【インタビュー】サイダーガール、生々しいロック感と爽やかさを併せ持つ独自の魅力「クローバー」
■今度のツアーはボコボコにされる覚悟ができています(笑)
■先輩には感謝していて恩返しをしたいという気持ちで臨みます
――3曲目の「寿司」にいきましょう。
Yurin:デモの時は「ハンバーグ」というタイトルだったんですけど、楽曲タイトルを決める締切の時に一番食べたかった食べ物をタイトルにしたんです(笑)。この曲の歌詞に“おいしいものを食べたら、きっとどうでも良くなる”みたいな一節があるから。
――「寿司」というタイトルでいながら、食とは関係のない歌詞だし“寿司”という言葉が一度も出てこない。
Yurin:「クローバー」もそうですけど、日々の生活の中で閉塞感や鬱々としたものを感じているのは自分だけじゃないし、君だけじゃないということを伝えたいという思いがあって。「クローバー」は“少しずつでもいい、立ちどまってもいい、君は君のためにあるんだ”と歌っていて、「寿司」も“素晴らしい最低を謳歌しよう”とか“最高速さ僕らは”といった言葉が出てくる。僕は、その人なりの最高速がきっとあると思っているんです。立ちどまったりゆっくり歩いているのが最高速の人もいるし、それでいいと思っているんですよ。だから、生き急がないでほしいという気持ちで歌詞を書きました。そんなふうに、「クローバー」とリンクしているところがあるけど、この曲自体は1年半前くらいに録り終わっていたんです。今回のシングルだったらテーマ的にも大丈夫かなと思って、入れることにしました。
――こんなにいい曲を、1年半も寝かせていたんですね。
Yurin:この曲はピアノやアコギが入っていて音数が多いので、他の曲とのバランスが難しくて、なかなかタイミングが合わなかったんです。この曲はレンジが広いので、ミックスダウンとかマスタリングで、あとの2曲にちょっと寄せてもらってバランスを取りました。
▲4thシングル「クローバー」【初回限定盤】
▲4thシングル「クローバー」【通常盤】
――他の曲とテイストが違っていることで、今作のいい彩りになっています。それに、サビ・パートの出だしの歌詞がなくて、“ラララ~”になっていることが新鮮です。
Yurin:デモの仮歌を歌う時に“ラララ”で歌うことが多いんですよ。サビは、それをそのまま残すことにしたんです。
フジムラ:最初は英語だったんだよね?
Yurin:英語だったり、言葉が乗っていたりした。なにかしら歌詞があったほうがいいんじゃないかという話になったけど、この曲に関しては、サビの頭が“ラララ~”というのが良かったんです。J-POP感を意識したというのもありましたね。歌録りに関しては、今回のシングルは全曲マイクが違っていて、「寿司」は古いマイクで録った気がする。曲に対する歌の乗り方というところで、マイクが違うことによってモニターの感じも変わってきて、歌い方も変わるんですよ。そういうところで、この曲は一番いつもどおりに自分らしく歌えていますね。メロディーが細かく動いているし、J-POPな感じの曲だったので、“元気感”というか、爽やかな感じを出すことを心がけた気がします。
知:この曲のギターは、鍵盤っぽいアプローチになっています。今回の他の2曲はギターらしいアプローチをしているけど、この曲はピアノが入っているから、ギターとピアノが混ざり合った感じにしようと思ったんです。でも、それは自分の中にはないものだったので、録る時は結構大変でした。僕は元々ピアノをやっていて、昨日たまたま『戦場のメリークリスマス』のピアノの解説動画を見て、テンション・ノートの位置がすごく大事なことがわかったんです。僕はいつもギターがトップの帯域でテンション・ノートを鳴らすようなアプローチを採るけど、「寿司」はシンセっぽい動きをしているから、トップにいるんじゃなくて真ん中でテンションが鳴っていたりする。つまり、「寿司」はギターが主役ではないんですよね。それが、今回の他の2曲との明確な違いかなと思います。
フジムラ:この曲のベースもフレージング自体は結構シンプルですけど、16分(音符)の休符が多く出てきてメチャメチャ難しかったです。16分の休符を沢山入れて、なおかつ正確な長さの休符を入れないとノリが出ないんです。大きいんだけど細かいというか。そこで、すごく苦労した覚えがあります。
Yurin:今にして思うと、この曲を作った頃の僕は、知とフジムラに結構無理難題を押しつけていた時期でしたね。
フジムラ:でも、それで良かったと思う。確かに録る時は苦労したけど、それで成長できたから。
知:うん。新しいことに挑戦することで、アプローチの幅は広がるわけだし。
――「クローバー」はMVも撮られたんですよね?
Yurin:サイダーガールのイメージ・キャラクターの女の子は毎年変わるんです。「クローバー」は新しく4代目の小貫莉奈ちゃんになって初めてのMVです。MVを作るにあたって、その子らしさもちゃんと出したいし、“今年のサイダーガールは、こういう感じだよ”というのも見せたいなというのがあって。それで、今までにはなかったメンバーのシルエットを使ったり、演奏シーンが多くなったりしています。演奏シーンが多いのはバンド感を出したいという僕らの希望や楽曲のイメージを、監督がちゃんと反映してくれたからだと思います。
知:僕はMVで楽器を演奏するのが苦手なんですよ。大袈裟にしないといけないじゃないですか。今回はシルエットだったから、なおさら動かないといけなくて大変だった。もう、どうしたらいいんだろうという感じでした。
Yurin:自分では大きく動いているつもりでも、見返すと“あれ?こんなもんか”ってなるんですよ。それで何度もやり直しました。
知:今回の撮影で、もっとカッコよくできないとダメだということを痛感しました。
▲2019年度サイダーガール 小貫莉奈
――「クローバー」のMVはカッコいいですし、特に熱くギター・ソロを弾いているシルエットはイケています。
知:いや、現場では怒られたんです。ただ、今回の撮影をしたことで、「クローバー」をライブで演奏する時に、曲にもっと入り込めるようになりました。
フジムラ:僕はもう好きなだけ暴れてやろうと思っていた。知君が撮影の合間に結構落ち込んでいたんですよ。それで、“こうするんだよ”みたいな感じで知君を引っ張りたいというテンションも加わって激しくいったし、結構ヘドバンとかもしたんです。でも、あまり使われていないという(笑)。
一同:ハハハッ!
フジムラ:3人のバランスを崩してしまうくらい激しかったみたいです(笑)。でも、知君と同じように、この曲のMVを撮ったことはライブのパフォーマンスにつながった部分があるんですよ。だから、無駄だったとは思わないです。
Yurin:個人的には、今回の撮影は演奏シーンでシルエットを出す時に、後ろでめっちゃカラフルなライトがまわっていて、それがすごくきれいだったことが印象に残っています。できあがったMVは花火が上がっていたりして、それと相まって色味がきれいなMVになりましたね。そういうところも含めて、また新しいサイダーガールを打ち出したMVになっているので、ぜひ観てほしいです。
――“観てほしい”ということでは、「クローバー」のリリースに伴って7月に行う東名阪ツアーも必見とえいますね。
Yurin:今度のツアーは先輩バンドを迎えてツアーをしようということがテーマとしてあって、名古屋がアルカラ、東京がKEYTALKとの対バンで、大阪はサイダーガールの単独公演という形になっています。両バンドともいろんなフェスとかで一緒になるんですけど、2マンとかでガッツリ絡んだことはなくて。どっちもトップクラスのライブバンドなので、一緒にライブがしたいと思って、声をかけさせていただきました。ただ、かなりの強者というか化け物みたいなバンドじゃないですか(笑)。だから、全力で食らいついていきます。それに、一緒にライブをすることで得られるものがいっぱいあると思うので、それも楽しみにしています。
――いいですね。大阪をワンマンにしたのは、理由があるのでしょうか?
Yurin:元々はヒトリエというバンドを呼んでいたんですけど、ボーカルのwowakaさんが亡くなってしまったんです。でも、本当にヒトリエに出てほしかったので、ヒトリエの時間をお借りしてワンマンをやらせていただくことにしました。大阪公演はヒトリエの気持ちも背負ってライブをしたいと思っています。
知:今度のツアーは、ボコボコにされる覚悟ができています(笑)。そういう場だからこそ自分達は正直に音楽をやらないといけないので、自分達らしいライブをしたいですね。以前アルカラの方と話をした時も、“サイダーガールはサイダーガールの良さがあるから、それをちゃんと出せるライブをしなさい”と言ってくれたんです。自分達らしさを押し出したライブをしたうえで、先輩方から学べるところを学んで、直接的なアドバイスももらえるようなイベントになるといいなと思います。
フジムラ:この前大阪でKEYTALK、アルカラと競演するイベントがあったんです。僕は、その時の打ち上げでアルカラの疋田(武史/dr)さんに、“お前は、まだちょっとぬるま湯に浸かっている。次のライブは本気でかかってこい”というご指導をいただいたので、自分の中で今まで以上に燃えています。先輩バンドの方に叱ってもらえてすごくあり難いことだなと思ったし、その時はKEYTALKの八木(優樹/dr)さんもいて、“本当に期待している人にしかこういうことは言わないから。がんばろうぜ”と言ってくれたんですよ。それにすごく感謝していて、僕は恩返しをしないといけない。今度のツアーは、そういう気持ちで臨みます。
取材・文●村上孝之
リリース情報
2019年7月3日(水)発売
【初回限定盤】(CD+DVD)UPCH-7498 \2,000(税抜)
【通常盤】(CD)UPCH-5964 \1,200(税抜)
<CD収録曲>
01.クローバー
MBS/TBSドラマイズム「都立水商!~令和~」エンディングテーマ
02.ハートビート
03.寿司
<初回限定盤DVD>
『サイダーのなかみ-SPACESHIP IN MY CIDER-』
ワンマンライブツアー「サイダーガールTOUR2019 サイダーのゆくえ -SPACESHIP IN MY CIDER-」のライブ映像や、メンバーインタビュー、ツアーのオフショットなどを約40分に凝縮したDVDが付属
・パレット
・なまけもの
・群青
・dialogue
・モラトリアムさん
・約束
ライブ・イベント情報
2019年7月19日(金) 名古屋 CLUB QUATTRO
出演:アルカラ/サイダーガール
2019年7月20日(土) 梅田 CLUB QUATTRO
ワンマン公演
2019年7月25日(木) 渋谷 CLUB QUATTRO
出演:KEYTALK/サイダーガール
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