【インタビュー 後編】SUGIZO & 真矢 [LUNA SEA]、刺激的な未体験サウンドを語る「未だ音楽に恋焦がれている小僧ですから」

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■ドラムのパーツを全部バラバラに録ったり
■また新しいものが生まれている──真矢

──確かに、聴いたとき“The LUNA SEA”だと思いました。アルバム『MOTHER』時代を彷彿とさせるような。

SUGIZO:真矢のドラムもいちばん得意なタムパターンだったり、Jのベースもタイアップ曲なのにガリガリの音で。

──リズムセクションがいつも以上に前に出ていて、力強さが増している印象を受けました。

SUGIZO:そう。ギターはLUNA SEAらしく宇宙的で。

──まさに『ガンダム』に出てくる銀河のようなサウンドですよね。

SUGIZO:で、RYUICHIの歌も“これでもか!”っていうぐらいに自己主張をしている。あと重要なのは、近年のLUNA SEAが得意としているアップテンポの曲であること。「TIME IS DEAD」とか「PRECIOUS…」とかウチらの1990年代当時の速い曲のBPMは190とか200とか、それ以上だったじゃない?

真矢:うん、そうだね。

SUGIZO:「宇宙の詩 ~Higher and Higher~」はBPM135ぐらいなのね。最新アルバム『LUV』でいうとリード曲の「Hold You Down」ぐらいのテンポ。今の我々はそのぐらいのBPMで十分アップテンポなことができる、ということを象徴する楽曲になったかなと思います。アッパーに聴こえるでしょ?

──はい、BPMを聞いて驚きです。疾走感があるし、もっと速い曲なのかと思ってましたから。

真矢:1990年代のLUNA SEAならスローテンポに入るぐらいのBPMだよね。

──ということは、『MOTHER』時代ではないですね。

SUGIZO:やっぱり今のLUNA SEAなんですよ。そういう意味で言うと、楽曲のフォーマット自体は新しく、その中であえて最も自分達らしい持ち味を出している。新しい感覚とLUNA SEAがずっとやってきたメロディ感、コード感、フレーズ感を融合させた曲だから、新しいようで懐かしいし、懐かしいようで新しい。上モノは宇宙的で、リズム隊は広大な大地を表現している。

──まさにそう感じました。今みたいな会話ってメンバー同士でするんですか?

真矢:話さないですね。

SUGIZO:俺は真矢に「デモを基調にいちばん気持ちいいことをやって」って。INORANやJに対しては、俺は響きから曲を作るから「コード感、ヴォイシング感は壊してほしくないけど、ベーシックな響きを踏襲してくれれば何やってもいい」って。近年は歌のメロディもしっかり作っていくんだけど、RYUには「メロディはどんどん好きに崩してくれ」って伝えてますね。でも、RYUはそう言っても、あえてデモのメロディに言葉をピッタリとハメてくるの。「もっと好きにやれば?」って言っても「いや、この曲は俺が書かないタイプのメロディだから」って言うんだよね。

真矢:その気持ち、すっごくわかる!

SUGIZO:RYU曰く「そのほうが俺も成長するし、バンドとしても新鮮だし。自分でカスタマイズすると自分が作った曲と同じようになってしまうから」って。確かに俺もそうで、例えばJの曲は俺が普段ほとんど使わないパワーコードオンリーだったりするときもあって、自分がしないアレンジだからこそ、マスターしたいと思う。

真矢:自分が好きな雰囲気って決まっちゃってるから、人のエッセンスを入れないといろんな表情が出てこないんだよね。

SUGIZO:それがバンドマジックになるからね。

──お互いに影響しあって、吸収してソロでは成し得ないものが生まれてくるっていうことですよね。

SUGIZO:それと、実はLUNA SEAは今回、30年目にして初めて外部プロデューサーと一緒に仕事をしたんです。そのプロデューサーとはスティーヴ・リリーホワイト(英国の著名プロデューサー/グラミー賞を通算5回受賞)。なので、ミックスに関しては彼の意見が非常に大きい。バンドとしては初めてまな板の鯉になった感覚があった。

真矢:そうそう。スティーヴの意見も大きかったね。今後リリースされるアルバムもスティーヴと一緒に作っていて、曲によってだけど、ドラムのパーツを全部バラバラに録ったりとかね。いろんなことを試せるから、また新しいものが生まれている。

SUGIZO:スティーヴが、U2やピーター・ガブリエルの作品でよくやっていた手法なんだって。「クラッシュ(シンバル)を分けて録りたい。それによりドラムサウンドがよりクリアになって、前に出るんだ」と言っている。

真矢:「宇宙の詩 ~Higher and Higher~」に関しては、けっこうバラバラで録ったよね。キックとスネアだけとか。

SUGIZO:実験したね。

真矢:ドラムをパーツ毎バラバラにレコーディングして、それを重ねることでドラムセットになるようなアプローチ。音の粒立ちみたいなところと関係してるのかもしれないね。

SUGIZO:それでいて細かい注文をしないところがすごいよね。リズムと歌に魔法をかけてくる。完成したとき、「なんでこんな音になるの!?」って。全部の音が聴こえて粒が立ってて、それでいてカタマリになっている。それは特に「悲壮美」で感じたな。

──ストリングスとバンドサウンドの兼ね合いも含めて?

SUGIZO:そうだね。スティーヴはもともとベーシストだから、ベースがゴリゴリに出てるのも特徴で。嬉しいのは、我々、U2がすごく好きじゃない? スティーヴはU2のアルバム『ヨシュア・トゥリー』の30周年記念盤のミックスの仕事をしながらLUNA SEAも手がけてくれてたんだよね。

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