【インタビュー】BANANA NEEDLE、New Worldを切り拓くポジティブパワーに溢れた作品『Organ New World』

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世界的にも珍しい「ハモンドオルガン・インスト・トリオ」として、ジャンルを超えた音楽ファンの熱視線を集めるBANANA NEEDLEから届いた、自他共に認める最高傑作。3作目のフルアルバム『Organ New World』は、ファンキー・ジャズのしなやかなグルーヴを中心に、スカ、ラテン、ロック、ディスコなど思わず体が揺れる多彩なリズム、口ずさめるキャッチーなメロディを散りばめた、まさにNew Worldを切り拓くポジティブパワーに溢れた作品だ。インストならではの自由度の高さ、圧巻の演奏スキル、そして遊び心いっぱいのライトなノリも忘れない、誰でもウェルカムな魅力が詰まったBANANA NEEDLEの世界へようこそ!

■3枚目になってやっとそれぞれ好きにやっていいという状態
■ようやく「インストバンドっぽいね」という感じになった


――これで3年連続、しっかりとフルアルバムを出していることになりました。

三重野徹朗(以下、三重野):そうですね、ありがたいことに。

――ファースト、セカンドと来て、“サードはこうだ”というイメージはあったんですか。作る前には。

三重野:あんまり考えないようにしてましたね。1枚目、2枚目は演奏も探り探りだったし、その時から初めてインストをやり始めた3人なので、「インストってどうやるの?」とか、そんな感じだったんですよ。だから、1枚目だけは打ち込みを入れているし。

市塚裕子(以下、市塚):今聴くと、迷走してる感が出てるよね(笑)。

三重野:3人以外の音をけっこう入れてましたね。ハンドベルとか。僕はもともとアレンジの仕事をしていたんですけど、歌があってのバックトラックと、オルガンあってのトラックは違うから、かなり試行錯誤しました。それで2枚目でやっと打ち込みがいらない状況になり、3枚目になってやっと、それぞれ好きにやっていいという状態になりましたね。ようやく「インストバンドっぽいね」という感じになってきました。

市塚:ドラムを録る時は、ドラムとエンジニアさんをスタジオに閉じ込めて、私たちは休憩。「勝手にやって」みたいな感じ(笑)。

キムラミツノリ(以下、キムラ):最近、注文の内容がどんどんアバウトになっていくんですよ。「こうやって」とかじゃなくて、「なんか暗いね」とか。

三重野:そこは世代の差かもしれないけど、僕と市塚は同い年で、彼は10個下なんですよ。うちらは音楽をふわっと伝える環境で育ってきてるから、「もっと草原を走ってるふうな」みたいな。

キムラ:言われて、めちゃくちゃ考えるんですよ。

三重野:今回唯一伝わらなかったのは、「キューバ在住の売れてないミュージシャンで、前歯が入れ歯のおじいちゃんなんだけど、ドラムに座らせるとめっちゃいい感じのスカを叩く人」という注文だった。


――あはは。それはムズい。

三重野:ガリガリに痩せて、ボウリングシャツみたいなのを着て、入れ歯のおじいちゃんが、ドラムに座ったらめっちゃすごいスカを叩く。というのを発注したら、困ってました(笑)。

――それってもしかして、1曲目「So Happy Day」ですか。ご機嫌なスカチューン。

市塚:そうです。

三重野:誰もスカをやったことがなかったんですよ。

――キムラさん、どうすか。スカだけに、どうすか。

キムラ:どうすかね~(笑)、まあ探り探り、ああじゃないこうじゃないと言いながら、これかな?というものはできたと思います。まだまだですけど。でもキューバのおじいちゃんの顔は未だにわかんないです(笑)。

――ちなみに7曲目「Having a Giraffe!」は、どんなイメージで伝えたんですか。アルバムで唯一の、三重野さんの作曲チューン。

三重野:あれは、ジャズフェスと言われるところに出るために、「ジャズっぽい曲をアルバム1枚につき1曲入れよう」という担当の曲ですね。

市塚:ジャズは私が一番ちゃんとやってるんですけど、なぜかジャズが作れない。それなのに、適当にジャズをやっている彼が一番ジャズっぽい曲を作れる(笑)。

三重野:1枚目を作った時に、ある方から「ラテンぽい曲があったほうがいい」と言われて、僕がラテン担当になったんですよ。それでマイナー調の、ジャズフェスでもできそうな曲を作ったのがきっかけです。

――「Having a Giraffe!」もラテン系ですよね。マイナーではなくて、明るい曲ですけど。

三重野:でもこれ、ずーっと転調してるらしくて、オルガン的には「えらいこっちゃ」らしい。

市塚:歩きながらケータイに入れた♪にゃーにゃーにゃー、っていう歌だけ最初に送られてきて、意味がわからなかった(笑)。とりあえず譜面を起こして、このメロディはどこに行きたいんだろう?と考えてコードをつけたら、「それは違う」と言われ(笑)。メインのキーがわからないんですよ。正直、レコーディングするまで完成形が見えなかったです。できあがって初めて「あ、そういうことか」と思いました。


▲市塚裕子

――「Having a Giraffe!」って、なんでジラフなんですか。

三重野:スラング的に、「鼻で笑う」みたいな意味らしいです。「キリン持ってるわけないじゃん、ふふっ」みたいな感じ。なので、聴いて鼻で笑ってもらえればと。やっぱりジャズの人や、本職のラテンの人の作曲には勝てないですし、という感じです。

――なるほど。インスト曲って、タイトルはけっこう大事じゃないですか。言葉がないぶん強いイメージが必要だし、適当につけるわけにもいかないし。

三重野:それがですね、うちのバンドは…。

市塚:適当ではないけど。

三重野:ここだけの話、ノリは多いです(笑)。バンド名もノリで決まったし。今回で言うと、例外は「バタフライ」ぐらいじゃない?

市塚:作った時にタイトルが決まっていたのは「バタフライ」と「Cosmo」くらいかな。

――ちなみに3曲目の「Inco」って、鳥のインコのこと?

市塚:そうです。アルバムにずっと鳥がいるんですよ。1枚目は鶴(TsuRu)がいて、2枚目はフラミンゴ(Pink Flamingo)がいる。「フェニーチェ(Fenice)」も鳥ですね。だったら3枚目にも鳥を入れようということで、「Inco」にしました。ちょっと言ってしまうと、インコグニートも意識しています。

――おおー、なるほど! 確かにアシッドジャズっぽいノリがある。

市塚:内緒ですけど(笑)。

三重野:でも「グニート」にはできなかった。

キムラ:「インコ」までは行けたけど、「グニート」にはなれなかった(笑)。

――あはは。それ最高です。

三重野:本当に申し訳ないですけど、タイトルに関してはほぼノリです。受け手側に勝手にイメージしてもらえたらいいな、ぐらいの感じですね。

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