【ライブレポート】悲しみを乗り越えて、UFO50周年記念ツアーは続く
2018年、フィル・モグ(Vo)がSNS上にて2019年の50周年記念ツアーをもって事実上の引退を表明してから早くも一年が経つ。偶然にも表明の翌日、日本でヴィニー・ムーア(G)へのインタビューが行われ、「フェアウェルとは言いたくないけれど、そういう事になると思う」とヴィニーも語っていた。
その<50th Anniversary Last Orders Tour>が2019年3月からスタートしたものの、クラシックメンバーであるポール・レイモンド(G、Key)が4月に急逝するという悪夢のような出来事が起こり、世界中は深い悲しみに包まれていた。このままツアーは中断し、バンドの歴史もフェードアウトしてしまうのではと危ぶまれたものの、盟友ニール・カーター(G、Key)のサポートを得てツアーは続行されることとなった。
そんなUFOの、ポール逝去後ドイツに続いて2公演目となる< Sweden Rock Festival 2019>での様子を見ることができた。
マイケル・シェンカー(G)の影を未だに追うファンも少なくないかもしれないが、多くのギタリストが安定しなかったバンド史上において、ヴィニー・ムーアは加入してすでに15年以上もの年月を重ねている。かつては速弾きギタリストとして脚光を浴びたヴィニーだが、UFOでの彼は控えめながらエモーショナルに作品をサポートする伝統的ブリティッシュハードロックを聴かせている。
引退を表明したフィル・モグの歌声も全く衰えを感じさせず、オーディエンスも馴染みのある楽曲たちにフルで応える光景も感慨深い。フィル特有のグルーヴ感も健在だが、前回UFOを観た2005年のロンドン公演に比べれば、ステージアクションや身のこなしには衰えを感じずにはいられなかった。自身の引き際を決めたのもツアーが非常にキツくなってきたからであろうか。
アンディ・パーカー(Dr)とヴィニー・ムーアは2005年から変わらぬメンバーだが、体調不良により離脱したピート・ウェイ(B)の後任として長年のメンバーであるロブ・デ・ルカ(B)は、サンダーバードを持つ姿もピートを彷彿させるものがあった。そしてキーボードが居なければUFOの楽曲は成立しない故に、ニール・カーターの存在も多くの感動を与えてくれた。管楽器の先生として生活をしていたようだが、36年ぶりのUFO復帰はブランクを感じさせないもので、終始アグレッシブなギタープレイでも魅了し続けていた。
前夜祭も含めると4日間の開催となる<Sweden Rock Festival 2019>の中で、UFOと同日にシーンに復帰したピート・ウェイ・バンドも出演していた。メンバーにはローレンス・アーチャー(G)が参加、もうひとつのUFOと言っても過言ではない状況だ。UFOのライブではピートの楽曲である「Too Hot to Handle」あたりでのステージ飛び入りも期待したものの、それは叶わなかった。とはいえ、ステージ裏ではフィルとアンディと再会していた様子がピートのオフィシャルサイトで公開されている。
フェアウェルとなるのは寂しいところだが、相変わらずフィルはお酒を好み、ステージ上でも何度も乾杯する姿は茶目っ気たっぷりだった。UFO50周年記念ツアーは続く。
文・写真:Sweeet Rock / Aki
< UFO ~ Sweden Rock Festival 2019 ~>
2019.6.8 Norje Havsbad , Sweden
1. Mother Mary
2. We Belong to the Night
3. Venus
4. Lights Out
5. Only You Can Rock Me
6. Cherry
7. Love to Love
8. Makin' Moves
9. Too Hot to Handle
10. Rock Bottom
11. Doctor , Doctor
12. Shoot Shoot