【ライブレポート】バナナニードル、超絶な破壊力と温かさの合わせ技で観客を魅了したワンマンライブ
ジャズ、ロック、ラテン、ファンクなどを溶かし込んだ強靭なリズム隊の上で、超絶技巧のハモンド・オルガンが自由奔放に飛び回る。噂のオルガントリオ、バナナニードルの2ndアルバム『シュガー・スポット』は、精力的なライブ活動で鍛え上げた演奏と、インストなのに口ずさめるキャッチーなメロディを兼ね備えた自信作。前作からの飛躍は明らかで、これはライブを見ておかねばと四谷Doppoへ足を運んだ。6月12日リリースの前週に全曲をライブで聴かせてしまう、ワンマンライブ<SUGAR SPOTを探して>。外は小雨模様だがこぢんまりとした店内は居心地よく、熱心なファンが作る歓迎ムードがあたたかい。
全員がバナナ・カラーの黄色い服を着用してにこやかに登場、1曲目からいきなり新曲「Stay be」と未発表曲「Välk」のアップテンポ二連発で一気に飛ばす。ディスコ・ビート風の乗りの良さから細かいリズム・チェンジを経て痛快エイトビートへ、大胆かつ繊細なリズムと驚異の速弾きオルガンの破壊力は、まさに百聞は一見に如かず。細身の体をしならせてアクティブに弾きまくる市塚裕子、笑顔でどっしり構えるベーシスト・三重野テツロウ、華麗なスティックさばきで魅せるドラマー・キムラミツノリ、3人のバランスは完全なる正三角形だ。
「キーボード・マガジン」にインタビューが載ります!と、市塚の明るいドヤ顔MCをはさんで、今度はスローでブルージーな曲調の未発表曲「嘘つきHoney」から新曲「Tokyo City」へ。スローな序盤から徐々にテンポを上げグルーヴィーに展開したり、三重野がボコーダーを使い変調ボイスを披露したり、エフェクターを駆使したトリッキーなプレーも得意なのが彼らのスタイル。ロック・ファンにもアピールする、魅力的な演奏だ。
ここからは、1stアルバム『BANANA NEEDLE』収録曲を3曲ノンストップで。とびきりキャッチーなメロディを持つアッパー・チューン「ミツバチ」の、3人のソロ回しで会場を沸かせると、スピードを保ったまま「星屑セレナーデ」では、三重野がマイク・スタンドでベース弦を弾くという荒業を披露。「みなさんと一つになれる曲がやってきました!」と紹介した「TsuRu」は、全員揃っての鶴ポーズ(指先で鶴を作るのです)で大盛り上がり。ちなみに「TsuRu」はTBS「知ってニャるほど!ヘルシスト」のテーマ曲になっているあの曲だ。大拍手と歓声に応えて「気持ちいーい!」とご機嫌な3人。まだライブ中盤だが一体感は最高だ。
市塚は究極の晴れ女で、この日も彼女の機材搬入の時だけ雨がやんだらしい。トーク・リーダー三重野の盛り上げに市塚が応え、キムラが時折遠慮がちに言葉をはさむ、息の合ったMCが実に楽しい。ちなみにキムラは来月の「リズム&ドラム・マガジン」に載るらしい。残る三重野が「ベース・マガジン」に載る日がいつか来ることを祈りつつ、いよいよニュー・アルバム『SUGAR SPOT』全曲披露へと突入。「ここからはもうほとんどMCないですから。準備はいいですか?」と、やる気満々の三重野を筆頭に準備は万端だ。
ラテン・ハウス風の端正なビートと、夏っぽい爽やかなサビのメロディが耳に残る「KOH」から、ダンス・ミュージックのようでサビのロック的なエイトビートが印象的な「Wonderful Life」へ。アルバムの1、2曲目を再現して一気に盛り上げ3曲目へ…行くはずが、ここでベースにトラブル発生。慌てず動じず「ライブにアクシデントは付きものですね」と、百戦錬磨の余裕を見せる市塚が頼もしい。気を取り直して「Just Chilling」はタイトル通り「リラックスした」ファンキーなミドル・チューンで、三重野が再びボコーダーを操り、続く「Pink Flamingo」はハッピーなラテン風リズムで明るく楽しく、キムラのシンコペーションを効かせまくったテクニカルなドラム・ソロもばっちり決まった。
市塚がハモンド・オルガンとアープ・オデッセイ(シンセ)で幻想的な音空間を作り上げる「Erica」にうっとり聴き惚れていると、ベース・トラブルにより二度目の水入り。しかし不意のアクシデントでかえって会場内の結束力が高まり、メロディアスな高揚感溢れる「Sheep the Concrete」、ロック・バラード的な美しいメロディと、最高にエモーショナルなオルガン・ソロが聴けた「Fenice」、そしてハッピーなダンス・チューン「Day One」へ、本編ラストに向けての盛り上がりは、今日ここでしか感じられないだろうとても温かく一体感溢れるものだった。
そしてアンコール…の前に、嬉しいハプニングがあった。四谷Doppo開店7周年記念「ドラム・ソロ奉納」にキムラが挑戦し、大いに照れながらも魂込めた渾身のソロを披露。そのまま3人で1stアルバム収録「Gold Finger」へなだれこみ、丁々発止のソロ合戦を繰り広げる、スリリングなシーンに観客が沸き上がる。こうしたテクニカルなアドリブの盛り上がりは、ジャズやフュージョンのファンに大いにアピールするポイントだろう。そしてこの日の最後を締めくくったのはまたもや新曲「STEPS」。ソウル・ポップ系の明るく弾むビートを持つキャッチーな1曲は、ブラック・ミュージック好きやJ-POP好きなど、幅広いリスナーにもきっと届くはずだ。
終演後、メンバーにコメントをもらうことができた。まだ身体から湯気が出ているようなホカホカの状態。ライブの感想を聞いた。
――お疲れさまでした。今日のハイライトは?
市塚裕子:今日のハイライトは、ベースが…(笑)。
三重野テツロウ:いや、ドラム・ソロでしょう。あれは素晴らしかったですね。
キムラミツノリ:人生初です。あんな「どうぞ!」みたいな感じでソロを叩くのは。
――ハプニング、アクシデントも含めて楽しめましたよ。お客さんも笑顔だったし。
市塚:こっちも楽しくやらせてもらいました。
三重野:助けてもらいました。
――2ndアルバムの曲は、ファーストと比べて何か違いますか。実際ライブでやってみると。
三重野:だいぶロックな感じがしますね。結局、みんなロック出身なところがあるので。
市塚:地が出たという感じですね。今までも出てなかったわけではないんですけど、まだ「良い子」だったのかな? これから成長していければと思います。
三重野:頑張ります!
短い言葉を交わした3人はとても前向きだった。それぞれの長いキャリアとソロ活動の実績を持ち寄ってバンドとして成長してゆく、BANANA NEEDLEの可能性は無限大だ。
取材・文●宮本英夫
セットリスト
セットリスト 6/7
1.Stay be
2.Välk
3.嘘つきHoney
4.Tokyo City
5.ミツバチ
6.星屑セレナーデ
7.TsuRu
8.KOH
9.Wonderful Life
10.Just Chilling
11.Pink Flamingo
12.Erica
13.Sheep the Concrete
14.Fenice
15.Day One
Encore
16.Gold Finger
17.STEPS
リリース情報
STPR012 価格:¥2,000プラス税
発売日:2019年6月12日
発売:ステップス・レコーズ
販売:ヴィヴィド・サウンド・コーポレーション
ハイレゾ音源(44.1kHz/24bit)同時発売(配信)
1.KOH
2.Wonderful Life
3.Just Chilling
4.Pink Flamingo
5.Erica
6.Sheep the Concrete
7.Fenice
8.Day One
9.KOH reprise
ライブ・イベント情報
新潟県新潟市 Live Bar Mush
https://livebarmush.wixsite.com/mush-web
【出演】
BANANA NEEDLE / NEPMOI
<ライブハウス音楽音堂2周年 special thanks Vol.9>
2019/06/22 (Sat)
新潟県長岡市 音楽色堂
https://nagaokaongakushoku.wixsite.com/livehouse
【出演】
BANANA NEEDLE / (The)beds(東京) / paradisco / カネコエレキ / IN-KYA in CANADA(技大) / and more…
<両国ブルーフィルム>
2019/07/05(Fri)
両国 SUNRIZE
http://livehousesunrize.jp/
【出演】
BANANA NEEDLE / hidavicious / Shinobu Motoori Group /猫バズーカ ft. ウエダテツヤ・チャーリー石塚 / おーたけ@じぇーむず feat.大山拓也
<Bogey's Night>
2019/07/08(Mon)
土浦MUSCLE SHOALS
https://www.facebook.com/pages/MUSCLE-SHOALS-sweet-soul-music-cafe-meal/505766889448895
【出演】
BOGEY KNNEY / BANANA NEEDLE
2019/07/13(Sat)
新宿御苑 MERRY-GO-ROUND
http://merry-g-r.com/
【出演】
Sabel / BANANA NEEDLE
<ROCK RUMBLE>
2019/07/24(Wed)
越谷 EASYGOINGS
【出演】
MONSTER大陸 / BANANA NEEDLE / レスナッツ
<STAR BELL PLUS企画ライブ(仮)>
2019/07/26(Fri)
下北沢ERA
【出演】
STAR BELL PLUS / Groove Travelers / BANANA NEEDLE
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