたか?

riyo:ミュージック・ビデオは初めて自分で作ったんですけど、もう二度とやりたくないと思いました(笑)。どういうミュージック・ビデオにするかを考えて、プロットを作って撮影して編集してという全部を自分でやったんですよ。めちゃくちゃ大変なことがわかりました。今までは人にお願いしていて、ギャラが高いなと思っていたけど、逆に割りに合っているのかな……という(笑)。本当に大変なんですよ。映像をやっている人に対するリスペクトが深まりました。

――でも、「惑星はひとり」は楽しめましたよ。近未来的な世界観で、衣裳もカッコいいし、riyoさんが鍵盤を弾いている姿も見られるし。

riyo:ありがとうございます。僕が映っているところは、アルミホイルを部屋中に貼りまくって宇宙船の中みたいにしたんです(笑)。スモークも加湿器を使ったし(笑)。ドライアイスを買ってきたけどすごくショボくて。それで、加湿器と併用する…みたいな(笑)。そんなふうにいろいろ工夫して撮りました。でも、よかったですね。やっぱり自分でやるというのは新鮮だったから。大変だったという印象のほうが強いけど、やって良かったなと思います。

――ソロアルバムのリリースに合わせて、ヨーロッパツアーを行うこともアナウンスされています。

riyo:アルバムの7曲目「エンドレスサマー」のトラックを担当しているオータケコーハン(LAGITAGIDA、あらかじめ決められた恋人たちへ)とフランス、ドイツ、ベルギーでライブをします。『dreamy dream』は「sally」以外は全曲日本語ですが、世界中のいろんなところで自分の曲が再生されるといいなという目標みたいなものがあって。なので、海外では英語で歌おうと思っています。最近、日本語のJ-POPを英語に訳して歌っているカストロさとしさんというYouTuberを見つけたんですけど、それが超自然なんですよ。歌詞の意味を変えず、符割とかも変えず、すごくいい感じで英語に置き換えているんです。その人とコンタクトを取って、一緒に山に行ったりする仲になったので、僕の曲の歌詞を英語に置き換えるのを手伝ってもらうことにしました。

――ソロの時は、どういう形態でライブをされているのでしょう?

riyo:僕1人だけです。たとえば「dreamy dream」をやる時は、ラジカセを使いますね。最初は弾き語りで入って、“シーラカンスの”というところで、ラジカセをポンと押すみたいな(笑)。

――シーケンサーなどではなくラジカセですか?

riyo:好きなんですよ、そういうのが。いつもやっているライブをそのまま海外にも持って行きたい。それに、ヨーロッパを回った後、東京で凱旋公演もします。ヨーロッパで得られたものを披露する場になるので、期待していてほしいです。

取材・文●村上孝之

リリース情報

初ソロアルバム『dreamy dream』
7/24 配信リリース
1, 惑星はひとり
2,sally
3,dreamy dream
4,tobitate
5,ママ、お月さまとって
6, 空間実験室
7, エンドレスサマー

ライブ・イベント情報

10/18 riyo オータケコーハン凱旋レコ発ライブ@下北沢風知空知

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