【インタビュー】鈴木研一(人間椅子)「SVTは太さも歪みも叶えてくれる素晴らしい名機」【BARKS編集長 烏丸哲也の令和 楽器探訪Vol.003】
ミュージシャンにとって「機材」は音楽を具現化させるためのツールであり、同時にプレイヤーとしてのアイデンティティを示す相棒のひとつでもある。どんな音を出すのか、どんなルックスをしているのか…、楽器を携えたプレイヤーとしての佇まいは、自らがいかなるミュージシャンなのかを雄弁に語るものだ。
オジー・オズボーンの表現手法に触れ「自分のやりたかったものはこれ」とシンパシーを感じたという鈴木研一だが、彼の出すサウンドは極めてオーソドックスなハードロックサウンドである。古くはリッケンを掲げ、まれにプレベに浮気しながらも長きに渡ってB.C.Richイーグルを愛する鈴木研一が、自らのサウンドメイクに全幅の信頼を寄せているのがAmpegのベースアンプだ。「サウンドの秘訣はここ」と断言する彼に、そのこだわりと愛情を聞いた。
▲Ampeg SVT、B.C.Richイーグルベース。
──バンドを始めた最初の頃は、どんなベースアンプを使っていたか覚えていますか?
鈴木研一:最初レコーディングしたときは、アコースティックを借りてました。1stアルバムの前に、イカ天レーベルってところでイカ天CDを出してるんですけど、それがアコースティックだった。その頃、ライブではライブハウスにあるアンプを使うんですけど「なんかこうじゃないんだけど、これしかないんだからしょうがない」と思いながら弾いていました。リッケンバッカーだったから、あまりアコースティックと相性がいいとは思えない感じだったんですよね。
──何が足りなかったんでしょう。
鈴木研一:ハイのギラギラした感じが足りなかった。アコースティックって、中域で弾く人にはすごいいいと思うんだけど、ピックでガリガリとハイで弾く人には、おいしいところがうまく出ない感じで向いてないのかな。で、あるとき「アンプ、何買えばいいかわかんないんだけど」って事務所の社長に言ったら、「俺が知ってる人がいるから相談に行けよ」って、紹介されたのが“CRAZY”COOL-JOEさんだったんですよ。で「ゲディー・リーみたいな、ハイがバシバシのベースを弾きたいんです」って言ったら「じゃあSVTちゃうん?」って。
──鈴木研一が“CRAZY”COOL-JOEに相談…って違和感しかないけど(笑)。
鈴木研一:なんだろうなあ。事務所の社長がMORRIEさんと知り合いだったんですよ。
──DEAD ENDもバリバリやっていた頃ですよね。
鈴木研一:あ、そうだ、DEAD ENDってアミューズでしたよね。自分らも最初はアミューズにいたから、だからだ。
──あ、イカ天出身ですからね。で、AmpegのSVTを購入するわけですか。
鈴木研一:そう。よくよく見たら自分が大好きなナザレスのベーシストもSVTを弾いていたんですよ。JOEさんも言ってたし、「これは俺に買え」って言ってるようなもんだと思って探して、代々木かどこかの中古楽器屋じゃなかったかな、即買いでしたよ。でも真空管が日本じゃ手に入らないからって、全部日本の真空管で対応できように直してもらって買ったんですよね。SVTのオールドで死ぬほど重いんですけど、それを今でも使ってます。
──最初から理想的な出会いをしたんですね。
鈴木研一:そうなんです。ライブでは使わないから真空管も変えてないんですよ。あまりにも音が大きすぎてライブでは使いづらいので、ライブでは同じAmpegのV-4Bってのを使ってます。これもまた、自分が大好きなシン・リジィのフィル・ライノットが使ってて、これだなと。
──フランジャーこそ繋げないけれど?
鈴木研一:そう(笑)。買ったらすごくよくて、ライブハウスの広さにもちょうどよくて、もう1台買ってV-4Bはオールドを2台持ってます。
▲Ampeg V-4B
──他には試してみなかったんですか?
鈴木研一:マーシャルも買いましたよ。でもすごく大きな音を出さないといい音にならないことに気がついて、今は倉庫の肥やしですね。ギャリエンとかいろいろ弾きました。
──当時はハートキーとかも人気あったでしょう?
鈴木研一:ハートキーとトレース・エリオットが苦手で、このふたつだけはないと思って(笑)。
──アンペグと何が違うんですか?
鈴木研一:ハードロックが欲しがるハイのガリッていう音が出ないんですよね。
──上品ってこと?
鈴木研一:んー、歪みが足りないってことですかね。下品な音が欲しいんすよね、やっぱハードロックだから。SVTはその上でさらに音の太さまで出してくれるんですよ。歪むベースアンプって、だいたい音の太いところを犠牲にして下品な音になるんだけど、SVTは太さも歪みも叶えてくれる素晴らしい名機なんですよね。
──SVTさえあれば、どんなベースでもいい感じに鳴ってくれるんですか?
鈴木研一:ところがそうじゃなくて、フェンダーのプレシジョン・ベースって王道なんですけど、SVTで鳴らすとすごく古臭い感じの音になっちゃうんです。で、自分はプレベを1本持っているんですけど、ピックアップをディマジオに載せ替えてます。ディマジオっていうのは、B.C.Richのイーグルとかモッキンバードとかに使っているピックアップなんですけど。
──ディマジオがポイントなんですね。
鈴木研一:B.C.RichとSVTっていうよりは、ディマジオとSVTの相性がハードロックには最高なんですよ。しかもモデルPというプレシジョンタイプのピックアップとアンペグのSVTの組み合わせが最高だと思うんですよね。
──その組み合わせで使っている人で、他に誰がいますか?B.C.Richと言えば、モトリーのニッキー・シックスか。
鈴木研一:確かにワーロックとかビッチとか使っていましたけど、あのあたりの変形ベースって自分が使ってるイーグルとはちょっと路線が違うんすよね。あれは形優先でイーグルは一応音優先。昔で言えば後藤次利さんとかが使ってたベースなんですけど、木が良くてメイプルの太い音が鳴るんです。形も好きだし非の打ち所がない…わけでもなく、非はいっぱいあるんですけど(笑)。
──デッドポイントがあると言っていましたよね。
鈴木研一:形も音もいいんだけど、デッドポイントがある個体が多くて、4弦の5フレットっていう大事なAの音にデッドポイントがあるんですよ。
──でもAは3弦の開放で出せばいいからOK?
鈴木研一:開放って自分は好きじゃないんですよね。4弦の開放は別だけど。B.C.Richは何本も買ってますけど、そこの音が鳴るかどうかを店で試奏して確かめるんです。
──リッチー・ブラックモアのストラトみたいに、ヘッドにスタビライザーをつけたらどうなんでしょう。
鈴木研一:やってみたんですけど、やっぱりヘッドが重くなるんですよね。しかもそんなに効果出なかった(笑)。
──今欲しいベースはありますか?
鈴木研一:B.C.RichでWAVEっていうベースがあって、お尻のところに波型のスリットが入ってるんすけど、メイプルのが欲しいんですよ。すごい欲しいんだけど、中古市場にも流れてこなくて。HEESEYさんが持っているんですけど、HEESEYさんも宝物だって言ってるんですよ
──モッキンはどうなんですか?
鈴木研一:モッキンは1本持っていますけど、ヘッドが重くて弾きづらいんです。音は、ローがカットされててソリッドで中域がはっきりわかるから、音としてはライブ向きだけど。
──ストラップピンの場所が悪いのかな。
鈴木研一:そう思っていろいろ変えたんだけどダメで、モッキンバードを使ってるホワイトスネイクのニール・マーレイに、知り合い経由で訊いてもらったんです。「どうやったらいいんだ」って聞いたら「そりゃ我慢するしかない」って返事がきた。「自分もそうしてる。ずっと押さえて弾くんだ、あのベースは」って書いてあった(笑)。わざわざ親切に返事までくれて、ニール・マーレイっていい人だと思った(笑)。でも結局、今は家の練習用のベースになってます。
取材・文:BARKS編集長 烏丸哲也
ライブ写真撮影:塩見徹
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M8.あなたの知らない世界(作詞・作曲/和嶋慎治)
M9.地獄小僧(作詞/和嶋慎治 作曲/ナカジマノブ)
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